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NVIDIAのテクニカルマーケティング担当に聞く,3DメガネとPhysX,そしてPower Pack 2
Jeff Yen氏(Technical Marketing Manager, APAC, NVIDIA) |
「もはやグラフィックス処理だけでは十分じゃない」と主張するスライド |
……正直なところ,その多くは先に秋葉原で開催されたエンドユーザー向けイベント(関連記事)と被っていたが,それでもいくつか新情報や,氏の見解を聞き出すことができた。今回は,そのあたりをかいつまんで紹介してみることにしたい。
ハイエンドゲーマーをターゲットに
投入される「3Dメガネ」
NVISION 08のレポート#09中でちらっと触れた,「3Dゲームの立体視環境」を憶えているだろうか。これは,
- 液晶シャッター方式の3Dメガネ
- プレイヤーとディスプレイの距離から,左右の像のブレを調整するUSB接続型センサーユニット
- いわゆる倍速駆動(120Hz)表示に対応したディスプレイやテレビ
3Dメガネ。センサーユニットとセットで販売されることになるようだ |
垂直60Hzで2系統同時に描画するため,立体表示を有効化させた状態を3Dメガネなしで見ると,画面は2重にブレた印象となる |
まず,対応GPUは「GeForce 9800 GT」以上。3D画面を60Hzずつ,二つ同時に出力することになるので,パフォーマンスの低下が気になるところだが,Yen氏いわく「どれくらい低下するかはタイトルによる」。とはいえ,(GeForce 9800 GT以上の)ハイエンドGPUであれば,プレイしていて気になるレベルの落ち込みはないはずとのことだった。
また,ゲームタイトルの“3D化”は,グラフィックスドライバ側で行うため,ゲームプログラム側で特別な対応が必要ないことも,氏は強調する。
「最初のターゲットとしてはゲーマーを想定している。とくに,400ドルのGPUや,1000ドルのCPUを購入するようなエンスージアスト(※筆者注:日本でいうところのハイエンドゲーマー/ユーザー)だ。こういった人達にとって,価格の大小は問題ではない。欲しいかどうかで購入を決定するだろう」(Yen氏)
というわけで,発表後,一気に普及させるのは難しいと,やはりNVIDIAも考えているようだ。立体視を抜きにしても,PC用ディスプレイの120Hz駆動にメリットがあるのは明白。Yen氏は,現時点でViewSonicとSamsung製しか存在しない120Hz駆動対応ディスプレイが,今後増えていく見通しを示していたが,3Dメガネが普及するかどうかは,そもそも120Hz駆動対応ディスプレイの動向にかかっていそうである。
PhysXは対応タイトルと対応環境に強み
GeForce Power Pack 2は「まもなく」
――PhysXはGPU上で,3Dレンダリングと並列的に処理されるのか?
Yen氏:答えはYesであり,Noでもある。GeForceでは,複数のStreaming Processor(以下,SP)が固まり(Cluster)を成しているが,例えば16SP構成の「GeForce 9400M」だと固まりは4セットある。このうち,「3セットが3Dレンダリング,1セットがPhysX処理」といった具合に並列処理可能だ。ただし,一つのセット内にあるSPを3DレンダリングとPhysX処理に分けることはできない。
――GPU内にClusterをいくつPhysX処理に用いるかは,どうやって決定されるのか?
Yen氏:PhysX処理に利用されているGPUは,グラフィックスドライバによって認識され,「そのうちどれくらい使うか」は,状況に応じてドライバが決定する。ただし,ゲームタイトルによっては,「どれくらい使うか」が決め打ちされている場合もある。
――歴史上,GeForceとATI Radeonの双方からサポートされなかったゲーム関連技術で,広く使われたものはない。PhysXはどうやって標準化を果たしていくのか?
Yen氏:よく,「Havokは400タイトルに対応しているのに対し,PhysXはわずか150タイトルしかサポートされていない」と指摘される。この数字を根拠に,いかにPhysXが標準的でないかを言う人もいるが,これは決定的に誤りだ。150タイトルというのは,NVIDIAから直接ライセンスされている数に過ぎない。
PhysXは,著名なゲームエンジンであるUnreal Engine 3やGameBryo 2.5に組み込まれており,これらを利用したゲームタイトルにおいては,すでに標準の物理エンジンとして利用されている。インストールベースは,PhysXが一番だ。PhysXの普及については,正直,楽観視している。
――しかし,ATI Radeonでアクセラレーションが効かないのは事実だ。これはゲームデベロッパを躊躇させるのではないか。
Yen氏:PhysXはGPUだけでなく,CPUでも動作する。CPUでしか動かないHavokよりも,むしろ,より多くの環境で最適に動作するエンジンといえる。
風で木が揺れるのをイメージしてほしい。Havokだと,どんなGPUを搭載していても幹が揺れるだけだが,PhysXでは,まず幹が揺れ,GeForce搭載環境なら枝葉も揺れるのだ。
――PhysXといえば,ドライバとデモ,ゲームをひとまとめにした「GeForce Power Pack」がある。9月のリリースで「第2弾は10月」という旨の発言を行っていたが,あれはどうなったのか?
Yen氏:GeForce Power Pack 2は「まもなく」(Soon)登場する。
Yen氏:詳細は語れないが,「Warmonger 2.5」(※筆者注:初代GeForce Power Packではバージョン2.1だった)と,「Crazy Machines 2」のPhysX対応版が含まれる予定だ。また,ここまでに行われたPhysX関係のバグフィックスも,もちろん反映される。
――今後も定期的にGeForce Power Packはリリースされるという理解でいいのか?
Yen氏:そうだ。GeForce Power Packが好評だったので,今後も続ける。
まだまだ対応タイトルが少なく,そもそも,発表されているタイトルすら出揃っていない現実もあるPhysX。重箱の隅を突けば,すべてのUnreal Engine/GameBryo採用タイトルがPhysXをサポートしているわけでもなく,Yen氏の話にツッコミどころが存在するのは確かである。
とはいえ,GeForce Power Pack 2のCrazy Machines 2など,より多くの人がPhysXの効果を確認できるようにする試みがなされている点は大いに歓迎できるところ。今後も,期待しつつ見守っていくだけの価値はありそうだ。
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