インタビュー
各種ゲームバランス,BOT,アカウントハック……。「The Tower of AION」プレイヤーが気になっていることを全部運営チームに聞いてきた
ハッキング被害者・加害者への対応
すでにハッキングの被害に遭った方への対応について,お聞きします。まず,救済措置の作業はどのような手順で行っていますか?
海老塚氏:
プレイヤーさんからの被害届けを確認したら,まずは弊社からPDFファイルで「復旧申告書」を送り,それに必要事項を記入したものを郵送してもらいます。復旧申告書をもとに弊社で調査を行い,その結果アカウントハックだと結論付けられた場合,復旧作業に取り掛かります。
4Gamer:
メールではなく,書類を郵送する形なんですね。
海老塚氏:
ええ。大前提として,アカウントハックに対する調査は,確実な本人確認が絶対に必要となります。
4Gamer:
書類を受け取ってから復旧作業を行うまで,実際にはどれくらいの日数が掛かるのでしょうか?
海老塚氏:
プレイヤーさんの状況によりけりですね。実際の調査は,ゲーム中のログを解析するところから始まるわけですが,プレイの頻度によってこの量が違ってきます。例えば滅多にログインしない方の場合ですと,盗用された瞬間しかほとんどログに残っていなかったりします。このような場合は,調査はすぐに終了します。
ですが,毎日一生懸命プレイされている方だと,膨大なログの中から,どこで盗用されたのかを調査する必要があります。また,そのとき寄せられている件数によっても,処理日数は違ってきますね。
4Gamer:
大まかな日数だと,早い遅いでどれくらいの違いがありますか?
海老塚氏:
問い合わせ件数が少なくて,なおかつゲーム内ログの情報量が少ない場合だと,封筒が届いてから1週間程度で終わります。逆に,長いときは1か月近くに及ぶこともあります。
4Gamer:
実際のところ,一度被害に遭った人は,復旧後に再度狙われることが多いですよね。それでも復旧作業を行うのは,1タイトルにつき1回だけなのですか?
海老塚氏:
本来,アカウントハックに対する調査作業や判断は,弊社ではなく警察などの司法機関の管轄になります。現在は「復旧申告書」の郵送という形で受け付けていますが,このシステムが導入される前は,警察が犯人を特定した場合に限り,復旧対応を行っていました。なぜならば,アカウントハックとは犯罪ですので,警察がその事実を認めない限り,こちらとしても対応ができなかったのです。
ですが,それですと復旧までに相当な時間を要し,プレイヤーの不便に繋がりますので1回だけは,弊社がそうだと判断した場合に限り,警察の判断を待たずに復旧を行うようにしました。
いい換えると,法的な裏付けさえあれば,1回という制限はありません。もし警察の側でアカウントハックの事実が認められれば,2回3回といった対応も行っています。それ以前の段階での復旧対応は1回に制限するという意味だと考えてください。
4Gamer:
では次に,加害者への対処はどのように行っていますか?
西本氏:
アカウントハックの事実が判明次第,警察に被害届を提出し告訴する方向で進めています。
海老塚氏:
多くの場合は,被害に遭ったキャラクターから,倉庫用のアカウントへ一度郵送され,そこからRMT市場へと流れています。そういった金銭の流れに対する追跡調なども,当然行っています。
BOTと肉入り業者の違い
4Gamer:
現在もゲーム内では,怪しい名前のキャラクター達が横行しています。こういったキャラクター達がさまざまな面に悪影響を及ぼしており,「なんでBOTを対処しないのですか?」という声は,アンケート回答の中でとくに多かったです。
海老塚氏:
そこは少々誤解があります。BOTなどの規約違反行為に対しては,記録上確認されて証拠が揃い次第,直ちに退会処分を行っています。名前の中に平仮名とアルファベットが交じっていたり,日本人のセンスでは到底付けないような名前だったりといった根拠で,BOTだと推測されているのかと思います。しかし,たとえそのように推測されていても,実際にゲーム内ログや対話等の調査をすると,人間が操作しているキャラクターなのです。
4Gamer:
厳密にはBOTではなく,いわゆる「肉入り」の業者という奴ですか。
そうですね。規約違反行為の事実が見られない場合,処分が行えないのです。
清板氏:
作成制限を行っているサーバーや種族でも,怪しい新規キャラクターを見かけることがあります。あれも同様で,実際に運営側から対話を求めると,ちゃんと日本語で対応してきます。
ですので,実際にはBOTではなく人間が操作している可能性が高いです。
4Gamer:
そこはちゃんと区別する必要がありますね。ですが業者のキャラクターにより,素材アイテムの供給過多や委託販売などといった経済バランスに,実害が出始めてきています。「肉入り業者をなんとかしてほしい」という思いは,多くのプレイヤーが切実に感じていますが,なんとかならないものなのでしょうか。
海老塚氏:
現在の規約上では非常に難しい問題ですね……。
もちろん,ああいったキャラクターは黒でこそないものの,限りなく黒に近い灰色だというのは重々承知しています。なので,一度チェックして,規約違反行為が認められなければスルーしているわけではなく,リスト化して常時監視下に置いています。監視の結果証拠が揃って退会処分となることもあります。そのため,通報いただいてから対処までに期間が開いてしまうことがあります。
西本氏:
この問題は,社内では最優先事項の一つとして,常に検討していますが,対策として確定していない段階で発表するのは,プレイヤーさんの混乱を招くだけになります。具体的な内容は決まったときに初めて発表するつもりです。
4Gamer:
とりあえず,対処の方向では動いているわけですね。
西本氏:
はい。具体的な部分が確定したらすぐにお知らせします。
ワールド/種族の作成制限について
続いても重い話で恐縮です。ワールドや種族によっては,新規キャラクターの作成が長い間行えず,これがさまざまな問題を引き起こしています。
西本氏:
その点につきましては,セキュリティ対策の目処がついたことを受け,9月18日に全ワールドを一時的に開放する予定です。
4Gamer:
作成制限がかけられる理由を辿っていくと,天族と魔族に対する好みの問題に行き着くと思います。この部分が解決しないことには,今後も再び作成制限がかけられる可能性は高いのではないでしょうか。
西本氏:
AIONはワールドワイドで展開するというポリシーを持っており,特定の地域だけに向けて仕様を調整することはありません。例えば日本だと,魔族の外見が好みに合わないという人がいるかもしれませんが,これが北米へ行くと逆に,魔族の方が人気が高かったりします。また,日本人向けにグラフィックスを調整しすぎてしまうと,今度はほかの国で受け入れにくくなるかもしれません。
4Gamer:
そのポリシーは,少なくとも現在の日本の状況を見る限りは,成功しているとはいいにくいですよね。
完全に日本市場向けに調整してほしいといってるのではなく,作成できる幅を広げることで,こういった不満は大分減るんじゃないかなあと思うのですが。
西本氏:
もしそれが日本だけに向けたものではなく,全世界向けに導入する価値があると開発側が判断すれば,導入を検討すると思います。
キャラ作成とは違う例になりますが,日本で受け入れられそうで,なおかつ全世界向けとしても通用すると判断したコンテンツはありますよ。例えばキャラクターが自由に付け替えできる「タイトル」は,主に日本のコレクター向けとして考えられたアイデアです。
しかし韓国のプレイヤーはコレクション要素よりも実益を優先する傾向にあるので,「タイトルなんか集めて何の意味があるの? 自分にどれだけプラスになるの?」と一蹴されてしまいます。その結果,タイトルを装着することで,ステータスアップが付随するようにした経緯があります。
日本で受けるからタイトルのシステムを導入しよう,では,グローバル向けに作るタイトルとして失格です。
4Gamer:
細かい話になりますが,個人的に,魔族の場合は初期エリアにおける"環境光"が青いのが,かなりのマイナス印象を与えていると思っています。たとえキャラクターの作成時に妥協できる範囲で設定しても,いざログインしたらそれが正しく反映されてないように見えますよね。青い肌が好きな人は最初から青くしてるでしょうし,あの青い光を,普通の白色光にするだけでも,印象は大分違ってくるのではないでしょうか?
西本氏:
そういった意見も聞かれますが,例えばパンデモニウムという魔族の美の様式を凝縮した都市があります。そこは明るくて荘厳でかなり印象が変わると思います。ぜひ全体的に魔界の世界観を楽しんでいただきたいと思っています。
魔族の外見が「嫌い」というよりは,天族が「明るくて楽しそう」という,むしろ先入観に近いものがあるのでは,と思うことがありますね。"魔族"という言葉も悪役チックですし,どちらかしか選べないと考えると,天族が無難かな,と思うのが日本人ではないでしょうか。
4Gamer:
まぁ日本では古くから,勧善懲悪の作品が人気がありますからね……。
それはさておき,AIONは全世界向けとして作られているわけですが,日本以外におけるローンチ国で種族制限が行われたことはありますか?
西本氏:
韓国でもワールドによっては,作成制限をかけることがあります。ただ,その理由は日本とは大分違っていて,アバターではなく,とにかく実益重視です。例えば大手のレギオンが移動したり,アップデート内容により「こっちの種族だとレベル〜向けの優れた狩場がある」といった理由で,ごそっと人が動きますね。
清板氏:
仮に韓国で,「男性キャラクターだと攻撃速度が1%速い」といった情報が出たら,その瞬間から男性のキャラクター作成が一気に増えると思います。見た目よりもそういった機能を重視する傾向にあると思います。
西本氏:
たとえ実益が下がってもいいから見た目を選ぶ,という意味では日本がもっとも顕著ですね。アバターに関してもっともこだわるのが日本だと思います。
4Gamer:
国民性の違いを感じます。そういえば,"形状加工"を行っているプレイヤーも結構いますね。
海老塚氏:
日本では受け入れられてるのかな,と思います。浴衣やサンタクロースの外見で戦っている姿は,なかなか新鮮でよいですよね。ただ,現状ではモノがまだまだ少ないので,なんとかしなくてはとは思ってます。
4Gamer:
現状では作成制限が厳しくて,低レベルや少しずつしかプレイできない人ではクエストなどでパーティが組めないという声も挙がっています。
西本氏:
パーティクエストに関しては,募集してみると案外揃うものですよ。パーティクエストを飛ばしてプレイしている人も結構いますので,残ったクエストは機会があればやりたいという人は実は多いです。まあ,経験値やアイテムなどは期待できなくなりますが。
→ 続いて,クライアントの不正終了問題について
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