プレイレポート
全世界が待望したシリーズ最新作「Fallout 4」のプレイレポート。すべてが進化したウェイストランドで,過酷な冒険と創造に明け暮れるのだ
「Fallout 4」公式サイト
Falloutシリーズは,核戦争によって文明が崩壊した,いわゆる「ポストアポカリプス」の世界観をテーマにしたRPGだ。1997年,斜め見下ろし型のRPGとしてシリーズ第1作「Fallout」がPC向けにリリースされたが,日本語版が発売されなかったこともあり,国内での知名度はそれほど高くなかった。
ところが,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」(以下,オブリビオン)のヒットで日本でも広く知られるようになったベセスダ・ソフトワークス(以下,ベセスダ)が「Fallout」シリーズのIPを取得し,2008年に新たなシリーズ作として「Fallout 3」をリリースしたことで,状況は一変した。
ワシントンD.C.を舞台にしたFallout 3はオブリビオンゆずりの広大なマップが用意されたオープンワールドのRPGで,魅力的な世界観と徹底的な自由度の高さ,そして膨大なクエストでゲーマーの心をガッチリつかみ,日本を含め世界中で大ヒット作となったのだ。
2010年には,ラスベガス地区に舞台を移したスピンアウト作「Fallout: New Vegas」(以下,New Vegas)がリリースされており,現在Falloutシリーズは,The Elder Scrollsシリーズと並ぶ,ベセスダを代表するシリーズに成長した。
筆者は今回,PlayStation 4向けの日本語版をプレイする機会を得たので,そのレビューをお届けしたい。ナンバリングタイトルとしてはFallout 3から7年,New Vegasから数えても5年となる久々のFallout最新作ということで,筆者を含め長年発売を待ち望んでいたゲーマーは数多いだろう。結論から先に述べてしまえば,その出来は期待を裏切らないものだった。
「崩壊前」から始まるFallout 4
戦前の輝かしい社会と,崩壊後のギャップを確認しよう
Fallout 4はFallout 3やNew Vegasの背景となった時代の約200年前,2077年10月23日に始まる。マサチューセッツ州ボストンの住宅地「サンクチュアリ・ヒルズ」で,ある夫婦が生まれたばかりの一人息子「ショーン」と共に,穏やかに暮らしている。プレイヤーは,この夫婦のどちらか(男を選べば父親,女を選べば母親)をプレイヤーキャラクターとして選び,物語を進めていく。
ゲームが始まるとまず,キャラクターメイキングだ。顔,性別,髪型,人種といった前作にもあった項目のほか,今回は体型も調節できるようになっており,細マッチョやビア樽体型の主人公でプレイすることも可能になっている。一説では「ラスボス戦より難しく,時間がかかる」と言われるRPGのキャラメイキングだが,本作でも顔のパーツごとにスライダーで細かく設定でき,こだわれば本当にいくらでも時間がかけられそうだ。
Fallout 3では,自分のキャラクターを元に父親が自動生成されたが,今回は逆で,自分を元に息子のショーンが生成される。赤ん坊の状態では肌の色ぐらいしか見分けがつかない感じだが,イケメンの息子が欲しい人は,頑張って自分自身を作り込んでおこう。
シリーズ経験者ならご存じだと思うが,Falloutシリーズの世界は,現在我々が知っている歴史とは違う道を歩んだパラレルワールドだ。技術的には携帯用レーザー兵器や軍事用パワードスーツ,自律行動可能なロボットが実用化されている一方,文化的には1950〜60年代で停止しており,ファッションや娯楽はほとんど進歩していない。言ってみれば「レトロフューチャー」をそのまま体現した,かなり興味深い社会になっているのだ。
この時代,人類はエネルギー革命に失敗し,化石燃料と原子力のみに頼り切ったあげく,ついには資源が枯渇してしまった。わずかに残された石油を巡り,中国とアメリカは戦争の真っただ中だ。
そのような世界でも,戦火を免れた地域では,比較的安定した生活が過ごせている。そして,運命の土曜日,朝のひとときを家族と共に過ごしている主人公一家に,とある人物が訪れる。
それは,“来たるべき日”に備えて,アメリカ各地で「Vault」と呼ばれる核シェルターを建造している「Vault-Tec」のセールスマンで,彼が言うには,契約さえすれば一家はそのVaultの1つ「Vault 111」に居住できるのだという。
きな臭い社会情勢だけに,思わぬ申し出に喜んで(プレイヤーの選択によっては嫌々)契約書にサインする主人公だったが,来客が帰った直後,状況が一変する。テレビのニュースに速報が流れ,アメリカ本土で核爆弾が炸裂し,甚大な被害がでているという。そう,ついに全面核戦争が始まってしまったのだ。後に大戦争(Great War)と呼ばれ,人類の文明を崩壊させるに至った,最終戦争の始まりだ。
一家は,慌てて先ほど契約を済ませたばかりの,Vault 111へ向かう。軍隊が出動し,人々が逃げ惑う異常な状況の中,小高い丘の上にあるVaultの真上に着いた夫婦と赤ん坊。だが一息つく間もなく,その視界の先には,猛烈な閃光に続いて巨大なキノコ雲が発生した。
一家はなんとか無事にVault 111にたどり着くが,その後「あるトラブル」により,主人公だけが2287年の未来世界に放り出されてしまう。生身の人間がどうして200年以上も生きていられるのか,SF好きの人なら思い当たる技術はいくつかあると思うが,ここは実際にゲームをプレイして確かめてほしい。Vault 111の住人の中で,たった1人無事に生き残った主人公は,そのトラブルを引き起こした元凶と,ある人物を探すため,瓦礫の山と化したボストンを放浪していくこととなる。
食料や水も汚染されており,もちろんインフラや公共サービスも残っているわけがないので,通貨(ドル)も今じゃケツを拭く紙にもならなくなって,戦前のコーラ瓶のフタ「キャップ」に取って代わられているし,治安面ではモヒカンヒャッハーな凶悪強盗集団「レイダー」が,小さな集落やトレーダーを見境なく襲っている。このような崩壊した世界をシリーズでは「ウェイストランド」と呼んでいるが,プレイヤーはこの地獄のウェイストランドで生き残り,かつ目的を果たさなければならないのだ。
本作の魅力はいくつもあるが,その中の1つが作り込まれた世界観であることは間違いない。ウェイストランドは核戦争によって文明が崩壊した世界だが,実は崩壊前からその技術レベルに比べ,文化や倫理の成熟度は著しく劣っており,もとから何かがおかしい社会なのだ。
しかもこれらは単なる設定として存在するのではなく,実際にゲームシステムの一部としてしっかり組み込まれており,例えば車を盾に銃撃戦を行うと,爆発に巻き込まれてあっさり死んでしまったりする。もちろん,逆に敵が車のそばにいれば,チャンスタイムの到来だ。
実はFalloutの舞台は,単なるポストアポカリプスな世界ではない。より過激でぶっ飛んだ,修羅の国も真っ青な「イカれた世界」なのだ。
Falloutの世界設定は,1950〜60年代の人が想像した未来,つまりレトロフューチャーを設定したうえでそれを崩壊させるという,手の込んだ仕組みになっている。これにより,単なるSFでもなければ世紀末でもない,実に独創的で魅力的な世界の構築に成功していると,筆者は思う。
その点,Falloutの世界はSFなのに「元から古い」のだから,これ以上古くなりようがない。現実世界の技術や社会情勢がいくら変化しても,過去が変わるわけではないから,そもそも影響を受けないのだ。未来の描き方の1つとして,これは非常に巧みだ。
話を戻すと,旧作をプレイした筆者がまず驚いたのは,主人公に明確な人格が与えられていることだ。彼(または彼女)はゲーム世界にあるさまざまな人物や物体に,驚いたり,喜んだり,独り言をつぶやいたりと,普通の人間のように反応する。
Fallout 3やNew Vegasだけでなく,ベセスダの開発するThe Elder Scrollsシリーズでも,基本的に主人公は,戦闘時のかけ声やうめき声などを除いてしゃべることはなかった。キャラクターはプレイヤーの分身であったため,自我や個性は抑えられていたのだ。
それが本作では変更されており,選択自体はプレイヤーが行うものの,主人公は確固たる意思を持って他人とコミュニケーションする。これは驚いたと同時に新鮮だったが,シリーズファンの中には違和感を覚える人もいるかもしれない。
個人的には,イベントや会話の表現力がぐっと高まったこともあって,良い選択だったと感じている。かなり気が早いが,これがシリーズの続編や,あるいは同社の別のRPG(つまり,The Elder Scrollsシリーズのことだけど)に踏襲されたりするのかも気になるところだ。
徹底した「自由度の高さ」は本作も健在
自由に歩き回るもよし,メインクエストをこなすのもよし
Fallout 4は,作り込まれたオープンワールドで自由に探索や戦闘を行い,好きなクエストを任意のタイミングでプレイするという,フリーローミングタイプのゲームのお手本のような作品だ。プレイヤーはどこへでも好きに行けるので,気になる土地があれば探索してもいいし,面倒ならスルーしてもよい。人を見つけたらクエストを引き受けてもいいし,相手の態度にムカついたらその場で倒して身ぐるみを剥ぐのも悪くない。崩壊後の世界は,文字どおりの無法状態なのだ。
もちろん本作には「メインクエスト」と呼べるものがあるが,とくに優先度が高いわけではないので,放置してひたすら探索に明け暮れていい自由もある。それぐらい,本作には多くの土地やミッションが用意されており,片っ端からクリアしていくと,いつ終わるか想像できないほどだ。重要なイベントで回る必要があるのは,全体から見ればごく一部でしかない。
一度立ち寄った場所には,マップを使って一瞬で移動できる,おなじみの「ファストトラベル」が使えるため,クエストをクリアできなかった場所にも簡単に戻ってリトライできる。序盤に辛酸をなめた場所でも,そこを記憶しておき,後で実力が伴ってからじっくり攻略すればいい。
戦闘は敵に出会った時点でシームレスに開始され,手持ちの銃や鈍器,あるいはハイテク兵器のレーザーライフルといった武器で戦う。どこでもたいがい何かが巣くっており,戦う相手には困らないが,ここは文明崩壊後の世界,出てくるのは異常なヤツらばかりだ。
放射能で巨大化したゴキブリ「ラッドローチ」をはじめ,緑色の巨人「スーパーミュータント」,全身が腐ってゾンビのようになった「フェラル・グール」などのクリーチャーだけでなく,同じ人間でも上記のレイダーなどが各所で幅を利かせているので,とりあえず動くものがあれば敵だと思っていいだろう。
うまく倒せれば,野生動物なら肉や皮,人間なら装備している武具などが手に入るが,インフラが失われたこの世界では消費する弾丸の入手性は悪く,調子に乗って撃ちまくると,あっという間に弾薬が尽きてしまう。本作ではダッシュができるようになったので,明らかに形勢が不利だと思ったら,一目散に逃げて生き残ることを優先にするのも手だ。
そんなVaultからの放浪者の強い味方が,シリーズ恒例の特殊能力「V.A.T.S.」(Vault-Tec Assisted Targeting System)だ。発動すると時間の流れが急に遅くなり,敵を自動でロックオンする。時間がゆっくり流れている間に,手持ちの武器で任意の部位を攻撃できるのだ。
使用すると時間経過で回復するAP(アクションポイント)を消費するが,V.A.T.S.が発動している間はほぼ一方的に攻撃できるので,頭を狙って大ダメージを与えたり,足を撃って移動速度を大幅に低下させたりといった使い方が可能だ。当たりにくい部位があったりもするが,筆者のように射撃の腕が今一つのプレイヤーにとって役立つ。敵を一気に無力化したり,貴重な弾薬の節約にもなったりするので,積極的にガンガン使っていきたい。
S.P.E.C.I.A.Lはそれぞれ,Strength(筋力),Perception(知覚),Endurance(耐久力),Charisma(魅力),Intelligence(知能),Agility(俊敏性),Luck(運)の頭文字を並べたもので,例えばStrengthなら,それが高いほど打撃力が上がり,多くの荷物も持てるといったメリットがある。当然,どれも高いほうが冒険が有利に進むが,いきなりすべてを限界まで上げることはできないし,次に説明するPerkを取得したほうが効率的なこともあるので,一概に「レベルが上がったら,とにかくS.P.E.C.I.A.Lを上げておけ」とはならないのが難しいところ。
Perkはそのキャラクターが持つ特殊技能のことで,S.P.E.C.I.A.Lの項目ごとに10種類,計70個から,任意のものを取得できる。S.P.E.C.I.A.Lのそれぞれの値に比例する形で,それに属するPerkがアンロックされるシステムで,例えばLuckが5なら,Luckに属する5種類のPerkから選べるというわけだ。仮にLuckの6段階めのPerkが欲しいなら,Luckそのものをまず6まで強化する必要があるわけだ。
具体的なPerkとしては,純粋にHPを上昇させる「Life Giver」といったシンプルなものから,より開けにくい鍵を開けられるようになる「Locksmith」,レア度が高いジャンクをリサイクルで入手しやすくなる「Scrapper」など,できることはさまざまだ。武器の威力を高めるにも,例えばハンドガンなら「Gunslinger」を手に入れるなど,前作ではスキルに割り当てられていたものがPerkに統合された形になっている。
Perkの選び方が,ある意味そのままキャラクターの強さや立ち回りに関係してくるため,将来的に「どういうプレイをしたいのか」も含めて,じっくり何を選ぶのか決めていきたい。
冒険が厳しい?
よろしい,ならばコンパニオンとパワーアーマーだ
V.A.T.S.があっても,崩壊後の過酷な世界を1人で放浪するのはやはり厳しい。いくら気をつけていても,急に背後から襲われたり,足が速いクリーチャーにあっという間に囲まれてしまったりすることもある。
そんな危険な旅を続けるプレイヤーの強い味方が,前作でもおなじみの「コンパニオン」だ。仲良くなったり,恩を売ったりすることで,序盤から人間や犬,あるいはロボットなどを1人(または1匹,または1台)自由に連れ回せる。道中ではもちろん戦闘に参加してくれるし,自分の代わりに敵を発見してくれたり,重量オーバーの際は荷物を持ってくれたりと,連れ歩くだけで冒険がぐっと楽に進められる。
とはいえ,ダメージを受けすぎると戦闘不能になってしまうので,瀕死になったら回復薬のスティムパックを与えるなど,それなりの気遣いは必要だ。
人間タイプのコンパニオンの場合,任意のアイテムを装備させることが可能になり,コーディネートの自由度がさらに増したのが嬉しい。反面,New Vegasであったコンパニオンホイールは廃止され,細かい戦闘の指示などはできなくなった。一般的な評価はともかく,個人的には使い勝手がよいシステムだと思っていたので,この変更は少々残念だ。
コンパニオンを連れているだけではまだ厳しいというプレイヤーのために,本作にはさらなる切り札が存在している。上でも少し触れたが,Falloutの世界には「パワーアーマー」と呼ばれる,軍事用のきわめて強力な戦闘スーツが存在するのだ。核動力で動くこのアーマーは,装着者に飛び抜けたパワーを与えるだけでなく,強固な外骨格として機能し,敵の攻撃や放射能のほとんどをシャットアウトする。文明崩壊前には,アメリカ軍の主力兵器として活躍したという。
このパワーアーマー,Fallout 3やNew Vegasでは,その設定のすごさに反して実際はイマイチで,ちょっとしたパワーアシスト機能のついた鎧といった雰囲気だった。重さはかなりあるが,普通にインベントリに入れて持ち歩き,その場で着替えることができたので,「折りたたみ式のハリボテじゃないのか」などとも言われていたようだ。
しかし本作のパワーアーマーは,システム面から根本的に手を加えられ,従来とはまったく違う強力な兵器に生まれ変わった。装備するというより「乗り込む」という形で装着する,乗り物のような存在で,パワードスーツ感も格段に上昇した。それに伴って性能も大幅に強化され,Strengthは人間の限界値である10を突破するし,メンテが良くない状態でも防御力は数百を誇るという,怪物的な強さを発揮する。シリーズ従来作をプレイした人に分かりやすく説明すれば,「レベル1でデスクローに単身立ち向かい,普通に勝てる」といったところだ。
最初の問題は,動かすためにエネルギー源が必要になることだ。パワーアーマーを起動するには「フュージョンコア」を用意する必要があり,使い続ければ電池のように残量がどんどん減っていく。そのため,稼働時間に制限がある。エネルギーが切れた時点でパワーアーマーは,歩くことすらままならない「鉄の棺桶」と化し,敵の格好の標的になってしまうのだ。
フュージョンコアの入手性は悪く,とくにゲームを始めたばかりの時点では,ほとんど手に入らない。
もう1つのデメリットは,パワーアーマーにはパーツごとに耐久度があり,ダメージを受けるほどコンディションが劣化し,最終的にはパーツごと壊れてしまうことだ。状態を回復するためには修理する必要があるが,それには町や拠点にある「パワーアーマーステーション」に戻らなければならない。補修材料となる金属や貴重な電子パーツも必要だ。
話の流れの関係上ここで書くが,通常の武器や防具は基本的にいくら使っても劣化せず,修理する必要はなくなったため,なおさら「戻って修理」というのが面倒に感じられてしまう。上記のエネルギーの問題も含め,パワーアーマーは「燃費が悪い装備」なのだ。
とはいえ,多少使い勝手が悪くてもパワーアーマーが強力な兵器であることは間違いない。搭乗シークエンスはかっこよく,動作モーションや効果音もいかにもメカ。インタフェースがPip-Boyからパワーアーマー専用のものに切り替わるのも,SF好きにはグッとくる演出だろう。有効に使える場所を見きわめたり,フュージョンコアを探し出したりする必要はあるが,激戦や強力な放射能汚染が予想される場所では出し惜しみせず,積極的に投入していきたい。
「ヒャッハー!新鮮なスクラップだー!!」
今回のFalloutはクラフト要素が熱い
さまざまな点がパワーアップされた本作だが,一番充実したのはなんといってもクラフト要素だ。アイテム作成については,Fallout 3ではグレネードや薬が作れたし,New Vegasでは防具を作ったり武器に強化MODを取り付けたりできたが,本作ではそれにとどまらない,大幅なテコ入れが行われている。アイテムや回復薬の充実はゲームの難度にも直結するので,ゲーム中,作成したアイテムには相当お世話になるはずだ。
武器を例に挙げよう。序盤から出てくるレイダーがよく持っている「パイプピストル」というハンドガンがあるが,攻撃力や射程などがかなり悪く,はっきり言って見るべきところはない。利点といえば,弾丸の入手性の良さぐらいだ。
だが,「武器作業台」を使えば,バレル,ストック,マガジンなどほぼすべてのパーツが改造できるので,オート化してサブマシンガンにしたり,ロングサイズのストックとサイトを追加してアサルトライフルもどきに変えてしまったりといった,原型をとどめないほどの改造が可能だ。オート化せず,単発の威力を高めて,スコープを取り付ければ,スナイパーライフルのように使うことさえできる。
元になる武器によって改造できる範囲はある程度異なるが,例えばハイテク武器の「レーザーピストル」も改造だけでレーザーライフルに変更できたりなど,自由度は非常に高い。
当然,近接武器もその対象で,多くが「魔改造」と呼べるレベルで好きな形に強化できるのは,正直驚いてしまった。
防具は純粋に防御力を上げるほか,放射能耐性を与えたり,持てるアイテム量を増やしたり,ステルス性を高めたりなど,こちらも相当な数の選択肢が存在する。防具はインナー,頭,胴体,両手両足と複数の部位に分かれているので,腕装備は所持アイテム量アップ,足装備はステルス性アップなど,組み合わせも自由。コーディネートの幅はほぼ無限大といってもいいだろう。
物がいっぱいありそうな場所に行くときは,とにかくアイテムがたくさん持てそうな装備にしておく……といった工夫をしよう。
Fallout 4のクラフト要素は,これだけにとどまらない。アイテム作りだけではなく,自分の家や,さらには集落そのものを建築できるのだ。従来作で寝場所に困り,レイダーやモンスターの死体と一緒に寝起きしていた人も多いかもしれないが,本作では,そんな住宅難は解消された。家ごと作ってしまえば良いのだ。レッツ,DIY!
おそらく多くのプレイヤーが最初に拠点とするのが,主人公が200年前に住んでいたサンクチュアリ・ヒルズだろう。ストーリーを進めると,ここに数人の住人が住み着くようになり,プレイヤーはクエストをこなす形で彼らの面倒を見ていく。
核戦争を経て荒れ放題のサンクチュアリ・ヒルズには潰れた家屋が多いが,それだけに,建築スペースや建築材料になる廃材には困らない。小屋を建て,ベッドを置き,井戸を作って食料となる野菜を植える……と作業を続けていけば,自然と愛着も湧いてくる。戦前の美しい風景にはほど遠いが,作業を続けていけばだんだんとコミュニティ然としてくるだろう。条件さえ揃えば,さまざまな店舗を設置することもできる。
敵の襲撃から土地を守るには,見張り台やバリケードといった防衛地点や,トラップ,マシンガンタレットなどを設置して,襲撃者を蹴散らさなくてはいけない。小屋を砦に増築し,武器やトラップを各所に設置して敵に備えるのは,まるで秘密基地を作っている感覚で実に楽しい。外装だけでなく内装も自由にできるので,いろいろこだわっていると,時間がどんどん奪われていく。
Falloutシリーズ従来作では,廃墟を基地に改造したレイダーや,ガラクタや簡単なバリケードで囲った村が存在したが,まさにそれらをプレイヤーが運営できるようになったわけだ。
コンパニオンを常駐させることもできるので,同居感覚で暮らすことも可能。まさに「自分の城」といった感じだ。村づくりだけ,ずっとやっていたい。
ただ建築は,通常のプレイと同じ視点で行うため,全体像がつかみにくかったり,狙った場所にぴったり目的物が置きづらかったりと,やりづらさを感じる場面もあった。建築専用画面などがあれば,さらに良かったかもしれないが,別のゲームになってしまいそうでもある。
さて,充実したクラフト要素はすばらしいが,何かを作るには当然,材料が必要になる。こんな世界でホームセンターが営業しているわけはないので,基本的にはスカベンジングによる現地調達,つまり廃墟でのジャンクあさりを行う必要がある。シリーズ従来作にもジャンクは多数存在し,一部に使えるモノもあったが,基本的にゴミはゴミだった。職業としてのスカベンジャーは見かけるものの,多くのジャンクは使い道がなかったので,ゲームに慣れてくるとチェストだけあさるというプレイヤーも多かったのではなかろうか。
うち捨てられたスーパーや工場の廃墟などが目に入ると,何かいいものが落ちていないかとワクワクしてしまう自分を発見して,驚いたりしている。
さらに楽しく,そして厳しくなったウェイストランドでは
多くの敵と汚染の恐怖がプレイヤーを待つ
本作はナンバリングタイトルで,かつ舞台もアメリカ東海岸であるせいか,全体的な雰囲気はFallout 3のワシントンD.C.にかなり近い。どこに行ってもカラッとしていたNew Vegasのモハビと異なり,空には晴れ間こそ見えるものの,陰鬱とした雰囲気の場所も多く,廃ビル群や地下鉄を探索していると,キャピタル・ウェイストランドを思い出さずにはいられない。
ちょっとしたコツさえつかめば,Fallout 3のように汚染水や,200年前の食料を口にする必要はほとんどない。
しかし,ヌルゲーになったのかといえば,それはまったく違う。ラッドローチやモールラットといった,以前は障害物にすらならなかった雑魚クリーチャーも,挙動や戦闘モーションが大きく見直され,慣れないうちは手強い相手になる。廃墟に巣くう敵も多めに配置されており,数に任せて襲ってくる場面も多いし,全部倒したと思ったら,背後から新手が次々出現してくるといった状況も早くから登場する。序盤のちょっとしたお使いクエストのつもりで気軽に目的地に向かったら,そこはレイダーの一大拠点で,命からがら逃げ出した,というウェイストランド流のおもてなしも健在だ。
スティムパックなどの回復アイテムは使用しても即座に回復はせず,時間をかけて徐々に効いていくというNew Vegasのハードコアモードと同じ仕様に変わった。甘い予測に基づき,HPが減りすぎてからアイテムを使っても,おそらくそのまま昇天してしまうだろう。戦闘全般の難度は少し上がった印象だ。
しかし,それらよりもっと厳しいと感じた変更点が,体内に蓄積される汚染だ。旧作では体力と汚染度は別のステータスで管理されており,一定量放射能に汚染されると体に影響が出るというシステムになっていた。逆にいえば,一定量まで汚染されない限り被害はなく,相当無理をしなければそこまで危険な状況に陥ることもなかった。
本作ではそれが大きく変更され,汚染ゲージが体力ゲージと一体化した。どういうことかといえば,汚染されたぶんだけ,そのまま体力の最大値が下がるのだ。例えば汚染が20溜まればそのまま最大HPも20減るし,部位ダメージも完全に治癒しなくなるという感じだ。まさに汚染が生命力を削っていくという仕組みになっており,もちろん,蓄積された放射能汚染は自然回復しない。
本作では,そんな放射能の恐ろしさがよりストレートに表現されており,それだけに,治療できる医者や放射能除去薬の「RADアウェイ」の重要性が高まった。
規格外のボリューム! 全方位でパワーアップを遂げた
「Fallout」シリーズの最新作
Fallout 4をプレイして感じる進化はシステム面だけではない。グラフィックスや動作モーションなども一新され,崩壊した世界で生き,そして死んでいく人間とその社会のリアリティがより増している。グラフィックスについては,それなりのレベルだが,それでもシリーズ従来作からは大きく躍進しており,そもそも,このクオリティを維持したままシームレスに移動できる広いマップが作られていることに驚く。
ゲーム中に登場する録音テープやコンピュータ内のデータも,しっかりと翻訳されているので,隅々まで世界を堪能したい人も十二分に楽しめるはずだ。これだけ膨大なテキスト,音声をすべて日本語化したというのは,かなりすごいことだと思う。
大ヒットシリーズの最新作として,世界中のゲーマーから多大な期待を寄せられた本作だが,質と量の両面で,その期待に十分応えている。Fallout 3とNew Vegasの「いいとこ取り」をしてブラッシュアップしただけではなく,「The Elder Scrolls V: Skyrim」のエッセンスを取り込み,その完成度は「ベセスダの究極のRPG」に仕上がっていると思う。
さらに,DLCの展開や,PC版の場合はMODなどの要素もあり,長く付き合える一作になるのは間違いない。シリーズファンなら,マストアイテムだ。
もしあなたがシリーズ未経験で,シリーズ4作目という数字が気になったとしても,心配する必要はない。主人公は文明社会で何不自由なく暮らす一般人であり,画面を見つめる我々と同じ存在だ。主人公も,この崩壊した世界のことは何も分かっていない。そして,このウェイストランドを主人公と共に旅することで,徐々に,そして否応なくこの世界の常識やルールが理解できてくる。この世界に慣れた頃には,あなたも立派な「ウェイストランド人」になっているはずだ。
RPGとしては,ある意味,異色の作品だ。主人公は勇者ではないし,魔王のような倒すべき悪の元凶がいるわけでもない。世界を守ろうにも,それは200年前に崩壊してるし,その引き金を引いたのも人間なのだから,二重の意味で救いがない。ゲーム中の表現も過激で,日本語版にはとくに規制もないこともあって,多少人を選ぶ,アクが強い作品なのは間違いない。
だが,それゆえに本作は刺激的で,世界中のゲーマーを虜にする魅力に満ちている。ウェイストランドは危険な場所ばかりだが,冒険した意味のある“何か”がそれらには用意されており,だからこそ,気ままに放浪するのが心から楽しい。そんな旅で手に入れたガラクタを組み合わせて自分で家を作れば,この汚染された残酷な世界がより身近に感じられ,そのうちゲームを立ち上げるたびに「ああ,帰ってきた」という感覚さえ湧くようになる。Fallout 4にはそれだけの懐の深さがあり,これを超える作品が次にいつ登場するのか,ちょっと想像がつかないほどだ。筆者も時間が許す限り2287年にタイムスリップしていたい。
ベセスダが放つ,究極のオープンワールドRPGとなった「Fallout 4」。日本語版が登場したこの機会に,ぜひ1人でも多くの人に本作をプレイしてもらいたい。
「Fallout 4」公式サイト
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