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「テイルズ オブ アライズ」とガストブランドのコラボによる,キャラクターデザイナー4名の座談会をレポート
このつながりから,両作を中心としたコラボレーション企画が予定されているというのは昨年発表されたとおり(関連記事)だが,この一環として今回,キャラクターデザイナーによる座談会が行われた。
シリーズタイトルのキャラクターデザインの苦労
岩本氏も「恐縮です」と頭を下げつつ,「シリーズが続いているのは藤島(康介)先生やいのまた(むつみ)先生,そして『テイルズ オブ』シリーズを作ってきたスタッフのおかげで,なんでここに僕が参加しているんだと思うぐらいです」と遠慮がちに返していた。
そんな岩本氏は,ガストブランドのキャラクターについて,「どのタイトルにもデザイナーさんの個性が凄く出ている」と述べ,「NOCOさんのソフィーは見ただけで好きになってしまう」「ゆーげんさんのキャラクターデザインを見たときは(その衝撃で)ひっくり返った」「岸田さんのデザインは,甘く切なくて苦みもある,初恋の人を思い出すような気持ちになる」と語る。
続いての話題は,ゲームの中では3Dになるキャラクターを2Dで描くことの苦労について。またシリーズを重ねるうえでの感じる苦労についても触れられた。
そんなゆーげん氏は,約8年前に「アトリエ」シリーズの新作として「ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜」を開発するとき,最初に見たのが岸田氏がキャラクターデザインを担当した「アーランド」シリーズだったため,それまで脈々と受け継いできた伝統を一つ踏み越えて,新機軸を開拓した岸田氏に衝撃を受けたそうだ。NOCO氏もこれに同意し,自身が「アトリエ」シリーズを担当することになったときは,岸田氏のデザインの影響を受けたとのこと。
また「BLUE REFLECTION」シリーズは,キャラクターの多くが学生服姿で,しかも奇抜な髪型や見た目もしていないのに,世界観をちゃんと構築できているのは岸田氏の功績だと,ゆーげん氏は絶賛していた。
「テイルズ オブ」シリーズも,過去に名作が何作も作られており,藤島氏やいのまた氏のキャラクターデザインのイメージが強い。そこから「テイルズ オブ アライズ」でプレイヤーの心を掴んでいる岩本氏はすごいと,ゆーげん氏は述べる。そして,プレッシャーの中で,一体どのようにデザインを手がけたのか岩本氏に尋ねた。
「テイルズ オブ」シリーズの初期は,画面が2Dのグラフィックスで表示されていて,キャラクターはイラストをドット絵に落とし込むという手法だった。そのため,藤島氏やいのまた氏はドット絵になることを意識したキャラクターデザインをしていたそうだ。岩本氏も「テイルズ オブ ディスティニー」あたりの初期のシリーズが大好きだが,キャラクターがドット絵から3Dモデルになったため,それまで記号的な表現が強かったものを,もう少しリアルに寄せていくといった,デザイン上のチャレンジをしているという。
岩本氏本人は「親しみやすいもの」と「すごいと思われるもの」を常に両立させたいと考えているが,前者に寄せると子供っぽくなったり安っぽくなったりしてしまい,かといって後者を突き詰めると,一般の人があまり好きになれなくなってしまう。そのバランスを取ることに試行錯誤し,5年の開発期間を費やして,「テイルズ オブ」シリーズの最新作として昇華できるものにしていったとのことだ。
また,「テイルズ オブ」シリーズの3大要素は,「アクション戦闘」のもと,「物語がしっかりと作り込まれたRPG」で,「キャラクターが大きな魅力」であることだという。その新作となると,これらを継承しつつ,今のプレイヤーに合うような表現をしなければならなかったが,その過程ではかなりピーキーなゲームデザインを模索したこともあったそうだ。一時期は「DARK SOULS」のような,ゴリゴリのリアルな質感で,重厚感のある動きをさせていたこともあるそうで,「開発からしかられました(笑)」という裏話も飛び出した。
続いて岩本氏からは,「BLUE REFLECTION TIE/帝」に対して,キャラクターの髪の毛がすごく綺麗だという感想が。そのタイトルにもある爽やかな青色は,キャラクターモデルにも意図的に盛り込んで記号的に処理し,統一感を出していると岸田氏は話す。
ここでゆーげん氏が「岸田さんの絵のイメージは赤という印象があった」と伝えたところ,「赤を差し色として使うことはあるが,赤で全体のトーンを統一したことはない」と岸田氏は返答。「アトリエ」シリーズでは花をたくさん描いて,きらびやかなイメージを演出したので,その影響かもしれないと続ける。
花をたくさん描く演出は単なる雰囲気作りではなく,それまでの「アトリエ」シリーズの桜瀬琥姫氏による美術が,アルフォンス・ミュシャを代表するアール・ヌーボー的な雰囲気を持っていたため,自分がそこを追ってもフォローにしかならないので,花を記号や装飾としてではなく,ボタニカルアートのように描いたそうだ。それがきっかけとなって,以降の左氏(「黄昏」シリーズ担当)やゆーげん氏,NOCO氏が無意識の伝言ゲームのようにその方向性を受け継ぎ,現在の明るくてキラキラした雰囲気につながったのではないかと分析する。とくに「ソフィーのアトリエ」は,「アーランド」シリーズや「黄昏」シリーズで良かった部分も残しつつ,元のシリーズが持っていたクラシックな良さもうまく拾っていると,岸田氏は評した。
フリーと社員での意識の違い
今回集まったメンバーはガスト側は全員フリーのイラストレーターだが,岩本氏はバンダイナムコスタジオの社員だ。こうした所属によって,デザインの意識にどんな違いがあるのかも話題となった。
ゆーげん氏の場合は,設定資料をもらいながらも「自由にやってください」とざっくりとしたオファーがあって,クライアントのオーダーに沿いつつも,自分の個性を出しながらデザインしていく路線で進めていくという。
「クリエイターによって絵柄は固定されているもの,とイメージする人は結構多い」とゆーげん氏は語る。イラスト業やキャラクターデザイン業は,時代やユーザーの好みなどに合わせて水の流れのように変わっていくので,絵柄が変わっていることが分かりづらいのだとか。当時のイラストのフォルダを見てみると,その頃の自分がいて「青かったな(笑)」という思いが湧くのと同時に,自身が成長した手応えも感じるそうだ。
ちなみにゆーげん氏が手がけた今作初登場となったプラフタは,最初は設定そのものがなく「ちょっと違うのを出してみたいので,いいのを出して」といったざっくりとしたオファーで,NOCO氏の苦労に共感しつつも,自分の好みを反映させて比較的気楽に描けたと語っている。
岸田氏のデザインについてゆーげん氏は,「メルさんがすごく好きなものを詰め込んだイメージ」と述べるが,岸田氏本人は「僕が好きなものというよりは,僕の絵が好きな人が好きそうなものを入れている」と返す。
ことキャラクターデザインに関しては,「自分の好みに沿ってしまうと,誰にもウケないものになる自覚があります。それを反映させると商売にならない」と,自身の趣味が変わっていることを自負しており,なるべくそこからは離れ,常にキャッチーなデザインを心がけているという。
ただし「BLUE REFLECTION」シリーズの,あまりデフォルメをしない制服の表現や,学校の汚れた感じなど,世界観設定や雰囲気作りに関しては,岸田氏の趣味が強く出ていると付け加えた。
岸田氏のキャラクターデザインについては,「こちら」の単独インタビューでたっぷり(5時間!)語っていただいているので,ぜひ合わせて読んでみてほしい。
一方,社内デザイナーの岩本氏の場合は,描いた絵から発想を得た案がゲームに反映されることも多いそうだ。また,今回の「テイルズ オブ アライズ」の場合は,世界観やシステムを構築する段階から会議に参加し,そこで描いた絵を議事録代わりにしていたのだとか。開発に密着したデザインを行えるのが,内部デザイナーの強さだと述べた。
コラボイラストは,それぞれのセンスや好みが取り入れられた楽しげなものに
今回の座談会では,各々が手がけたキャラクターが登場するコラボイラストが披露された。
その中央で主役的な扱いのシオンについて岩本氏は,「イメージは女子会。シオンはその真ん中にいるタイプではないが,ここでは戸惑いつつも女の子らしい触れ合いを楽しんでいる」とのことだ。参加した全員がキャラクターの女性らしいフォルムを得意としているので,自分もそこに挑戦し,シオンの女の子らしさを前面に押し出して描いているという。
ソフィーはそんなシオンに髪飾りを付けているシチュエーションなのだが,ソフィー自身もシオンに合わせたポニーテールに。「ポニーテール姿はかなり貴重です」とNOCO氏はコメントしていた。そしてプラフタは,「イラストでは仮面を付ける予定でしたが,誰だか分からなくなってしまうので,浮かんだ球体を手に持たせるなどして,アクセントを付けました」とゆーげん氏は説明していた。
そして岸田氏が描く愛央は,ほかの作品と世界観が大きく異なるものの,「その違和感が逆に面白い」と考え,ほかのキャラクターともなるべくくっついて,仲がよさそうに描いたとのこと。違った絵柄が集まるイラストを描くのは好きで,本当に楽しかったそうだ。
最後に皆さんに,4Gamerからも質問ができたので,その模様をお伝えしよう。
4Gamer:
岩本さんは「テイルズ オブ アライズ」という大作にキャラクターデザイナーとして携わって,かなりのプレッシャーがあったと思うのですが,作るうえで苦労したところを教えてください。
岩本氏:
今回はとくに新しいチャレンジがたくさんできるということだったので,アートディレクターとしては,どうやってお客さんを喜ばそうか意気込んでいました。しかし,プロジェクトが始まってみると,重大なところを任せていただいたことに対して毎日吐いてしまいそうなぐらいの精神状態でした。
生活のすべてを開発に投入する気持ちだったので,誰よりも早く出社して,誰よりも遅く帰るという生活をしていましたので,無事発売することができ,好きになってくださる方がいらっしゃって,報われたと思っています。
4Gamer:
長く試行錯誤していたとのことですが,どういうキャラを描くことを考えて進めていたのでしょうか。
岩本氏:
それまでキャラクターデザインを手がけられた先生方が実力派でしたから,自分としては持てる力をすべて出し切るつもりでいました。いいデザインとか映える質感といったロジックは一度捨てて,自分をさらけ出して,極限まで追い込んでネタを出していましたね。
ネタを分かりやすく説明すると,キャラクターに動物のモチーフを取り入れています。シオンはそれまで人にあまり触れられなかった寂しがり屋の兎,キサラはよく働く雌ライオンみたいな,できるだけ分かりやすいイメージと自分がやりたいことを結びつけました。
4Gamer:
続いて岸田さん……には以前のインタビューでたっぷりうかがいましたから,「BLUE REFLECTION TIE/帝」が発売されてからの,プレイヤーからの反応を聞きたいです。
岸田氏:
難しいですね……。キャラクターが可愛いという反応はもちろん届いていますが,あのタイトルを買ってくださった方が「キャラクターが微妙」とは言わないと思うんですよ。キャラクターを気に入って手に取ってくださった方がほとんどですから。
そういった意味では,それ以外の方が買ってくださるにはもっとエネルギーが必要だったということですから,そこに関しては反省点かもしれません。
4Gamer:
ゲームが完成してから,ご自身がデザインされたキャラクターをご覧になったときの感想はいかがでした?
岸田氏:
3Dモデルに関しては,100点中200点というぐらいの,いいものを作ってもらえたと思います。ゲームシステムもやり応えのある内容ですし,キャラクターを好きになる甲斐がある作りですから,僕から見たゲームの完成度は言うことなしです。
4Gamer:
NOCOさんには,ソフィーのデザインについてうかがいたいです。前作から大きく変わっていなくても,そこにたどり着くのに非常に苦労されたとお話されていましたが,実は私もガストさんから「本当に大変そうでした」と聞いていたので,気になっておりまして。
NOCO氏:
はい,たくさんのソフィーのパターンを描きましたが,どう変化をつけるかで本当に苦労しました。最後はガストさんに突撃したぐらいです(笑)。皆さんに見てもらって,意見をもらいながらリアルタイムで描くみたいなこともやって,なんとかまとめることができました。
4Gamer:
続編で同じ主人公を描くというのは,やはり難しいですか?
NOCO氏:
難しいです。時系列的に前作から3年経っていますが,進化したように盛っても違和感があるので,その微妙なニュアンスの調整を繰り返しました。
4Gamer:
一方,ゆーげんさんのプラフタは好きにデザインできたそうですが,具体的にどこを目指して描かれたんでしょうか。
ゆーげん氏:
僕は昔,シナリオや世界観設定をするプロジェクトに関わっていたこともあって,キャラクターって地に足が付いていないと成立しないと思っているんです。例えばファンタジーものだったら,石畳の街があって,買い物をするときはどういう格好をして,どういう部屋に住んでいて,みたいな設定を踏まえてキャラクターは存在しているはずです。
そうした背景は意識してデザインするようにしていますね。プラフタについては好きに描きつつも,3Dになるので「揺れもの」であるとか,シルエットにしたときに凹凸がでるようなアクセントを付けるとか,そういったところを考えています。
4Gamer:
最後に皆さんにお尋ねしますが,キャラクターデザインをしていて,一番楽しい部分と難しい部分はどこでしょうか?
岩本氏:
では僕から。ゲームのキャラクターデザインの醍醐味は,自分で操作ができて動かせることだと思います。難しいところは,キャラクターが完成するまでに,モデルを作っていただいたり,声をあててくださったりして,キャラクターをみんなで共有して進んでいくというところでしょうか。
NOCO氏:
新しいものを作るときは,誰も歩いていない道を見つけなければならないのが,苦しくも,楽しいところだと感じますね。
ゆーげん氏:
今回のプラフタは,フリルとかレースとか好きな衣装を多く取り入れて作ったんですが,イラストでこれを描くのは嫌だなと思いながらデザインしてましたね(笑)。
岸田氏:
基本的には全部苦痛なんですけど……。
一同:
(笑)
岸田氏:
完成したあとのできの善し悪しは必ずあって,その中で自分で見ても「これいいデザインだな」「よく描けたな」「ひょっとすると自分は天才なんじゃないか」という瞬間があって,そのときだけは本当に楽しいです。すごいノって描けて,めちゃくちゃいいものができた瞬間のために,苦痛を我慢してがんばっている感じですね。
4Gamer:
ありがとうございました。
「テイルズ オブ アライズ」公式サイト
「ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜」公式サイト
「BLUE REFLECTION TIE/帝」公式サイト
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- ライター:稲元徹也
- カメラマン:増田雄介
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