企画記事
春だ飛び出せ,3Dステレオ映像ゲーム環境(その1)
テーマは立体ゲームだ。「3Dゲームは立体だろう?」という人もいるかもしれないが,あくまでディスプレイの表面に描かれた2次元画像にすぎない。ディスプレイより飛び出したり,引っ込んだりして見えるのが本物の立体映像だ。左右の耳で聞く音楽がステレオ音声であるように,左右の目を使って見る映像はステレオ映像と呼ばれる。右目と左目の視差によって立体表現が可能になるのだ。
今回は,NVIDIAの3Dステレオドライバを使って立体ゲームを楽しむ方法をまとめてみたい。ATIやS3のグラフィックスチップを使っている人には心苦しいのだが,以下の内容はGeForceシリーズ専用になるのでご容赦を。
また,ドライバの入れ替えなどが発生する可能性があるので,読んでいてよく分からない部分がある人は手を出さないほうが無難かもしれない。あくまでも自己責任で対処できる人のみ続きをどうぞ。
導入方法
NVIDIAは,かなり以前からステレオドライバを提供していた。これを使えば,ゲーム側がステレオ表示に対応していなくても,ドライバレベルで立体化してくれるという素敵なドライバである。昔はELSAが熱心にステレオドライバを作っていたものだったが,Windows NT系のドライバが長く提供されずβ版だけ出したまま,ELSAドイツ本社は解体されて,ワークステーション向けOpenGLアクセラレータ部隊はNVIDIAに吸収された。おそらくその系列でNVIDIAステレオドライバが作られていたものと思われる。
これらのドライバは,もともと液晶シャッター方式のメガネなど,各種3D表示デバイスを動かすためのものだったのだが,赤青メガネにも対応しており,特別なデバイスなしでも3Dステレオ映像を楽しむことができる。
その最新版が公開されたのが,3月28日。4月16日には,GDCで発表された3Dステレオに関するホワイトペーパーも公開された。
しかし,この最新ドライバはWindows Vista版しか用意されていない。また,ステレオドライバとForceWareは同じバージョンをセットで使うのが基本なのだが,最新ForceWareでは,実質的にGeForce 9シリーズしかサポートされていないという,ちょっと困った状況となっている。
●GeForce 9用
→Windows XP用ForceWare 174.74(72.1MB)
→32bit版Windows Vista用ForceWare 174.74(60.9MB)
NVIDIA 3D STEREO情報ページ
http://www.nvidia.com/object/3d_stereo.html
●GeForce FX/6/7/8用
→Windows XP用ForceWare 174.74β(72.1MB)
→32bit版Windows Vista用ForceWare 174.74β(60.9MB)
以下に,3Dステレオ表示を行うためのGPUとOS別のドライバ対応でNVIDIA推奨のものをまとめておこう。
●Windows Vistaの場合
・対応GPU:GeForce 9シリーズ
Windows Vista 32ビット版
ForceWare 174.74
ステレオドライバ 174.76
このセットで使用することが望ましいのだが,GeForce 6/7/8シリーズの場合は,
・対応GPU:GeForce 6/7/8シリーズ
Windows Vista 32ビット版
ForceWare 174.74β
ステレオドライバ 174.76
の組み合わせで利用してほしい。なお,このバージョンのドライバは,GeForce FX以前のGPUには対応していない。
●Windows XPの場合
・対応GPU:GeForce FX/6/7
Windows XP
ForceWare 91.31
ステレオドライバ 91.31
古いGPUの場合は,グラフィックスメモリ容量が小さいことが多く,最近のゲームを立体でちゃんと表示できるかは,やや疑問がある。
●ノートPCの場合
ForceWareはノートPCベンダー各社のサポートページから更新可能な場合もあるが,指定されたバージョンのドライバが用意されていないこともあるので,そのときは諦めよう。ノートPC向けのドライバは製品ごとにパワーマネージメント機能がカスタマイズされているので,その機種専用のドライバ以外は入れてはいけない(メーカーのサポートページからダウンロードしたドライバでもパワーマネージメントが効かなくなったこともあるのだが……)。
ざっと見て,Windwows XPを利用しているGeForce 8/9ユーザー以外なら,なんとか3Dステレオ映像を楽しむことができる感じだ。って,それじゃダメじゃん……。
実際のところ,最新ドライバとWindows Vistaの組み合わせしか,NVIDIAでは推奨していないようだ。一応Windows XP用のドライバも用意されているが,2006年6月のドライバでは,最近のゲームがちゃんと動くのかも怪しい。また,多くの人にとっては,バージョンダウンになってしまう。普通に使っている人であれば,91.31なんて古いドライバは使っているはずがない。たいていは163.75くらいのドライバだろう。
さて,無保証度がますます高くなるのだが,NVIDIAは,ここで挙げてある以外のβ版ステレオドライバも公開していた。Windows XPの最新WHQLドライバである163.75に近いバージョンのステレオドライバで,163.75との組み合わせで実動報告がされているものに,162.50がある。現在は公式サイトから消えているという代物なので,安定性などにも疑問はあるのだが,とりあえずこれを使うことにする。推奨されるForceWareは163.75だが,162.50以降のバージョンであれば,おそらくForceWareを入れ替えなくても使用できると思われる。
NVIDIA本家からは消えているので,比較的安全そうな外部サイトからダウンロードしてこよう。ここでは,ドライバやツール関係では有名なGuru3Dを利用した。
http://downloads.guru3d.com/download.php?det=1709
このページを見るとGeForce 8対応とはなっているのだが,このバージョンでもGeForce 8/9シリーズとWindows XPの組み合わせではうまく動かないと思われる。
ドライバの入れ替えは,あくまでも自己責任のもとで行い,バージョン確認方法や入れ替え方などについては,以下の記事を参照のこと。
https://www.4gamer.net/games/041/G004167/20071008001/
https://www.4gamer.net/games/041/G004167/20071014001/
ゲームを主用途とするPCでは,Windows Vistaを入れている人は少数派だと思われる。GeForce 8シリーズとWindows XPで立体ゲームに挑んだ人は多いようだが,芳しい成果を挙げた人はいないようだ。いくつかのβドライバの組み合わせでステレオ化に成功した人もいるようだが,ネット上で探す限り「やめとけ」というコメントが多いようだ。かなり不安定でまともに動かないらしい。
ForceWareとNVIDIAの3Dステレオドライバを使う限り,Windows XPとGeForce 8/9シリーズでは,立体化はできないものと思ったほうがよい。いろいろなβ版を出しつつも,結局NVIDIAがWindows XPでのサポートを見送ったことを思えば,ちゃんとできるわけもないのだ。
まとめると,以下の表のようになる。
Windows Vistaの場合は,とくに問題なくインストール後に,デスクトップ上にできた「3D STEREO CONTROL PANEL」のショートカットを使って設定を進めていけばよい。
Windows XPの場合は,NVIDIAコントロールパネルが新型(Sedona)に変更された関係で,旧型のUIに用意されていた3Dステレオ化設定が利用できない。
ちょっと面倒だが,「ファイル名を指定して実行」からregeditを起動し,
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\NVIDIA Corporation\Global\NvCplApi\Policies
を開く。ここに,[新規]−[DWORD値]でSedonaDisableというキーを追加しよう。次に,以下の図のように各キーの値を書き換える。
これで,デスクトップ上から右クリックメニューでディスプレイの種類を指定すると旧式のNVIDIAコントロールパネルが開くはずだ。ここで詳細プロパティを選択すると,3Dステレオ設定が可能になる。
基本的に,ステレオ有効モードを有効にして(またはホットキーで起動),ステレオタイプを確認するだけだ。赤青メガネの場合は,Anagliph(Red/Blue Glasses)となっているのを確認すればよい。
ホットキーで立体モードにする場合は,Ctrl-Tを押す。ホットキーは変更も可能だ。
赤青メガネを作ろう
動作確認
いよいよ,動作確認をしてみよう。
なんでも動くとよいのだが,そう甘くはない。NVIDIA STEREO ドライバが動作するのは全画面モードのときに限られる。だが,全画面モードに設定しても動かないタイトルはある。
こちらにNVIDIAでの動作確認リストがあるので,これで「1」がついているものであれば,かなり良好な3Dステレオ状態でゲームを楽しむことができるだろう。
この一覧に出ているものは,基本的に大丈夫なはずなので,リストに載っているものをいくつか試してみた。
●クライシス(シングルプレイデモ版)
クライシスは,ただでさえ重いゲームなわけだが,立体化というのは,同時に2枚の絵を描いているようなものなので(実際,内部では2枚描いてから合成処理して表示していると思われる),激烈に重くなっている。
グラフィックスオプションを軽くすれば,処理を軽くすることは可能だが,それをやってしまうとクライシスをプレイする意味が半減してしまう。どちらかを取るなら解像度を下げる方針で対処しよう。
https://www.4gamer.net/games/027/G002764/20071027002/
●The Wicherデモ版
基本的にステレオ化は動作しているのだが,左右の分離が甘く。変なタイミングでFSAAがかかっているかのように,左右の画像が交じっている。そのため,どうしても不自然で立体に見えづらい。いくつかのタイトルで同様な症状が見受けられる。
https://www.4gamer.net/games/016/G001625/20071217001/
そのほか,4Gamerの体験版一覧からざっと見繕うと,A列車8の体験版と無双OROCHIのベンチマークで動作を確認できた。
オンラインゲームでは,一見全画面モードに見えても,実はウィンドウモードになっているタイトルが多く,ほとんどのもので立体化はできない。おそらく日本語変換部分で普通のWindows APIを使用しているのではないかと思われる(DirectX環境ではIMEの制御などは用意されていない)。
すべてのタイトルを試したわけではないが,オンラインゲームで動作確認できたのは以下の5種類だけだった。
マビノギ
ViZiMO(ゲーム画面を全画面モードにした場合)
三國志 Online
北斗の拳ONLINE
エミル・クロニクル・オンライン
英語版などを試せば,おそらくかなりの確率で立体化可能と思われる。ざっと試して,コーエー系はすべてOkではないかと推測されるのと,同じヘッドロックの制作でもECO以外は無理だったことを参考までに添えておこう。ちょっとメーカーが偏っているようにも見えるが,これ以外に20本以上のゲームを試している。オンラインゲームではかなり厳しい状況だ。MMORPGは,立体表示での没入感がもっとも楽しめる種類のゲームだけにちょっと残念だ。
連休の後半に暇を持て余している人は,どんなゲームが動くのかチェックしてみるのもよいだろう。
今回は,事情により赤青メガネを使った3Dステレオだけを扱った。しかし,世の中には,3D立体表示専用デバイスというものも存在する。連休明けになると思うが,今回の続きでは,そういったデバイスを使った3D立体表示について解説してみたい。
では,短い連休は赤青メガネの立体ゲームを楽しんでみてほしい。
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