プレイレポート
「実況パワフルプロ野球2014」で久々に登場する「栄冠ナイン」をプレイしてみた。とことんストレスフリーでやめどきが見つからない
ピッチングのとき,リリースに合わせてタイミング良くボタンを押すといい球が投げられる「ナイスピッチングシステム」が新たに搭載されたり,ペナントモードで実際のプロ野球と同じ70人の選手を支配下選手として登録できるようになったりと,数々の注目ポイントがある本作だが,中でも筆者が気になっているのは「栄冠ナイン」モードだ。
この栄冠ナイン,実は過去のシリーズ作品に搭載されたことがあるモードで,パワプロファンの間では非常に評価が高かった。パワプロシリーズをそこそこプレイしているのに,栄冠ナインはなぜか未体験だった筆者は,ネットの掲示板などで「栄冠ナイン帰ってきちくり〜」といった書き込みを見るたび,「そんなに面白いのか……」と残念な思いを募らせていた。今回また搭載されると聞きつけて「これは!」と思い,ひと足早くプレイさせてもらった結果,「これは夢中になるわけだ」という結論に達したので,そのプレイレポートをお届けしよう。
なお,今回試遊したのはPlayStation 3版で,記事内の表記もそちらに準じている。
練習メニューは豊富だが,それほど悩む必要はない
「栄冠ナイン」は,シリーズでおなじみの「サクセス」と同様に,オリジナル選手の育成モードなのだが,サクセスとの大きな違いに,試合中に投球や打撃などの操作を一切行わないことがある。プレイヤーは高校野球部の監督となり,日々の練習や試合で選手にさまざまな指示を出して,彼らを育てていくのだ。
練習の進め方をひと言で説明するなら,“カードを使ったすごろく”という感じだ。画面上部にはカレンダー,下部には「進行アイコン」という練習メニューと数字が描かれたカードが表示されており,行いたい練習の進行アイコンを選ぶと,数字の分だけカレンダーが進み,選手の能力が上がっていく。もちろん数字が大きい(日数が多い)練習ほど,効果は高くなる。
そして,カレンダーの各日を表すマスには,いいイベントが起こる青色,悪いイベントが起こる赤色,練習の効果が上がる黄色,選手の体力が回復する緑色といった種類があり,プレイヤーはどのマスに止まるかも考えながら進行アイコンを選んでいくことになる。
ただ,実際にプレイしてみると,基本的には止まるマスの種類にだけ注意し,数字だけで進行アイコンを選べばいいという印象だ。というのも,進行アイコンは使った分だけ補充され,使わなかったカードはそのまま残り,たいていの場合,いつかはその練習を行うことになるからだ(※ただし「スケジュール見直し」という進行アイコンを選ぶと,手持ちのものがすべて新しいものに入れ替わる)。
これだけ聞くと,どうやっても同じようなチームや選手になってしまいそうだが,監督の意思を練習に反映させるものとして,年が変わったり,新入生が入ったりといった節目で行える,「育成方針決定」が用意されている。ここで「打撃重視」「守備重視」といったものを選べば,それに合った進行アイコンが補充されるようになるのだ。
また,月の初めには選手それぞれに個別の練習メニューを指示できる。これはチームの練習と並行して行われるもので,投手なら「球速アップ」「制球アップ」「変化球覚える」,野手なら「パワーアップ」「ミートアップ」「肩力アップ」など,細かい指示が可能になっている。
つまり,一度方針を決めてしまえば,毎回チームや選手についてじっくり考える必要はなく,数字とカレンダーのマスで進行アイコンを決めていけばいいのだ。
試合には魔物が棲む。強いから勝てるわけではない
練習を積み重ねて臨む試合は,プレイヤーが試合開始前に指定した注目選手の出番や,勝負を左右しそうな場面のダイジェストで展開する。プレイヤーは,攻撃時には「流し打ち」「引っ張り」「盗塁」,守備時には「内角中心」「外角中心」「打たせてとれ」などといった「戦術アイコン」を選んで進めることになる。戦術アイコンには進行アイコンと同様に数字がついているが,これは選手の集中度を表しており,数字が大きいほど,その戦術が成功する確率が“基本的に”高くなるのだ。
だが,“基本的に”と書いたとおり,単に数字が大きい戦術アイコンを選んでいるだけでは,勝利はおぼつかない。多少数字が低くても,「送りバント」や「犠牲フライ」を選んで1点を取りに行くことが必要になるし,打力が低い選手の場合,「ヒットエンドラン」の数字が高めだったとしても,空振りして走者がアウトになる可能性もある。
このあたりはさすがに“野球ゲーム”しているという感じで,“ノーアウトランナー2塁で右打者に流し打ちの指示を出し,ヒットにならずとも進塁打を狙う”といった戦術もしっかり使える。また,戦術アイコンとは別に,攻撃時にはミートバッティングや強振,守備時には前進守備やゲッツーといったシフトの指示が出せるほか,ピッチャーが疲れたり,連打を浴びて混乱したりしたときは「伝令」や「ドンマイ」といったコマンドで立ち直らせることもできる。
もちろん投手交代や代打なども可能なので,テレビでプロ野球中継を見ながら監督の采配にダメ出しをしているような,うるさ型のファンは腕の見せどころだ。
選手への“適度な思い入れ”が心地よい
栄冠ナインでは,ここまで説明してきたように練習と試合を繰り返して甲子園出場や優勝,選手のプロ入りを目指すことになる。これだけだとプレイが単調になるようにも思えるのだが,実際にプレイしてみると,飽きが来るどころか,やめどきが見つからないぐらいなのだ。
その要因の1つとなっているのが,「選手の成長が感じられる」という点。説明したように,月の初めには各選手へ練習指示を出すのだが,そのときに前月に指示した練習の成果がしっかり表れていて,思わず嬉しくなってしまう。最近のパワプロでは,パワーや走力といった能力が1〜100の数字で表され,それがG〜Sの8ランクに分けられているのだが,栄冠ナインでは1か月練習しただけでランクが上がっているケースが結構多い。もちろん,練習を指示した時点でランクアップ間近だったという場合もあるのだが,やはりランクが上がっていると“成長した感”が強くて,やる気が出る。
筆者の場合,一般的な育成ゲームをプレイしていると「あまり成長しないな」「この方法でいいのか?」といった感じで疑心暗鬼に陥ってしまうことが多い。その点,この栄冠ナインでは,前述したように進行アイコンの選択で迷うことがほとんどなく,選手の成長もハッキリと分かるので,どんどん先に進めたくなってしまうのだ。
ただ,そうやってチームが成長しても,試合で必ず勝てるわけではないのがまた栄冠ナインの面白いところだ。もちろん,基本的には強くなるほど勝利の確率は上がるのだが,格下のチームにあっさり負けたり,逆に弱小チームで強豪校に勝ってしまうこともある。筆者も開始2年目の夏,能力でいえば「E」や「F」が目立つ選手達で県大会を勝ち上がり,甲子園へ出場してしまった(甲子園1回戦では0-14のボロ負けだったが)。
本物の野球と同じく,勝負はふたを開けてみないと分からない。自分の率いるチームが強かろうが弱かろうが,気が抜けないのだ。
そして,練習で着実に成長し,予想もしない試合展開に振り回される選手達を見ていると,自然と彼らに思い入れが生まれ,プレイにも熱が入ってくる。選手自身ではなく,監督としてプレイしているだけに,一歩引いたところからの思い入れになるのだが,個人的にはこの感覚がなかなか心地よかった。
というのも,筆者の場合,選手としてプレイする「サクセス」などのモードでは,“選手の評価=自分の評価”という格好になるためか,うまくいかないとリセットしたくなるのだが,栄冠ナインでは選手の欠点やミスを「個性」として見ていられたのだ。
今回の試遊では,1年生からマウンドを守り続けてきたのに,最後の夏の大会で絶不調になって打ち込まれたピッチャーがいたのだが,その様子を見ながら「いやー,悲劇のエースだなぁ」などと感慨にふけってしまった。サクセスで同じような状況に遭遇していたらコントローラを投げていたかもしれないが。
この“適度な思い入れ”も,栄冠ナインのプレイを続けるモチベーションになっていると言えるだろう。
そして,今回の栄冠ナインでは,実在のプロ野球選手が新入生として入ってくるという要素も登場している。能力も高く,顔もあくまで“パワプロチック”ではあるがなかなか似ているので,これまた思い入れのしがいがあるというもの。今回の試遊では確認できなかったが,敵チームの選手としても登場するようなので,有名選手同士の対決などが楽しみだ。
とことんストレスフリーでやめどきが見つからない
ここまで長々と説明してきたが,栄冠ナインのさまざまな要素に共通して感じるのは,プレイするうえでのストレスがとことん排除されているということだ。練習の方法で悩むことはなく,選手は確実に成長してくれるし,試合前に「どうせ負けるからやりたくない」などと思うこともない。選手への思い入れが強くなりすぎて,失敗を許容できずにリセットすることもないのだ。「サクセス」のように「とことんまで突き詰めて選手を育成する」ということはやりづらいが,それを補って余りある魅力だ。
ストレスがないので気持ちよくプレイが続けられて,やめどきが分からなくなってしまう。本モードには日本地図が用意されていて,各都道府県の高校で甲子園に出場すると赤,甲子園で優勝すると緑に塗られるという機能もあるのだが,確かに全都道府県での甲子園優勝を目指すぐらいに長く遊べそうな印象だ。しかもPlayStation 3だけでなく,携帯機のPlayStation Vita版も用意されているので,筆者は場所を選ばず教え子達の育成に励むつもりだ。
「実況パワフルプロ野球2014」公式サイト
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ゲーム内に再現された球場内看板は、原則として2014年プロ野球ペナントシーズン中のデータを基に制作しています。
データ提供 データスタジアム(株)
(C)Konami Digital Entertainment