連載
[TGS 2016]原田勝弘氏と石渡太輔氏がトークを繰り広げた「『原田が斬る!』TGS出張版」をレポート
特別版となった今回は,アークシステムワークスの石渡太輔氏との対談が繰り広げられた。石渡氏の意外な一面などが明らかとなった対談の模様をお伝えしよう。
なお,対談の様子を動画で見たいという人は,以下に掲載した4Gamerブース3日目の動画をチェックしてほしい。
ハメコ。氏:
今回,原田さんが石渡さんを呼んだ理由を教えてください。
原田勝弘氏(以下,原田氏):
石渡さんって,イケメンでミュージシャンで,絵も描ければ歌も歌える。声優もできるしゲーム開発もできるじゃないですか。この人ヤバイぞ,ゲーム業界の中ではカテゴリが違う人だぞってイメージがあるんですよね。
あと,ビジュアル的に引き立つというのも理由です。来場者も明らかに女性が多いですよ。「サマーレッスン」とか「鉄拳」でステージやっても男しか来ないもん(笑)。
ハメコ。氏:
石渡さんは,原田さんと面識はあったんでしょうか。
石渡太輔氏(以下,石渡氏):
原田氏:
まあ,聞くのは僕なんですけどね(笑)。
さっそく質問なんですけど,「BLAZBLUE」の森さん(森 利道氏),今食中毒で倒れてるって話を聞いたんですが,容態はどうですか?
石渡氏:
昨日,病院にお見舞いに行ったら,気持ちよさそうに寝ていたので大丈夫かなと。今朝は普通に仕事していたので,おそらく回復したかと思います。
原田氏:
実はその食中毒の心当たりがありまして,前日に一緒に飲んでたのは僕なんですよ。ゲーム業界の名だたるメンバーが集まる懇親会があって。その中で鶏鍋が出たんですけど,鶏肉がけっこう生だったんですよね。それで僕は煮込みなおしたんですけど,森さんは普通に食ってたから,これは死ぬぞと思ったんですよ。この鶏肉で食中毒になった可能性が高い。
(一同爆笑)
原田氏:
って,森さんの話はいいや。
石渡さんには,前から聞きたかったことがあるんです。Wikipediaで石渡さんを調べると,生まれが南アフリカ共和国ヨハネスブルグって書いてあるじゃないですか。これ,キャラの設定か何かかと思ったんですけど,リアルにそうなんですか?
石渡氏:
よく言われますけど,本当ですね。単純に親の都合です。
原田氏:
ヨハネスブルグって治安的に不安な場所だと思うんですけど,お父さんの職業は北斗の拳か何かなんでしょうか。
石渡氏:
いやいや(笑)。僕が南アフリカで生まれたころはアパルトヘイトがありまして,そのころは白人圏みたいなのがけっこうあったんです。そういうところで,僕らは名誉白人扱い※されていまして,そこの中では,治安は悪くありませんでした。
生まれてすぐ日本に来たんですけど,親の都合で小四から中二までヨハネスブルグにいましたね。
※編注:南アフリカ共和国で人種隔離政策(アパルトヘイト)が行われていた時代,非白人である日本人は,経済面での理由から「名誉白人」として白人並みに扱われていた。
ハメコ。氏:
小四から中二までって,将来のことを考えるとけっこう重要な時期じゃないかと思うんですが,ヨハネルブルグで生活していた経験は,今にどういうふうに生きていますか?
石渡氏:
語学に関しては,日本人学校に通っていたので,英語は覚えられませんでした。ただ,人との接し方は日本と異なっていて,結果的にワガママになっていくというか,一言で言うとデリカシーがないんですよ。
デリカシーがないって,大人の社会で生きていくうえで強い部分がかなりあるんですよね。人の顔色をうかがわないで何でも言ってしまって,自分がストレス感じないので。その結果,ゲームが作れているのかなあと。
原田氏:
なるほど。そこは僕と似ています。僕もよく「日本人らしくない」って言われるんですよ。まあ,見た目はブサメンとイケメンの対比みたいになっていますけど(笑)。
Twitterで出た質問も取り上げようかと思います。まず,「(ギルティギアに)闇慈はいつ帰ってきますか?」という質問がありますけども。
石渡氏:
闇慈に限らず,過去の作品に出ていて,最新作に登場していないキャラクターは,現段階でまったく予定がないですね。ただ,僕個人のメモにおいては,彼らがどういういきさつを経て,登場していないタイトルに存在しているのかは,実はデザインも含めてあります。
原田氏:
言い切りますね。僕なんかは,「巌竜いつですか」って聞かれたら,必ず「今向かってます」って言います。で,「7年前に向かってるって言われたのにまだ出ていません」って言われたら,「向かってたんだけど間に合わなかったんです」って答えます。
石渡氏:
いいですね,それ(笑)。
原田氏:
次の質問ですが,初代ギルティギアで石渡さんが,プランナー,プロデュサー,キャラクターデザイン,グラフィックデザイン,データビルド,BGM,イラスト,さらにソル・バッドガイ役の声優までやってましたよね。これって,ファンの人は「多彩だからできるんだ」って思っているでしょうし,実際そうだと思うんですけど,僕はやらざるをえない事情があったんじゃないかと考えているんです。どうなんですか?
石渡氏:
やらざるをえない事情という意味では,まさしくその通りですね。ギルティギアが最初に企画された段階で,アークシステムワークスの社員は30人ぐらいいたんですけど,あることをきっかけに,制作段階で社員が3人になったんですよ。
原田氏:
社員3人って(笑)。なぜそうなったかを知りたい。
石渡氏:
それはこういう場じゃない席でお願いしたいです(笑)。
それで,企画はおじゃんになったんですけど,僕はギルティギアが作りたいんで,「作らせてくれるなら3人の中に残る」と,当時の社長に言ったんです。それで,OKは出たんですけど,その代わり人は自分で集めてくるよう言われて,専門学校とかをあたって,ようやく5人集めました。
原田氏:
え,専門学校から集めたんですか。
石渡氏:
そうです。メインプログラマーも,僕の1つ下の後輩の学生なんですよ。
原田氏:
でも確かに,当時は90年代だから,業界も人材豊富じゃなかったですもんね。
石渡氏:
ほかにも,30人いた頃に仲が良かった人にも声をかけて,なんとか5人で作り始めました。
原田氏:
それでいろいろ兼務するしかなかったと。ソル・バッドガイ役はなんでやることになったんですか?
石渡氏:
予算が限られていましたから,とりあえず絶対に押さえたい人を列挙していたんですけど,主人公にあてたかった声優さん(のギャラ)がお高かったんですよ。じゃあそのぶんは,もっとイメージの合うキャラクターに分散させて,残ったやつをスタッフでやりましょうという感じですね。
だから僕だけじゃなくて,当時のキャラクターはプログラマーやプランナーが声をあてています。
原田氏:
あとはモーションキャプチャの中身とか。初期は男キャラだろうが女キャラだろうがクマだろうが,センサーをつけてやっていました。ただ,これは予算の都合じゃなくて,自分達でなんでもやっていたからですけど。
石渡さんの場合は,90年代に予算の苦労とかを経験されたわけですよね。僕はサマーレッスンまでは予算を気にしたことがなかったんですよね。サマーレッスンは本当に苦労しましたが,鉄拳や「ソウルキャリバー」「ポッ拳」といった大型シリーズであまりそういう苦労はありませんでした。僕も90年代に経験していれば,もっと違っていたのかなと。
当時のナムコには,中村社長や「パックマン」を作った名だたる先輩とかがいたわけで,そういう方々が築き上げた財の上に,僕はあぐらをかいていたという。
石渡氏:
歳を重ねるまで,支えてもらっている恩恵って気付きにくいですよね。
原田氏:
恥ずかしながら,僕も気付いたのは40歳過ぎてからですね。親のありがたさと一緒です。
石渡氏:
声の話に戻りますけど,僕は意識したことはないんですが,自然体で普通に笑い声をあげると,ブライアンに似てるって社内で言われるんですよ。もし合ってると思ったら使ってもらえませんか?
原田氏:
声優として石渡さんを使えるんだったらいいですよ。石渡太輔ってキャラとして登場するんじゃなければ(笑)。
ハメコ。氏:
でも石渡さんは炎とか出せそうじゃないですか?
原田氏:
石渡さん2Dキャラみたいですもんね。俺もこんな髪形が似合う人間に生まれたかった。そしたら会社で,みんな言うことを聞いてくれると思う。人間,見た目はすごい重要ですもん。
石渡氏:
それはそうかもしれませんけど(笑)。
原田氏:
たとえば,地球人類が滅びそうなときに,宇宙人がやってきて「ハメコ。と,もう1人だけ連れて行ってやる。以下の4人から選びなさい。BLAZBLUEの森プロデューサー,カプコンの小野プロデューサー,バンナムの原田,石渡さん」ってなったらさ。
ハメコ。氏:
それは石渡さん選びますよね。
原田氏:
ハメコ。がストリートファイターファンだろうが鉄拳ファンだろうが,石渡さん選ぶでしょ。人間追い詰められたら見た目で選びますよ。僕とか小野さんは「俺,俺を選んで!」って言って切られるタイプじゃん。
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GUILTY GEAR Xrd -REVELATOR-
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