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Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス
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印刷2019/03/25 00:00

レビュー

最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス

Creative SXFI AMP

Text by 榎本 涼


 Creative Technology(以下,Creative)が開発した新しいバーチャルサラウンドヘッドフォン技術「Super X-Fi Technology」(以下,Super X-Fi)を知っているだろうか。「スマートフォンで左右の耳と顔を撮影してCreativeのクラウドサーバーへ送ると,耳や頭の形に合わせて最適に聞こえるようにパーソナライゼーションを行う」という,極めて意欲的な技術だ。
 最終製品の形態としてはUSBサウンドデバイスやヘッドセットがあるが,今回は,より多くのヘッドセットやヘッドフォンに対応するUSBサウンドデバイス「SXFI AMP」を取り上げたい。

SXFI AMP
メーカー:Creative Technology
問い合わせ先:クリエイティブメディアの「お問合せ」ページ
税込実勢価格:1万8144円(※2019年3月25日現在,直販限定)
画像集 No.002のサムネイル画像 / Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス

 USB Type-C接続でPCやモバイルデバイスに対応し,アナログ接続型ヘッドセット(やヘッドフォン)の音をユーザーひとりひとりに対して最適化できるという製品は,ゲーマーに何をもたらすのか。検証結果をお伝えしていこう。


いわゆるポタアン的な外観とサイズで,PCやゲーム機との接続に対応


接続イメージ。ヘッドフォン(※写真はCreative製「E-MU Teak」)をつなぐと,もうほとんどポタアンである
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 SXFI AMPの外観は,PC用のUSBサウンドデバイスというよりも,モバイルオーディオプレイヤーやスマートフォン用として流通している「ポータブルアンプ」(ポタアン)に近い。本稿では合計4個のボタンが並ぶ側を「本体正面」として扱うことにするが,実測サイズは約17(W)×10(D)×67(H)mm,実測重量は約15gと,文句なしに小型軽量だ。

 ボタンは上から,Creativeが「Holographic Audio」(ホログラフィックオーディオ,以下カタカナ表記)と呼ぶ,Super X-Fi技術ベースであるバーチャルサラウンドヘッドフォン機能の有効/無効切り替えスイッチで,その下はヘッドフォン出力のボリューム[+/−]変更用スイッチが中央の(モバイルデバイス用)[再生/一時停止]ボタンを挟むレイアウトになっている。

横に倒した状態の本体正面。写真左が本体上部となる
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本体背面(左)と本体右側面(左)。マットな黒色のアルミ製ユニボディを採用した筐体の作りは丁寧で,角の面取りもしっかりできている。ロゴやアイコンが銅色なのと相まって,落ち着いた,大人のガジェット感があると紹介したら言い過ぎだろうか
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本体上面の3.5mmミニピン端子(上)と下面のUSB Type-C端子。3.5mmミニピン端子のほうに付いているマークはヘッドフォンだ。ただ,本文でも触れているとおり4極端子で接続すればモノラルマイクも利用できる
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 接続インタフェースは本体の下側がUSB Type-C,上側が4極および3極両対応の3.5mmミニピンのそれぞれメス。製品ボックスには両端がUSB Type-Cで全長実測約70mmのケーブルと,USB On-the-Go対応のType-C−Micro-B変換アダプターが付属しているが,別途Type-C−Type-A変換ケーブルを用意すれば,Type-C接続に対応しないPCなどとも接続可能だ。
 ちなみに対応プラットフォームはWindows 10(Creators Update Version 1703)以降,macOS 10.13(High Sierra)以降,Android 7.0以降。詳細は後述するが,iOSプラットフォームは「最適化には使えるが,SXFI AMPには非対応」で,変換ケーブルを使ってiOSデバイスと接続してもSXFI AMPから音を出力できないので注意してほしい。

 実際の接続イメージをいくつか写真で紹介してみるが,要は,USB接続さえできれば基本的に利用できるという理解でいい。ただし,PlayStation 4(以下,PS4)およびNintendo Switch(以下,Switch)のユーザーなら体験的に知っているであろうとおり,両ハードウェアはUSB接続時だとサウンド出力が2chステレオになる。
 ステレオ音源をサラウンド化するにあたっては,ステレオ・トゥ・サラウンドでアップミックスし,これをヘッドフォン出力用にダウンミックスすることになるので,その点は注意してほしい。

オーソドックスにPCと接続したイメージ(左)と,Androidスマートフォンに接続したイメージ(右)。アナログ接続型ヘッドセットをつなげばボイスチャットも行える
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PS4との接続イメージ。ここではType-C−Type-A変換ケーブルを別途用意してPS4前面のUSB端子とつないでいる
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Switchとの接続イメージ。ここでは携帯モード(左)とTVモード(右)で試しているが,携帯モードはスマートフォンの接続イメージに近い。TVモードでは別途Type-C−Type-A変換ケーブルを用意してNintendo SwitchドックのUSBポートと接続している
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2018年6月のCOMPUTEX TAIPEI 2018版サンプルにおける基板。搭載するD/AコンバータはAK4376AECBだった
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 なお,SXFI AMPの内蔵するD/Aコンバータは旭化成エレクトロニクス製でヘッドフォンアンプ内蔵型となる「AK4377ECB」。主にスマートフォンやポータブルプレーヤー向けで,S/N比は128dB,最大サンプリングレート768kHzのDSD256形式にも対応するという,高いスペックの製品である。

 2018年6月のCOMPUTEX TAIPEI 2018版サンプルで見ることのできたSXFI AMPの基板だと,X-Fi UltraDSPの隣には「AK4376AECB」が載っていたので,最終製品ではより新しいAKM4777ECBに替わったという理解でよさそうだ。

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PCから出力仕様を確認したところ,標準で16bit 48kHzとなっていた。最大では24bit 96kHz対応だ
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マイク入力仕様は標準で16bit 48kHz。こちらも最大は24bit/96kHz対応だが,選択肢はいずれもモノラルである


自分の耳と顔を撮影してクラウドサーバーへ送る仕様は画期的。ただ「自撮り」は非常に難しい


Google Play(上)とApp Store(下)のそれぞれSXFI Appダウンロードページ
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 本稿の冒頭で触れたように,SXFI AMPの利用にあたっては事前に「ユーザーが自分の耳と顔を撮影する」必要がある。このとき必要になるのが「SXFI App」という専用アプリで,このアプリはAndroidおよびiOSデバイス専用だ。AndroidもしくはiOS端末にインストールしたSXFI Appで撮影すると,前述のとおりPCとMac,Android端末からSXFI AMPのホログラフィックオーディオを利用できるようになる。

 Android版のSXFI AppはGoogle Playから,iOS版のSXFI AppはApp Storeから,それぞれ無償で入手可能だ。

 では,なぜホログラフィックオーディオでは耳と顔の写真を撮影する必要があるのだろうか。
 そもそもの話をしておくと,人間は一人ひとり,耳の形と,左右の耳の間の距離(=頭の大きさ)が異なる。そしてそれは,耳まで届いた音が耳たぶから鼓膜まで到達する経路の形と距離が異なることと同義だ。

 「耳まで届いた音が耳たぶから鼓膜まで到達する経路の形と距離」が異なると,個人個人で音の聞こえ方が変わるというのはなんとなくイメージできると思うが,これはとくにサラウンド感に強く影響する。
 というのも,人間の脳は左右の耳へ到達する音の「到達時間のわずかな違い」で,音がどの方向から聞こえているかを判断するからである。なので,計算ではじき出された擬似的な到達経路が「耳まで届いた音が耳たぶから鼓膜まで到達する経路の形と距離」と大きく異なる場合,この違いが原因で,どの方向から音が鳴っているのかをユーザーは判断しづらくなるのだ。

 Creativeは技術的な詳細を明らかにしていないので,多分に筆者の推測が入ることをお断りしたうえで続けると,撮影によってSXFI Appが得ているデータは,左右の耳の形状と,左右の耳の間にある距離の2つだ。本稿では以下,これらを<個人データ>と表記するが,Creativeによると,SXFI AMPの発売に先立って,同社社員の<個人データ>を大量に取得して類型化してあるという。異なる「音が鼓膜まで到達する経路の形と距離」ごとに,

  • 音源から発せられた音が耳に届くまでの経路をシミュレートする頭部伝達関数(Head-Related Transfer Function,HRTF)
  • 人間の左右の耳ではどのように聞こえるかをシミュレートするバイノーラルレンダリング(Binaural Rendering)

をプロファイル化してあるという理解でいいはずだ。

 そのうえでクラウドサーバー側では,新しく<個人データ>を受け取った場合,それをデータベースの“素材”として追加したうえで,当該<個人データ>と最も近いプロファイルを紐付けるという処理を行う。紐付けられた結果のことをCreativeは「Head Map」(ヘッドマッピング,以下カタカナ表記)と呼んでいるので,本稿でも以下,これに倣う。

 結果としてエンドユーザーは,自分の耳の形と顔の大きさに最も近いヘッドマッピングを適用できるようになり,いきおい,「その人にとって最も適切なバーチャルサラウンドサウンドの聞こえ方」が得られるようになるという理屈である。このことをCreativeは「Personalization」(パーソナライゼーション,以下カタカナ表記)と呼んでいる。

 パーソナライゼーションを重視した製品は昨今増えてきており,4Gamerで最近取り上げた例で言えば,Audezeの「Mobius Headphone」は,頭の外周サイズと,片方の耳からもう片方の耳まで後頭部を回した距離の2つを計測して登録することでパーソナライゼーションを行える。
 ホログラフィックオーディオの考え方もそれと同じで,パーソナライゼーションのための情報ソースとしてユーザーの耳と顔の写真を使い,ヘッドマッピング化しているというわけなのである。

 さて,それを踏まえて使い方だが,今回はAndroidアプリ版で確認していきたい。iOS版でも基本的には同じだ。

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(1)SXFI Appを起動するとアクセス許可を求められるので[許可]。端末によっては写真関連アプリの許可を追加で求められることもある
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(2)ログインメニュー。Creative Accountを持っていないユーザーはここで作成することになる。Google Playと紐付ける必要があるので,Gmailアカウントのアカウント情報を入れてから[Sign Up To Try]をタップ
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(3)プライバシーポリシーが英語で表示されるので,よく読んでから[AGREE]をタップ。なお,チェックボックスにチェックを入れるとCreativeの新製品情報などが届くようになる
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(4)「You have been successfully registered!」というポップアップが出たら登録成功。メールボックスに確認用メールが届くはずである

確認用メールのスクリーンショット。[Verify My Email Address]ボタンをクリックすると,再びSXFI Appでの操作になる
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 プライバシーポリシーは要するに,「あなたの耳と顔の写真を撮って,クラウドサーバーにアップロードしますよ」という断り書きである。顔写真がバッチリ撮影されてクラウドサーバーへ渡るので,個人情報の提供となるわけだ。

 耳の形はともかく,証明写真もかくやというレベルで正面からの顔写真をCreativeへ提供することになるため,これに抵抗を感じるのであれば,そもそもSXFI AMP,というかSuper X-Fiを利用するべきではないということになる。ある意味,ここがSXFI AMP,そしてSuper X-Fiの利用開始にあたって最大のハードルかもしれない。

確認用メールで[Verify My Email Address]ボタンを押すと,SXFI Appはいわゆる「初回起動時の説明書き」を表示してくる。使い方のガイド的なものだ。
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 説明書きを抜けると,SXFI App上で簡単なチュートリアルビデオが流れ,その後,画面右下に「Head Mapping」というアイコンが現れる。それをタップすると,いよいよ撮影である。

 流れは以下のとおりだ。

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(6)まずは右耳からだ。画面に耳の形をした画像が出てくるので,これに撮影対象となる耳を合わせるようにすると,自動で撮影される
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(7)続いて顔を正面から。顔の半分を輪郭にしたような画像を撮影対象の顔に合うよう合わせると,やはり自動的に撮影が行われる
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(8)最後は左耳。勝手は同じだ。今回はあえて髪の毛を少し重ねてみたが,問題なく撮影できた

(9)「Thank You.」と出たら撮影処理完了となる
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 (8)まで終わると,データがクラウドサーバーに自動でアップロードされる。撮影に使った端末がAndroidスマートフォンの場合は,当該端末にSXFI AMPを接続すればすぐにヘッドマッピングを利用可能だ。

 実際に撮影を行っての感想だが,スマートフォンを片手に自撮りでなんとかするのはかなり難しい。角度によっては,耳の形に合わせたつもりでもいっこうにシャッター音が鳴ってくれず,距離を保ったまま試行錯誤することになった。なら,鏡を使えばラクかといえば,どうやっても角度が付いてしまうので,ほぼ不可能だ。家族や友人知人にお願いするのが正解だろう。

 さて,クラウドサーバーへデータをアップロードし終えたら,ここからはPCでの作業となる。Android端末で使うなら,ここでSXFI AMPを接続すればSXFI Appからカスタマイズを行えるが,本稿のファーストプライオリティはゲームなので,ここからはPCでの作業に切り換えよう。このタイミングでSXFI AMPはPCと接続しておくことを進めたい。

 SXFI Appの設定を行いたいPCに「SXFI Control」というアプリケーションをインストールする。これは簡単に言うと,SXFI AppのPC対応版だ。

SXFI Controlのログインウインドウ
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 SXFI ControllをPCへインストールし,起動すると「Super X-Fi サインイン」というウインドウが立ち上がるので,SXFI Appの利用時に登録したeメールアドレスとパスワードを入力して[ログイン]。SXFI AMPが接続されていれば,下に示すとおりメインウインドウが開くはずだ。
 ログインした時点でクラウドサーバーとの同期が入り,ヘッドマッピングがダウンロードされる。メインメニューの「頭部がマッピングされ、あなた個人のオーディオマップを算出しました。」(※原文ママ)は,ヘッドマッピングを利用できるようになったという意味である。

メインメニュー。「最近のヘッドマッピングを選択して下さい。」(※原文ママ)以下のプルダウンメニューでは,複数のヘッドマッピングから好みのものを選択できる。また,アカウント切り換えは「Super X-Fiアカウント」のところのプルダウンメニューから可能だ
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 SXFI Controlの左ペインに並ぶ項目は,

  • SUPER X-FI:Super X-Fi機能自体の有効/無効切り換え,ログイン/ログアウト/アカウント切り換え,ヘッドマッピング切り換え
  • イコライザー:10バンドイコライザ,プリセット付き
  • ヘッドフォン:使いたいヘッドセットおよびヘッドフォンの選択
  • セットアップ:2chステレオ/5.1ch/7.1ch出力切り換えおよび出入力ボリューム調整
  • セッティング:言語選択,パーソナライゼーションの自動実行設定,SFXI Controlアプリのアップデート,SXFI AMPのリセット,SXFI AMPのファームウェアアップデート

の5つ。SUPER X-FIの内容は前述のとおりなので,ここからはそれ以外を紹介していきたいが,このうち最も重要で,かつ最も残念なのは「ヘッドフォン」である。
 ここまであえて説明してこなかったが,Super X-Fiのキモはヘッドマッピングだけではない。ヘッドマッピングを,ユーザー手持ちのヘッドセットやヘッドフォンに向けて調整することで,はじめてユーザーそれぞれに向けたパーソナライゼーションが完結するのだ。

「ヘッドフォン」。プルダウンにはヘッドフォンメーカーのブランドがずらっと並ぶが,ゲーマーにお馴染みのヘッドセットメーカーの名前はほぼない
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 しかし,選択できるヘッドセットやヘッドフォンの選択肢があまりにも少なすぎる。まず,ヘッドセットは事実上,Creative製品しかリストにない。ならヘッドフォンはというと,たとえばソニー製ヘッドフォンのリストには大定番の「MDR-CD900ST」がなく,Sennheiser製ヘッドフォンは6製品,AKG製品に至ってはわずかに2製品しかリストにない。この3社だけでも,このリストにある数の何倍ものヘッドフォンを発売済みなわけで,リストにある製品の数はまったく足りていないと言わざるを得ない。

左から順にソニー,Sennheiser,AKG製ヘッドフォンの「モデル」一覧。なお,SennheiserのところにSennheiser Communications製ヘッドセットは1つもない
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 なので,運良く手持ちの製品がリストにあったということがない限り,ブランド名「Unknown」の,モデル「Unknown Headphone」(もしくはインイヤーヘッドフォンなら「Unknown In-Ear」)を選ぶしかない。もっとはっきり言うと,せっかくヘッドマッピングという最適化データを用意しても,それを適用できないケースが多すぎる。

Creative製以外のゲーマー向けヘッドセットと組み合わせたい,あるいはリストにないヘッドフォンを使いたいといった場合,悲しい選択肢を選ぶことになる
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 残るメニュー項目は以下のとおり,スクリーンショットとキャプションで紹介したい。

工場出荷時設定は「フラット」(上段左)となるイコライザ。そのほかのプリセットは「クラシック」(上段中央)「ポップス」(上段右)「ゲーム」(下段左)「シネマ」(下段中央)の5つで,別途[新しく追加]ボタンを押せばフルカスタマイズ可能になる(下段右)。使い方は「Sound BlasterX G6」と同じなので,詳しくは同製品のレビュー記事を参考にしてほしい
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「セットアップ」は2ページ構成。といっても,片方はステレオ/5.1ch/7.1ch出力のどれを選択するか,もう片方はミキサーで,いずれもシンプルだ。なお,いずれの項目もWindows側のサウンド設定と連動している
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「セッティング」も2ページ構成だ。「全般」タブでは言語の選択と,Windowsの起動時にパーソナライゼーション自動実行するか否かのスイッチ,SXFI Controlのアップデートチェックボタンが並ぶ。「デバイス」のほうではSXFI AMPの設定を工場出荷時状態へと復元するためのボタン,SXFI AMPのファームウェアアップデートチェックボタンを利用可能だ
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 このうち重要なのは出力チャネル設定で,ゲームで使う場合は,ゲーム側のサウンドソースが2chであっても,「セットアップ」からきちんと7.1chを選んでおくようにしたい。
 7.1chを選んでもステレオ音源は正しく再生できるが,2chのままにしておくと,サラウンド音源を再生するときにPC側がいったん2chへダウンミックスし,それをSXFI AMPがステレオ・トゥ・サラウンドするという無駄な処理が入り,サラウンド品質が劣化するからだ。

 なお,ここまで紹介した機能のうち,イコライザ以外はAndroid用SXFI Appでも利用できる。Android端末にSXFI AMPを差してポータブルアンプ的に使うときはそちらを利用することになるという理解でいい。

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Android端末にSXFI AMPを接続すると,アクセス許可を求められる
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SXFI Appのメインメニュー。端末内の音楽データを指定して再生したりもできる
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「Personalize」からはヘッドマッピングの履歴から使うものの選択可能
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最適化対象となるヘッドセットやヘッドフォンを選ぶメニュー。選択肢が少ない


ハードウェアの周波数特性は期待どおりだが……


 ということで,テストを行っていこう。
 USB接続型のデバイスをテストするときには遅延計測を行うが,そのやり方は4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法に従う。つまり,リファレンス機材として用意したCreative製サウンドカード「Sound Blaster ZxR」との相対比較である。遅延のテストに組み合わせたヘッドセットはSennheiser Communications製の「GSP 600」だ。
 ただし,今回もWASAPI排他モードでは正しい計測を行えなかったため,DirectSoundでのみの計測となる。この点はあらかじめお断りしておきたい。

 もう1つ,周波数特性と位相特性のテストにあたっては,筆者が通常実施しているヘッドセット評価とは異なり,最も純粋な波形であるサイン波を20Hzから24kHzまで滑らかに変化させたスイープ信号を用いることもあらかじめお伝えしておく必要があるだろう。こちらの出力テストにおける具体的な流れは以下のとおりだ。

  1. 「foobar2000」からスイープ信号を再生し,SXFI AMPから出力
  2. 別途用意したオーディオ制作システム「Pro Tools | HDX」へ入力して録音
  3. Pro Tools | HDXと接続したMac Pro 2013上で動作する「Pro Tools | Ultimate」上に立ち上げたWaves Audio製アナライザ「PAZ Analyzer」で周波数を計測しグラフ化

 入力テストでは1.と2.の流れが逆になり,Pro Tools | HDXで再生したスイープ信号を接続したSXFI AMPに入力することになる。

 というわけでまずは遅延からだが,リファレンスと比較した相対的な遅延データをまとめたものがで,ホログラフィックオーディオベースのバーチャルサラウンド機能無効時の遅延は30回平均で24.3ms,有効時は54.9msとなる。
 ホログラフィックオーディオ無効時の遅延は「USBサウンドデバイスなので,まあそんなものか」という印象もあるが,有効時は垂直リフレッシュレート60Hz時に3フレーム以上なので,ゲーム用途がターゲットとなる製品としては割と大きい。プレイするゲームのジャンル次第では体感できてしまう恐れがあるレベルだ。

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テストに用いたリファレンス波形。上ペインが周波数特性,下ペインが位相特性である
画像集 No.044のサムネイル画像 / Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス
 続いては周波数特性と位相特性である。
 テスト結果は,Waves Audio製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したデータそのものと,もう1つ,「データのうち,周波数特性がリファレンスとどれくらい異なるか」の差分を4Gamer独自ツールで取得したものとで示す。
 差分データのほうは,リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。

 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)だ。

 まずは“素”のホログラフィックオーディオ無効時からだが,テスト結果は下に示したとおり,リファレンスと比較してほぼフラットである。あえて言えば45Hz〜125Hz付近がリファレンスから若干乖離気味だが,今回は相当に大きな音量,つまりアンプによる増幅量が大きい状態の結果なので,ここはむしろ,音量の小さい(=高インピーダンスの)ヘッドフォンを接続してもフラットに近い特性で再生できると見るべきだろう。
 位相特性に問題は見られない。

SXFI AMP,ホログラフィックオーディオ無効時におけるヘッドフォン出力の周波数特性および位相特性
画像集 No.045のサムネイル画像 / Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス 画像集 No.046のサムネイル画像 / Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス

 これを踏まえての試聴印象だが,ホログラフィックオーディオ無効時のそれは計測結果どおりといったところ。今回はSennheiser Communications製のゲーマー向けアナログ接続型ヘッドセット「GSP 600」を組み合わせたが,GSP 600クラスのヘッドセットで「こう聞こえてほしい」という音がきちんと出てくる。Sound Blaster ZxRと比べるとやや低弱高強気味で,中低域が薄く,高域がよりクリアに聞こえる音質傾向といったところだ。いわゆる「ハイレゾ」がターゲットのD/Aコンバータを搭載する製品らしい傾向である。

 続いてはホログラフィックオーディオ有効時。まず今回,ヘッドマッピングはタイミングを変えて計3回行い,すべて試したものの,それによって音場が変わった印象は受けなかった。クラウドサーバー側にデータが蓄積されていくと,同じヘッドマッピングでも効果が変わり,将来的によりよい音場を実現するかもしれないが,いずれにせよ,ヘッドマッピングのやり方次第で劇的に音が変わるということはなさそうだ。
 また,今回あえて担当編集のヘッドマッピングも読み出してみたところ,明らかに音の広がりが変になった。なので「ヘッドマッピングによるパーソナライゼーションの影響はかなり大きいと言っていいだろう。

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 前述のとおり,GSP 600はSXFI AMPの対応リストにない。そのためブランド名はUnknown,モデルもUnknown Headphoneを選ばざるを得ないが,結論から言うと,現状,音楽を聴くのにはまったく向かない
 音源は脳内定位することなく,ユーザーの若干前方から聞こえるようになるので,オーディオの世界で「Externalization」(イクスタナラゼイション,音が脳内ではなく,頭部前方から聞こえるようになること)と呼ばれる効果は確認できるものの,同時に派手なイコライジングが入ってしまい,とくにプレゼンス(※)帯域がキツすぎて,この帯域を中心に,位相ずれを起こして変調がかかったような聞こえ方になってしまうのだ。

※1.4〜4kHz程度の中高域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。

 付け加えると,サラウンドリバーブのような残響処理が入っているのだが,多くの競合他社同様,この効果が大きすぎる。とくに初期反射成分が多く,何も家具を置いていない一般家屋で音を鳴らしたときのような派手な反射音が気になってしまう。

 前段でも触れたとおり,現状のSXFI Controlアプリケーションには残響量を調整する設定項目が存在しない。そのため残響量はそのままになってしまい,さらに言えば,Creativeが用意したリストにないヘッドセットやヘッドフォンでは派手なイコライジングをカスタマイズする余地もない。
 耳や頭部の写真まで使ってパーソナライゼーションを行っているのに,個人の好みが大きく分かれる残響量を調整できないというのはどういうことなのか,正直理解に苦しむ。

 「ブランド名Unknown,モデルUnknown Headphone」という汎用プリセットに問題があるのなら,ほかのプロファイルを試してみたらどうだろうか。いくつか試してみたところ,GSP 600と組み合わせるにあたっては,Sennheiser製ヘッドフォン「HD 800」のプロファイルを適用したとき,前出の「キツすぎるプレゼンス帯域」がずいぶんと低減し,かなり「聞ける」レベルになった。ただし,初期反射が多すぎる問題は多少和らいだ程度に留まる。

 なら,リストにある製品だとどう聞こえるのか。今回はAKG製ヘッドフォン「K240 MKII」を用意できたので,これを使って聞いてみることにしたが,K240 MKIIを用意して,K240 MKIIのプロファイルを適用したにもかかわらず,初期反射の量は変わらなかった。「プロファイルを適用したのでいい音になった」というよりは,音量が上がってドンシャリサウンドになり,また,位相がずれて変調しているように聞こえてしまうのだ。
 K240 MKIIを使っているのに,別のヘッドフォンを使って聞いているかのような印象がある。

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 というわけで問題点をまとめてみるが,最大の問題は,「ブランド名Unknown,モデルUnknown Headphone」にイコライジングやダイナミクス(=ダイナミックレンジ補正,つまり音量の均質化)がかかりすぎて,汎用プリセットとしての意味を成していない点だろう。

 ユーザーは,ホログラフィックオーディオによって手持ちのヘッドセットやヘッドフォンのポテンシャルを余すことなく引き出したいと考えているはずだ。にもかかわらず,汎用設定で得られるのは,ヘッドセットやヘッドフォンの持つ「キャラクター」を大きく変えてしまう,Creativeお仕着せの“最適化”である。

 SXFI Connectに,残響を調整できる設定項目や,イコライジングやダイナミクスの変調を伴わない汎用プリセットを用意してくれるだけでも,このような残念な結果にはならないはずだ。しかし現実には,「こういうのが好きなんでしょ?」とCreativeが勝手に考える設定の利用を強いてくる。この仕様は,SXFI AMPのホログラフィックオーディオを,音楽のリスニングにはまったく向かないものにしている。
 前述のとおり,ヘッドフォンアンプ内蔵型USBサウンドデバイスとしての性能は良好なので,むしろホログラフィックオーディオを使わないほうがよほど幸せになれるだろう。


サラウンドでも残響がマイナスに作用する


 ならばサラウンドサウンドを有効にしたゲームはどうだろうか。今回はPCとPS4,Switchの3プラットフォームで試すことにした。SXFI AMPは光デジタル入力やHDMI入力に対応しないので,PS4とSwitchではステレオ・トゥ・サラウンドにはなってしまうが,ともあれサラウンドでのテストという理解でいい。
 多くの読者はSXFI AMPの利用にあたってゲーマー向けヘッドセットをつなぐことになると思われるため,GSP 600を接続し,汎用の「ブランド名Unknown,モデルUnknown Headphone」プロファイルでテストを行う。
 テストに用いるタイトルは,PCだと「Fallout 4」と「Project CARS 2」「MONSTER HUNTER: WORLD」の3本,PS4ではやはりMONSTER HUNTER: WORLD,Switchでは「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を用いることにした。

 まずはPCからだ。Fallout 4では毎回,ヘリコプターを音源としてサラウンド定位を確認しているが,ホログラフィックオーディオを有効化したバーチャルサラウンドサウンドにおける音源の定位移動はスムーズだ。正面を0度としたとき,前方斜め30度くらいにある音もきっちりその場所に定位する。
 重低域を多く含む効果音はしっかり重低域から聞こえ,全体として周波数のバランスも悪くない。

ホログラフィックオーディオ有効時はインジケータLEDが緑色に光る
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 なぜ音楽とは異なる評価になるのかだが,たとえばポピュラー音楽だとドラムビートは一定でほぼ常に鳴り続ける。そのため,プレゼンス帯域を好みではない方向に弄られると,この帯域を使うスネアやハイハットなどの音色が変わってしまい,顕著に不快感が増してしまうが,ゲーム効果音の場合,「一定で鳴り続ける」ことがまずないからというのが理由の1つだ。
 もう1つは,音楽だと音量は限界ギリギリまで均質化されているため,ダイナミックレンジ補正プロセッサを用いて平均音量を上げようとした場合,試聴印象には「やりすぎ感」が出てしまいやすいのだが,ゲームでは「プレゼンス帯域の効果音が鳴りっぱなし」ということが起こりづらく,また音楽コンテンツよりもダイナミックレンジが広いため,SXFI AMP側のダイナミックレンジ補正プロセッサで音量を多少均質化したところで無理が生じないからだと筆者は考えている。

 ただし,NPCのしゃべる声には前出の初期反射音が乗って,無線を介した「ドライな」音のはずなのに,部屋の中でしゃべっているような残響(というか初期反射音)になってしまう。ここは減点材料だろう。

 続いてProject CARS 2では「前方の敵車と後方の敵車,異なる音源移動を聞き分けられるか」が試聴のテーマになるが,まず前方定位は,最も難しい「正面から左右に動いてブロックしてくる車の動き」をピンポイントかつ完全に耳で追える。同時に,自車を追い抜こうと後方で左右に動いている敵車の動きも追える。このあたりは最新世代のバーチャルサラウンドサウンド技術を採用する製品ならではといった印象だ。
 GSP 600の持つ「アナログ接続型ヘッドセットとしての,完成度の高さ」も音源の把握しやすさには貢献しているはずだが,「よいゲーマー向けヘッドセットと組み合わせれば,より的確で正確なサラウンド音源定位の把握を行える」という点で,SXFI AMPのホログラフィックオーディオが持つポテンシャルの高さははっきりと感じられる。

 だが,ここでもエンジン音に初期反射音は乗ってしまう。ゲーム性からしてそれほど気にならないのは救いだが,残響が不必要に大きくなることは覚えておくべきだろう。
 また,汎用の「ブランド名Unknown,モデルUnknown Headphone」プロファイルでプレゼンス帯域の周波数成分がきつい分,待ち時間に鳴るBGM,とくにストリングスのようなプレゼンス帯域が重要な楽器が鳴ると試聴印象はよいものでなくなってしまう。

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 PCでのテスト,最後はMONSTER HUNTER: WORLDだが,ここでもサラウンド感そのものは抜群にいい。前方に定位している音源の位置も含め,かなり正確に把握でき,前方にある音源までの距離感もある程度感じられる。大きな音源に対峙したときは,その音源がピンポイントにならず,きちんと一定範囲で広がり,逆に点のような音源であればきちんとピンポイントで聞こえるのは見事だ。音源の移動もスムーズで,変調がかかったような不自然な印象は受けない。極めて自然な音量バランスだ。

 しかし,ダイアログ(=セリフ)に大きな残響が乗り,不自然な点はここでも気になった。

 続いてはPS4である。筆者の記憶が正しければ,PS4におけるサラウンド音源のダウンミックスでは何らかのバーチャルサラウンド技術をサポートしていたはずで,そのためか,PS4版MONSTER HUNTER: WORLDでPC版と同じようにキャラクターを動かしてみると,音源が背後にあるとき,その音はなんとなく後ろ側から聞こえ,また,サラウンドの定位感も移動感もある。
 もちろん,PC版MONSTER HUNTER: WORLDほどのピンポイント感はなく,後方の音源は「なんとなく後ろにいる」印象に留まり,どこかふわっとしている。一方で残響感の印象はPC版と同じだ。音の情報をしっかり聞き分けたいという用途には向かないため,サラウンドでゲームを楽しみたいというライトなユーザー向けだろう。
 もっとも,2chステレオと聞こえ方がまったく異なるのは確かなので,PS4で使うならSXFIは有効化しておくべきだ。

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 最後はSwitch。今回は携帯モードで本体と直結させてテストしたが,PS4接続時と同じくステレオ・トゥ・サラウンドになるため,サラウンドの定位はピンポイントでなく,少しふわっとしたものになる。索敵に音情報を利用しようという場合,あまり当てにしないほうがいい,というレベルである。
 懸案の残響は,PS4でMONSTER HUNTER: WORLDをプレイしたとき以上に気になる。荒涼とした大地,つまりは広大なオープンスペースであっても反射音が聞こえてしまうのは不自然と言うほかない。

 そもそも,Switchの場合,本体の3.5mmミニピン端子にヘッドセットやヘッドフォンを差せば,対応タイトルでバーチャルサラウンドサウンドを利用できる。「SXFI AMPをSwitchと組み合わせて利用できるのは確かだが,Switchにおいては,現状,むしろ使わないほうがよさそう」というのが正直な感想だ。


入力特性は文句なしに優秀。USB接続でもサンプリングレート制限なし


 最後に入力特性を見ていこう。

 結果は下にまとめたとおりだ。上は12kHz以上で若干ロールオフし,下は2kHz以下から徐々にリファレンスからの乖離が発生して,50Hz付近が強く,さらに25Hz以下ではどういうわけか急に18dBくらい大きくなる。もっともヘッドセットのブームマイクで25Hz以下を拾うような製品はまず見た事がないので,実際の使用環境ではフィルタリングされ,影響もほぼなくなると思われる。
 マイク入力はモノラルなので,位相特性は完璧だ。

SXFI AMP,マイク入力の周波数特性および位相特性
画像集 No.047のサムネイル画像 / Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス 画像集 No.048のサムネイル画像 / Creative「SXFI AMP」レビュー。最先端のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術を採用した「尖りすぎ」なUSBサウンドデバイス

 USBサウンドデバイスで抱えがちなサンプリングレート制限――8kHzあたりより上がばっさりとカットされるというアレだ――もなく,2kHzあたりから12kHz付近がフラットで,その上のロールオフもやり過ぎではない。結果として,波形データ以上に扱いやすいマイク入力になっていると言える。


ホログラフィックオーディオには大いなる可能性を感じるが,現時点では「ソフトウェア周りが未完成」と言わざるを得ない


製品ボックス
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 SXFI AMP,というかホログラフィックオーディオには,大いなる可能性を感じる。
 新世代のバーチャルサラウンドヘッドフォン技術が登場ラッシュとなっている今日(こんにち),とくに「パーソナライゼーション」が1つのキーワードになりつつあるわけだが,そこへフォーカスするにあたって,クラウドサーバーを用いてユーザー個人個人の耳の形と顔の大きさを分析し,それに適切な最適化データをクライアントにダウンロードして適用するという手法は実に斬新だ。実にイマドキの手法とも言っていいだろう。しかも,見かけ倒しでなく,実際のバーチャルサラウンド効果が高いため,バーチャルサラウンドヘッドフォンの技術,パーソナライゼーションのプロセスともに優秀なものとなっている。

 しかし,「だから試してみるべきだ」と言えるかというと,それはまた別の話である。耳と顔という個人情報をアップロードしなければならないという初期導入ハードルの高さや大きめの出力遅延以上に,SXFI Connectから残響量を調整できないという現状の仕様はとにかく致命的だからだ。しかも,この問題は音楽のリスニング用途でさらに大問題となり,少なくともホログラフィックオーディオを有効化した場合,ほとんどのケースにおいて音楽は聴くに堪えなくなる。
 仮に,Creative製のヘッドセットやヘッドフォンであれば完璧に聞けるという場合でも,わざわざ追加で用意しなければマトモに使えないことになるわけで,これは厳しいと言わざるを得ないだろう。汎用の「ブランド名Unknown,モデルUnknown Headphone」プロファイルで残響量を調整できるようにしてくれれば,また評価は変わると思うが,少なくとも現時点のSXFI AMPは,せっかくのホログラフィックオーディオをまったく活かせていない

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 ゲームで使えるバーチャルサラウンドヘッドフォン技術としては2019年のトップクラスと言えるだけに,SXFI Connectというソフトウェアの仕様がとにかく,本当に残念だ。
 逆に言うと,SXFI Connectさえ改善されれば,SXFI AMPは試す価値のある製品になるだろう。Creativeによるアップデートを期待したい。

CreativeのSXFI AMP製品情報ページ

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    Sound Blaster

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