テストレポート
PhysX with Mirror’s Edge(後編)〜ベンチマークテストで明らかにするGeForce PhysXのパフォーマンス
→PhysX with Mirror’s Edge(前編)〜プレイムービーで比較するPhysXの効果
ベンチマークテストには英語版1.0.1を用意
GeForce GTX 260&9800 GT,そしてSLI PhysXで検証
さて,テストに当たって,一つお断りしておくことがある。それは,「ベンチマークテストには日本語版ではなく,1.0.1パッチを適用した英語版を利用する」ということだ。
前編でもムービーでお届けしているとおり,今回の検証に当たって,4GamerはEAの日本法人であるエレクトロニック・アーツの協力で日本語版製品ROMを入手済み。しかし,発売前であるためか,テスト開始時点の2009年1月19日では,Mirror's Edge公式サイトで公開されている,アジア版ROM用の1.0.1パッチを正常に適用できなかった(※日本時間1月21日夜の時点で,公式サイトにあるパッチへのリンクがアップデートされていた。後ほど,パッチに関しては続報をお届けしたい)。
一方,NVIDIAは全世界のレビュワーに向け,「PhysXを有効にした状態でベンチマークテストを正しく実施するには1.0.1パッチの適用が必須」という情報を提供しているため,今回の措置に至った次第である。
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EAH4870/HTDI/512M リファレンスデザイン採用のHD 4870カード メーカー:ASUSTeK Computer 問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp 実勢価格:2万9000円前後(2009年1月22日現在) |
このほかテスト環境は(一部,前編でも紹介してるが)表のとおり。GeForce用グラフィックスドライバには,北米時間2009年1月16日に発表された公式β版で,Mirror's Edgeへの最適化が謳われる「GeForce Driver 181.22 Beta」を用意した。本バージョンでは,公式最新版PhysX System Softwareである9.09.0010が統合されている。
Mirror's Edgeには,「Flythrough」テスト――いわゆるFlyby――も含まれており,Mirror's Edge実行ファイルのショートカットに「-FlybyFlight」というオプションも用意されているが,今回は実際のゲームプレイにおけるPhysX負荷を見るため,
- チャプター1「フライト」チェックポイントB(以下,Flight B)
- チャプター3「ヒート」チェックポイントB(以下,Heat B)
という,二つのシーンを試すことにした。
Mirror's Edgeにはリプレイが用意されていないので,当該チェックポイントを何度かプレイし,ほぼ安定して同じように動けるようになったこと,そして,複数回のプレイで得られた平均フレームレートの誤差が1fps以内に収まったことを確認してから,スコアを取得することにしている。
(日本語版Mirror's Edgeで撮ったものになるが)Flight BとHeat Bのプレイサンプルはそれぞれ下のムービーで示したとおり。だいたい,こんな感じでテストプレイしていると捉えてほしい。
SLI PhysXの効果は高く,GTX 260も健闘
9800 GTは低負荷環境ならPhysXが使える
前置きが長くなったが,テスト結果を見ていくことにしよう。まずグラフ1,2は,Flight Bにおける標準設定,高負荷設定時の平均フレームレートをそれぞれまとめたものだ。9800 GTに対して,GTX 260のスコアは,負荷の低い1280×1024ドット,標準設定でこそ6%程度の差しかつけられていないものの,それ以外では20〜50%と,描画負荷が上がれば上がるほど大きなスコア差を付けている。
また,「すでにPhysX対応GeForceを持っている人が,より高性能なもう1枚を購入し,前者をPhysX用にしてSLI PhysXを構築する」というシナリオ――NVIDIAはこれを「Double Up」と呼んでいる――では,GTX 260+9800 GTのSLI PhysXが,9800 GTに対して39〜86%と,ここでもスコアの差はかなり大きい。
参考までに,GTX 260とHD 4870に関しては,PhysX無効時のスコアを取得し,[PhysX無効]と付記しつつ併せて掲載しているが,高負荷設定の1680×1050ドット以上では,GTX 260+9800 GTが,PhysX負荷がかかっている分にもかかわらず,GTX 260[PhysX無効]と変わらないスコアを叩き出している点に注目したい。ちょっと乱暴な言い方になるが,PhysX負荷を,SLI PhysX動作する9800 GTがうまく吸収できている印象である。
ところで,HD 4870のスコアはぱっと見,明らかにおかしい。1280×1024ドットにおけるスコアは平均77.0fpsで,「PhysXアクセラレーションが効かず,PhysXがソフトウェア(=CPU)処理になるハンデがある」ことを踏まえれば,十分にがんばっているといえそうだが,にもかかわらず,ほかのテスト条件ではスコアを取得できていないからだ。この理由は後述する。
続いてHeat Bにおける結果をまとめたのがグラフ3,4。Flight Bと同じような結果になっているHD 4870をさておくと,Heat Bでは,描画負荷の高まりによって全体的に低めのスコアにこそなっているものの,傾向そのものにFlight Bとの違いはない。GTX 260+9800 GTによるSLI PhysXが,9800 GTに最低でも50%以上のスコアをつけているのが特徴的といえば特徴的だろう。
さて,HD 4870ではなぜスコアが取れていないのか。それを明らかにするのが,テスト中のフレームレート推移を示したグラフ5である。
グラフは,Flight BにおいてHD 4870のスコアを取得できた1280×1024ドット,標準設定のもので,横軸は経過時間を示すが,上に示したムービーで,物理シミュレーションによってガラスが割れる処理が始まる16秒経過時点以降,HD 4870のフレームレートは1桁台,具体的には6〜8fpsを示す。シーン中でPhysXが使われていない部分,少なくとも序盤は,HD 4870[PhysX無効]と遜色ないスコアを示していたりするため,「平均」フレームレートは70fpsを超えてくるが,実際には,ほとんどゲームになっていないのだ。
はっきりいうと,このスコアは,何回かチャレンジしてやっと取れた,奇跡のようなものである。実際にはこのフレームレートだと,ジャンプのタイミングなどがうまく取れず,まごついている間に敵に囲まれ終了,といった具合になってしまう。
その証拠……というわけではないが,Heat Bでは,最低で3fpsまで低下した状況にあって,「通路中央の小物(?)を台にして大ジャンプで上の階に登る」ことが最後までできずに断念した(グラフ6)。その意味では,グラフ3の平均44.8fpsというスコアも,ほとんどN/Aのようなものである。一応,PhysXはCPUでも動作することになっているが,Mirror's Edgeに関して,GeForce PhysXを用いずにソフトウェア処理する“CPU PhysX”ではプレイできないと断じて差し支えない。
GeForceシリーズのフレームレート推移も見てみよう。グラフ7,8は,Flight B,Heat Bの,それぞれ1920×1200ドット,高負荷設定時におけるフレームレート推移を示したものだが,まず9800 GTに関していうと,高負荷環境では「プレイできないレベルではない」といったところ。シーンによってはかなりカクつくケースもあったので,解像度やグラフィックス設定にはある程度の妥協が必要だろう。低負荷環境なら「多少カクつく局面はあるが,十分プレイ可能」というレベルになる。
GTX 260だが,今回のベンチマークテスト結果を見る限り,あえてSLI PhysXを組む必要のないスコアが出ているといえる。ただ,GTX 260+9800 GTだと,最低フレームレートが高めなのは間違いないので,「最近GTX 260クラスのGPUを導入した結果,GeForce 8世代のGPUが余ったりした」ような人だと,SLI PhysXを試すだけの価値はあるともいえそうだ。
最後に念のためお断りしておくと,グラフ5〜8でベンチマーク終了までの時間が異なるのは,文字どおりクリアタイムが異なるからである。
PC版Mirror's EdgeをプレイするならPhysXは必須
この動きは果たして広がるや否や?
さて,後編のテーマとなったGPU負荷に関して述べると,2009年1月時点におけるミドルクラスのGeForceであれば,いくつか条件はつくものの,PhysXを有効にしても,おおむね快適にプレイできるだろう。高解像度で,高いアンチエイリアシング&テクスチャフィルタリングを適用するような局面だと,ハイエンドGPUが“効く”が,これはまあ,PhysX非対応のタイトルと同じである。
従来のNVIDIA SLIとは異なり,PCI Express x16スロットを2本搭載するマザーボードであれば基本的に利用可能と,SLI PhysXのハードルは低い。それだけにNVIDIAには,大いなる第一歩と呼んで差し支えないMirror's Edgeに続く,「SLI PhysXを構築するだけの価値があるタイトル」が次々と登場するよう,デベロッパやパブリッシャのサポートを積極的に行うことを期待したいところだ。
厳しいことをいえば,それができない限り,SLI PhysXは「技術的に面白い」止まりになってしまうだろうし,PhysXの将来も開けてはこないだろう。
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