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[COMPUTEX]NVIDIA,ノートPC向け「G-SYNC」を発表。ようやく「G-SYNCモジュールが何をしているのか」が明らかに
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印刷2015/06/01 07:00

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[COMPUTEX]NVIDIA,ノートPC向け「G-SYNC」を発表。ようやく「G-SYNCモジュールが何をしているのか」が明らかに

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 2015年6月1日,NVIDIAは,2日から台湾・台北市で開催となるCOMPUTEX TAIPEI 2015に先立つ形で,同社独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」を,ノートPCに展開すると発表した。COMPUTEX TAIPEI 2015の会場では,G-SYNC対応のゲーマー向けノートPCが,メーカー各社から展示される見込みだ。

G-SYNC対応ノートPCはASUSTeK ComputerとClevo,GIGA-BYTE TECHNOLOGY,MSIから登場予定。17.3インチ液晶搭載モデルはパネル解像度が1920×1080ドットだが,15.6インチ液晶搭載モデルは4Kだったり3Kだったりする。GPUはいずれも「GM204」コアを採用したものとなるが,その理由は後ほど
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 もともとG-SYNCの利用にあたっては,ディスプレイデバイス側に「G-SYNCモジュール」を組み込む必要があった。それが,ノートPC版G-SYNCでは不要になったというのが非常に大きなトピックとなるのだが,NVIDIAによる説明会では,ある意味,それ以上の「G-SYNCにまつわる重要な秘密」が明らかになっている。
 今回は,ノートPC向けGeForceとTegraのプロダクトマーケティングマネージャーを務めるGaurav Agarwal(ガラフ・アガーワル)氏が語った内容から,ノートPCでのG-SYNCがどのように実現されているのかと,これまで長らく秘密にされてきたG-SYNCの仕様をまとめてみたいと思う。


G-SYNCにおいて,G-SYNCモジュールは

何をしているのか?


 4GamerではG-SYNCについて,これまでも折に触れて紹介してきているが,復習がてら簡単にまとめると,これは,ディスプレイが映像を更新するタイミングを,GPUの描画速度に合わせてしまおうという技術だ。
 従来は,GPUの描画タイミングを,ディスプレイデバイスが毎秒何回映像を更新できるかを示す「リフレッシュレート」に合わせて同期するか,無視して非同期とするかを選ぶ必要があった。そのため,同期する場合は,ディスプレイ側の映像更新タイミングまでにGPU側で描画が終わらない場合,次の映像更新まで待つ必要があり,それが表示遅延や,それに伴う動きのカクつきをもたらすことがあった。逆に非同期とする場合は,ディスプレイが映像更新しているそばからGPUは次の映像の内容をディスプレイに送ってしまうため,映像が上下で分断される「テアリング」という現象を引き起こすことがあった。それを解決し,見た目にスムーズな描画を実現しようというのが,G-SYNC誕生の経緯となる。

G-SYNCモジュール
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 このとき,リフレッシュレートをGPU側の描画速度に合わせるには,ディスプレイデバイス側にG-SYNCモジュールを組み込み,GPUとG-SYNCモジュールの協調動作をさせなければならない……というのが,これまでのNVIDIAの説明だった。実にざっくりとした話だが,なんとなく納得していたというのがこれまでの状況ではなかろうか。

 だが,AMDが,G-SYNC対抗の機能「FreeSync」をアピールし,実際に採用製品が出てきたことで,状況は変わってきた。FreeSyncは,ディスプレイ標準化団体であるVESAの標準規格「DisplayPort 1.2a」に「Adaptive-Sync」という名称で取り入れられており,G-SYNCモジュールのような特別なハードウェアなしに,G-SYNCと同等の表示を可能にしてしまったからだ。
 こうなると,当然のことながら,ゲーマーの中では「G-SYNCモジュールは何をしているの?」という疑問が出てくるだろう。「G-SYNCモジュールってそもそも必要なのか?」という疑念さえ,抱かざるを得なくなる。

Gaurav Agarwal氏
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 今回,Agarwal氏が語ったのは,そんな疑問に対するNVIDIAからの回答である。

 Agarwal氏によると,G-SYNCの実現にあたっては,難しい課題がいくつかあったそうなのだが,今回話題に挙がったのは,「ちらつきを抑えること」と「正しい色を表示すること」の2点だ。
 というわけで,まずは「フリッカー」(flicker)とも呼ばれるちらつきから。一般にゲーマーは,ディスプレイが対応できる最大のリフレッシュレートに注目しがちだが,実際には,対応可能な最小のリフレッシュレートも存在する。そしてG-SYNCの場合,GPU側のフレームレートに応じてリフレッシュレートが可変となるため,最小フレームレートにも気を配らないと,問題を引き起こす要因になるという。

 対応可能な最低のリフレッシュレートはディスプレイによって異なるが,Agarwal氏が示したスライドに合わせて,仮に40Hzとしておこう。
 下に示したスライドのように,GPUの描画が40fpsを割り込むと,次の画面更新までの間,次のフレームがGPUから送られてこなくなるため,画面が一瞬黒くなってしまう現象が生じ,それがちらつきを生むとのことだ。

Agarwal氏は,ディスプレイの対応できる最小リフレッシュレートが,G-SYNCを実現するにあたって乗り越えるべきハードルだったと振り返っていた
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 そこでG-SYNCでは「たとえば30fpsまでGPUの描画が落ち込んだ場合,ディスプレイ側のリフレッシュレートをフレームレートの2倍となる60Hzに引き上げて,同じフレームを2回表示することでちらつきを抑える仕組みを盛り込んである」とAgarwal氏。さらに,GPU側のフレームレートがさらに落ち込んだ場合には,リフレッシュレートを3倍,4倍……と引き上げ,その回数だけ同じフレームを再表示することで,ディスプレイ側の最小リフレッシュレートを割り込まないように調整してあるという。

 2つめの「正しい色」というのは少し分かりにくいかもしれないが,これは要するに,液晶の応答速度が引き起こす問題のことである。
 Agarwal氏によると,液晶パネルの応答速度をリフレッシュレートに合わせないと,色が変わって見えることがあるそうで,そこでG-SYNCでは「G-SYNC Variavble Overdrive」という機能を使い,液晶の駆動電圧をフレームレートに合わせて変更し,正しい色が表示されるようにしてあるとのことだった。

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「Current Frame」が現在の,「Next Frame」がその次のそれぞれフレーム。横軸が時間,縦軸が色である。ピクセルの色が「Gray 1」から「Gray2」へと変化するとき,グラフのように液晶が応答すれば正しいGray 2が見える
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G-SYNCではフレームレートとリフレッシュレートがイコールで結ばれるため,応答速度を変えないとGray 2には到達しない。たとえば,スライドでVariable Framerateと記されている範囲の左側で次のフレームが来てしまうと,Gray 2に到達せず,色が暗くなる。逆に右側で次のフレームが来てしまうとGray 1までオーバーシュートして色が明るくなりすぎるという具合だ
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そこでG-SYNCでは,グラフ内にある点線のように,液晶の反応速度をフレームレートに合わせて変え,液晶の応答がGray2に到達するよう調節している。これがG-SYNC Variable Overdriveだ

 オーバードライブは通常,ディスプレイデバイスに搭載された液晶パネルの応答速度を高める目的で使われているが,それは液晶パネルの駆動信号を変えることによって実現されている。なので,G-SYNCにおいては,フレームレートに応じて,駆動信号を適宜変えることにより,色の再現を行っているということになるだろう。
 このような動作を行うには,当然のことながら,ディスプレイデバイスに内蔵されたG-SYNCモジュールが液晶パネルを直接的に駆動する必要がある。だからこそG-SYNC対応ディスプレイでは,通常ならディスプレイメーカーが設計する表示回路――スケーラ―(scaler)などと呼ばれる――をNVIDIA製のG-SYNCモジュールへ置き換える必要があるのだ。

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一般的なディスプレイデバイスでは,ディスプレイメーカーが設計したスケーラ―がパネルを駆動する
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G-SYNC対応ディスプレイではG-SYNCモジュールがパネルを直接的に駆動する。スケーラーは搭載されないか,G-SYNCとは別系統として搭載されるかのどちらかだ

 では,FreeSyncだと,ちらつきや色の変化にどう対応しているかだが,Agarwal氏は「FreeSyncはこれらの機能に対応していない」と断言していた。断言していたということは,NVIDIAが関連特許を押さえているということなのかもしれない。
 ただ,AMDはFreeSyncロゴ認証プログラムを実施している以上,そこに,ディスプレイメーカーレベルにおける何らかの対応が条件として盛り込まれている可能性はある。AMDはFreeSyncロゴプログラムの詳細を明らかにしていないので,いずれ,NVIDIAが指摘した2点の問題をFreeSyncでも調べてみる必要がありそうだ。

 いずれにせよ,ここで重要なのは,G-SYNCモジュールは,G-SYNCの動作にあたって,確かに必須のハードウェアであるということだ。誤解を招くだけなので,初めからそう説明してくれればいいのに……と思わなくもないが,そこはNVIDIAの戦略上の判断なので,外野からは何ともいえないところである。


G-SYNC対応のノートPCは

G-SYNCモジュール非搭載!


 ではなぜNVIDIAはこのタイミングで秘密を明かしたのかというと,その理由は大きく分けて2つということになりそうだ。
 1つはFreeSyncの存在で,最近のAMDは,FreeSyncのメリットを,ことあるごとに強調している。「G-SYNCではフレームレートが若干下がるが,FreeSyncではそんなことは起こらない」(関連記事)といったメッセージもその1つで,それに対抗する形で,今回Agarwal氏は「G-SYNCを有効にしてもフレーレートは決して落ちない」とアピールしていたりもする。

G-SYNCを有効にしてもフレームレートは落ちないとAgarwal氏は強調していた
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 そしてもう1つが,G-SYNC対応ノートPCの存在である。
 冒頭でも簡単に触れたとおり,今回発表されたG-SYNC対応ノートPCは,G-SYNCモジュールを搭載していない。Agarwal氏によれば,G-SYNC対応ノートPCで採用される「GM204」コアのGPUが,G-SYNCモジュールで用意される機能の一部を固定ハードウェアとして持っているとのことだ。そして,それとドライバソフトウェアの組み合わせで,G-SYNCモジュール相当の機能を「G-SYNC Direct」として実現できているという。

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 ただ,液晶パネルの応答速度というのは大雑把に言ってすべて異なる。だからこそディスプレイデバイスではG-SYNCモジュールが必要だったわけで,G-SYNCモジュールのないノートPCでは,当然,そのままだと先述したG-SYNC Variavble Overdriveのような機能を直接的には実現できない。そこでNVIDIAは,ノートPC向けG-SYNCの実現にあたって,G-SYNCの完全な機能をノートPCで実現できるパネルを「G-SYNC Panel」として認定することにしたのだそうだ。
 現時点では,液晶パネルレベルで垂直リフレッシュレート75Hzに対応する,LG Display製の17.3インチフルHDパネルと,Samsung Electronics製の15.6インチ4Kパネル,パナソニック製の15.6インチ3Kパネルが承認済みとのことだった。

ASUSTeK Computer「G751」(左上)とClevo「P750ZM-G」(右上),GIGA-BYTE TECHNOLOGY「Aorus X5」(左下),MSI「GT72G」(右下)。G751とGT72Gは17.3インチのフルHDパネル,P750ZM-Gは15.6インチの4Kパネル,Aorus X5は15.6インチの3Kパネルを採用している。P750ZM-GとAorus X5は,国内だとシステムビルダーのブランドで出てくる可能性が高そうだ。なお,OptimusはG-SYNCと共存できないため,いずれもOptimusは非対応となる
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 実のところ,この手法はFreeSync,そしてその標準仕様版となるAdaptive-Syncとよく似ているようにも思えるが,Agarwal氏は「Adaptive-Syncは使っていない」と断言していた。Adaptive-SyncはeDP(Embedded DisplayPort)特化なのに対し,G-SYNC DirectではLVDS(Low voltage differential signaling)にも対応しているそうなので,確かに別の技術ということになるものの,ここは,若干すっきりしない部分が残る。

 ちなみに,対FreeSyncという点では,今回,FreeSyncにない「Windowed Mode G-SYNC」が追加されたのも,1つのトピックとなる。
 従来のG-SYNCは,ゲームをフルスクリーンモードで実行するときのみ機能していたわけだが,Window Mode G-SYNCであれば,当該ウインドウの中だけ,リフレッシュレート制御をG-SYNCで行えるのだという。ウインドウ以外のデスクトップは可変フレームレートにならないとのことなので,どのような実装になっているのか興味あるところだ。

ゲームが動作するウインドウ以外はデスクトップのリフレッシュレート設定を保持したまま,ウインドウ内部だけ“G-SYNC化”できるという。おそらくドライバレベルの機能で,既存のG-SYNCディスプレイならすべて対応できると思われるが,対応製品に関するアナウンスは今のところない
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COMPUTEXではG-SYNC対応ディスプレイの新型も登場予定


4Kパネル搭載のAcer製G-SYNC対応ディスプレイ「XB271HK」
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 以上,G-SYNCモジュールが何をしているのかがようやく明らかになり,GM204コアにはその機能の一部が統合されており,GM204コアの利用により,ノートPCでもG-SYNCを利用できるようになった,というのが,本稿の要旨となる。NVIDIAが,FreeSyncに対するG-SYNCの技術的優位性を明らかにしたと言うこともでき,これに対してAMDがどう対応してくるのかは,今後,ちょっとした興味のポイントになってくるのではなかろうか。

 本稿で紹介したG-SYNC対応ノートPCとは別に,COMPUTEX TAIPEI 2015の会場では,4Kパネル採用モデルを含む,G-SYNC対応ディスプレイも展示される予定だ。主にコスト面から,勝負あったのではないかとも思われたG-SYNC対FreeSyncの戦いだが,NVIDIAは,まだ諦めていない。

COMPUTEX TAIPEI 2015の会場で展示されると思われる,G-SYNC対応の新型ディスプレイ一覧
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NVIDIAのG-SYNC公式情報ページ

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