インタビュー
支倉凍砂氏ロングインタビュー。「WORLD END ECONOMiCA」から「狼と香辛料」,そして次回作の話題まで,あれもこれも語りつくしてもらった
インタビュー後の「おまけ」のページ
4Gamer:
ところで趣味を持ち始めたとのことですが,どんなものを?
支倉氏:
2年くらいエレキギターを続けています。何とか週1回教室に通えているという状態ですが,でも一応継続できています。
4Gamer:
主にどんなものを弾くんでしょうか。
支倉氏:
「狼と香辛料」を書き始めて3年目ぐらいまでは本当に仕事しかやってなかったので,結構つらいところがあって,いろいろ手を出しては失敗して,を繰り返していたんです。4〜5か月くらい前には,釣りを始めようと思い立って釣竿を買ってみたんですが,まったく釣れなくて……今,会う人会う人に「釣り,どうなった?」って訊かれます。そうやっていく中で気に入ったものが最後に残ったらいいかなと思って,いくつかやってきた中で今残っているのがギターですね。
4Gamer:
ギターは何を使っているんですか?
支倉氏:
Ariaのベンチャーズモデルというのを中古屋で買いました。ちょうど「けいおん!」が流行っていたときだったので,「けいおん!」じゃないです,と言いながら(笑)。
4Gamer:
ちなみに普段はどんなサイクルで生活されているんでしょうか。
支倉氏:
今は結構,朝ちゃんと起きて夜寝てるんですけど,常にそうはどうしてもできないので,本当にバラバラですね。1日1時間ずつずれていくと思ってもらえれば。
4Gamer:
最近読まれた作品で,これはと思ったものがあればお聞かせください。
支倉氏:
今はどうしても読むのが資料中心になってしまうので,一度読んでいいなと思ったジャンルの本になってしまいますね。本以外だと,美術館に行ったときに「あっ,これはすごいな」と思ったことがあって,それで幕末ものを書きたいと思ったんですよ。何を見てそう思ったかを言うと注目されそうなので,自分が出すまで可能な限り知られない場所にあってほしいですね。
4Gamer:
やっぱり人とは違うものを見つけていきたいと。
支倉氏:
そうですね。自分の考えとして,もし物語を作る能力が相手と一緒だったら,あとは舞台設定で差がつくような感じがするんです。舞台が突飛であるとか,意外な組み合わせがあったほうが人目を引けると思っているので,そういう差別化は意識的にしていきたいなと思っています。
それに王道系のものは,たとえば北方謙三さんが「水滸伝」を書くような,20年,30年かけてようやくできるようなイメージがあるんです。ただまあ20年,30年後に定番の学園ものをやるのはどうなの? というのはありますが。ラノベはやっぱりサイクルが早いですし,読者さんがどんどん成長していくので,そのへんはちょっと難しいのかな。
4Gamer:
たとえば小説家をやめて,ハルのような投資家になるというのはどうでしょう。
支倉氏:
投資家ですか(笑)。幸せそうじゃないんですよね。一度同い年ぐらいの,結構お金持ちの投資家の人と会ったんですけど,その人が言っていたのが「バイトしようかな」って(笑)。朝9時から午後3時まで誰とも会話をせずにデータだけをいじくる仕事というのは,精神的にすごく“くる”らしいんです。だからそれこそ,コンビニのバイトでも,宅配の仕分けでも何でもいいんですが,人と会ったり,自分が世間に貢献していると実感できる仕事をしたい,手に触れて分かるような仕事がしたいと言っていました。自分が一時株に張りついていたときの経験からいって,それもちょっと分かるような気がするので,投資は趣味程度にとどめておきたいと。
4Gamer:
支倉さんご自身も,一時期デイトレードをされていましたが,その時はやっぱり朝からずっと張りつきだったんですか?
支倉氏:
当初は気になるので張りついていましたけど,これを一生やるのかと思うとちょっと「うーん」と。何かが欲しいと思ってやっているわけではないし,それで稼いでもきっと満足できない。終わりが見えない,ネットゲームに近いところがあるので。
4Gamer:
その中でも成功や失敗というのはありますよね。
支倉氏:
あと10分買うのが遅ければ,早ければというのはたくさんありましたね。あと1日我慢できれば良かったのにとか,どん底で売って高値で買ったりとか。
4Gamer:
そういうときはどんな気分になるんですか?
支倉氏:
もう本当に歯ぎしりですよ。実際にやらないと実感できないことだと思うんですが,失敗すると辱めを受けたような,人格を否定されたような感じがするんです。自分がこうだと思ったことに対して,無情に「違うよ」と結果が出てしまうので,なんて言うんだろう,自分が人格攻撃されたような感じになって,とにかく失敗したことを人に言えない。本を読んでいると,やっぱりそう思っている人がたまにいて,自分だけじゃないよなあと。
4Gamer:
それはお金がかかっているからですかね。
支倉氏:
多分関係ないですね。1000円だろうが1000億円だろうが,その人にとって大金であれば,たぶん同じメンタリティだと思います。「WEE」でもそのあたりの感覚を再現できれば嬉しいんですが,どうしても難しいですね。
4Gamer:
先ほど,ある意味株取引もギャンブルに近いところがあるとおっしゃっていましたが,ほかのギャンブルはやらないんですか?
支倉氏:
あまり好きじゃないんですよね。ちょっと自分でも不思議なんですけど,競馬とかに連れていってもらっても,あまり夢中にならない。敗者のゲームか,勝者のゲームかという考え方があって,敗者のゲームというのはミスをした人から負けていくようなもののことです。
学者の人達は,株式も同じように敗者のゲームだと言っているんですけど,自分はあまりそうは思えない。うまくやった奴がものすごく勝てる世界という認識なので,惹かれるところがあるんですよ。麻雀も結構近いところがありますね。競馬と株式市場の間くらいの,ある程度実力,ある程度運みたいな。将棋なんかがこの逆です。だから海外のトランプ系の,技術系のギャンブルなんかは,やったら結構はまるのかもしれないですけど,あまりマメではないので,ルール覚えてどうこうというのはやろうと思わないです。
4Gamer:
マメではないと言っても,株も膨大な情報を把握しなければいけないのでは……。
支倉氏:
全体に対して,まんべんなくある程度知っているという自信はありますが,あるところに焦点をあてて,それをどこまで詳しく知っているかと言われると,たぶんみんなが呆れるぐらい知らない。別に自分は専門家になりたいわけではないので,小説なんかを書くときにみんなを騙せるぐらい知っていればいいという,ちょっと言い訳みたいな思いがあるんです。たまに「今経済がこんな状態だけど,これからどうなると思う?」とか聞かれるんですが,自分は本当に分からない。自分が知らないということを,最近ようやく知り始めた,くらいのレベルです。
4Gamer:
全然話は変わりますが,海外旅行には行かれますか?
支倉氏:
台湾と香港はイベントで行ったんですが,いわゆる旅行だと,ラスベガスとパラオぐらいですね。ラスベガスはカジノがどんなものかを見に行って,パラオはダイビングをしに行きました。パラオはすごいところです。お勧めです。
4Gamer:
いいですね。どんなところか想像がつきませんが。
支倉氏:
いわゆる南の島ですね。ネットもほぼつながらなくて,本当にもうただダイビングするしかない。「狼と香辛料」を書いているときは「ヨーロッパに取材に行かないの?」と言われたんですが,言葉が通じないし……と思って行かずじまいでした。でも,言葉を知らなくても意外に何とかなるというのを最近知ったんですよね。
4Gamer:
今行ってみたいところはありますか?
支倉氏:
ドバイとか(笑)。今あそこがどうなってるのかをちょっと見てみたいです。あとはフィンランドかカナダあたりに行って,オーロラを見たい。それぐらいですね。
4Gamer:
月なんてどうでしょう。
支倉氏:
実際はあまり興味がないです(笑)。ちょっと遠いですからね。
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- 関連タイトル:
狼と香辛料 海を渡る風
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狼と香辛料 ボクとホロの1年
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