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Android搭載小型ゲーム機「Odin Pro」を写真でチェック。ゲームパッドが想像以上の出来栄えだ
Odinは,約5,98インチサイズで解像度1920×1080ドットのタッチ対応液晶ディスプレイの左右にゲームパッドを備えた,Nintendo Switch(以下,Switch)風のデザインを採用している。2021年11月に国内発売となった小型ゲーム機「GPD XP」と,同じカテゴリの製品という理解でいいだろう。
Odinは,Indigogoにてクラウドファンディングキャンペーンを開始し,日本円で約1億5500万円の出資を集めるほどの人気を得た。最近になって出資者に製品が届き始めているようだ。
ただ,Odinは日本の技術基準適合証明(以下,技適)を取得していないため,国内での利用は原則としてできない。また,個人で総務省による「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を利用する方法もあるが,申請に必要な米国や欧州の技術基準適合証明マークなどがOSの設定からも確認できず,こちらも難しそうだ。
Odinは,搭載SoC(System-on-a-Chip)やメインメモリ容量,ストレージ容量の違いにより,ベースモデルのほかに,上位モデルの「Odin Pro」と下位モデルの「Odin Lite」という3製品をラインナップする。本稿で取り上げるのは,最上位のOdin Proだ。
各製品のスペックとIndigogoでの標準価格を以下の表にまとめた。
製品名 | Odin Pro | Odin | Odin Lite |
---|---|---|---|
メーカー | shenzhen ayn technologies | ||
OS | Android 10 | Android 11 | |
ディスプレイパネル | 約5.98インチIPS液晶,解像度1920×1080ドット | ||
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 845」 ・CPUコア:Kryo 385(2.8GHz) ・GPUコア:Adreno 630 |
MediaTek製「Dimensity 900」 ・CPUコア:Cortex-A78×2(最大2.4GHz),Cortex-A55×6(最大2GHz) ・GPUコア:ARM Mali-G68 MC4 |
|
メインメモリ容量 | LPDDR4x 8GB | LPDDR4x 4GB | |
内蔵ストレージ容量 | 128GB | 64GB | |
無線LAN | Wi-Fi 5 | Wi-Fi 6 | |
Bluetooth | 5.0 | 5.2 | |
外部インタフェース | mini HDMI(バージョン未公開)×1,USB 3.1 Type-C×1,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子 | ||
スピーカー | 1W+1W | ||
バッテリー容量 | 6000mAh | 5000mAh | |
公称本体サイズ | 224(W)×95.22(D)×27.5(H)mm | ||
公称本体重量 | 未公開 | ||
価格 | 2541香港ドル |
2183香港ドル |
1860香港ドル |
表を見ると分かるように,上位モデルのOdinやOdin Proよりも,下位モデルであるOdin Liteのほうが,搭載OSや通信機能の規格が新しいという逆転現象が起こっている。これは搭載SoCの世代に起因するものだろう。OdinやOdin Proが採用する「Snapdragon 845」が2017年に発表となった古いSoCであるのに対して,Odin Liteに搭載する「Dimensity 900」は,2021年5月に登場した最新世代の製品となっている。その分,新しいOSや通信規格に対応可能だったというわけだ。
Switchよりもコンパクトで持ちやすい筐体
前置きはこれくらいにして,Odin Proの外観を見ていこう。
第一印象は,「想像していたよりも小さいな」というものだ。最近は「AYA NEO」や「ONEXPLAYER」といった小型ゲームPCに触れる機会が多いのだが,それらよりもかなりコンパクトである。本体サイズは実測で223(W)
重量は実測で365gと,8インチ級タブレットよりも少し重い程度である。小型ゲームPCの場合,長時間にわたって持ち続けるにはつらい製品が多いのだが,Odin Proはそれほど苦にならなそうだ。
ディスプレイは,約5.98インチサイズで解像度1920×1080ドット,アスペクト比16:9のIPS液晶パネルを採用する。最近のスマートフォンでは,20:9や19.5:9といったアスペクト比のパネルを採用するケースが主流となっているのだが,そうした製品に比べると,長辺が少し短い。
ディスプレイの最大リフレッシュレートは,60Hzである。スマートフォンでも最大リフレッシュレート90Hzの製品が増えてきたことを踏まえると,少し見劣りする感じは否めない。ただ,スマートフォン向けゲームで60Hzを越える高フレームレートに対応したタイトルはそれほど多くない。普通にゲームをプレイするのならば,大きな問題にはならないだろう。
インタフェース類は,筐体の上側面にmini HDMIとmicroSDカード(表記はTF Card)スロットを備え,下側面にDisplayPort Alternate Mode対応で映像出力にもなるUSB 3.1 Type-Cと4極3.5mmミニピンヘッドセット端子を搭載する。ヘッドセットとの接続や充電用コネクタはすべて下側面にあるので,持つときにケーブルが邪魔になりにくいのがポイントだ。
なお,Odinシリーズには,別売りのドッキングステーションとなる「Super Dock」があり,これとの接続にUSB 3.1 Type-Cを使用するという。
上側面にmini HDMIとmicroSDカードスロットを搭載する |
下側面にUSB 3.1 Type-Cと4極3.5mmミニピンヘッドセット端子を配置する |
また,下側面の左右端にはスピーカー孔がある。手で孔をふさぐことがないので,ゲーム内の音声も明瞭に聞こえるのは利点だ。ただし,筐体がコンパクトな分,スピーカーユニットも小さくなるので,音そのものは細い。サウンドも楽しむなら,ヘッドセットを使ったほうが良いだろう。
使いやすいゲームパッドはOdin Proの見どころだ
ディスプレイの左右に備わるゲームパッドは,左奥に左アナログスティック,右手前に右アナログスティックを備えたXbox風レイアウトを採用しており,違和感なく操作できる。ディスプレイの右側には,Androidのホーム画面に戻る[HOME]ボタンや,ゲームで利用する[SELECT]ボタンと[START]ボタンも備えている。
また,上側面に[L1/R1]ショルダーボタンとアナログ入力に対応した[L2/R2]トリガーボタン,背面に[M1/M2]ボタンを備えている。
なお,海外のフォーラムなどでショルダーボタンやトリガーボタンの入力が認識されにくいという声がいくつか挙がっているのだが,今回の検証機では問題なく操作できている。個体差やロット差があるのかもしれない。
必要十分な機能を備えた独自ソフト「Odin Launcher」
ハードウェア面に続いて,ソフトウェアにも触れよう。Odin Proは独自ユーティリティである「Odin Launcher」をプリインストールしている。これはゲームのランチャーとして機能するだけでなく,アナログスティックのキャリブレーションやトリガーボタンの設定,本体左右の側面とアナログスティックの周囲に組み込まれたLEDの点灯/消灯などが可能だ。
いったんOdin Launcherを起動すると,画面上部をスワイプしての設定画面呼び出しが制限される。なお,Odin Launcherの言語設定に日本語はなかった。今後のアップデートで追加されればいいのだが。
また,Odin Launcherを経由してゲームを動作させているときに,ディスプレイの右端から左へスワイプすると,ゲームごとに利用できる設定パネルが呼び出せる。この設定パネルでは,通知の抑制やスクリーンショット,ゲーム画面の録画が可能だ。
とくに重要なのは,「Key Adapter」と呼ばれる独自のキーマップツールだ。これを使えば,ゲームパッドに対応していないゲームでもゲームパッドでの操作を割り当てられるようになる。
設定方法はシンプルで,アナログスティックの場合,画面に表示されるアイコンを操作したい領域に移動するだけだ。ボタンの場合は,割り当てたい操作がある場所にボタンのアイコンを移動して,割り当てるボタンを押すことで設定できる。設定パネルの「Guide」から動画でも設定方法を確認できるので,迷うようなときは参考にするといいだろう。
「原神」と「Fortnite」で動作を検証
ここからは実際のゲームでOdin Proの動作を検証していこう。ゲームのテスト前にベンチマークソフト「AnTuTu Benchmark v9.2.9」で,性能を測ったところ,総合スコアは「429973」,GPUのスコアは「177312」であった。最新のハイエンド市場向けSoC「Snapdragon 888」を搭載したスマートフォンでは,総合スコアが80万を超えることを考えると,やはり見劣りはする。
なお,Odin Proは,Odin Launcherから,SoCの動作クロックを引き上げる動作モードである「Perfomance」と「High Perfomance」の設定も可能だ。念のため,こちらでもテストをしたが,総合スコアは順に「437047」「437671」とほとんど変わらなかった。
まずはゲームパッドに対応していないゲームとして,「原神」をプレイした。PC版とiOS版の原神はゲームパッドに対応しているのだが,Andoroid版は対応していない。キーマップツールの需要がとくに高いゲームの1つだろう。
Key Adapterの操作方法を説明するガイドに原神が使われていることもあって,問題なくスティックやボタンに操作を割り当てられた。
ゲームの動作は,原神が最近のスマートフォン向けゲームの中でも,とくにリッチなグラフィックス表現を実現しているだけに,画質設定を[最低]に設定した状態でフレームレートは40台半ばから50fps前後,[低]では40fps前後であった。これ以上に画質設定を上げると,なにもない平原であれば比較的スムーズに動くのだが,街やダンジョンでフレームレートが落ち込む。とはいえ,画質設定を抑えた状態であれば,それほど不満なくプレイできることがわかった。
続いては,ゲームパッド対応ゲームである「Fortnite」をプレイした。Fortniteの設定メニューを見ると,ゲームパッドが認識されており,Key Adapterを使わずともボタンの割り当ても問題なく行われている。
しかし,ゲームをプレイすると,待機場所には入れるのだが,いざバトルバスから降下するタイミングで,エラーが発生してマッチから除外されてしまった。最初は筆者宅の回線に問題があるのかと思い,いろいろと試していたのだが改善しなかった。海外のフォーラムで,筆者と同じ現象が起こっているという人を複数確認できたので,Odin Pro側に何らかの問題があることも考えられる。早期の改善を期待したい。
ハードウェア面の完成度は高いが
性能面ではいま一歩
Odin Proは,とくに筐体とゲームパッド部分の質感は非常に高く,しっかりと作り込まれた製品だと言える。その一方で,性能は最近のスマートフォンと比べると見劣りするのは確かだ。3世代前SoCを搭載したデバイスに,3万円台後半の価値を見いだせるかと言えば,二の足を踏む面もある。それでも,スマートフォンやタブレットとは別にキーマップツール付きのゲームパッドを用意する費用や,いちいち接続しなおす手間を考えると,価格に見合った価値はあるというのが筆者の結論だ。
筆者が気になるのは,もし次世代製品があったときに,どのような道を選ぶのかということ。たとえば,QualcommとRazerが共同で開発する小型ゲーム機(関連記事)のように,最新のSoCを搭載して性能向上を図るのか。それとも,別の方向性を模索するのかは分からない。
今回は試していないのだが,Android搭載ゲーム機は,「GeForce NOW」や「Xbox Cloud Gaming」といったクラウドゲームサービスとの親和性が高そうだ。そうした用途向けであれば,むしろSoCはそこそこにしてコストを抑えたうえで,ディスプレイやゲームパッドを強化する方向もありえそうだ。
AYNのOdin製品情報ページ(英語)
IndiegogoのOdin販売ページ
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