ニュース
[COMPUTEX]Microsoft,x86とARMの両方で動作する「Windows 8」を披露。タブレット向けの新UIや一部ハードウェア要件も明らかに
「次世代製品」とは,開発コードネームが「Windows 8」だと北米時間2011年6月1日に明らかとなった次世代Windowsだ。
タブレットでの使い勝手に配慮し
タッチ操作に最適化したWindows 8
最初に登壇したTami Reller最高財務責任者は,次世代WindowsのコードネームがWindows 8であることを公表。続いて登壇したMichael Angiulo副社長が,その概要紹介やデモを行った。
Tami Reller氏(CFO, Corporate Vice Presidient, Windows and Windows Live Division, Microsoft Corporation) |
Michael Angiulo氏(Corporate Vice Resident, Windows Planning, Hardware and PC Ecosystem, Microsoft Corporation) |
「今,コンピューティングのトレンドは大きな変革を迎えている。これに対応すべく,Microsoftが総力を挙げて開発に取り組んでいるのがWindows 8である」
「変革」とは何なのか。Angiulo氏は具体的に,次の2つを挙げている。
- タッチインタフェースを採用した新しいスタイルのPCが台頭してきていること
- アプリケーションやサービスのベースプラットフォームがWebになってきていること
誤解を覚悟で断定的に表現してしまえば,前者はタブレット,後者はHTML5やCSS,WebGL,Javaなどのことをそれぞれ指しているのだと思われる。
Windows 8の新GUIが動作デモ付きで公開に
「スタート」はボタンからスクリーンへ
Angiulo氏は,「本日お見せするのは,実際に動作する,開発中の,本物のWindows 8だ」として,Windows 8の動作を実際にデモンストレーションしてみせた。イベントはビデオの撮影が許可されなかったため,YouTubeムービーを掲載してある6月2日の記事と併せて読み進めてもらえればと思う。
さて,氏が最初に見せたのは,指をスライドさせて画面を左右にスクロールさせる操作。Windows 8は,GUIが完全にGPUアクセラレーションされて描画されるものとなり,ゲーム画面のように流れるようなスクロールレスポンスを返す。
天気予報を起動したところ。実はこれ,HTML5ベースだ |
タッチスライドで高速スクロールしているところを撮影した |
「Start」と左上に出ている画面は,スタートメニューならぬ,「スタートスクリーン」。Windows 8特有の画面で,ここには,ユーザーが最もよく使うアプリケーション(以下,アプリ)や,よくコミュニケーションする友人や,一番知りたい情報などが表示される。
項目をタッチすればアプリが起動するのだが,注目したいのは,そのときウィンドウのフレームは表示されず,アプリが全画面表示されること。「Windows 8では,画面の全域を使ってアプリの情報を表示するようなデザインに努めた」(Angiulo氏)とのことだ。
Windows 8では,画面の端を指で触れるとメニューバーなどを呼び出せるようになっている。右端ならシステム関連,上下なら現在表示しているアプリケーションのメニューバーがそれぞれ出てくるといった具合だ。また,左端に触れると,起動中のアプリをサムネイル表示した状態でつまみ出せるようになっており,ここで指をスライドさせると,つまみ出したサムネイル状態のアプリが全画面表示される。Windows 7の「ライブタスクバープレビュー」操作を[Alt]+[Tab]キー的に実装してきたイメージだ。
つまみ出したアプリのサムネイルを画面上の適当な位置で静止させると,そこで画面が左右に区切られ,2つのアプリがサイドバイサイドの横並びで表示されるようになる。2つのアプリの境界線付近をタッチしてスライドさせれば,2つあるウィンドウの大小を自在に調整可能だ。
さらに,サイドバイサイド状態で別のアプリをつまむと,2ウィンドウ状態から片方だけ別のアプリへ切り替えることもできる。
マウス操作を指タッチに置き換えただけの操作系ではなく,「指タッチで快適に操作できるインタフェースとしてはどんなものなのか」を徹底的に研究して設計されたという手応えの感じられたデモだ。
続いて,このタッチパネル型インタフェースを用いて「Internet Explorer 10」を使う操作系も公開された。
実際にAngiulo氏は,画面の上部に触れると各Webページのタブがサムネイルで表示されることと,これらに触れると,表示されるページが瞬間的に別タブの内容へ切り替わることを示してみせた。
さて,URLやフォームなどへのキー入力は,タッチ型インタフェースを使う以上,ソフトウェアキーボードを用いて行うことになるわけだが,Windows 8では,ここにもユニークな工夫が垣間見られる。
ソフトウェアキーボードは,一般的な,QWERTY配列のものが画面下半分などを覆うような動作モードでも利用できるのだが,キーボードが左右に分割され,タブレットを両手で持ったとき,左右の親指で操作しやすくなるスプリットキーボードモードも利用できるようになっているのだ。
従来型のWindowsデスクトップも
同時に利用できる
というわけで,ここまではタブレット向けに最適化された操作系やインタフェースが紹介されてきたわけだが,「Windows 8が従来どおりPC用OSであることは変わっていない」とAngiulo氏。
Angiulo氏は,スタートスクリーンにある「DEKSTOP」にタッチし,従来からのWindowsユーザーに馴染み深いデスクトップ画面へスイッチしてみせた。当然,この従来型のWindowsデスクトップ画面への移行も瞬間的に行える。
ここでAngiulo氏が訴えていたのは,“タブレットモード”と“PCモード”を切り替えているわけではないということ。「タブレット的なインタフェースと,従来のWindows的なデスクトップは完全に統合されているのだ」とAngiulo氏は断言する。
その証拠に,Angiulo氏は,タブレット的インタフェースと従来型デスクトップとをサイドバイサイドで画面分割表示させたり,あるいはタブレット的インタフェース画面と従来型デスクトップの両方を駆使してファイル選択したりといった,Windows 8ならではのオペレーションをやってみせていた。
「Windows 8は『タブレットのために作られたWindows』ではない。すべてのPCで使ってもらえるOSであり,PCごとに最適な使い勝手を提供し,同時にユーザーが使いやすい使い方を選べる革新的なOSなのである」(Angiulo氏)
Windows 7から大きくは変わらない
Windows 8の動作要件
話題は,Windows 7からWindows 8へのアップグレードに関する話題へと移る。
まずは気になるハードウェアシステム要件だが,基本的にはWindows 7から大きくは変更なく,Windows 7が動作するPCには,問題なくWindows 8をインストールできるとのことだ。
アップグレードインストーラは賢くできており,そのPCに搭載されているハードウェアを分析して,そのPCに最も適したユーザーインタフェースの在り方を自動的に決定してくれるという。
例えばタッチインタフェースがない大多数のPCだとどうなるかだが,もちろん,普通にマウスとキーボードで使えるデスクトップ環境がセットアップされる。ただし,[Windows]キーを使えば,タブレット型インタフェースとの交互往来は問題なく可能だ。
ARM版Windows 8の真実
そして,Angiulo氏は,ユーザーやハードウェアメーカーが期待する新機能でもあるARMアーキテクチャへの対応について言及した。
Angiulo氏は,Qualcommの「Snapdragon」をベースとした開発者向けのリファレンスタブレット端末を手に取り,本イベントでここまで紹介されてきたWindows 8の機能をARMアーキテクチャでもすべて実現できているとアピールした。
プリンタやカメラ以外にも,ARMベースの製品では,さまざまな周辺デバイスが組みまれた製品の登場が予想される。そのためMicrosoftでは,そうした周辺機器のドライバ整備を急ピッチで進めているという。GPSセンサー,加速度センサー,電子コンパスなどは,現行のタブレット端末でも多く内蔵されているが,そうしたデバイス群までをもWindows 8環境で効果的に利用できる環境やAPIの整備が進められているようだ。
これらの実現にはUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)などが利用されると見込まれる。
Qualcomm製の開発者向けリファレンスタブレット |
Texas Instruments製の開発者向けリファレンスタブレット |
さらにAngiulo氏は,x86系プラットフォームにはない,ARMプラットフォームならではの利便性についても言及。ARMプラットフォームでは,ネットワーク機能までが1チップに統合されているため,システムがスタンバイ状態でも常にネットワークに接続した状態を維持できるとした。
要するに,スタンバイ状態でもメールなどの受信が可能というわけだ。
Windows 8は単なる
アップグレードOSではない
分かりやすい例として挙げられるのは,前述した画面アスペクト。4:3アスペクトではサイドバイサイド表示を利用できないので,Windows 8向けPCは16:9アスペクトの採用が奨励される。また,ワイドアスペクトであっても1024×600ドットでは解像度が足りないため,やはりサイドバイサイドは利用できない。
また,既存のタッチセンサー一体型液晶ディスプレイは,外周付近の感度に弱点を抱えるものが多いのだが,外周部を触りまくることになるWindows 8では,この部分の妥協は勧められない。
Windows開発者向けカンファレンスであるBuild開催のお知らせ |
VAIO LにインストールしたWindows 8(左)と,ARMベースタブレットで動作するWindows 8(右)で,同一のアプリが動作しているところに注目 |
Buildは,Windows関連開発者向けカンファレンスであるWinHECとPDC,MIXのすべてを統合した新しいカンファレンスになる見込みで,当然,メインテーマはWindows 8ということになる。
おそらく,今回のプレビューイベントで明かされたこと以上に深いWindows 8の話題が出てくることだろう。ゲーマーとしては次世代DirectXや,Windows 8のユーザーインタフェースを活用したタイトルの動向が気になるが,はたして……。
「COMPUTEX TAIPEI 2011」関連記事はこちら
- 関連タイトル:
Windows 8.x
- この記事のURL: