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[TGS 2018]SIE WWS 吉田修平氏インタビュー。PS VRは導入段階から,深い体験を提供するステージへ
今回は短い時間ながらも,先日発表されたばかりの「プレイステーション クラシック」をはじめ,今後のタイトル戦略やPlayStation VR(以下,PS VR)が置かれている現状などについて話を聞いている。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは東京ゲームショウ開幕前日に発表された「プレイステーション クラシック」ですが,たいへん驚きました。
吉田修平氏(以下,吉田氏):
私も驚きました(笑)。いや,もちろん製品の存在は把握していましたが,発表のタイミングを忘れていましてね。「お,発表したんだ」と。
4Gamer:
気になる収録タイトルがまだ明らかにされていませんが,こちらはどのようなプロセスで選ばれたのでしょうか。
吉田氏:
弊社のスタッフが長期間,熱いバトルを繰り広げた末に決まったと聞いています。ぜひ楽しみしていただきたいですね。
“初代プレステ”モチーフで懐かしの20作を内蔵した小型機「プレイステーション クラシック」が発表。数量限定で12月3日発売,税別9980円
SIEは本日,初代「プレイステーション」をコンパクトなサイズで再現し,懐かしの20タイトルを内蔵した「プレイステーション クラシック」(SCPH-1000Rシリーズ)を,数量限定で2018年12月3日に発売すると発表した。国内価格は9980円(+税)だ。※15:25,プレスリリースを追加しました
[TGS 2018]写真で見る「プレイステーション クラシック」。小さなボディだけでなく,オリジナルと同サイズのゲームパッドにも注目
TGS 2018開幕直前に,突如として発表となった「プレイステーション クラシック」。その実機が,TGS 2018会場のSIEのブースで公開された。本稿では取り急ぎ,会場で撮影した実機の写真と,現場で確認した情報をお届けしよう。
4Gamer:
「ついに“プレイステーション”も来たか!」といった製品です。
吉田氏:
ユーザーさんにとっての「宝物」のような位置づけですよね。私も他社さんのミニハードは買っているのですけど,箱を開けられずにいます(笑)。でも,持っておきたいんですね。
4Gamer:
ファンアイテムとしては,理想的な製品だと思います。
吉田氏:
海外では予約受付が始まったこともあり※,多くのユーザーからメッセージが届いています。私も急いで海外版を予約しました。
※日本ではPlayStation Plus会員限定の抽選予約が始まったが,海外ではすでに一般の予約受付が開始しているとのこと。
4Gamer:
それでは,PlayStation 4(以下,PS4)タイトルの話をお聞きしたいと思います。少々失礼ながら「Marvel’s Spider-Man」が日本で10万本を超えるヒット※になるとは予想されていましたか。
※メディアクリエイト調べ。
吉田氏:
ええ,失礼ですよ,それは(笑)。いや,私もビックリしています。海外で高い評価を受けてヒットしているタイトルが,なぜか日本では振るわず,がっかりすることに慣れつつありましたから,本当にビックリしたんです。
私は全世界のスタジオに対して責任がありますので,「アンチャーテッド」「Horizon Zero Dawn」(以下,Horizon)「God of War」の大ヒットは嬉しい。ただ,日本におけるPS4本体の普及台数から考えると,海外タイトルの割合はまだ低いと捉えています。
4Gamer:
海外でヒット=日本でもヒット,という状況とは言えなかったと。
吉田氏:
文化的な背景の違いがあるとはいえ,日本のユーザーさんにも海外のすごいゲームを伝えたい,もっと知ってほしい,手にとって遊んでもらえたら絶対に好きになってもらえる,と思っていました。
そんな風向きが変わったと感じたのは,昨年のTGSなんです。SIEブースの「Detroit: Become Human」(以下,Detroit)の出展がすごくいい内容で,話題にもなりました。その流れもあってか,「Detroit」は世界だけでなく日本でのセールスも好調でしたし,日本のユーザーさんに愛されていると感じます。
日本のユーザーさんに海外のゲームの魅力が伝わりだしたのかな,というちょっとした期待感はあったんですね。
4Gamer:
まさにそのタイミングで「Marvel’s Spider-Man」がリリースされたというわけですね。
「Marvel’s Spider-Man」に関しては,E3での反応も良く,世界的にヒットする予兆はありました。しかし,日本でそのレベルは難しいのかな,と思っていたら,全然そんなことはありませんでした。これを機会に,SIEの海外スタジオに目を向けてくれるユーザーさんが増えることに期待しています。
「Marvel’s Spider-Man」はかなりボリュームのあるゲームですが,10月,11月,12月とストーリーベースのDLCをリリースしますので,さらに長く遊んでほしいと思います。
4Gamer:
海外スタジオのヒット作品が続いていて,いい流れであると感じます。一方,JAPANスタジオの動向はいかがでしょうか。
吉田氏:
JAPANスタジオは過去2年で,抱えていたすべてのプロジェクトを出し尽くした状態なので,おとなしい印象があるでしょう。ただ,今年はTGSに向けて,「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」「みんなのGOLF VR」「Déraciné(デラシネ)」というPS VR必須タイトルを出展しています。いずれもPS VRの特性を活かした個性的なタイトルとして,自信を持って送り出せるものです。
4Gamer:
PS4タイトルは次の展開を控えている段階ということでしょうか。
吉田氏:
ええ,表立った動きはありませんが,スタジオ内部では「次は何をしようか」と画策しているところです。いろいろな施策が進んでいて,非常に面白い時期ですよ。
4Gamer:
昨年,こちらでお話をうかがったとき,「PS VRはまだ導入段階が続いている」という発言をされていました。ちょうど1年が経過しましたが,あらためてPS VRのステータスをお聞きしたいです。
[TGS 2017]PlayStation VRは価格改定する10月に供給体制が整う。SIEWWSプレジデントの吉田修平氏にVR市場に向けた年内の展開を聞いた
4Gamerでは,東京ゲームショウ2017の初日(2017年9月21日)に,ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏に,インタビューする機会を得た。今回は,PlayStation VRおよび現在のVR業界に関する吉田氏の考えを中心に話を聞いている。
吉田氏:
昨年の発言は,「VR自体が新しい体験なので,実際に触れてみないと伝わりにくく,引き続き普及に努めていく段階である」という意図でお話しました。その意味では,今年も同じです。PS VRの普及台数は着実に増え,先日は300万台の実売数を達成しましたが,まだまだVRを体験していない方が多く,今後も体験の機会を用意するといった活動が必要です。
一方でPS VRのユーザーが広がったことで,ゲームデベロッパ側のスタンスには変化が出てきました。ローンチ当初はVRによってできることや面白さを探り,発見する時期だったと思います。そのため,やや小さい規模でたくさんの体験を得られるものを提供してきました。これは我々だけでなく,業界全体にそういった流れがありました。
4Gamer:
それが変わってきたと。
吉田氏:
「THE PLAYROOM VR」や「PlayStation VR WORLDS」といったタイトルは,小さなVR体験ができるゲームのコレクションのような形です。そのなかで,とくにユーザーさんの反響が大きかったコンテンツがありました。「THE PLAYROOM VR」の「ROBOT RESCUE」,「PlayStation VR WORLDS」の「The London Heist」ですね。
それぞれに「この体験をフルゲームにしてほしい」という声をいただきましたので,JAPANスタジオは「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」を,ロンドンスタジオは「ライアン・マークス リベンジミッション」を開発したという経緯があります。ゲームユーザーが納得できる「深い体験をちゃんと作ろう」と考え,この2年間をかけて取り組んできました。
これは,ほかのスタジオやチームも同様です。PS VR必須タイトルにも「深いゲーム体験」を求める方が増えてきたことが分かりましたので,年々,より規模の大きなゲームを作るという計画が進んでいます。今年8月にリリースした「Firewall Zero Hour」も,その一環であると言えます。
4Gamer:
本格的なチーム対戦型FPSとして,プレイヤーからの評価も高いですね。
吉田氏:
オンラインを通じて,世界中のプレイヤーが1つのVR空間に集まり,手軽に対戦が楽しめるということで,非常にいい反響をいただいています。
先ほど挙げた「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」や「ライアン・マークス リベンジミッション」も含めて,我々が提供するPS VR必須タイトルはユーザーさんが納得されるような,長く深く遊べるものへと変わりつつあります。着々と新しいステップへと進んでいるところです。
4Gamer:
新規層の開拓と並行して,すでにPS VRを所有しているゲーマーへのアプローチも始まっているということですね。
最後になりますが,来年2月にPS4はローンチから5周年を迎えます。周期的には,そろそろ次世代の足音が聞こえてくる頃ではないかと思うのですが。
吉田氏:
ハードが次世代に移行する周期は,時代を追うごとに長くなっていると考えています。例えば,我々が昨年リリースした「Horizon」「God of War」はともに開発に数年かけており,「Days Gone」を手がけているベンドスタジオの前作は2012年の「Uncharted: Fight for Fortune」(PlayStation Vita,日本未発売)です。
今年や来年に初めてPS4タイトルをリリースするというスタジオもあることから,私としては「やっとPS4の加速が始まったな」という思いもあります。長年かけて仕込んできたものが,ようやく世に出せるようになってきました。
PS4というハードは非常によくできていて,まだまだ可能性があると考えています。できることが多すぎるため,際限なく作り続けてしまうくらいの現状を踏まえると,ハードの限界を迎えているとは感じない。ゲームの歴史を振り返ってみると,限界が見えたときが移行のタイミングではないかなと。
近年,4KやHDRといった映像の進化が目覚ましいですが,PS4 Proの投入によってうまく対応できていますので,理想的な状況だと思っています。
4Gamer:
PS4もPS VRも「ここからが本番」ということですね。本日はありがとうございました。
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