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[GDC#02]初日の講義から,気になる三つをピックアップ
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印刷2005/03/08 22:48

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[GDC#02]初日の講義から,気になる三つをピックアップ

 GDCの始まりは,いつも静かだ。チュートリアルと称した講義が,休憩時間を挟みながら朝10時から夕方6時まで続けられる。延々と英語のレクチャーを受けることになるため,渡米したばかりでジェットラグ(時差ぼけ)に悩まされる日本からの参加者にとっては,かなりつらい1日かもしれない。会場には,アメリカからの参加者もまだ少なく,レクチャーが行われている間は,大きな会場内が閑散としていた。



ラフ・コスター氏の基調講演には,初日にも関らず多くの開発者達が来場して耳を傾けていた
 この日,筆者が最初に参加したのは「Serious Game Summit」というトラックの基調講演,ラフ・コスター(Raph Koster)氏による「A Theory of Fun for Games」(ゲームのための楽しさ理論)である。コスター氏は,MUD制作を経て「Ultima Online」のゲームデザイナーの一人として名を上げ,現在はSony Online Entertainment社のCCO(Chief Creative Officer)として「Star Wars Galaxies」(邦題 スター・ウォーズ ギャラクシーズ)の開発チームを率いている。
 この講義は,最近発売されたばかりのコスター氏の著書「A Theory of Fun for Game Design」で語られた「何がゲームを面白くするのか」という命題を,シリアスゲームに当てはめて検証していくものだ。
 ちなみにシリアスゲームとは,ただ銃でモンスターを撃ち殺したり,車で市街地を走り回ったりといったエンターテインメント性のみを重視したものではなく,社会福祉,教育,政治といった素材を扱ったソフトのことをいう。
 コスター氏は,「シリアスゲームも,楽しくなければ意味がない」と述べ,糖尿病と闘っている7歳の娘に,コスター氏自身が個人プロジェクトとしてゲームを制作したという個人的な経験を語った。そのゲームは,サーペント(大蛇)が海を泳ぎながら餌を確保していくのを,血糖値のマネージメントになぞらえているような内容らしい。コスター氏は,シリアスゲームの形をとっていても,プレイヤーが楽しみながら学べるソフトがあっても良い,と考えているようだ。



「塊魂」におけるゲームデザインの秀逸さを語るノア・ファルステイン氏
 また,同じ時間帯には古くからのIGDAメンバーとして毎年参加しているノア・ファルステイン(Noah Falstein)氏が,「The Working Game Designer」(できるゲームデザイナー)と題したレクチャーを行った。こちらは,ゲームデザイナーを志す若い開発者や学生達をメインターゲットに,ゲームデザイナーとは何を考え,どのようにビジネスやプロジェクトに関っているのかという広い内容を扱う講義。
 ファルステイン氏は,LucasArts Entertainment社や3DO Companyなどの第一線で長らく活躍してきた人物で,現在ではゲームデザインのコンサルタント業務に携わっている。
 彼のレクチャーをすべて聞いたわけではないが,筆者が参加した時点では,実際にゲームのデモを行いながら,ゲームデザイナーの視点や面白いゲームにするために注目すべき点を簡潔に教えていた。
 その題材はナムコの「塊魂」(PlayStation 2)で,ファルステイン氏は「日本的でアメリカ人には分かりにくいアイコンが多用されている」としながらも,このソフトを絶賛しているのが印象的だった。
 ちなみに塊魂(Katamari Damacy)は,GDC 2005に参加している開発者達の間で評価の高いソフトの一つ。塊魂の奇抜なアイデアが,欧米の開発者達のクリエイティビティを刺激したらしい。ちょうど,2年前のGDCで巻き起こった「ICO」ブームを思い出させる現象だ。



コリー・オンドレジャ氏は,従来のRPG的アクションよりも学術的な討論にニッチ市場を見い出したSecond Lifeの現状を説明
 もう一つ,「Game Design Workshop」(ゲームデザイン・ワークショップ)では,Linden Labs社の「Second Life」の現状を,同社の制作部門副社長コリー・オンドレジャ(Cory Ondrejka)氏が語っていた。彼自身のバックグラウンドを筆者は知らないが,現在運営されている数々のMMOゲームの中で,Second Lifeは非常にユニークなソフトとして知られている。
 Second Lifeは総アカウント数2万1000ほどの小規模なゲーム。ロールプレイング的な要素はなく,ゲームの中で生産したオブジェクトや情報などの知的財産(IP)は,すべてプレイヤーに帰属するのが特徴だ。
 実際にSecond Lifeは,大学関係の研究者達の間では一種の社交場のように機能しており,ゲーム開発をはじめ,建築や医学関連に及ぶ講義やレポートが発表されているほか,心理実験が目的で作られた迷路や,実世界でのビジネスモデルのテスト,難病患者の集いといったことが行われている。ただのゲームというよりは,非常に知的・社交的にレベルの高い場所として機能しているのである。
 オンドレジャ氏自身「ここまで来るとゲームと呼べるものなのかは分からない」と語ってはいたが,こういったバーチャルワールドの新しい使い方は,今後も進歩していくことだろう。(奥谷海人)

「GDC 2005」
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