インタビュー
各種ゲームバランス,BOT,アカウントハック……。「The Tower of AION」プレイヤーが気になっていることを全部運営チームに聞いてきた
職業バランスは適切か?
クラス間のバランスについてもいろいろな質問……というよりは,○○のクラスを強くしてほしい,という声が多かったです。中でも目立ったのはソード ウイングに対する上方修正と,スピリット ウイングの少なさを嘆く声です。
海老塚氏:
スピリット ウイングはPvPでかなり強いんですけどね。実際,韓国では大人気のクラスです。
例えば,地上戦では精霊を召喚することで2対1で戦えますし,今のバージョンでは精霊は空を飛べないので空中戦には向きませんが,今後,精霊も飛べるようにするという企画もあります。
また,空中にいる相手を地上に落とすこともできますが,これはあまりに強すぎるため,Episode 1.5ではバランス調整が入ります。
4Gamer:
どのMMORPGでもそうですけど,多芸なクラスは認知されるのに時間が掛かりますね。
逆に,やり込んでいる人にとっては,スピリット ウイングの強さを心配する声がいくつかありました。とくにFear系のスキルを複数使われると,ほとんどハメに近い状況に陥ってしまうと。
清板氏:
Fearに限った話ではないですが,魔法は毎回決まるわけではありませんし,そういったことができるのも実はかなり限定された状況です。装備を調整すれば,レジスト率は大分上がるはずですし,例えば魔石だけでもかなりの効果がありますよ。
海老塚氏:
例えば同じシールド ウイングでも,HP特化型とシールド防御特化型で,戦い方は全然違ってきます。魔法の威力を上げる,魔法命中など特化の仕方で全然違った個性を持たせることができます。
4Gamer:
個人的には,パーティとソロで魔石の方向性を変えたいと思うんですよね。ソロでは全身クリティカル,PTでは格上と戦うから命中重視とか。
西本氏:
そうですね。切り換えできるようになると便利でしょうけど(笑),とりあえず,パーティ用とソロ用で装備を2種類用意してくださればと思います。
近接職でのPvPは密接しないことには話にならない |
キャスター職は敵の接近を許してしまうと非常に苦しい |
分かりました。ほかには,スペル ウイングのDDが8000程度のダメージがあり,どんなキャラでも一撃で即死ってのはPvPゲームとしてどうかという意見もありました。
海老塚氏:
瞬間最大火力だけを見たら,かなりのクラスに即死級かそれに近いスキルがあります。分かりやすいのはスペル ウイングですが,クールダウンタイムやDPなどの制約があって,乱発できるものでもありません。そしてなにより,敵に襲われずに安全に詠唱できるとは限りません。そういったものが使える有利な状況を戦術レベルで作り出すところから,AIONのPvPは始まっているわけです。
清板氏:
私もスペル ウイングを使っていて,瞬間での強さは実感しています。しかし防御力が極端に低いため,こちらが先制攻撃を食らうと非常にやばいですね。いかに自分に有利な環境で戦うか,というのも重要でしょう。
4Gamer:
確かにAIONのPvPは,奇襲や集団戦など基本的になんでもアリですね。アンケート回答を見ていると,例えばデュエルのような,スポーツライクに楽しめるPvPを求めている人も多いのかな,という気はします。
現在は,同種族のキャラクター同士が戦える"闘技場"があります。この方向性でいうと,例えばトーナメント戦などのPvP環境はアリかもしれません。今のところはまだ構想レベルの話ですね。
海老塚氏:
ただ,先に申し上げた空中にいる相手を落すスキルなど,相手を地上に引き下ろして戦うためのスキルだったものが,落下即死技になってしまうなど,予想外のバランスになっている部分もあり,こういった戦闘バランスは随時調整しています。
4Gamer:
ソード ウイングをはじめとした近接戦闘タイプのクラスからは,敵に追いつけないので空中戦がツラい,という声がありました。
海老塚氏:
自分もプライベートではソード ウイングを使っているので,その気持ちはよく分かります。空中戦をはじめ,確かに一対一のPvPではあまり強くないですが,ほかのクラスでは真似のできない活躍もできますよ。例えば要塞戦などで,ソード ウイングの集団で敵陣に突っ込み,範囲攻撃を連打してみてください。これは最高に気持ちいいです。
各クラスにそれぞれ一長一短があり,得意な状況と不得意な状況があります。それらをすべてひっくるめて個性だと受け止めてください。特定の状況で,とくに強いクラスは存在しますが,すべての環境でオールマイティに強いクラスはありませんので,自分に合ったものを選ぶしかないと思います。
清板氏:
スペル ウイングの自分からすると,空中戦でソード ウイングを発見した瞬間,「やれるかな?」と思いますね(笑)。
海老塚氏:
でもソード ウイングにとっては,地上戦でスペル ウイングを見つけたら「やったぜ!」ですよ(笑)。
4Gamer:
おっしゃる内容はよく理解できます。それらの具体的なクラスコンセプトが,まだプレイヤー間に浸透しきっていないのかな,と思いました。
海老塚氏:
パワーウィキなどでクラス紹介を行っていますが,今話しているような深いレベルの紹介は,今のところないですね。
4Gamer:
似たようなところでは,PvPに関して,相手が逃げようと思ったら簡単に逃げられてしまい,止めを刺すことができない,という不満の声もありました。
海老塚氏:
敵を逃がさないという意味では,遠距離での足止めが行えるボウ ウイングとスペル ウイングが強いですね。でも,本気で逃げようと思っても100%逃げられなかったりすると,それはそれでストレスが溜まるPvPだと思います。
清板氏:
AIONでは,PvPを強制にはしたくないんですね。PvPを通じて得られる"アビスポイント"の交換アイテムは,必須のバランスではないですし。PvPを行わないという選択肢も,ちゃんと残しておきたいです。
PvPで逃げることは簡単ですが,デスペナルティはほとんどないようなものなので,どんどん戦ってみてほしいですね。
4Gamer:
インタビューを開始してから,もう3時間半も経ってしまいました。本当はVer1.5についてもいろいろと聞きたかったのですが,今回はちょっと無理そうですね。最後に,今回のアンケートに回答してくれた人や,現在AIONで遊んでいる人に向けてのメッセージをお願いします。
西本氏:
アンケートにご協力いただいた皆様,ありがとうございました。貴重なフィードバックですので,これらの内容は吟味して,今後の運営に必ず役立てていきます。また,公式掲示板などの問い合わせ内容に関してもすべて目を通していますので,厳しい意見も含め真摯に受け止めています。不正行為などへの対策は,着実に進めていきますので,これからもどうかよろしくお願いします。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
FSについていえば,結局のところ,総出で障害対応に当たっているためとてもイベントなどをやるどころではない状況という,ある意味予想どおりの回答で,コンテンツ追加などについても,セキュリティ対策を最優先で作業を進めているため止まっているといった状況。
セキュリティ問題をはじめ,多くの問題がVer1.5パッチと同時に解決に向かって動き始める。セキュリティ問題で解決のめどが立たないとサーバー開放もしづらいこと,それによる種族バランス問題,レベル帯ごとの人口バランス問題などなど,解消が期待される問題点と障害関係のサポートスタッフを本来のユーザーサポートに戻せれば,ゲーム内でのイベントなども行われるようになるだろう。
ゲームのバージョンアップによって適用されるクラスバランス補正,コンテンツ追加による要塞戦の意義など,ゲームバランスに関わる部分も変わってくる。
今回の取材で強く感じたのは,エヌ・シー・ジャパンの方針でもあろうが,アナウンスが少なすぎるということである。話を聞けば,細かい部分もやっていないわけではなくて,対応も進んでいるのだが,適切にアナウンスされているとはいいがたい。
もう一つは管理ポリシーの問題だ。
MMORPGでの管理は各社いろいろなポリシーで行われている。
世の中,誤BANなどを絶対に避けるという運営もあれば,とりあえずアカウントを止めてから話を聞くといったスタンスの運営もある。エヌ・シー・ジャパンは明らかに前者である。
また,規約で禁止された部分に抵触していれば容赦なく対処するものの,不正が確認できないキャラクターについては対処ができない。ある意味当たり前である。そのあたりは業者のほうが完全に上手な感じで,仮に基準を厳しくしても,そのギリギリのところで留めるようになるのだろう。ある意味,付け入る隙を与えているわけだが,現状では多くの人がBOTだと断じているようなキャラクターに対して,有効な措置が取れないという。
不正対策で有名なFFXIのSTFの場合,「RMTに関与した」といういささか曖昧な文言をもって包括的に規制を行っている。お金やアイテムの流れを追えば,関連したキャラクターを特定できるので,当事者以外に関与したキャラクターをまとめて切り捨てる形だ。
怪しいキャラクターについては,関与がまったくないとは思えないので,対処できる体制を整えてほしいところだ。現在方策を練っているとことらしいので,今後の展開に期待しよう。
被害者への対応は,現在FSや専任チームなどで集中的に対応しているとのことなのだが,最長1か月というのはいかにも長すぎはしないだろうか。このあたりの効率化は,オンラインゲームの運営会社であれば行っていて当然のものであって,新参の会社であればともかく,エヌ・シー・ジャパンクラスの会社で,この効率の悪さというのは許されないのではないだろうか。
不正アクセス禁止法関連で,一件ずつ警察への被害届などを行っておりきちんと対応を行っている半面,対応の遅れとして表れているのかもしれない。ほとんどが日本国内を踏み台にした海外からのアクセスでは被害届もあまり有効ではないかもしれないのだが,これもいたしかたないのだろうか。
同社の全体的な方針として,口先でいってもしかたないので結果で示すという態度は評価できなくもない。ただし,その方針であれば,結果で示せていないというのは,実質なにもやっていないというのと同義でしかなく,批判の対象となるのは当然であるともいえる。ある意味「漢らしい」対応も悪くはないのだが,隠蔽体質といわれても言い訳はできまい。
例えば,ゲームの不具合が確認されて,1週間後にパッチが当てられたとしよう。不具合の確認後,数時間で告知が出て,翌日には症状や回避法が公開され,2日後にパッチ予定日が公開されて,1週間で対応を終える場合と,症状確認後1週間放置されてパッチ後に対応しましたというメッセージが出るのでは,同じ1週間での対応とはいえ,プレイヤーの評価は大きく変わってくるだろう。
それらは甘んじて受けるというのがエヌ・シー・ジャパンの基本方針だといわれればそれまでなのだが,わざわざ必要のないハードランディングを選んでいるようにも思われ,誰にもメリットはないのではないだろうか。
不正対策の場合,不用意に予告しても業者に対策されてしまうだけなので告知が難しい場合もあったり,障害対策では先に対策を済ませておかないと被害が拡大する場合もあるので一概にはいえないのだが,早めの告知と状況説明は,もはやユーザーサポートの一環であるという気がする。
諸々,問題点は残るが,今回は,本来なら語られることはなかったであろう内部事情も少し公開できたのではないかと思う。
もちろん,今回紹介した以外にも,まだ多くの問題が残っているじゃないかという意見も当然挙がってくるだろう。最後まで読んだ人ならだいたいお分かりと思うが,エヌ・シー・ジャパンでも,公式掲示板に記載されているものをはじめ,すべての問題点を把握しており,対策の協議も行われている。ただし,具体的な対応が確定するまでは発表は行われないようだ。それでも,多くの問題点や要望に挙がっているような点について改善に向けて動いていることは間違いない。
どうしてもできていない部分が取り上げられてしまう傾向はあるのだが,サービス開始からのサーバーの安定性やFSイベントのアイディア,パワーウィキの展開,イメージ掲示板の設置におけるユーザーコミュニティの活性化など,運営部分で評価されている部分もあるゲームなので,セキュリティの根本的な対策がされて以降の展開に期待したいところだ。
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