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映画界,テレビ界,そしてゲーム界の代表が歴史創作の実情と魅力を語る,「国際クロスメディアシンポジウム」レポート
具体的には,歴史(戦国時代)を扱った小説,アニメ,マンガ,そしてゲームなどを総称して“歴史創作”もしくは“歴史創作コンテンツ”と呼び,それらが展示されたり,来場者が戦国時代風コスプレを楽しんだり,戦国関連グッズが販売されたりと,とにかく戦国時代モチーフ好きにはたまらない催しになっているわけだ。
さて,この記事でレポートするのは,その中の一イベント「国際クロスメディアシンポジウム」だ。このイベントには,「歴史創作の魅力を探る 〜アジアンエンタテインメントの展望〜」という副題がつけられており,これを声に出して読めばきっと誰にでも想像がつくように,歴史に関する作品/創作活動の魅力をさまざまな有識者が探るという構成となっている。
イベントとして面白そうな内容ではあるが,あくまで“PCゲーム専門の情報サイト”である4Gamerが,スタッフを京都に派遣してまでこれを記事にするのには,理由がある。登壇する人が,実に魅力的だからだ。
ところがこの金庸氏,持病のある心臓の調子が思わしくなく,ドクターストップにより突然来日がキャンセルに。大の親日家として知られる同氏だけに,かなり残念な思いをしているようで,このイベント用に長文の原稿を寄せただけでなく,直筆でのメッセージ(をコピーしたもの。右の画像参照)を,来場者全員に渡すようお願いしたという。
当然,金庸氏を目当てに来場した人も多かったようだが,その代わり,香港天地図書副総編集長の孫 立川(ソン・リンセン)氏や,金庸氏をはじめとする中国文学の権威として知られる早稲田大学教授の岡崎由美氏が登壇し,金庸作品の魅力や秘密について語ってくれた。
そのほか,映画「茶々」のヘッドプロデューサーを務める,東映株式会社常務取締役の坂上 順氏,NHKのドラマ番組チーフプロデューサーで,大河ドラマ「風林火山」の制作統括を行っている若泉久朗氏,そしてこの6月にコーエーの社長に就任したばかりの松原健二氏が,それぞれ映画界,テレビ界,ゲーム界を代表して登壇。メディアは違えど,同じ歴史物を扱っている3人が,それぞれの立場から歴史創作の魅力や苦労,今後の展望などを語った。なおモデレータを務めたのは,立命館大学 映像学部 副学部長の,細井浩一教授だ。
ではイベントの進行順に,その模様をお伝えしていく。松原氏の話以外は,基本的には小説や映画,テレビ番組の話ではあるのだが,どれも,どこかでゲームと通じているように感じられる,4Gamer読者にとっても興味深い内容になっているはずだ。
金庸氏の寄稿を孫氏が代読
孫氏は最初に,“武侠小説”の歴史と,その解説を行った。その詳細はここでは割愛するが,「中国人がいるところでは,必ず金庸氏の小説がはやっている」と言われているという逸話や,トウ小平(トウは,登におおざと)をはじめとする著名人にも金迷が多いこと,彼の小説がすでに数億冊印刷されていること,金庸氏の作品のテレビドラマ版が高い視聴率を稼ぎ出していること,そして今ではオンラインゲームや携帯電話用ゲームにも進出していることなど,いかに金庸氏の作品が,世界中で愛されているかを語った(なんと,金庸氏作品のキャラクターを扱ったテーマパークの計画もあるそうだ)。
続いて孫氏は,金庸氏がこのイベントのために用意した原稿を,代読した。ちなみに,金庸氏と親交の長い孫氏によれば,武侠小説について金庸氏が書いたものとしては,ここ数年で最も長い原稿だろうとのこと。ここでは,その概要を紹介しよう。
金庸氏の小説は,英語,ドイツ語,フランス語,イタリア語などにも訳されているが,しかしながら西洋の読者には,それほど評判が良くないという。逆に,日本語版,韓国語版,タイ語,ベトナム語,マレーシア語版は,大変人気があるそうだ。これについて金庸氏は,東洋の読者の文化的背景が,中国人のそれと大変近いからではないだろうか,と推測する。これは,昨今のゲーム業界の状況にも通じるところがありそうである。
西洋の歴史物語に登場するヒーローといえば,騎士(Knight)が一般的だが,彼らは教会や宗教,そして王様などのために尽くす。ところが東洋の歴史物語,とくに武侠物では,周囲の弱きもののために力をふるう,「侠」がヒーローとなる。このあたりに,文化的背景の違いを見いだせそうだ。
また金庸氏は,西洋の歴史小説は,一般に,東洋の読者から見て面白くないと斬る。というのも,騎士の物語はたいてい,現実的かつ実際的で,物語的魅力に欠けているというのだ。
武侠物では,基本的に,最後には正義と公正が守られ,悪人が敗れる。これは,庶民が,あまりに不公平なことは起きてほしくないと望んでいることの反映だという。日本における,源義経がチンギス・ハーンとなったとする俗説や,水滸伝の英雄達が生まれ変わって活躍する後水滸伝なども同じで,すべて庶民の,最後には(彼らの考える)“善人”が勝利するべきだという願いを反映する形で生まれたというわけだ。氏の第1作「書剣恩仇録」のベースとなっている,清朝の乾隆帝が,実は満州人ではなく漢民族であったという民間伝承も,同じ感情から生み出されたものだろう。
このように氏は,歴史小説は,歴史ではないという事実を,あらためて強調した。中国では「三実七虚」という言葉があるそうだが,つまり歴史小説の場合,30%が真実で,70%は創作によるもの。有名な「三国志演義」の中にもたくさんの虚構があることなどについて触れ,東洋の歴史創作物が,いかに“作者”の創意工夫で面白くされてきたかを説明していた。
金庸作品の魅力とは? 岡崎/孫氏対談
岡崎氏のところに,この対談の依頼が来たのは,なんと前日のことという。金庸氏の病欠が決定したのがさらにその前日のことだから仕方がないわけだが,それでも岡崎氏は引き受けたのだから,さすが日本一の金迷といったところである。
孫氏と岡崎氏は,もう20〜30年来の友人だという。そういうわけで,終始かなり和やかな雰囲気の対談となった。
まずは,直前に行われた,金庸氏の寄稿の代読が話題に上がった。岡崎氏は,これまで金庸氏が講演にあたって原稿をあらかじめ用意してきているのを,見たことがないという。ところが,常に近くで金庸氏を見てきた孫氏も同じとのことで,「金庸さんは,いつも即興で講演しているはずです。前回の講演でも,原稿のようなものはありませんでした。金庸さん本人が書いた原稿は,私もここ数年で初めて見ました(編注:金庸氏は作家を引退して30年以上経つ)」という。いかに金庸氏が,今回の講演に熱意を持っていたかがよく分かるエピソードである。
続いて,金迷の層の話題に。金庸小説では,十代の若者が主役になることが多い。そこで日本では,同じ若い世代を中心に人気を獲得しているが,それは中国でも同じか? という質問を岡崎氏が孫氏に投げかけると,「ええ,ここにいる人達もみんな若いですしね。私達も含めて(笑)」と孫氏。ただし,中国では老若男女に関係なくファンがいて,先ほど名前が挙がった故・トウ小平氏は,毎日金庸の作品を読んでから寝ていたというし,台湾でも,故・蒋経国氏や陳水扁氏らなど,金迷を自称する政治家が多いと説明した。
それに対し岡崎氏は,それぞれの層で,金庸の小説の見方が違うのかと質問。どうやら多少は違いがあるようで,孫氏によれば,若い人は,美形のキャラクターをとくに好むという。また,「日本のファンもそうですね」と付け足していた。
そこで,岡崎氏のこの質問である。「今後,金庸氏を超える人が出てくると思いますか?」。現時点では,金庸氏を超える才能はいないというのが,孫氏,岡崎氏共通の認識であるようだ。孫氏は,武侠小説を書くには,歴史の情報,例えば天文,地理,漢方,武術,自然などについてたくさん知らないといけないと話す。金庸氏は,中国の文化の宝庫のような小説を書いている。同じレベルの作品を書くのは,並大抵のことではいかないというのだ。
しばらくの間は,まだ金庸作品の人気が続くだろうと孫氏は予測。現代においても,金庸作品は映画,テレビドラマ,アニメーション,マンガ,そしてゲームとして,新たに創造されている。また,とくに金庸氏の作品は,こういったクロスメディア(トランスメディア)展開に向いているという。「魯迅の小説では,カンフーのゲームは作れないでしょう?」(孫氏)。
金庸氏の小説が,若い人にも好まれるのは,こういった,新しいメディアとの親和性の高さもあるのかもしれないと,孫氏の解説は続く。今後は,「金庸小説から金庸ゲームに入る人もいれば,その逆の人もたくさんできるでしょう」(孫氏)。
とはいえ,やはり,武侠作品の今後の発展のためには,金庸氏の跡継ぎを作らなければならない。孫氏は,「武侠作品が今後も存在していけるのかどうかを心配する人もいるが,金庸氏を目標に,若い作家がたくさん出てきている。なかには女性もいるんですよ」と話す。「今後,その中から金庸氏に並ぶ,もしくは超える大作家が出てきてほしい」と二人の意見が一致したところで,対談は終了となった。
東映 坂上氏の講演。日本映画が戦略的に後れを取った理由
そんな坂上氏がいの一番に話したのは,なんとこの「国際クロスメディアシンポジウム」への苦情(?)。なんでも,戦略的コンテンツ,歴史創作コンテンツについて語ってほしいという依頼だったそうなのだが,「細井先生には申し訳ないが,コンテンツと言われると,映画を作っている人間は,横を向く」。作り手達は,作品の大小にかかわらず,どこかで命を削って作っている。そのため,「コンテンツを作るよ」と言った途端,彼らのモチベーションが下がってしまうというのだ。山田洋次監督が「私はコンテンツを作った覚えはありません」と話した逸話を取り上げつつ,コンテンツという言葉に対する嫌悪感について語った。
これは,日本の映画制作者達のプライドの高さを示しているわけだが,しかし,それは同時に,日本映画界が世界戦略で後れている理由かもしれないと,坂上氏は続けた。
ここから,映画を作ることに関する苦労話が続いたのだが,ここでは省略。なぜ日本映画が,ハリウッドだけでなく,中国や韓国の映画にも後れを取ったのかという分析が実に興味深く,かつゲーム業界にも一部あてはめられると感じたので,紹介しよう。
昔,中国で日本映画がヒットした時代があった。そのときは,カラーでワイドというだけで4億人が映画館に入ったというが,その日本映画を観たチャン・イーモウ氏が,今では「Hero」という,世界に通用する映画を生み出している。では,なぜ日本映画は,中国に追い抜かれてしまったのか。
中国映画は,映像の技術で日本を超えたという。日本と共通する,言葉の壁や,表情が乏しいという人種の問題を,映像とアクションで超えたのが,中国映画の秘密だというのだ。
また韓国についても,昔はずっと映画後進国だと思っていたのに,いつの間にか韓流ブームになって,東映も韓国作品を買うようになった,と坂上氏。シンガポールなどもそうだが,政府が強力にバックアップしており,投資という形で,映画産業を維持しているそうだ。
そして,分析は自らが所属する日本映画界にも及ぶ。同氏は「映画を作って,それを自国のマーケットで回収できた」ことを,日本が後れてしまった原因の一つとして挙げたのだ。日本の観客だけで,十分食べていけたことが,今としては,マイナスになっているという。
中国や香港,韓国では,マーケットとして世界を見据えていないと,映画は成立しなかった。そのため,香港映画は徐々に世界マーケットを意識した映画作りを始めるし(香港人俳優がみんな英語名を持っているのも,同じ理由だろう),韓国では,どこの国の人でも楽しめる,分かりやすいストーリーの映画が多くなったという。
また,中国と韓国で共通しているのが,クリエイター達を,アメリカに留学させたこと。みんな,ハリウッドなりニューヨークなりで勉強して,自国に戻ってきて映画を作っているのだ。そのため彼らは,英語で映画を作れる。
「しかし,日本には,英語で映画を作れる監督は,本当に少ない」(坂上氏)。
日本のマーケットだけでやっていけるという甘えがあったのかなぁ,と自戒を込めて坂上氏は語っていたが,ゲーム(しかもPCゲーム)業界に属する筆者にとっても,ドキッとする言葉であった。
NHK 若泉氏の講演。大河ドラマの作り方
そもそも大河ドラマが始まったのは,昭和38年のこと。日曜の夜8時くらいには,家族で楽しめる大型歴史ドラマがあっていいじゃないか,ということで始まったこの企画は,しかしかなり苦労することになったという。というのも,まだ映画全盛で,テレビが低く見られていた時代である。当然のように,当時のトップスターは,テレビに出ることを嫌がったのだ。
ところが昭和38年に始まった「花の生涯」には,尾上松縁さん,佐田啓二さん,淡島千景さんといった,当時を代表するスターが出演している。なんと,くどくのに2年もかかったそうだ。
最新の風林火山が,大河ドラマの46作目にあたる。これまで,当然ヒットするもの,しないものがあり,中でも“当たり物”と呼ばれている題材がいくつかあるそうだ。それは,源平物,信長/秀吉/家康の三英雄物,忠臣蔵,そして,まさに風林火山の中心となる「川中島の戦い」だという。視聴率でいうと,一番は昭和62年に放映された「独眼竜正宗」,次はその翌年の「武田信玄」で,実に45%もの数字をたたき出していたそうだ。太秦戦国祭りのメインテーマである戦国物は,やはり大河ドラマにおいても,強い人気を誇っているのが分かる。ゲームにおいても同様であることは,4Gamerの読者には説明するまでもないだろう。
さて,この講演が行われているのは,時代劇の聖地 太秦だが,NHKの大河ドラマは,ずっと東京は渋谷の106スタジオで作られている。
若泉氏が,平成19年の大河ドラマの制作統括を命じられたのは,実に4年前のこと。撮影には13か月が要されていて,106スタジオで42週(週に4日稼働していたというので,単純計算で168日),そしてロケでのべ70日を費やし,前述したように9月28日に撮影が終わったばかり。
さらに話は予算にも及び,1話あたりの予算は約6000万円,全50話で,合計約30億円もの予算がかけられている計算になるという。
素人からすると,十分すぎるほどの予算に思えるが,長期にわたるプロジェクトということもあり,決してそうでもないらしい。というわけでここからは,撮影にまつわる苦労と,その処理の仕方が説明された。
具体的には,6頭しかいない馬や,3隻しかない船を合成で増やす手法や,映っちゃいけないもの(道路や現代の建物など)を消す方法などが解説されたので,ここではそのときのスクリーン映像を掲載しておこう。それぞれの内容は……まぁ一目瞭然だろう。
コーエー 松原氏の講演。歴史ゲームの面白さは,どこにあるか?
まずは,コーエーがどういう会社で,どういう作品を作っているかという紹介や,オンラインゲームとはどういうものかという話があったのだが……4Gamer読者には釈迦に説法だろう。サクッと割愛する。
そして本題に入る。「歴史を題材にしたゲームは,どういう面白さがあるのか」だ。
松原氏は,以下の三つを挙げた。
1・インタラクティブ性
ゲームでは,プレイヤー自身が,擬似的にその世界に入り込むことができる。何かの操作に対して,その結果が,グラフィックスなり,音なり,振動なりで,フィードバックされる。そのため,自分自身がその歴史世界に没入する感覚が強くなるという。
例えば,信長の野望であれば,好きな大名家を思う存分操れるし,三國志であれば,お気に入りの武将となって中国大陸を巡ることもできる。また,その世界を自分の力で統一できてしまう。
これは,確かに映画やテレビにはない魅力である。
2・歴史ifの実現
「歴史の本を読んだときに,もしこうだったら……という想像をしたことが,きっとみなさんにもあるはずです。例えば,もし本能寺の変がなかったら,織田信長が生き延びていたらどうなったか……というのが味わえるのが,歴史ゲームなんです」(松原氏)。
そういったifを,自分の手で自由に生み出せるのが,歴史ゲームの大きな魅力だ。コーエーは,さまざまなifを楽しめるようにゲームを作り続けていると,松原氏は語っていた。
3・魅力的なキャラクターとストーリー
歴史というのは,魅力的なキャラクターと物語の宝庫だ。とくに戦国時代や三国志物が人気なのは,武将やさまざまなエピソードが持つ魅力にほかならないだろう。
プレイヤーは,ゲームを始める前に,ある程度これら武将達やそのエピソードに関する知識があるため,ゲーム内世界にすんなりと入り込める。これは,歴史を題材としたゲームならではの特徴だろう。
そして松原氏は,コーエーが来年で30周年を迎えることに触れ,ここまでコーエーが大きくなったのは,歴史を題材にしたゲームを扱ってきたことが大きいと話した。もちろん今では,それ以外のゲームも増えてきたが,やはり多くの人がコーエーという会社に期待するのは,「もっともっと面白い歴史ゲームを作ってほしい」ということだそうだ。
松原氏は「人類の共有する財産である“歴史”を生かして,今後も,生活を豊かにするエンターテイメントを作っていきたい」と講演を締めくくった。
小説,映画,テレビ,そしてゲーム。クロスメディアディスカッション
ところが,始まった時点ですでに30分ほど時間が押していたのだが,このディスカッションも,非常に長いものとなった。また,まったく打ち合わせなどがなかったとのことで,質問と回答が,どちらもまとまりに欠けている感があったので,ここでは印象に残った話だけを抜き出して紹介する。
そして三つめは,歴史の中には,想像の余地がたくさんあることだ。歴史を緻密に描けば描くほど,そこから,さまざまなイマジネーションが広がってくるのだろう。
「テレビの強みは,その量だと思う」(若泉氏)。風林火山であれば,実に1話45分で50回もやるわけで,これだけあれば,映画では描けないものも描けるというわけだ。1年間を通じてずっと見続けてもらう,非常に大きな物語……歴史を紡いでいく。そこに魅力を感じているという。
確かにこの強みは大きく,細井氏も,「映画の主題歌はなかなか覚えないけど,風林火山の主題歌は,すっかり覚えてしまった」と話していた。
どんなに面白い落語でも,一人で聞いていたら絶対に笑えないと坂上氏。ところが大勢で見ていて,隣の人が笑えば,笑っちゃうというのだ。映画でも同様で,観客の一人が泣き始めれば,みんなつられて泣く。みんなで時間を共有する……これが映画の良さだという。
また逆に,観客一人一人で,受け取り方が違うというのも,映画の魅力という。観客とスクリーンとの間に,もう一つドラマがあるのだというのだ。鉄道員(ぽっぽや)のときに感じたのが,泣いたり笑ったりするところが,観客一人一人で違うということ。映画の中の物語と,観客一人一人の中の物語は,別の物で,しかしつながっているのだという。
また坂上氏は,歴史創作の魅力について,こう語った。歴史を題材にする場合,登場人物と結果はあらかじめ決まっているし,受け手もそれを知っている。しかし,そこの登場人物達が,なぜそういうことをしたのかという部分は,現代の作家が想像して作るしかない。そこに,面白さがあるのだというのだ。
もちろん,受け手(坂上氏曰く「お客さん」)が,この解釈は違うと思うこともあるだろうが,そこにまた一つの物語ができるわけで,これも歴史創作の魅力だと話していた。
オンラインゲームをずっと作ってきた松原氏は,そのコミュニティに注目し,ここに新しい可能性を感じていると話した。オンラインゲームのコミュニティは,いつしか掲示板やSNSなど,ゲーム外にも展開していく。また,オンラインゲームに限らず,さまざまな趣味/興味を持つ人々が,直接の知り合いではない人とも,積極的にチャットや掲示板でコミュニケートしているという現実がある。
こういうことから,ゲームのさらに先には,人と人とを結びつけるコミュニティサービスが,一つのコンテンツとして成長するのではないかというのだ。
これを受けて,若泉氏は,メディアの統一という話題を切り出した。若泉氏曰く,NHKの主な視聴者は60代で,10代は少ないという。ところが風林火山は,10代にも人気だそうで,これを「信長の野望のファンも見てくれているんじゃないか」と,分析(?)。このように,だんだんとメディア間の垣根がなくなって,いずれは融合するのではないかと話し,「織田信長じゃないけど,メディアを統一する天才が出てくる気もしますし,みんなが待ち望んでいる」と締めた。
なんでも,太秦戦国祭りに来ていた,(戦国物の)コスプレイヤー達に話を聞いたところ,彼ら(彼女ら)は映画も観ているし,風林火山も観ているし,ゲームも遊んでいるという。つまり,どのメディアだから好きだ,嫌いだというのではなく,物語や,その登場人物達が好きなわけであって,メディアはなんであっても,彼らは楽しんでいるというのだ。
もちろんこのあたりは,終始和やかに話され,最後はみんなで,時代劇/歴史物の火を消さないように協力し合っていこう,といったところで,おしまいとなった。
ところでNHKの若泉氏は,講演の中で「今日(9月30日)の風林火山では,武田と上杉(長尾)が,初めて川中島で戦います。ぜひこれが終わったら,家に帰って観てください」と話していた。筆者は講演終了直後に会場をあとにし,飛ぶようにして帰ったのだが……何せ京都から東京である,家に着いたときには,午後9時半を回っていた。まぁ,BS2では午後10時から放送されているので,なんとか間に合った格好だ。
さて,すでに放送終了後なので,結末を書いてしまうと(“川中島の合戦好き”なら,説明されるまでもなく),決着がつかないままに,この1回目の対決は終了する。
なんとなく,今回講演を行った三者が,それぞれを意識していた(映画とゲームはテレビを,そしてテレビはその両方を)ように感じていた筆者は,今回のパネルディスカッションと同じだなぁという感想を抱いた……なんて話は,さすがに蛇足だろう。そもそも,映画,テレビ,ゲームという三つのメディアの話を,竜虎の激突と比べるのは無理がある。
と思っているうちに,次回の予告が流れた。ちなみに次回のタイトルは,「三国同盟」である。
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