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[COMPUTEX]スマホで耳と顔の写真を撮るだけで,あなたのためにヘッドフォンのサウンドをフルチューン!? Creativeの新技術「Super X-Fi」を聞いてきた
この一見魔法のような技術「Super X-Fi」を開発したのは,Sound Blasterシリーズで知られるCreative Technology(以下,Creative)だ。同社がSuper X-Fiを発表したのは2018年1月のことだが,COMPUTEX TAIPEI 2018の会場では招待制でデモを行っており,筆者もそれに参加できたので,果たしてこれは何なのか,そしてゲーム用途で可能性があるのかといった部分をお伝えしたい。
スマホ&AI。非常にキャッチーなキーワード満載のSuper X-Fi
Super X-Fiの利用にあたって絶対的に必要となるのは,AndroidおよびiOSスマートフォン用のアプリ「SXFI App」と,USB Type-C接続の小型サウンドデバイス「Super X-Fi hardware dongle」(仮称,以下 Super X-Fiドングル)だ。
そしてSuper X-Fiでは最終的に,この多次元マップ上へホログラフィのように仮想的なマルチチャネルスピーカーセットを配置する。結果として,ユーザー個人に最適化された仮想的なマルチチャネル再生システムがヘッドフォンの中で完成するという仕掛けである。
Super X-Fiドングルは内部にCreative独自開発のSoC(System-on-a-Chip)「X-Fi UltraDSP」を搭載。Creativeの従来SoC――おそらく「Sound Core3D」――に対して演算能力とデジタル信号の処理能力は5倍に達し,最大8chの24bit 96kHz出力と100dB以上のS/N比を実現しているという。8ch出力対応ということなので,今後はCreativeのほかの製品でも搭載されることになるのではなかろうか。
なお,ここまでの説明を読んで,Super X-Fiはスマートフォンでないと利用できそうにないと思うかもしれないが,デモ機はPC上で動作しており,実際,PCもサポート対象になるようだ。変換ケーブルさえ用意できればゲーム機でも利用可能とのことである。
デモ会場では大がかりな上位版のデモを体験
繰り返しになるが,Super X-Fiは基本的に「写真を撮るだけ」でユーザーに最適化されたバーチャルサラウンドサウンドを聞くことができるというソリューションである。ただSuper X-Fiにはもう1つ,マイクで室内の反響などを測定してその結果も組み入れる上位版とでも言うべきソリューションもあり,デモ会場で体験できたのはこの上位版のほうだった。
デモ会場には,ハイトスピーカーをリスナーのほぼ真横に置くという変則的な5.1.2chスピーカーセットが置いてあり,リスナーは(耳と顔の写真を撮ってから)あらかじめ決められた席に着席のうえ,耳の穴に取り付けるタイプのマイクを装着する。この状態でスピーカーから音源移動も含むさまざまなノイズを出力し,マイクで集音して,その結果もマージするというわけだ。
画面の撮影は許可されなかったが,体験中は専任のスタッフがずっと測定ログを追っていたりしたので,おそらくこの上位版は,「すごさ」をアピールするための専用版なのだろう。
そういうわけなので,“素の”Super X-Fiを体験できたわけではない。その点は誤解のないようお断りしておくが,今回筆者は,Dolby LaboratoriesによるDolby Atmosのデモムービーと,Dolby Atmosに対応する「Overwatch」のデモシークエンス,映画のデモクリップ,ステレオの音楽ソースを2chのアナログ接続型密閉型ヘッドフォンと組み合わせて聞くことができた。
また,これは当然と言えば当然なのだが,物理的な距離のあるスピーカーと比べて,耳の近くにスピーカードライバーがあるため,ノイズ感が圧倒的に少なく,音は非常にクリアだ。ダイナミックレンジは5.1.2chスピーカーセットと比べて明らかに広く,それでいて音場は5.1.2chスピーカーセットと同等の広さに感じられる。
Super X-Fiにヘッドトラッキング機能はないため,頭を動かすとバーチャルなスピーカーも動き,ステレオ再生時だと常に顔の正面から聞こえてくるが,それほど違和感はなかったことも付記しておくべきだろう。
シンプルで効果的なSuper X-Fi。通常版のデキと遅延次第ではゲーム用途でも?
マイクによる測定なしの通常版が持つ完成度,そして処理遅延次第では,ゲーム用途でも十分に使える可能性を感じた。国内発売の楽しみな新製品だと言えそうだ。
※2018年6月12日追記:
CreativeからAI engineと対応プラットフォームに関する情報のアップデートが得られたため,記事を更新しました。
CreativeのSuper X-Fi紹介ページ(英語)
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