レビュー
ASUS「ROG Phone」用周辺機器は,スマホにおけるゲームの常識を変えるかもしれない
ASUS TwinView Dock
ASUS WiGig Dock
Gamevice for ROG Phone
なお,本稿はROG Phone本体についての説明は省略している。まだ未見の人は,ぜひとも先に本体のレビューを参照してほしい。
「ROG Phone」レビュー。確かにこれは「ゲーマー向けスマートフォン」だ
ASUSが開発した新型スマートフォン「ROG Phone」は,「これが真のゲーマー向けスマートフォンだ」と言わんばかりの派手なルックスと機能を有する端末だ。だが,ゲームにおける使い勝手や性能はどうなのだろうか。ハードとソフトの特徴を詳しく紹介しつつ,ベンチマークとゲームプレイで実力を検証してみた。
ROG Phone本体と同時に発表されたのは,以下の5製品だ。
- TwinView Dock:3万4800円(税込3万7584円)
ROG Phoneをはめ込むとニンテンドー3DS風になるドック - ASUS WiGig Dock:3万4800円(税込3万7584円)
高速無線LAN規格WiGig(IEEE 802.11ad)対応のWireless HDMIアダプタ - Gamevice for ROG Phone:8980円(税込9698円)
ROG Phoneをはめ込んで携帯ゲーム機風に使えるようにするゲームパッド - Mobile Desktop Dock:2万2800円(税込2万4624円)
外付けのディスプレイやキーボード,マウスなどを接続できる据え置き型ドッキングステーション - ASUS Professional Dock:1万1980円(税込1万2938円)
USBハブ型の小型ドッキングステーション
本稿では,これらの中から,TwinView DockとASUS WiGig Dock,Gamevice for ROG Phoneの3製品をチェックしていく。
TwinView Dock
まずはTwinView Dockから見ていこう。
TwinView Dockは,分厚く,かつ無骨になったニンテンドー3DSといった雰囲気のクラムシェル型の周辺機器で,上画面側にROG Phoneをはめ込むと,下画面側にも画面が表示されて,上下2画面でAndroidを操作できるという。
TwinView Dockの公称サイズは172(W)×108(D)×54(H)mmで,公称重量は約390g。筐体下側には,ROG Phoneと同じ6インチサイズで解像度1080×2160ドット,90Hz表示対応の有機ELパネルを搭載している。
ROG Phoneの周辺機器らしいのは,TwinView Dockの天板部に空冷ファンが組み込んでいるところだ。ROG Phoneには,外付けの専用クーリングユニット「Aeroactive Cooler」が付属しているのだが,TwinView Dockにはめ込んだ状態では,当然ながら取り付けられない。そこでTwinView Dockにも空冷ファンを内蔵することで,ゲームを長時間プレイしていても発熱による性能低下を気にせずに済むわけだ。
そのほかにもTwinView Dockは,ステレオスピーカーや振動機能,トリガーボタンを備えている。6000mAhの追加バッテリーを内蔵しているのもポイントだ。また,インタフェース類としては,USB Type-C Gen1×1,3.5mmミニピンヘッドセット端子,そしてSDカードスロット(最大容量2TB)を備えており,ROG Phoneを携帯ゲーム機感覚で使えるようになる。
TwinView Dockを取り付けた状態のROG Phoneは,さながら「フルアーマーROG Phone」だなと感じる。見た目どおりゴツいし,総重量は約590gと,それなりに重量もある。そしてなにより,立ちこめる“変態端末”的なオーラがたまらない。「ズキュン」ときたのであれば,本稿を読み進める前に購入してしまおう。
少々ピンボケしていて申し訳ないが,本体のレビューでも掲載した動画を見てほしい。上画面で「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(以下,デレステ)の,下画面では「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(以下,ミリシタ)のMVを同時実行したものだ。いずれもグラフィックスに関する設定は最高に設定した状態でありながら,フレームレートも安定している。複数のアプリを同時に見ながらプレイできるというのが,TwinView Dockの強みといえよう。
TwinView Dockの使い方は簡単で,筐体上部にROG Phoneを取り付けるだけで,自動的に2画面が使用可能になる。上下の画面で操作は独立しており,TwinView Dockを手に持って操作することを考えると,下画面側をメイン画面とした設計のようだ。ただ,上部に重量約200gのROG Phoneが収まるので,必然的に重心は高めであり,重さのバランスはあまりよくない。
TwinView Dockの上画面でアプリを選ぶと,そのアプリは上画面で起動する。同様に,下画面でアプリを選べば下画面で起動する。起動済みのアプリを下画面から上画面に移動させるような操作は見当たらないのだが,下画面での表示に切り替えることは可能だ。下画面で動作中のアプリ一覧(マルチタスク画面)を開き,下画面側で使いたいアプリを選ぶと,表示先を変更できた。
なおスクリーンショットを撮れるのは上画面のみで,下画面側でスクリーンショットを撮る方法は見つからなかった。マルチタスクボタンの長押しでスクリーンショットを撮れるように設定しておけば,スクリーンショットを撮れるかもしれない。
それでも,下画面でゲームのプレイを配信をしながら上画面でコメントをチェックしたり,プレイしているゲームの情報や動画を上画面でチェックしたりと,今までのiOS端末やAndroid端末ではできない,あるいは難しい操作が可能になる。もちろん,上下に別々のゲームを表示して,並行プレイをするといった使い方も可能だ。
さて,2画面同時表示となると,画面が増えたことによる性能面でのデメリットはないのかと気になる人もいるだろう。デレステとミリシタのMV同時再生がスムーズであったことからも分かるように,2画面表示による性能低下はそれほどないように見える。とはいえ,処理負荷の高い2つのアプリを同時に動かせば,アプリ1つあたりの性能は相応に低下するだろう。では,アプリを1つだけ動かしている場合に,表示画面が増えた分の性能が低下したりはしないのだろうか。
念のため,TwinView Dockに接続した状態のROG Phoneで,「3DMark」のSling Shot Extreme Unlimited OpenGL ES 3.1プリセットとSling Shot Extreme Vulkanプリセットを実行してみたところ,総合スコアはそれぞれ「5179」「3759」となり,レビューでのテスト結果と比べても,目につくスコア低下は見られなかった(※誤差レベルだが若干高い)。どうやら,仕様としては単純なデュアルディスプレイ的な扱いのようで,片方の画面でしかアプリを動かしていない場合のベンチマークスコアは,ROG Phone単体のスコアと変わらないようだ。
なお,上画面側で実行する場合と,下画面側で実行する場合とで,ベンチマークのスコアが顕著に変動することはなかった。ただ,上下でそれぞれ異なるアプリを表示していると,さすがにある程度の性能低下は生じるようだ。
むしろ,さまざまな横画面ゲームをROG Phoneでプレイしたいという人であれば,検討する価値があるデバイスと言えよう。
興味深いのはデレステのタイミング調整で,上画面側は+14で,ROG Phone単体と変わらなかったのに対して,下画面側は+19と値が大きくなったことだ。下画面側でリズムゲームをプレイする場合は,タイミング調整を変更する必要があることは覚えておこう。
ASUS WiGig Dock
続いて試す周辺機器は,「ASUS WiGig Dock」(以下,WiGig Dock)である。本製品はROG Phone専用機器ではなく,本来は汎用のPC周辺機器をROG Phoneの登場に合わせて国内発売したものという印象だが,組み合わせて使うことで威力を発揮する製品であるのは確かだ。
製品マニュアルによると,WiGig Dockの有効通信範囲は約5mで,デバイスの正面約120度をカバーするという。室内であればそれほど位置を気にしなくてもいいのだが,ROG Phoneのアンテナ部分――AirTriggersの右側あたり――を,何かで覆っていないことが推奨されている。筆者が試した限りでは,TwinView Dockにセットした状態でも接続状況は良好であったため,なるべくアンテナを隠さないようにするくらいでよさそうだ。
この環境で計測したところ,外部ディスプレイ側の表示遅延は約0.02秒(20ms)となった。60fps表示における1フレーム分が約16.7msなので,1フレーム強の遅延が生じていることになるが,ワイヤレス伝送としてはかなり優秀と言っていい。
この程度の遅延であれば,レースゲームやアクション,TPSあたりは違和感なくプレイできるだろう。リズムゲームのプレイも可能ではあるが,外部ディスプレイを見ながらのプレイだと入力位置がズレがちなので,この問題に対策をした場合のみ有効と言ったところか。もちろんMV鑑賞にはとても有用だ。
次の動画は,ROG PhoneとWiGig Dock経由で接続したディスプレイを並べて,マウスポインターの動きを撮影したものだ。映像の情報量で遅延が変化するのではないかと思ったが,とくに変化は見られない。WiGig Dockの低遅延ぶりがうかがえる。
Gamevice for ROG Phone
次にテストするアイテムは,外付けゲームパッドのGamevice
基本的には,Gamevice
WiGig Dockとセットで運用すれば,大きな画面で据え置き型ゲーム機風に使えるというのも検討要素になるだろう。
Gamevice for ROG Phoneは,入力装置として左右アナログスティック,8方向入力が可能なD-Pad,[A/B/X/Y]の4ボタン,ショルダー部分には[L1/R1]ボタンと[L2/R2]トリガーを備えている。そのほかに2つのファンクションボタンと,「特別機能」ボタンなるものもあるのだが,これらで何をできるのかは,検証時間の都合で確認できなかった。
Gamevice for ROG PhoneをROG Phoneに初めて接続したときには,「キーマッピングが利用できます」というダイアログが表示され,ナビゲーションバーから表示できる「Game Genie」の画面に「キーマッピング」というアイコンが追加されていた。
「PUBG MOBILE」を例にすると,移動しながらカメラを動かしつつ,射撃をすると操作は,PCや据え置きゲーム機時となんら変わりなく行えてしまう。
以下に示した動画は,実際にこの設定でPUBG MOBILEをプレイしている様子だ。ダッシュする操作がうまく機能していないことがあったが,どのような雰囲気でプレイできるのかはイメージできるのではないだろうか。
Mobile Desktop Dock&ASUS Professional Dock
最後は,Mobile Desktop DockとASUS Professional Dockも簡単に紹介しよう。
公称サイズは176.3(W)
Mobile Desktop Dockでもキーマッピング機能が使えるので,スマートフォンゲームをキーボードとマウスでプレイすることも可能だ。PC用FPSに慣れた人には嬉しいアイテムかもしれない。
スマートフォン派ゲーマーにマッチする周辺機器群
TwinView Dockは使えるが,ロマン優先な面も
COMPUTEX TAIPEI 2018に合わせて開催したイベントでROG Phoneを発表したとき,ASUSは「スマートフォンは,広く普及したゲームプラットフォームである」と明言したそうだ。そうした現状に合わせて,ROG Phoneと今回紹介した周辺機器は,現状で最も“尖った”ゲームプラットフォームを構築できる製品群であるということなのだろう。
とくに,ROG Phone本体に外部ディスプレイや各種入力デバイスを組み合わせることで,スマートフォン単体よりも優れたゲーム環境を容易に構築できるというのは,PCや据え置き型ゲーム機よりも高性能なスマートフォンでゲームをプレイすることが多いという人にマッチするのではないだろうか。
問題は,重心が高すぎて長時間持つには不向きで,だらだらとプレイする用途には少し厳しいこと。両手で持った状態では上画面側を操作しにくい点から考えても,ストリーマー向けの周辺機器といった印象だ。ロマンの塊といったところか。
ROG Phoneとセットで今回紹介した周辺機器を揃えようとすると,20万を軽く超えてミドルハイクラスのゲーマー向けPCに手が届く価格になってしまうのもネックである。とはいえ,スマートフォン中心のゲームライフであれば,ROG Phoneと周辺機器は価値のある存在だ。ひとまずはROG Phone単体を購入してから,自分の用途に合いそうな周辺機器をチェックしてみるといいだろう。
「ROG Phone」レビュー。確かにこれは「ゲーマー向けスマートフォン」だ
ASUSが開発した新型スマートフォン「ROG Phone」は,「これが真のゲーマー向けスマートフォンだ」と言わんばかりの派手なルックスと機能を有する端末だ。だが,ゲームにおける使い勝手や性能はどうなのだろうか。ハードとソフトの特徴を詳しく紹介しつつ,ベンチマークとゲームプレイで実力を検証してみた。
ASUSのROG Phone製品情報ページ
- 関連タイトル:
Republic of Gamers
- この記事のURL:
(C)ASUSTeK Computer Inc.