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見えてきたSandy Bridgeと,見えてこないLarrabee。Intelのプロセッサロードマップアップデート
また,Intelが目指す,ヘテロジニアス(Heterogeneous:異種混合の)コアの実現には,開発中のグラフィックスプロセッサ「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム)の統合が不可欠になるが,こちらについても,少しずつ情報が掴めてきたので,本稿では,2009年10月時点の状況を整理してみたい。
Sandy Bridge世代は3ラインナップ構成に
LGA1366は生き残るか?
IntelはIDF 2009で,2011年に市場投入が予定されているSandy Bridgeのダイ写真やCPUを公開し,その開発が順調に進んでいることをアピールした。IDFで“一瞬だけ”披露されたダイは,4コアとグラフィックス機能などを一つのシリコンにまとめた,メインストリーム市場(≒エントリー〜ミドルクラス市場)向けのモデルだ。
業界関係者によると,IntelはSandy Bridge世代で,3種類のプロセッサを,デスクトップPC市場へ投入する計画を持っているという。
さて,エントリー市場向けには,クアッドコア版の下位モデルとして,デュアルコア版Sandy Bridgeも用意される計画だと伝えられている。大手PCベンダー関係者によれば,L3キャッシュ容量はNehalemアーキテクチャの最大6MBから,同8MBへと強化され,クアッドコア版は8MB,デュアルコア版は4MBとなるが,動作クロックがどの程度引き上げられるかは,最大消費電力設定次第だという。
実際,Intelの関係者は「サーバー向けCPUに統合型グラフィックス機能は不要で,その分を省電力性能やパフォーマンス向上に振り分けたほうが,市場ニーズに合致する」と述べ,サーバー&ワークステーション市場向けには,まったく別のアプローチでSandy BridgeアーキテクチャベースのCPUを設計していることを明かしている。しかも,現行のXeon 5500番台は,BloomfieldコアのCore i7と同じLGA1366パッケージを採用しているので,この路線でハイエンドデスクトップPC向けCPUを作れないことはない。
ただ,実際にLGA1366プラットフォームが2011年以降も生き長らえるかどうかは,「市場動向と競合(=AMD)の出方次第だろう」(Intel関係者)。要するに,AMDがこのままフラグシップCPUたる“FX”を投入せず,低価格競争を加速してくるならば,Intelとしても“Extreme”で,わざわざ別プラットフォームを続ける必要はない,ということだ。
GulftownではTurbo Boost周りに改善
コストパフォーマンス面で面白そうなClarkdale
話を少し戻して,近い将来の製品に目を向けてみよう。Intelは,2010年初頭から,積極的にデスクトップ/ノート市場向けに新製品を投入する。とくにデスクトップ市場では,ウルトラハイエンドとエントリーの両市場で,ほぼ同時期に強化が図られる格好だ。
Gulftownシステムによるレンダリングデモ。「Intel Hyper-Threading Technology」により,6コア12スレッド処理を実現していることが分かる |
DX58SOベースのGulftown搭載デモシステム。X58マザーボードは,BIOSの変更だけで同CPUをサポートできるという |
対応チップセットは「Intel X58 Express」(以下,X58)で,現行のX58マザーボードは,BIOSアップデートでGulftownをサポートできる。IDF 2009の会場では,Intel純正のX58マザーボード「DX58SO」でGulftownを動作させるデモが公開されていたので,このあたりに心配はなさそうである。
Dave Salvator氏(Worldwide Client Capability Evangelist, Intel) |
32nmプロセス技術を採用したClarkdale(左)と,統合されるグラフィックス機能統合型チップセット「Ironlake」(右)の,それぞれウェハ。Ironlakeは45nmプロセスを採用する |
グラフィックス機能の性能はさておくとしても,「PCMark Vantage」の総合スコアで,「Core 2 Quad Q9400/2.66GHz」比で約30%高いスコアを示すというのは,なかなか興味深い。Windows 7上で,「Core i5-640/3.20GHz」を搭載すると確認できるシステムで「Cinebench R10」の「Multipule CPU Render Test」を走らせた結果が8558というのも,エントリー市場向けCPUとしてはかなりのものだといえるだろう。
報道関係者に公開されたClarkdale搭載PCのシステム情報。CPU名は「Core i7-640」で,3.20GHzで動作していた |
Cinebench R10のMultipule CPU Render Test結果。8558というスコアは,エントリー市場向けとしてはなかなか |
同社が開発コードネーム「Jet Geyser」(ジェットガイザー)と呼ぶmini-ITXマザーボードは,未発表のIntel 5シリーズチップセット――「Intel H57 Express」のように見える――を採用。拡張スロットにPCI Express x16スロットを装備しており,PCケースや電源ユニットを慎重に選べば,コンパクトでパワフルなゲームシステムを構築できるポテンシャルを持っている。もちろん,本マザーボードに,LynnfieldコアのCore i7&i5を組み合わせることも可能だ。
CPUそのものもさることながら,システムに新たなバリエーションをもたらす存在としても,Clarkdaleおよびその対応チップセットには期待したい。
迷走するLarrabee計画
全貌は未だ明らかにならず
だがその一方,「標準グラフィックスインタフェースとしてのDirectXやOpenGL,OpenCLもサポートする」とは言われたものの,そのパフォーマンスは最後まで公開されなかった。Larrabeeの評価を開始しているベンダーの関係者によれば,「現時点では一般的なGPUとして評価できる段階にない」そうだ。
また,Sean Maloney(ショーン・マローニ)上級副社長も,将来的にLarrabeeコアをCPUへ統合する計画に変わりはないとしつつも,いつ,どの市場へ投入するかについては「いまは語れない」の一点張りである。
付け加えるなら,Larrabee計画の顔役ともいえるPatrick P. Gelsinger(パット・ゲルシンガー)上級副社長が,IDF 2009の直前にIntelを退職するという“事件”もあったが,それと関連してか,この数か月,業界内にはLarrabeeについて,後ろ向きな情報が飛び交っている。なかには「IntelがLarrabee計画を中止する」といったものまで含まれていたほど。「Larrabeeは,TSMCの40nmプロセスで製品化される見通し」という半導体業界筋の情報や,「Gelsinger氏とともに,主要エンジニアもIntelを去った」という情報もある。
……計画の公表から早3年が経過し,2008年にはシミュレーションプログラムが,2009年4月に北京で開催されたIDFではシリコンが公開されたLarrabeeだが,外部からはその進捗状況がまったく掴めない状態だ。
こうした状況に,Larrabeeの成功を疑問視する声も増えつつある中,Intelが高性能グラフィックス,そして並列コンピューティング市場にどのように取り組んでいくのか,その全貌が明らかになるのは,2010年以降になりそうである。
- 関連タイトル:
Core i7・i5・i3-2000番台(Sandy Bridge)
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Core i5&i3(LGA1156,デュアルコア)
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Xeon Phi
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Core i7(LGA1366,ヘキサコア)
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(C)Intel Corporation
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