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印刷2018/12/04 12:30

業界動向

NVIDIA,物理シミュレーションエンジン「PhysX」をオープンソース化。AI分野における用途拡大を目指す

 北米時間2018年12月3日,NVIDIAは,物理シミュレーションエンジン「NVIDIA PhysX」(エヌビディア フィジックス,以下 PhysX)のオープンソース化を公式blogで発表した。PhysX SDKの最新版となる「PhysX SDK 3.4」のソースコードは,すでにGitHub上で公開済みとなっており,NVIDIAの開発者向けページからアクセス可能だ。

PhysXのオープンソース化を告知するNVIDIA公式Blog
画像集 No.002のサムネイル画像 / NVIDIA,物理シミュレーションエンジン「PhysX」をオープンソース化。AI分野における用途拡大を目指す

 忘れている,あるいはもともと知らないという人も少なくないだろうから,PhysXの歴史をごく簡単に紹介しておこう。
 PhysXはもともと,スイスのチューリッヒ工科大学からスピンアウトしたベンチャー企業であるNovodeXが開発した,社名と同じ「NovodeX」という物理シミュレーション技術であった。そのNovodeXを,2002年に創業したAGEIA Technologies(以下,AGEIA)が買収し,買収後に名称をPhysXに変更したという経緯がある。

PhysXによる物理演算を行う専用プロセッサ「PhysX PPU」。これはASUSの拡張カード「PhysX P1 GRAW Edition」が搭載していたものだ
画像集 No.003のサムネイル画像 / NVIDIA,物理シミュレーションエンジン「PhysX」をオープンソース化。AI分野における用途拡大を目指す
 当時のPC用CPUは,PhysXに必要な演算をゲームに利用できる速さでこなせる処理能力がなかったこともあり,AGEIAはPhysX専用プロセッサ「PhysX PPU」を2006年にリリース(関連記事)。これをPCI拡張カードに搭載したゲーム用物理演算カードというものがASUSTeK Computer(以下,ASUS)から登場したことを覚えている人もいるだろう。

 その後,PhysXは専用プロセッサを必要としないソフトウェアソリューションとして発達し,PCだけでなく,PlayStation 3やXbox 360といったゲーム機でも使用可能となる。そして2008年のNVIDIAによるAGEIA買収を経てPhysXはNVIDIAの技術となり,NVIDIA製GPUによるハードウェアアクセラレーション「GeForce PhysX」を経て,NVIDIAのGPUコンピューティング向け開発環境「CUDA」でも利用できるようになった。
 現在のPhysXは,PCとPlayStation 4,Xbox One,Nintendo Switchといったプラットフォームに加えて,LinuxやAppleのOS X,iOSやAndroidでも利用可能になっており,Unreal EngineやUnityといったメジャーなゲームエンジンも対応している。

 さて,ゲームとともに発展してきたPhysXであるが,NVIDIAは今回,オープンソース化に踏み切ったのは,同社が近年注力しているAI分野でのニーズが理由であるようだ。
 Simulation Technology担当副社長のRev Lebaredian氏名義で行われた今回の発表で,NVIDIAはPhysXを「大規模な仮想環境を扱えるオープンソースの物理シミュレーションソリューション」であるとしている。とくにNVIDIAが,ロボットや自動運転車を含むAIが現実世界をモデルにしたシミュレーションや学習を行うときの問題を,PhysXは解決できると謳っているのがポイントだろう。
 つまり,PhysXの用途をAI向けの物理シミュレーションに拡大していくにあたって,ソースコードを公開することで各界のエンジニアに広く活用してもらうことで,NVIDIAと限られたパートナーだけではカバーできない用途にも広げていこうという考えがあるのだろう。

 NVIDIAは今回の発表に合わせて,2018年12月20日に次世代版PhysXとなる「PhysX SDK 4.0」の公開を予定していることも明らかにした。おそらく,リリース後にはPhysX SDK 4.0のソースコードもオープンソース方式で公開になるはずだ。


NVIDIA公式Blogの当該ポスト(英語)

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