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GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
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印刷2011/07/20 00:00

テストレポート

GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる

画像集#029のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
 2000年にPC向けとして登場した「American McGee's Alice」は,Lewis Carroll(ルイス・キャロル)氏の小説「不思議の国のアリス」をモチーフとするアクションゲームだった。タイトルにも冠される開発者・American McGee(アメリカン・マギー)氏による,ダークな世界観や,不気味ともいえる独特な設定が話題になった作品である。

 今回取り上げる「Alice: Madness Returns」(邦題 アリス マッドネス リターンズ)は,11年ぶりとなるAmerican McGee's Aliceの続編だ。前作のエンディング後を描いたストーリーが紡がれる本作は,2011年5月16日の記事でお伝えしているとおり,エレクトロニック・アーツから,PCとPlayStation 3,Xbox 360のマルチプラットフォーム対応で7月21日に発売予定となっている。

画像集#003のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
画像集#004のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
 さて,「Unreal Engine 3」ベースのタイトルとして登場したAlice: Madness Returnsでは,随所に,同エンジンで標準対応となる「PhysX」ベースの物理シミュレーションエフェクトが用いられている。PhysX自体はクロスプラットフォームの物理シミュレーションエンジンなので,PCとゲーム機に対応した本作で採用されていること自体は何の不思議もないのだが,ここで注意しておきたいのは,PC版のみ,GPUによるPhysXアクセラレーション「GPU-accelerated PhysX」(以下,GPU PhysX)に対応している点だ。
 GPU PhysXは,鳴り物入りで登場した割に対応タイトルが数えるほどしかなく,先行きが不安視されていたが,「まだあきらめてはいない」ということなのだろう。

 ともあれ,GPU PhysXでは,浮動小数点演算性能が優れるGPUに物理演算を任せられる利点を活かして,CPU処理するときよりも派手な物理エフェクトを適用可能だ。そのため,GPU PhysXに対応したGPU――GeForceなどのNVIDIA製GPU――を搭載した環境であれば,PlayStation 3&Xbox 360版よりもリッチな物理エフェクトを堪能できるというわけである。
 では実際のところ,PC版のGPU PhysXにはどれだけのメリットがあるのか。今回はその点を,ムービー中心でチェックしてみたいと思う。

画像集#031のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
 なお,今回テストに用いているPC版Alice: Madness Returnsは海外版だが,同作はそもそもマルチランゲージ対応なので,日本語版と同様,日本語OS上で起動した状態で字幕設定をオンにすると日本語の字幕が表示される。100%同じと保証まではできないものの,字幕周りは日本語版とほぼ同じだと考えておいていいのではないだろうか。


GPU PhysX効果のほどを

実際のプレイムービーでチェックする


 さて,実際のゲームにおけるPhysX効果をチェックしていく前に,まずは今回のテストに使用した環境を紹介しておきたい。用意した機材は下のに示したとおりである。

画像集#005のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる

Alice: Madness Returnsの「グラフィック」メニュー。余談ながら,「ATI Radeon HD 5830」搭載グラフィックスカードを差した環境でも,「Physx」の選択肢は3種類だった。この状態でハイやミディアム設定を選択すると,CPUが無理矢理GPU PhysX処理を肩代わりするため,フレームレートが劇的に落ちるのを確認済みである
画像集#002のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
 Alice: Madness ReturnsにおけるPhysXの設定は,「グラフィック」メニューにある「Physx」――「X」が小文字――から行えるようになっており,選択肢は「ハイ」「ミディアム」「ロー」の3種類。ハイ&ミディアム設定ではGPU PhysXが有効化され,ロー設定では,ゲーム機版と同じく,CPUで処理が行われるようになっている。
 ちなみにハイ設定とミディアム設定の違いは,「敵を攻撃したときなどに,オイル状の液体(体液?)がどぼどぼと出てくる」かどうか。下に6枚並べた写真は,左がハイ設定,右がミディアム設定のものなので,ぜひ見比べてみてほしいが,逆にいうと,GPU PhysXエフェクトのハイ設定とミディアム設定で異なるのはこの点だけである。そのため今回は,ハイとローの2設定でGPU PhysXの意義を確認してみたいと思う。

画像集#008のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる 画像集#007のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
画像集#010のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる 画像集#009のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
6枚並べたスクリーンショットは,左がいずれもGPU PhysX有効のハイ設定,右が同ミディアム設定のもの
画像集#012のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる 画像集#011のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる

 テストにあたって,ゲーム側の「グラフィック」メニューに用意された「アンチエイリアス」「モーションブラー」「ポストプロセス」「陰影」といった項目は,いずれもオンに設定。キャプチャソフト「アマレコTV Live アマミキ!」を用いて別PCで録画を行ったのだが,1080pでの取り込みがうまくいかなかったため,ゲーム側の解像度はやや低めの1280×720ドットを選択している。
 また,Alice: Madness Returnsは標準で,Vsyncオン,フレームレート上限30fps固定がかかっているため,それらを解除すべく,下記のとおり設定している点もあらかじめお断りしておきたい。設定ファイルの書き換えは自己責任となるので,この点はあらかじめご了承のほどを。

●フレームキャップ回避方法
「C:\Users\ユーザー名\Documents\My Games\Alice Madness Returns\AliceGame\Config\AliceEngine.ini」(※標準インストール時)をテキストエディタなどで開き,下に挙げた項目を「True」から「False」へと書き換えて保存する。

  • UseVsync
  • bSmoothFrameRate

 注意してほしいのは,そのままだと,ゲームの起動時に設定内容が初期化され,書き換え前に戻ってしまうこと。それを避けるため,AliceEngine.iniの属性は「読み取り専用」へ変更しておく必要がある。

 というわけで,だいぶ前置きが長くなってしまったが,以下,ロー設定→ハイ設定の順に並べたプレイムービーで,実際のゲーム画面がGPU PhysXによってどのように変わるのかを見ていこう。なお,エフェクト発生時などにムービーがスローモーションになるのは,コマ落ちしているわけではなく,ゲームの仕様である。

●多段ジャンプおよび滑空時


 主人公のアリスは空中で多段ジャンプと滑空ができるのだが,これと同時に羽が舞い散るようなエフェクトが描写される。ロー設定時と比べると,ハイ設定時には羽の量が格段に増える。



●「胡椒挽き」を用いた攻撃時


 所謂マシンガン的な武器である「胡椒挽き」で攻撃したときのエフェクトを見てみると,おそらく胡椒であろう破片の飛び散り具合と,それに合わせて発生する煙の量に差が生じている。ハイ設定時は,周囲が煙って見えにくくなるほど。



●「ティーポット」を用いた攻撃時


 グレネードランチャーともいえる武器「ティーポット」を使った攻撃時は,少し分かりづらいかもしれないが,着弾後に発生する煙の量が異なる。また,ハイ設定時のほうが煙が発生している時間も長い。



●敵キャラ「アイポッド」との戦闘時


 アリスだけでなく,敵キャラ「アイポッド」の攻撃時も破片のエフェクトが飛び散る。よく見ると,ロー設定でも発生しているのだが,ハイ設定時のそれとは雲泥の差である。このほか,アリスがスウェーするときに発生する蝶の色が違ったりもする。




●敵キャラ「インシディアス・ルイン」との戦闘時


 アリスが斬りつけたときのエフェクトに注目すると,ハイ設定時は敵の血が派手に飛び散っているのが分かる。また,敵を倒したあとに地面へと広がる血だまりが,アリスの動きに影響して動いているのも見て取れよう。




●オブジェクト破壊時


 巨大化したアリスがオブジェクトを破壊しながら進むシーン。動画を見比べてもらえば一目瞭然だと思うが,ハイ設定時は地面の壊れるようなエフェクトが追加されている。また,飛び散る破片の量も増えている。



●床に落ちている紙


 床に落ちている紙に注目してほしい。ロー設定だと床に張り付いているが,ハイ設定では,アリスの動きに合わせて動いているのが分かる。なお,動き方によってはちぎれることもあった。




シーンごとのフレームレートを計測

PhysXが多用される箇所は重め


画像集#006のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
 比較の動画を見てもらえば分かるように,ハイ設定時とロー設定時でのPhysX効果の違いは,物理効果の派手さだ。PhysXの効果としては,これまでのゲームで採用されているものと同様といえる。

 ところで,これらハイ設定とロー設定,つまりGPUによるアクセラレーションとCPUによる処理では,どの程度フレームレートに差が出るのだろうか。
 そこで,前出の「グラフィック」メニューから解像度のみを1920×1080ドットに変更したうえで,先ほど掲載したムービーと同じ動きをなるべく再現し,そのときの平均フレームレートを計測してみた。その結果を示したのが下のグラフである。

 ここでは先ほど紹介したムービーのタイトルごとにグラフを並べているが,ロー設定時と比べて,ハイ設定時では平均フレームレートが2〜27%程度低下しているのが分かるだろう。GPU PhysXを利用する場合,PhysXエフェクトが派手になればなるほどGPUへの負荷が大きくなるため,巨大化したアリスが暴れ回る「オブジェクト破壊時」を筆頭に,羽が多く描画されたり,煙の量が増えたりするシーンでフレームレートの低下率が大きい。

画像集#028のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる

 というわけで,今回は久しぶりにGPU PhysXをチェックしてみたが,一目で分かるような効果から,比べてみなければピンと来にくい効果まで,全体的に,「ないよりはあったほうがいいよね」というエフェクトが多かった印象だ。少なくとも,GPU PhysXを使っていないときと使ったときとの間には,はっきり分かる違いが認められる。

画像集#030のサムネイル/GPU PhysX対応のPC版「Alice: Madness Returns」。その物理エフェクトをプレイムービーでチェックしてみる
 しかし,GPU PhysXを有効にするとフレームレートが落ち込むのも事実である。本作の推奨GPUは,「GeForce 7600 GS」または「ATI Radeon X1650」以上となっているのだが,さすがにこのクラスだとGPU PhysXを利用するのは厳しいと思う。実際,今回のテストで用いたGeForce GTX 580でも,解像度1920×1080ドットでハイ設定を選択したときは,PhysXエフェクトを多用しているシーンにおいて,瞬間的ではあるもののフレームレートが40fps台まで落ちることがあったりしたので,相応のGPU性能は必要と見るべきだろう。 ゲーム機版でもないのに標準で30fpsのフレームキャップがかかっているのは,GPU PhysXが想定されているからなのかもしれない。

 最後におまけとして,「死刑執行人」との戦闘シーンを動画で掲載しておこう。こちらの動画はPhysxオプションをハイ設定にした状態で撮影している。Alice: Madness Returnsの世界観を感じ取ってもらえれば幸いだ。


「アリス マッドネス リターンズ」公式サイト

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