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8月からの連続アップデートで生まれ変わる「新トリックスター」インタビュー
その第一回アップデートを8月7日に控え,準備に明け暮れるジークレスト パブリッシング事業部 シニアグループマネージャー 岩澤泰洋氏と,同第一グループ アシスタントディレクター 深井洸介氏にお話を伺った。
■トリックスターが一連のアップデートで生まれ変わる
本日はよろしくお願いします。トリックスターが新しく生まれ変わり,8月から年内いっぱいにかけて毎月連続でアップデートをするとのことですね。このアップデートについてお話を聞かせてください。
岩澤泰洋氏(以下,岩澤氏)
今までとはまったく違うものになりますね。イメージ的には,「トリックスター バージョン2.0」とでもいうような。遊び方自体はほぼ同じなんですが,クエストの総入れ替え,マップやモンスターの拡張/追加などによって,内容が大きく変わります。またアイテムに関する考え方,すなわちアイテムの合成や成長は本来こうあるべきだよね……といったような検討も進んでいて,それに伴い,ゲーム中で入手できるフリーアイテムと課金アイテムの垣根も若干変わってくる可能性があります。
4Gamer:
わざわざクエスト総入れ替えを実施する理由はなんですか?
岩澤氏:
実は今までのトリックスターは,マップの広さやNPCの配置に始まって,クエストとそこに登場するモンスターとのレベルのバランスなど,ゴチャゴチャしていて整合性が取れていなかったんですね。そこを根本的に変えていきます。
4Gamer:
韓国で制作されるMMORPGには,ありがちな状況ですね。
岩澤氏:
ええ。いってみれば,場当たり的に作られてきたような感じでした。まあそうやって,遊べる場だけ提供して,あとは好き勝手にプレイしてもらうというスタンスも可能ですが,それではただレベルを上げるだけ,強いボスモンスターと戦うだけのゲームで,日本だと遅かれ早かれ飽きられてしまいます。きちんとマップとクエストが配置されていて,欲をいえば筋の通ったストーリーがあって,ずっと続けていくと1本の漫画やアニメとなるようなものであるべきでしょう。そのへんを,今回始まる一連のアップデートで段階的に是正していき,さらにはプレイヤー層も新規からベテランまでのバランスを綺麗なピラミッド型にしていきたいですね。
4Gamer:
その第一弾が,8月7日のアップデートということですね。具体的には,どういった内容になるのでしょう?
深井洸介氏(以下,深井氏):
まず,キャラクターの作成画面から変わっています。従来は小さなウィンドウ内で行っていたのを全画面表示にしたり,職業の長所や短所,あるいは各ステータスを上げることによって得られる効果なども表示されます。またチュートリアルについても従来は少々長めで,あちこち歩き回って全部終える頃にはレベル5くらいに達するようなものだったんですが,今回は1マップ内に全チュートリアル用NPCが収まる,簡潔なものになっています。どれも以前から「初心者には分かりにくい」という指摘があった部分ですが,今回かなり改善されていますね。
岩澤氏:
トリックスターの操作自体は非常に簡単なんですが,NPCがあっちこっちに配置されていて位置を把握しにくかったため,「どうすればいいのか分からない」とチュートリアルの途中で投げ出してしまう人も,実は多かったんですよ。
4Gamer:
なるほど。主に初心者向けのアップデートという感じですか。
岩澤氏:
そうですね。今回はキャラクター作成とチュートリアルに加えて,序盤の二つのマップをリニューアルしています。ゲームバランスも調整して,クエストを順序どおりにこなしていくだけで順当にレベルアップが図れるような内容になっていますね。次回はそれに続くレベル帯,次々回はその次というように段階的に手を加えていって,最終的にはレベル300以上もフォローする予定です。
4Gamer:
そうしたアップデートが,年内いっぱい続くということですか?
岩澤氏:
いや,最終的にいつまでやるのかは,まだ決まっていないんですが,おそらく年内では終わりそうにないですね。来年までかかってしまうと思います。
なるほど。年内は毎月やるけれども,その期間だけですべてのリニューアルが終わるわけではないんですね。それでは今回アップデートされる二つのマップについて,もう少し詳しく教えてください。
深井氏:
今回は,レベル1〜15くらいまでを対象とする「コーラルビーチ地域」と,レベル15〜30程度を対象とする「マリンデザート地域」をリニューアルしています。具体的には,マップの拡張およびワープポータルの位置と移動経路の変更,モンスターのAI強化と配置の変更などですね。また,ダンジョンの位置も変わっています。最も大きなところは,これまでのクエストを廃止して,新しいものにしていることですね。
4Gamer:
新しいクエストは,どのようなものになるのでしょう?
深井氏:
今後のアップデートにつながる連続したストーリーを持った,35のクエストになります。またクエストを提供するNPCの頭上には,巻物のアイコンが表示されるなどの細かい改善も施されています。
岩澤氏:
今までもストーリーのようなものはあるにはあったんですが,先ほど述べたとおり場当たり的で,通して見ると不自然でチグハグになっていたんですね。そこで今回の一連のアップデートでは,一貫したストーリーとなるよう一から作り直しています。
4Gamer:
ストーリーの内容はどのようなものなんでしょう?
深井氏:
8月の段階ではまだ序盤の序盤なんで,ストーリーの核心には触れません。主に世界観や操作といった,どういったゲームなのかを理解してもらうための内容になります。
岩澤氏:
このゲームで生き抜くためには,どんなことが必要なのかといったようなことを学ぶ内容ですね。今後,アップデートが進むにしたがってストーリー色は強くなっていきます。
■日本の要望を伝えるためのコミュニケーション強化
日本のゲーマーは,ストーリー性を求める傾向が強いですよね。例えば,オフラインのRPG並みに強いストーリー展開を期待してもいいのでしょうか?
岩澤氏:
うーん,そうなっていますと答えたいところですが,そこまで強いストーリーにするかどうか,今の段階ではお答えするのが難しいですね。もちろん,伏線を張ったりNPCに裏の設定をしたりしておいて,後々の展開で実はこうだったんだ,といったようにストーリーに大きな影響を与えるようなことは考えています。ただ,そうしたものを本当にプレイヤーが求めているのかどうか分からない部分もあるため,どこまで力を入れたものか図りかねているというのが本音です。パッケージだと自分達の作ったものを一方的に提供するだけですが,オンラインではプレイヤーと我々が一緒にゲームを作り上げていくということも重要ですから。
4Gamer:
なるほど。方向性として検討はしていても,反響によっては実際にどうなるか分からない,と。
岩澤氏:
そのへんはバーベキュー的とでもいいますか,こちらで料理を完成させて「さあ食べろ」というのではなく,素材を準備してプレイヤーと一緒に調理しながら「ああ,おいしいね」「ちょっと足りないかも」という反応を見ながら,「今度はこういう料理を作ってみませんか?」というように進めていくことになります。
4Gamer:
ところで,そうした日本のプレイヤーからの要望は,韓国の開発元に届いているんでしょうか?
岩澤氏:
全部ではないですが,部分的には実現しています。要望が出たから「よーいドン!」で開発を始めるわけではないですから,実現までにタイムラグが生じる場合がありますね。気がついたら実現してました,振り返ってみればあのときの提案をここに入れてくれたんだね,ということも多いです。
4Gamer:
具体的にはどういった部分でしょう?
深井氏:
今回のアップデートは韓国で今年の1月に行われたものとほぼ同じなんですが,その内容は,日本側で以前から再三にわたって伝えていた,メインストーリー,チュートリアルのリニューアルやマップの拡張,NPCの配置などの要望に関するものです。それが前触れなく,いきなり実現していて驚きました。
岩澤氏:
トリックスターは現在数か国でサービスされていますが,その中では日本のシェアが最も大きいので,日本からの要望を汲んでくれているとは思うのですが……。ただ開発元はあまりそういった説明をしてくれないので,真相は分かりません。
4Gamer:
そのへんは,お国柄の違いですかね。
岩澤氏:
そうかもしれません。以前は開発元とのミーティングというと,オフライン,またはメールとチャットという形だったのですが,7月からは1〜2週に1回,Skypeを使った電話会議を行っています。そうやってコミュニケーションを取る機会を増やして,お互いを理解する努力をしています。
4Gamer:
なるほど。日本の意見がゲームに反映されやすくなるよう,努めているわけですね。
■コアゲーマーでも楽しめるコンテンツを
トリックスターというと,オンラインゲーム初心者やライトゲーマー向けというイメージですが,今後はコアゲーマーを狙ったコンテンツも実装していくとか。
岩澤氏:
ええ。長く続けていて高レベルキャラクターを保有するプレイヤーからは,達成意欲を刺激するようなものが欲しいという要望が多いですね。単に強いボスモンスターを出してくれというよりは,例えばそのボスを倒したあとに「名誉」「称号」のようなものが手に入って,さらに次の段階に進めるような仕掛けがあると面白いのに,といった内容です。その称号がないと入れない場所がある,とか。あるいは,さらなる転職であるとか,1アカウントで作成できるキャラクター数であるとか,キャラクターの種類であるとか,さまざまな案を検討中です。
4Gamer:
そういえば8月のアップデートでは,ボスモンスターもリニューアルされるとのことですが。
深井氏:
そうですね。この2マップには,これまで2体のボスが配置されていたのですが,そのうち1体は削除されます。残った1体は召喚するサブモンスターの強化などを施して,今までよりも数段手ごわくなっています。
4Gamer:
対象レベルはどのくらいなんでしょう?
深井氏:
適正はレベル50前後で,それでも苦戦するかもしれません。こちらは新規クエストなどとは違って,既存のプレイヤーに楽しんでいただく内容になっています。
4Gamer:
先ほどおっしゃっていたように,倒すと何かその先があるんでしょうか?
深井氏:
従来どおり倒した証明となる勲章はもらえますが,今のところそれだけになりますね。
4Gamer:
それでは,アップデートに関しては最後の質問となります。一連のアップデートの中で,「クエストの一新」と「マップのリニューアル」以外の,機能的/システム的に目玉となるようなものってありますか。
岩澤氏:
うーん,まだ詳しくはお話できませんがあります。時期的には秋以降,涼しくなってからといったところでしょうか。一からゲームを作り直しているので,それがこのアップデート最大目玉といえばそうなります。
■すでに開始されている運営スタイルの変更
さて今回のアップデートに伴って,運営スタイルを変えていくという話も聞いたのですが,具体的にどういったことをお考えですか?
岩澤氏:
これは,トリックスターが新しくなるからというわけではなく,ここ1か月くらいですでに変えているのですが,もしかするとプレイヤーからは見えづらい部分かもしれません。具体的な数字はお教えできないのですがスタッフを増員していまして,とくに運営企画とユーザーサポートに力を入れています。というのも,今までもプレイヤーさんの質問に対して,表向きには翌営業日にお答えしますという形にはしていたんですが,必ずしも100パーセント実現できてはいなかったんですよね。また個別に対応する場合が多く,統一した基準がなかったということもあります。
4Gamer:
例えば,どういったようなことでしょう?
岩澤氏:
例えば……そうですね。アイテムの譲渡一つをとっても,これは純粋なプレゼントなのか,それともRMTにあたるのかといったような心配をされたり。逆にいえばトリックスターのプレイヤーは正直な人が多くて,結構な割合でそういった質問をしてくるんです。こういう質問に個別に答えていると,その都度対応が変わってしまう可能性がありますし,それはすなわち不平等ですよね。そういった部分にルールを設定して公開していく,といったことをやっています。
4Gamer:
微妙な内容なだけに,頻繁に質問されるものには基準を設けるわけですね。
岩澤氏:
ええ。また,これは本来あってはいけないことなのですが,キャンペーンなどのアイテムプレゼントで何か手違いが生じた場合に,従来は公式サイトで告知して該当者にアイテムを渡して終わりだったんです。それを,該当の人にまずお詫びのメールを差し上げたうえで対処する,もしいくつか対処法が考えられる場合には,どれがいいか選んでいただくといったような方法に変えています。このような,リアルな社会のビジネスでは当たり前に行われていることを,しっかり心がけていきます。
4Gamer:
リアル社会と比べると,ネット上ではそうした部分がおろそかになってしまうことはあるかもしれませんね。
岩澤氏:
あとは,もちろん不正者対策にも力を入れています。今までは「申告したのに放置かよ」と言われることもあったのですが,現在は運営サイドで毎日特定の時間に見回りをするということはやっています。あまり詳しく言うと逆効果なので言えませんが。「Aというキャラクターが怪しい」という申告があれば,必ず何度もAについてチェックをしたり,実際にログインしてAの動きを確認したり,あるいは注意を促したりということも当然やっています。
4Gamer:
「Aが怪しい」と申告した人は,運営サイドからの調査の結果を教えてほしいと思っているのではないでしょうか?
岩澤氏:
そうですね。さすがに「Aさんを逮捕しました」という形ではないですが,おそらく申告者本人は分かる理由をつけて,「このアカウントを停止(または削除)しました」という情報は開示しています。これは恥ずかしながら以前はやっておらず,最近始めたことですね。
4Gamer:
なるほど。おっしゃっていたように,目に見えない部分での努力が多いですね。
■プレイヤー主催イベントなどもシステムでサポート
運営上の目に見える改善などは何かありますか。
岩澤氏:
目に見える部分としては,キャストと一緒に遊びたいというコアなプレイヤーさんが多いものですから,突発的にPvPみたいなことをやってみたり,強めのモンスターを召喚してみたりといったこともやっています。
4Gamer:
実際の反応はどうでしょう?
岩澤氏:
これはもう「楽しいのでもっとやって」「お前らいい加減にしろ!」と両極端ですね。そんな反応を見て反省したりすることもあるのですが,少なくとも活性化はするので,健全な刺激にはなっていると思いますね。まあ見える見えないにかかわらず,こうした運営努力は利益に直結する部分ではないので事業として見ると厳しいのですが,今後はこういったところにも力を入れたいですね。また,今回はトリックスター自体を一から積み上げ直すわけですから,不満要素や今一つと思われている部分をなくしていきたいところですね。
4Gamer:
プレイヤーからの不満には,どのようなものがありますか?
岩澤氏:
ログインできないとかラグが多いとか,インフラ部分でのものが多いですね。いたずらにサーバーを増やしても,今度は一緒に遊べない人が出るといったように問題が発生しますから,こちらも地道に機材やシステム構成を変えたり,データベースをバージョンアップしたりしています。いずれもやって当たり前のことばかりですが,以前は後手後手に回っていたので,今は優先的に手をつけています。その結果,今年の春くらいからはサーバーダウンで皆さんにご迷惑をかける割合も4分の1,5分の1くらいには減っていますね。
4Gamer:
そうした不満は,主にメールなどで寄せられるのですか?
岩澤氏:
メールもそうですが,毎日積極的にプレイヤーさんのブログやSNSを拝見して,情報を集めています。それが事実かどうかの確認にも時間を割いて,事実である場合には早急な対処を心がけています。いってみれば,プレイヤーさんがゲームを運営していて,我々はその後方支援をしているというようなスタンスですね。
4Gamer:
そういった情報の集め方ができるようになったというのも,人員増強のおかげですね。ところでブログやSNSのお話が出ましたが,今回のアップデートに伴ってCGMの導入についても力を入れていくと聞きました。これはどういったものを想定していますか?
岩澤氏:
例えばですが,プレイヤーが自主的にイベントなどを主催する場合,今は自身のブログなどで宣伝されています。そこで,こうしたブログなどを公式サイトに登録しておくだけで,RSSで更新情報が会員全体に伝わるようにしたいのです。そういったブログを見ていなくて知らなかったという人にも,情報が届くような環境ですね。これまでも公式サイトにリンク集を設けてはいたんですが,十分に機能しておらず,また我々もうまくケアできなかったところがありましたので。
4Gamer:
SNSのようなものを立ち上げるわけではなく,会員のブログをサポートしたいという方向性ですね。
岩澤氏:
正直なところ,今は一つのゲームだけをプレイしてブログを書いている人はあまりいないので,競合他社の宣伝にもなってしまうのではないかという心配はあるのですが,だからといってとくに制限を設けるつもりはないですね。
4Gamer:
それでは最後に,トリックスターファンや4Gamer読者に向けて,コメントをお願いします。
岩澤氏:
今回のアップデートは,既存プレイヤーの期待を裏切ることはないと思います。全部出来上がるまでには半年以上かかってしまいますので,お待たせする部分もありますが,新しいクエストにはぜひ挑戦してみてほしいですね。また新規の方については,「まず何をやっていいのか分からない」といった問題の大半が解消されますし,初心者向けのメールマガジンもスタートさせていますので,騙されたと思ってやってみてください。
深井氏:
既存のプレイヤーはもちろん,これから始める人にも分かりやすくなっています。新規要素も随時追加していきますので,今後のアップデートにご期待ください。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
今回の一連のアップデートでは,各バランスを調整するだけでなく,しっかりとしたメインストーリーを据えつつ段階的にリニューアルを施していくという。チュートリアルおよび最初のマップから順番に入れ替えを行い,最終的には高レベルのプレイヤーにも満足できる遊び甲斐を提供していくようだ。トリックスターというと,そのポップな外見から,これまではオンラインゲーム初心者やカジュアルゲーマー向けというイメージが強かったが,これからどのようにコアゲーマーに訴えかけていくのか楽しみだ。
オフィスには社内の一体感を強め,士気を高めるために,キャッチコピーやスローガンを配したさまざまなポスターがところどころに貼られていたのも,今回の運営スタイル変更に対する意気込みを感じさせた。長期に渡るアップデートが運営と開発,そしてプレイヤーの三者の手によって,どういう成果をもたらすのか今後も注目していきたい。(ライター:大陸新秩序)
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