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Sandy Bridgeの製品投入を着々と進めるIntel。3つのジャンルに向けて堅実な製品ラインナップを用意
しかし,筆者がIDF 2010に出席したOEMベンダー関係者に取材を行ったところ,製品計画に関する詳細情報を聞くことができた。今回は取材で掴んだ,Sandy Bridgeの製品計画についてレポートしたい。
LGA1155版Sandy Bridgeには
2グレードのGPUコアが存在
Sandy Bridgeベースの製品は,デスクトップ用,モバイル用,そしてサーバー用と広範囲に展開される。まずは,デスクトップ用CPUの情報からお伝えしよう。
COMPUTEX TAIPEI 2010のニュースなどでもお伝えしたように,デスクトップ版Sandy Bridgeは,ソケットとして新型(LGA1156との互換性はない)の「LGA1155」を採用する。
今回の取材で判明したのは,まずモデル名だ。シリーズ名として,Core i7/i5/i3のブランドを踏襲しつつも,プロセッサナンバーに2xxxという4桁型番を採用する。その製品仕様は表1のようになるという。
ここで4Gamer的に注目すべき特徴としては,GPUコアが2種類存在する点が挙げられる。筆者がOEM関係者へ取材したところ,以前よりSandy BridgeのGPUコアは2種類存在することを示唆する情報があった。
そして実際,IntelはSandy Bridgeで「Intel HD Graphics 200」と「Intel HD Graphics 100」の,2種類のグラフィックスブランドを立ち上げるという。
この2つのGPUコアの違いは,基本的に他GPUメーカーでシェーダプロセッサの役割を果たす「Execution Units」(以下,EU)の数の違いとされる。OEMベンダー関係者は「Intel HD Graphics 200は12EU,同100は6EUの構成になりそうだ」と説明する。
また,GPUコアの定格動作クロックは両者とも850MHzだが,「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)時の最大動作クロックでは差別化が図られている。Intel HD Graphics 200が1350MHz,同100が1100MHz(「Core i5-2500T」のみ1250MHz)と,こちらも200のほうが高い。
DIY市場でのボリュームゾーン製品になると思われるのが,Core i5だ。4コアだがHyper-Threading非サポートで,4スレッドモデルとして位置づけられる。通常電圧版のラインナップは,「Core i5-2500」と「Core i5-2400」の2モデルだ。
なお,この2製品は動作クロックだけでなく,「Last Level Cache」(ラストレベルキャッシュ,以下LLC)の容量やGPUコアも異なっており,性能差が比較的大きい。なおLLCとは,CPUコアからはL3キャッシュとして,GPUコアからはL2キャッシュとして動作するキャッシュメモリだ。
Core i5-2500は,定格CPU動作クロック3.3GHz,LLC容量8MBという仕様で,GPUコアにはIntel HD Graphics 200を搭載する。一方でCore i5-2400は,動作クロックは3.1GHz,LLCの容量6MBとなり,GPUコアにはIntel HD Graphics 100が搭載される。
エントリークラスとなるCore i3は,デュアルコア+Hyper-Threading対応の4スレッドモデルという位置づけだ。特徴的なのがTurbo Boostで,CPUコアは非対応ながら,GPUコアは対応するという仕様だ。
通常電圧版はCore i3-2120と同2100の2モデルが用意される。LLC容量は2モデルとも3MBで,性能差はCPUの動作クロックでのみ付けられている。
ここまでは通常電圧版を紹介してきたが,Intelはこのほかに,デスクトップ向けの低電圧版Core i7/i5/i3を6モデル投入する計画だ。詳細な仕様の紹介は表2をご覧いただきたいが,Core i5-2390Tとしてデュアルコア+Hyper-Threading対応モデルが用意されるなど,通常電圧版に比べるとかなり複雑なラインナップ構成となる。
混乱しつつあるハイエンドCPUの動向
プラットフォームはサーバーベースに?
さて,ここで注目したいのが,現行ではLGA1366版Core i7が担当している,ハイエンドクラスのCPUが発表されていない点だ。
マザーボードベンダーなどに取材をしたところ,「Intelは以前,LGA1155版CPUのハイエンド製品として,GPUコア非搭載の高クロックモデルや6コアモデルも用意すると伝えていた。しかし結局,LGA1155では,GPUコア搭載の4コアと2コアモデルのみとなった」とのコメントが得られた。
LGA1155版CPUは,当面ハイエンドには展開せず,メインストリーム市場に注力することになるようだ。
このため2011年前半は,ハイエンドチップセットとしてはX58と現行のLGA1366版Core i7がさらに強化されるほか,LGA1156プラットフォームのCore i7-880も第3四半期まで延命されることになるという。
Intelは今年第4四半期に,外付けチップでUSB 3.0やSATA 6Gbpsに対応するIntel X58純正マザーボード「DX58SO2」の投入を予定していると噂されるが,こうしたX58搭載マザーの強化も,LGA1155プラットフォームが当初の計画よりもメインストリーム市場寄りにシフトしたことによる影響の一つと考えられる。
また,Sandy Bridge登場後も,LGA1366プラットフォームが引き続き販売されるということは,Sandy Bridgeの価格に関する大きなヒントとなる。
より上位に位置づけられるLGA1366版CPUが続投するということは,LGA1155版CPUで最上位モデルとなるCore i7-2600でも,現行のCore i7 870と同価格帯に落ち着くであろうことを意味するからだ。
さて,そのSandy BridgeベースのハイエンドデスクトップCPUに関しては,ここにきて複数のマザーボードベンダー関係者が「Intelは,X58の後継であるPatsburg(パッツバーグ,開発コードネーム)のプラットフォームを,LGA2011のSocket Rベースにする可能性も模索している」と語り始めている。
Intelとしては,AMDの次期アーキテクチャ「Bulldozer」(ブルドーザー,開発コードネーム)コアを採用する「Zambezi」(ザンベジ,開発コードネーム)への対抗上,より多くのコアを搭載できるプラットフォームを用意する必要が出てきているらしい。
このように,デスクトップ向けハイエンドCPUに関しては,投入予定が2011年第3四半期末〜第4四半期にという点こそある程度見えているものの,実際には流動的要素が増えてきている状況だ。
チップセットは事前情報どおり
低価格向け製品の準備も着々と
次に,デスクトップ版チップセットについて見ていこう。LGA1155版CPU用チップセットは,「Couger Point」(クーガーポイント,開発コードネーム)として知られる,Intel 6シリーズとなる。
現行の「Intel P55 Express」に比べての主な強化点は,2ポートながらSerial ATA 6Gbpsに対応する点だ。またP67は,Core i7とCore i5の最上位モデルとして用意される倍率ロックフリーバージョン(2xxxK)にも対応する。
グラフィックス機能(ディスプレイ出力)をサポートするチップセットとしては,Intel H67など5製品が用意される。なお,表3の中には「3D立体視」という項目があるが,これはチップセットの出力回路レベルでのサポートを示すものだ。
また,これまでにあまり名前が出てきていないIntel H61は,2011年後半に市場投入が予定されるSandy Bridge版エントリーCPU向けのチップセットである。
Intelが開発中の「Intel H67 Express」搭載mini-ITXマザーボード。P55と同様の1チップなので,mini-ITXマザーでもレイアウトには無理が少ないようだ |
MSIが開発中の「Intel H61 Express」搭載mini-ITXマザーボード「MS-7677」。I/Oパネル部の端子の少なさから,低価格製品であることが窺える |
モバイル版Sandy Bridgeは
Turbo Boostがより過激に
続いて,駆け足気味にではあるが,モバイル版CPUとチップセットの製品構成を見てみよう。
モバイル版Sandy Bridgeの第一弾となるのが,表4に挙げた通常電圧版の6モデルだ。2011年第1四半期登場予定である。
デスクトップ版と比べて特徴的なのは,Core i3のラインナップが存在しない点と,最上位モデルとして,Extreme Editionの名を冠する「Core i7-2920XM Extreme Edition」が用意される点だ。これはTDPが55W,4コア/8スレッドで2.5GHzの動作クロックとなる。
Sandy Bridgeモバイルプラットフォームの特徴 |
IDF 2010の展示会場では,Sandy Bridge搭載ノートPCによるゲームのデモも見られた |
モバイル版のSandy Bridgeで特筆すべきは,デスクトップCPUに比べ,よりアグレッシブなTurbo Boost設定がなされていることだ。
例えば上述したCore i7-2920XMの場合,Turbo Boost時の最大動作クロックは3.5GHzとされている。つまりシングルコア動作時では,定格+1GHzものオーバークロック動作となるわけだ。
また,メモリのサポートにも特徴があり,デスクトップ版では非対応のDDR3-1600をサポートし,メインメモリの帯域幅を拡大している。
Core i7の最下位モデルとCore i5は,デュアルコアモデルとなり,メモリサポートはDDR3-1333となる。そのラインナップと仕様は表4のとおりだ。
モバイル版チップセットは表5の合計5製品が投入される。いずれの製品も,CPUの内蔵グラフィックス機能に対応し,PCI Express 2.0やSATA 6Gbpsをサポートする点が特徴だ。
モデル名を見ていると,Intel UM67というものが目を惹くが,これは低消費電力を追求したチップセットで,将来登場予定の低電圧版や超低電圧版Sandy Bridge専用の製品と噂されている。
実はモバイル版も,チップセット側の機能としては3D立体視に対応しており,DisplayPortやHDMIなどで外部ディスプレイを接続した場合は可能になるという。
Intelは現在,ノートPCでの液晶パネルを接続する際には,CPU側の「Embedded DisplayPort」(eDP)の使用を推奨している。しかし,現状ではeDP対応で120Hzのリフレッシュレートを表示できるパネルが少ないことから,チップセット側の機能としては謳われていない,という事情のようだ。
また,4Gamer読者にとって気になるのは,CPUに内蔵したCPUと外部GPUとを切り換えて使う「Switchable graphics」がサポートされるかどうかだろう。
これについては,IDF 2010の会場展示で,Sandy Bridge世代でもサポートされる見通しであることが確認できた。ノートPC派のゲーマーには朗報といえそうだ。
最高クロックモデルはXeonのみ
Sandy Bridgeではゲーマーにも魅力か?
最後に,サーバー・ワークステーション用の「Xeon」ブランドのCPUについても情報を得ることができたので,併せて紹介したい。
その仕様とラインナップは表6のとおりだ。
これらは本来,ゲーマーにはあまり縁がないジャンルのCPUだが,実はSandy Bridgeでは若干事情が異なる。というのも,LGA1155 CPUでもっとも高クロックなモデル(定格動作時3.5GHz)が用意されるのは,Xeonのみになるからだ。
また,Sandy Bridge版のXeonでは,グラフィックス機能を非サポートとしたモデルも用意されている。これらは店頭での価格やマザーボード側のサポートといった条件が良ければ,自作向けCPUとしても要注目の存在となりそうだ。
今回の取材では,デスクトップ,モバイル,サーバー・ワークステーションという,主力の3分野すべてで,Sandy Bridgeの製品ラインナップ情報を入手できた。このことから,Intelが順調にSandy Bridgeの投入を進めていることが改めて確認できた次第だ。
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