連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第29回「Bethesda Softworksは『Fallout 3』だけじゃない!(2)」
前回紹介した「The Terminator」のヒットによって,勢いを得たBethesda Softworksは,すぐさま続編を作ろうとした。しかしその時点では,映画「ターミネーター」の続編の権利が,Orion(オライオン)からCarolco Pictures(カロルコ・ピクチャーズ)へ移ってしまっていたため,手が出せない状況になっていたのだ。
というのも,映画「ターミネーター2」のゲーム化ライセンス契約は,すでにAcclaim Entertainmentが独占的に締結済みだったのである。
そこでBethesdaは,Orionからターミネーターの権利を買い上げた投資会社Greenberg Brothers(映画「バタリアン」に出資して大儲けしたファミリー企業)へ相談し,The Terminatorを家庭用ゲーム機へ移植しようと考えた。
ところが,ここには大きな障壁があった。
The Terminatorは,Bethesdaの評判を上げた作品であると同時に,ターミネーターというコンテンツがゲームに向いていることを,多くのゲーム業界人に知らせてしまうという(Bethesdaにとっては嬉しくない)効果も発揮してしまっていたのである。
その結果,Virgin GamesがSEGAのゲーム機向けのゲーム化権を取得。そして浮いていたNESとSNES向けのゲーム化権を,Mindscapeが取得していたのである。
そのためBethesdaは,The Terminatorを家庭用ゲーム機に移植することもできなくなってしまっていたのだ。
しかしそれでもBethesdaは,会社に多額の利益をもたらしてくれたThe Terminatorのコンテンツを,どうにか活用したいと考え,再びGreenberg Brothersに相談したところ,あることが判明した。
それは,映画ターミネーター第一作における肖像権や名前などの一切を,Greeberg Brothersが所有しているという事実だ(続編以降はナンバリングされているため,別物ということになるらしい……不思議)。
ということは,Greenberg Brothersが持つキャラクターなどを使い,映画本編とは別のスピンオフ作品を作るぶんには,CarolcoもAcclaimもVirginもMindscapeも法的に手出しができないというわけだ。
このことに気づいたBethesdaは,早速Greenberg Brothersから権利を再取得。THQから請け負ったNES版「Home Alone」と並行して,「The Terminator: 2029」の開発をスタートした(余談だが,Bethesdaが開発したNES版Home Aloneは,「グーニーズ」のゲームを意識して作られたものらしい。個人的にはHome Aloneゲームの中で最も完成度が高いのは,BethesdaのNES版だと思う)。
一方,The Terminator: 2029は,2029年のLAを舞台に,サラ・コナーとカイル・リースの息子であるジョン・コナーが,諸悪の根源ともいえる軍事用コンピュータ「スカイネット」に立ち向かうという内容になっている。
前作では,Bethesda創設者のChristopher Weaver氏がプロデューサーを務めていたのだが,本作はBethesdaに入社したばかりだが,映画の大ファンだったというVijay Lakshman氏がプロデューサーに抜擢されている。
やはりファンの発想力はたいしたもので,Lakshman氏はジェームズ・キャメロン監督ですら思いつかないようなアイデアをポンポン投入していき,「人類がターミネーターと戦うには,コンバットスーツが必要!」という結論に達した。
そしてゲームは,パワードスーツを着て戦闘に臨むレジスタンスのジョン・コナーが,2029年のLAを舞台に暴れまくるという壮大な設定のアクションゲームとなったのである。
ステージが進むと,腕や肩などに武器を装着できるようになり,手強いエンドスケルトンT-800との真っ向勝負が楽しめる。映画ではひたすら非力な存在として描かれていた人類に,フラストレーションを感じていた人も,この設定には溜飲を下げられるだろう。
ちなみにこのパワードスーツ,デザインは確かにカッコイイのだが……なんとなく「スター・ウォーズ」のボバ・フェットにも見えるような。
それはさておき,The Terminator: 2029は一人称視点が採用されていて,映画さながらの緊迫感と緊張感をプレイヤーに与えてくれる。本作は1992年に発売されたのだが,同年には「ウルフェンシュタイン 3D」も発売されている。
FPSの始祖としてウルフェンシュタイン 3Dが語られることは多いが,筆者としてはThe Terminator: 2029も並べるべきではないかと考えている。また,個人的には「ロボコップ」っぽいテイストも含まれているので,The Terminator: 2029のほうが好きだ。
そんなThe Terminator: 2029は,Bethesdaの目論見どおり爆発的なヒットを記録。1993年には追加ミッションを含むアペンドディスク「The Terminator 2029: Operation Scour」が発売され,さらに1994年にはファンの要望によってさらなる追加ミッションが加えられたCD-ROM,「The Terminator 2029: Deluxe CD Edition」もリリースされたのである。
さらに,これら以外にも1993年には,別の作品「The Terminator: Rampage」という作品もリリースされている。
次回はまだまだベセスダのターミネーター・ビジネスが健闘していた時代を掘り下げて行こうと思う。
■ドブ漬けゲームスープレックス(29)
Xbox360
「マッデン NFL 09(英語版)」(エレクトロニック・アーツ)
前回のタイガー・ウッズのゴルフゲームに続き,アメリカを代表するスポーツ,アメリカン・フットボールのゲームに挑戦!
アメフトのゲームは,かつてアイレムがアーケードで「10ヤードファイト」をリリースしていた当時にプレイしていたのだが,さすがにそんな経験は一切役に立たなかった。
本作は,選手の動きやモーションなどがリアルに作り込まれているのが特徴。その分,操作にしても10ヤードファイトよりはるかに複雑になっている(当たり前か)。
そのくせ,マニュアルを読んだりチュートリアルをしっかりやり込んだりもせず,初プレイでXbox Liveのマルチプレイに挑戦したら,さんざんな目に……。ただ,本作の宣伝文句「テレビ中継を見ているような臨場感」は満喫できた。音声はすべて英語で,字幕も英語なので,アメリカに行って宿泊先のホテルでテレビをつけたときのような感覚というか。
ちなみにこのゲーム,アメフト界で有名な指導者ジョン・マッデン氏が監修しているのだが,実は1988年にAppleIIやCommodore 64で発売されて以来,20年以上も続いているロングランシリーズでもある。
そしてこのアメフトゲームの物理エンジンを作り上げたのが,1986年に起業した直後のBethesdaである。ちょっとした豆知識として覚えておいてほしい。役に立つ局面はたぶんないだろうが。
「マッデン NFL 09(英語版)」公式サイト
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マッデン NFL 09
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