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「GTX 580は“GF102”だ」――TSMCのプロセス移行計画変更が影を落とすNVIDIAとAMDのGPUロードマップ
「半導体の歩留まりもさることながら,デスクトップPCに適した消費電力を維持することが最も重要だ」として,GF100で512コアを有効にできない理由は,半導体製造における歩留まり率だけの問題ではないと,指摘していたわけだ。
この時点では,「512 CUDA Core仕様のFermi」が,
- GeForceの製造を担当するTSMCの歩留まり率向上に伴って省電力化を実現したGF100
- GF100をベースに半導体設計を見直したGF102コア
のどちらになるのかは不透明だった。その後,夏頃になって,複数のグラフィックスカードベンダー関係者から「GF102はキャンセルされ,NVIDIAはアーキテクチャ変更を伴うGF110にフォーカスする」という話が聞かれるようになり,1.でも2.でもない,GF110こそが,次のフラグシップ製品と見られるようになっていったのである。
この状況には,グラフィックスベンダー関係者はもとより,大手OEMベンダー関係者も「今年ほど,半導体ベンダーのロードマップが当てにならない年はない」とグチをこぼさざるを得ない模様。ハイエンドのカードは完成品納品なので,発表直前まで最終的な仕様が分からないことが,彼らをいらだたせているようだ。
TSMCのプロセス移行計画変更が大きく影響
この相次ぐグラフィックス製品ロードマップの変更には,AMDとNVIDIAのグラフィックスチップ製造を一手に引き受けるTSMCのプロセスロードマップ変更が大きく関係している。
AMDとNVIDIAは,もともとTSMCの32nmプロセスが立ち上がるのを当て込んだ計画を立てていた。それが,3月の時点で32nmプロセスが正式にキャンセルされ,さらに,4月の投資家向け会議で22nmプロセスもキャンセルして20nmへ移行する計画が明らかになったことで,ロードマップの大幅な見直しを迫られたのだ。
これまで,グラフィックスチップの進化は,65nmプロセスに対する50nm,45nmプロセスに対する40nmといった,中間世代プロセスの採用により,半導体のシュリンクと高性能化を当て込んできた。しかし,半導体の微細化が進むにつれ,歩留まりの向上や新プロセスの開発にかかる労力は増大し,中間プロセスを採用するメリットが薄れてきたのも事実。そこでTSMCは,32nmプロセスと22nmプロセスのスキップを決め,メジャーなプロセス移行にフォーカスする戦略に転換したというわけである。
またNVIDIAも,GF11xシリーズで32nmプロセスを採用する計画を進めていたため,やはり大規模な方針転換を図ることになった。
複数のグラフィックスカードベンダー関係者は,「NVIDIAは,DirectX 11世代への移行で遅れを取ったこともあって,これまで以上にAMDの出方を注視してきた」と指摘する。実際,「GeForce GTX 460」(以下,GTX 460)で大幅なアーキテクチャ変更を加え,「当初32nmプロセスで採用しようとしていた,『Streaming Multi-processor 1基あたり48 CUDA Core』の構成を採用してきたのは,AMDのシェア拡大に歯止めをかける必要があったからだ」(半導体業界関係者)。
NVIDIAに近いグラフィックスカードベンダー関係者は,「GTX 580を,Caymanよりも前,(AMDがロードマップを語る)AMDの投資家向け会議当日にぶつけてきたのは,Caymanや『Antilles』(アンティレス,開発コードネーム)対抗品は別に用意されているからだ」と述べていたが,一方で,NVIDIAに近い関係者は「NVIDIAのGPU開発は,すでに次世代アーキテクチャ『Kepler』(ケプラー,同)に向け入れられている」とも語っている。
競合の出方を見ながら“弾”は用意しつつ,しかし実際には次世代製品への注力へと切り替えている,といったところだろうか。
同じ戦略を採ることになるNVIDIAとAMD
NVIDIAのJen-Hsun Huang社長兼CEOは,9月のGTC 2010において,「今後,半導体のプロセスノード移行サイクルは2年間隔になるため,PC製品のライフサイクルに合わせ,Keplerや「Maxwell」(マクスウェル,開発コードネーム)では中間世代を投入できるようにする」と語っていた。つまり,Kepler以降は,同じ半導体製造プロセスを使いながらも,アーキテクチャなどの改良で性能を向上させていく,というわけだ。
同関係者が,あえてR400の名前を出すのは,当時のATI Technologiesが「Radeon X800」の派生品として,「RV410」コアの「Radeon X700」を投入したのと同じように,もともと計画されていた新アーキテクチャを採用する“オリジナルBarts”も,2011年には市場投入される可能性が残されているからだ。
GTX 580対Caymanが注目される今年の年末商戦だが,それだけに留まらず,2011年前半も両社の戦いが続くことだけは,まず間違いない。
※お詫びと訂正
初出時,本文で「32nmプロセスと28nmプロセスのスキップを決め,」とありましたが,「32nmプロセスと22nmプロセスのスキップを決め,」の誤りです。お詫びして訂正いたします。
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