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支倉凍砂氏ロングインタビュー。「WORLD END ECONOMiCA」から「狼と香辛料」,そして次回作の話題まで,あれもこれも語りつくしてもらった
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印刷2011/09/10 00:00

インタビュー

支倉凍砂氏ロングインタビュー。「WORLD END ECONOMiCA」から「狼と香辛料」,そして次回作の話題まで,あれもこれも語りつくしてもらった

「小説家・支倉凍砂」の今後


4Gamer:
 小説のほうの次回作の予定はありますか?

支倉氏:
 今のところ一応電撃(※編注:電撃文庫)さんで新作の予定がありますが,原稿は全然なく,刊行予定も決まっていない状態で,大変難航しています。プロットを書いてはみたけどやっぱり無理,みたいなものがもう3つぐらいあって……。なので,また近々担当さんにプロットを出して,という感じですね。来年のなるべく前半には出したいなと思っています。

4Gamer:
 また経済がモチーフのお話になるんでしょうか。

支倉氏:
 いや,今度は違いますね。今書いているのはちょっと目先を変えたものになります。ただ書いてみたら,「あれ,なんかやっぱり経済じゃね?」ということになるかもしれません。自分がプロットを書くうえで,「誰かが何かをしようとして,問題が起きてそれを解決する」となると,どうしても殴ってボカーンで終わり,という話にはならない。
 社会制度的な関わりなどを使ってやろうと思うと,どうしてもお金の話や,経済的な力が強く出てきたりするので,見方によっては「狼と香辛料」と似ているように見えてくるかもしれないです。スポ根ものを書ける感じもしないですし,バトルものの独特のノリというのも自分には出せない感じがするので,そうするとやっぱりお金の話になってくるのかなと。

4Gamer:
 お金の話以外に,今後書いていきたいテーマはありますか?

支倉氏:
 本当にふわっとした気持ちだけなんですが,時代もの,幕末あたりの話を書いてみたいですね。維新志士なんかは全部過去の巨人にやられているので,ちょっと違う感じのものをやってみたいと思って資料もぼちぼち読んでいるんですが,なかなか手が回らないですね。ラノベで和モノは本当に売れないので,その常識を打ち破れたら気持ちいいだろうな,という思いもあります。
 自分の中で,「これとこれの組み合わせは誰も考えていなかった」というものを出し続けられればいいな,というのがありまして。今は経済というのが,ほかの人があまりやっていない鉱脈なので,しばらくはこれをやって……幕末ものも「こんな組み合わせは新しい」と言ってもらえるものが書けたらいいなと思っています。学園ものなんかはもうやり尽くされている分野なので,良い悪いではなくて,難しい。「えっ,こんな組み合わせがあったんだ」と言わせるのが,ちょっともう自分の発想力では厳しいかなと。それでも毎年,新作が出てくるのがすごいなと思ってますけど。

4Gamer:
 「WEE」でゲームシナリオも手がけたわけですが,今後もライトノベルも書いていくんですね。

支倉氏:
 そうですね。ライトノベルとゲームだと,似てはいるけど結構違う分野だと思いますし。あと単純に,出版社さんが広告をしてくれるからこそ届く読者というのもいるはずなので,小説はなるべく書いていきたいですね。例えば沖縄の離島にも本屋さんがあって,必ず出版社さんの本が並んでいますが,同人ゲームだとそういうことがものすごく難しい。すでに築かれている流通網を使って,広告を打ってもらって全国隅々まで広げてもらうというのは自分には絶対できないことなので,その力を借りるという意味でも小説は出していきたいです。

「WORLD END ECONOMiCA」
画像集#022のサムネイル/支倉凍砂氏ロングインタビュー。「WORLD END ECONOMiCA」から「狼と香辛料」,そして次回作の話題まで,あれもこれも語りつくしてもらった

4Gamer:
 金融や経済といったテーマであれば,ライトノベルではない一般の小説でもやっていけるのではないかと思いますが,そういった気持ちは?

支倉氏:
 どうなんですかね。一般向けにすると,現実を舞台にしなければいけない感じがどうしてもしてくるので,そうなると取材が大変面倒に(笑)。あとはやっぱりボロが出やすいような気がするんです。想像の世界であれば「こういうものなんだよ」ということで,分からないものは書かなくて済むんですが,現実が舞台だと書かないといけないことばかりがたくさん出てくるような気がして……。実際にそうなのかどうかはともかく,怖いという気持ちがあるので,現実ものは難しいかなと。就職もしたことないですし。あと,現実だとケモノ耳が出せないので(笑)

4Gamer:
 そこはもう必須ですか(笑)。

支倉氏:
 そうですね。「WEE」でも最初は出そうかなと思ったんですが,ちょっと無理そうだったので出ないんですよ。今回はそれが残念でした。

4Gamer:
 では最後に,「WEE」をこれからプレイする人,すでにプレイした人に一言お願いします。

支倉氏:
 経済でも,おっさん向けじゃない,低年齢層に向けたエンターテイメントができるんだよというのを,プレイして分かってもらえたら嬉しいですね。基本的にハッピーエンド至上主義なので,必ず最後は大団円にします。なので,第2部,第3部も期待して待っていてください。鬱展開になるわけではないので,そのへんは安心してもらえればと思います。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。


 インタビューは,当初の予定を大きく超えて2時間近くに及んだ。終始和やかに進む中で,しばしば支倉氏の口から飛び出す,熱のこもった言葉。今回初めて「WEE」を知ったという人も,少しは興味が湧いてきたのではないだろうか。
 私事ながら,筆者はおよそ5年前,デビュー間もない頃の支倉氏にインタビューしたことがある。そのときの氏は,新人らしい初々しさが色濃かったが,今回の氏からは,小説家という枠組みを超えて,新しいものを生み出そうとする強い意気込みが感じられた。その氏が満を持して送り出す「WORLD END ECONOMiCA」,1年後の第2部を心待ちにしたい。
 なお,次ページではゲームからも小説からも離れ,プライベートを含め支倉氏自身のことをいろいろと尋ねてみた。支倉ファン必見! という内容に(多分)なっているので,こちらも合わせてご覧いただきたい。

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