企画記事
4Gamer年末恒例の「ゲーム業界著名人コメント集」企画。194名が2025年を振り返り,新年への決意を語る
カバー
カバー株式会社CTO、ホロアースプロジェクト責任者
福田一行
代表作:ホロアース![]() |
メタファー:リファンタジオ
2024年10月の発売ではあるのですが、2025年も遊ばせていただいたのでメタファー:リファンタジオを選ばせていただきました。
女神転生、ペルソナとアトラスさんのゲームが大好きなのですが、メタファーはUI、システムなどがよりスタイリッシュに、そして遊びやくくなっており、ゲームの内容もそうですが、システムにおいても、アトラスさんの歴史の積み重ねを感じました。
序盤シーンの「この世に初めて生まれた魔法は音楽なのよ。」というセリフは、その荘厳なBGMを世界観に合わせて納得させるものとして非常に印象的でした。
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
銀河特急 ミルキー☆サブウェイ
亀山陽平さんが監督の作品であり、亀山陽平さんが卒業制作として制作された個人制作アニメの「ミルキー☆ハイウェイ」の続編となります。
1話3分半程度で、今のタイパ重視のコンテンツ消費において、非常に受け入れやすい構成となっており、また、短い尺の中でも展開のテンポもよく、内容が詰まっており、その短さを感じませんでした。
音楽に合わせたアニメーションが非常に気持ちよく、全てに携わっている亀山さんだからこそ可能な演出ですね。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
上の質問でも言及していた亀山陽平さんとなります。Blenderを使うことで、個人で一つのアニメを作れるというのは、一つの新しいクリエイター、コンテンツの形になると思っています。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
みなさまの応援に支えられ、「ホロアース」は、2025年4月に正式リリースを迎えることができました。
(ホロアースは、ホロライブプロダクションのカバーが手がける、とある異世界を舞台にしたバーチャル空間プロジェクトです。)
この1年間、ホロライブプロダクション所属のVTuberタレントさんとユーザーが同じ空間で会える体験を提供すること、そしてタレントさんの活躍の場をさらに増やすことを目指して、開発とアップデートを重ねてきました。
その取り組みのひとつとして、この12月には新たなバーチャルライブ「ねぽらぼライブ re:VISION Holoearth Live」を開催しました。
これは、画面越しの「みるライブ」ではなく、VTuberタレントさんがいる世界(あっち側)に入って、実際に「会えるライブ」です。
従来の視聴ライブとは異なり、本物のVTuberタレントさんと同じ空間で会え、360度好きな角度で超至近距離でみられる没入感、現実のライブでは実現できない空間演出、そしてライブ空間をまるごと保存した「3Dアーカイブ」で再び参加できるなど、これまでにない形で体験できるライブを実現できたと感じています。
まだ体験されたことのない方には、ぜひ一度、このライブに参加していただけたら嬉しいです!
2026年は、このホロアースでのライブやイベントをさらに強化するとともに、より多くの方が参加できるよう、プレイ環境の拡大にも取り組んでいきます。
YouTubeでの配信や現実世界のライブとも異なる、カバーだからこそ実現できる、新しいエンターテイメント体験を、これからも提供していきます!どうぞご期待ください!
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
プロデューサー
和泉真吾
代表作:『流星のロックマン パーフェクトコレクション』『ロックマン: デュアル オーバーライド』![]() |
「Gorilla Tag」(2023年のゲームで申し訳ないのですが、2025年に初めてプレイしたので。)
スティック操作が無く、ボタン操作も最小限で、身体を動かすことがゲームプレイそのものになっているので、細かい操作説明ナシで直感的に遊べるところと、原始的な遊びの楽しさに感心させられました。
他のプレイヤーとのコミュニケーションもある意味カオスな感じで衝撃を受けましたし、グラフィックも「これでも良いのか!」という衝撃を受けました。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
「機動戦士Gundam GquuuuuuX」です。
開始から数秒で「あれ?? ガンダムの映画を見に来たら、ガンダムが始まったんだけど…????」という気持ちになり、「ミョミョミョーン ジャジャジャジャーン」のジングルで完全に持っていかれました。
予備知識を入れず、ネタバレを踏まず、初日に見に行って本当に良かったなと。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
自動車ジャーナリストの河口まなぶさんです。
今年、車を買い替えたのですが、YouTube動画をめちゃくちゃ参考にさせていただきました。
(本当に個人的な理由ですみません。)
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
「流星のロックマン」シリーズのナンバリング3タイトル、計7作品を収録した「流星のロックマン パーフェクトコレクション」が、2026年3月27日に発売予定です。
予約購入の受付期間中にご購入いただくと限定特典を入手できます。チェックのほう、よろしくお願いいたします!
さらに、2025年12月12日に「ロックマン」シリーズの最新作「ロックマン: デュアルオーバーライド」を発表いたしました。
発表と同時に開始したボスキャラクターデザインコンテストには、予想を遥かに超えるたくさんのご応募をいただき、ファンの皆さまの愛と情熱にスタッフ一同、大きな驚きと感謝の気持ちでいっぱいですし、ゲーム開発に一層の気合いを入れて進めています。
本作の続報については、お知らせ可能な時期になりましたら公開してまいりますので、しばらくのお時間をいただけますと幸いです。
本年も「ロックマン」をよろしくお願いいたします。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
プロデューサー
大山直人
代表作:プラグマタ![]() |
「カービィのエアライダー」です。22年越しの続編ということで非常に衝撃的な発表から、ワクワクさせる新要素・演出や、ユーザー目線での細かな配慮などなど。年末年始、友人たちと盛り上がるのにもピッタリな1作かと思います。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
アニメ版「タコピーの原罪」です。可愛らしい見た目とは裏腹に、それぞれ心に闇を抱えたキャラクター達によって描かれるストーリーのギャップが凄まじく、怒涛の展開に目が離せませんでした。原作の漫画版もオススメです。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
料理家の長谷川あかりさん。SNSで大バズりしていたハンバーグは本当に絶品でした!他のレシピにも挑戦していきたいと思って注目しています。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
『プラグマタ』がいよいよ2026年4月24日発売予定です!
2020年のアナウンス以来、お待たしてしまっていた本作ですが、ようやく皆さんにお届けできる日が決まりました。
現在Steamでは体験版が配信中、PlayStation 5 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch 2での体験版も後日配信予定です。
ハッキング×アクションのゲーム感覚は、映像を見ているのと、触ってみるのとで大きく印象が変わると思うので、まずは体験版からぜひお試しいただけると嬉しいです。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
プロデューサー
門脇章人
代表作:MARVEL VS.CAPCOM3、戦国BASARA4、モンスターハンターダブルクロス、モンスターハンターライズ![]() |
『サイレントヒルf』
個人的に注目していた女優・加藤小夏さんの主演起用。さらにご本人によるゲーム実況プレイで大きく話題になったこと。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
レゼの魅力が存分に味わえたところ。さらにバトルシーンの超ド迫力映像美は圧巻でした。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
BABYMONSTER
今波に乗っているアーティストだと思います。元々、好んで聴いていたジャンルではありませんでしたが、YOUTUBEでパフォーマンスを見て衝撃を受けたアーティストです。音楽では私は素人ですが、メンバーみんな物凄く若いのに本物感というか、大物感があり、上手すぎるんです。日本人メンバーがふたりいて応援したくもなりました。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
来年はいよいよ『鬼武者 Way of the Sword』発売の年になります!今年は東京ゲームショウ始め、海外でも複数のイベントに出展しましたが、来年はもっと多くの方にプレイ体験いただけるような場を作ります。次回の新情報公開までは少しお待たせすることになってしまいますが、それまでにもバイオハザードやモンスターハンターストーリーズ3、流星のロックマンなどカプコンの新作が複数発売されますので、プレイしながらお待ちいただけると嬉しいです。来年2026年も引き続きよろしくお願いします!
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
プロデューサー
川田将央
代表作:バイオハザード ヴィレッジ![]() |
いろいろあって、今年はあまり他社ゲームを遊べなかったのですが、その中でいちばん印象的だったのが「都市伝説解体センター」でした。子供のころから都市伝説が好きなムー民世代としては、遊ばない選択肢など最初からありませんでした。シナリオ選択型のゲームシステムにも様々な工夫があって飽きさせず、かわいいキャラデザによる敢えてのドット絵アニメーションやセンスの良いBGMなど、止め時を見つけにくい構成が素晴らしかったです。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
ニューアルバム「METAL FORTH」の出来には心から賞賛の嵐です。ボリュームが少ないとかコラボが多く見えるのは、じつは前アルバム「THE OTHER ONE」との関連性によるもので、自分は勝手に前後編の超大作として捉えています。ええ。あと世界中でライブしながらアルバム制作を行う苦労を考えると、アルバム作って頂けるだけで本望なのですが、もはやアリーナクラスで世界を回る生粋のライブバンドとし突出した感がありますが、過酷過ぎるスケジュールにメンバーの健康に気遣ってしまいますゆえ、ご自愛賜りますよう申し上げる次第です。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
妻から多大な影響を受けて「真天地開闢集団ジグザグ」のボーカル・命(みこと)様に注目しまくっています。確かに設定は綾小路翔曰く「香ばしい人たち」なのでしょうが、演奏してなんぼのメンバーの技術は素晴らしく、特にボーカル命様はV系スタイルだけでなく、ハードロックやラウド系、WANS系からメルヘン系、果てはスティーブン・タイラー系など、全盛期のアクセル・ローズもびっくりな声色で参拝者(ファン)を虜にする禊(ライブ)を繰り広げられております。またMVもご本人直々に制作されおり、マルチな才能を存分に発揮されています。福岡出身でもバリバリな大阪弁で東京進出を果たした帝様には2026年も注目です。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
「バイオハザード レクイエム」と「プラグマタ」がこんなに近いタイミングで発売されると知っていたら、果たして両タイトルのプロデューサーオファーなぞ受けただろうか。いやまあ拒否できる立場に無いうえに自業自得ですけどね。でもどっちのタイトルも開発途中はバランス調整もあったもんじゃない鬼仕様で、ソウルライクを敬愛する身としてはそれもアリでしたが、開発と品質管理による血の滲むようなブラッシュアップのおかげで、ここまで遊べるレベルに仕上がったことを昨年の自分に伝えたいです。どちらも価値あるゲームプレイを提供してくれると信じていますので、機会があればぜひいちど遊んでいただけると幸いです。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
プロデューサー
熊澤雅登
代表作:「バイオハザード レクイエム」![]() |
今年はあまりゲームをプレイできておりませんが、中でも「都市伝説解体センター」は印象的な作品でした。個性的なキャラクター、ノスタルジーくすぐるドット絵、次回予告で気持ちを高揚させてくれる楽曲、そして、“期待通りに裏切ってくれる”ストーリー展開で、楽しませていただきました。既に小説などで展開されていますが、今後のメディアミックスにも期待してしまいます。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
自分のフィルマークスを振り返ると、毎レース興奮しながら拝見していたアニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」や、馬主・調教師・競走馬たちのドラマに毎話感動させられている「ザ・ロイヤルファミリー」といった競馬コンテンツが熱い1年でした。夏の宝塚記念にも足を運びましたが、溢れんばかりの人の数に圧倒されました…。こうやってデジタルコンテンツが、リアルコンテンツをも盛り上げていくのはファンとして嬉しいですね。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
サカナクションの山口一郎さんです。何と言っても、満を持しての復帰でリリースされた新曲「怪獣」は、移動中によく聞かせていただきました。聞くたびに何故か新鮮に感じられる中毒性の高いメロディと、何十回も書き直したとされている壮大な歌詞…。来年のご活躍も楽しみです!
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
いよいよ2月27日に「バイオハザード レクイエム」が発売します!サバイバルホラーの面白さが凝縮されたゲームですので、楽しみにお待ちいただければと思います。PS5やXbox、PCだけでなく、Nintendo Switch 2でも発売されるので、一家に一本!おすすめです。
2026年の抱負は「カフェインの摂取量を減らす」です、よろしくお願いします。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
ディレクター
趙 容煕(チョウ ヨンヒ)
代表作:プラグマタ![]() |
どうしても2作品になってしまいますが、元々前作からのファンでもあったので、今年発売されたゲームでいうと「エンダーマグノリア」でした。前作よりビジュアル面でもゲームデザイン面でも色んな要素が強化されていて今後のエンダーシリーズも期待したくなるタイトルでした。
あと「デスストランディング2」は本当に色んな意味で衝撃を受けました。特に、キャラクターや世界観の作り方、ビジュアルクォリティーには感心しました。
気づけば両方とも2ですね。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
ネットフリックスの「kpop demon hunters」です。
今年は「kpop demon hunters」の年と言っても過言ではないほど、この作品の影響力に大きく衝撃を受けました。国籍、性別、年齢に関係なく全世界、全世代に受けるコンテンツというのはやはり「共感」できるものであること、そして音楽の力はやはり強い!と改めて思いました。
特に「共感」は今の時代を生きる我々にとって最も必要なことだと思うので、今後の自分のクリエイティブ活動にも大きくインスピレーションできる作品だなと思いました。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
演技復帰を宣言したジムキャリーさんがこれからまたどんな作品で帰ってくるか非常に楽しみにしています!
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
4Gamer読者のみなさん、初めまして
プラグマタのディレクター趙です。
2026年はついにプラグマタが発売する年です。
一人でも多くの皆さんがプラグマタを遊んで頂けることを開発チーム一同楽しみにしております! よろしくお願いします!
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
ディレクター
中西晃史
代表作:バイオハザードレクイエム、バイオハザード7![]() |
Blue Prince
館ゲーの最新型!
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
サブスタンス
いったいなにを見させられてんだ感が最高!!
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
ドナルド・トランプ
いろんな意味で目が離せないお方、エンタメとしても見習うとこある
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
いよいよ2月27日発売、バイオハザードレクイエム
できることなら、なにも知らないユーザーとして遊びたかった…
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
ディレクター
中山貴之
代表作:「ストリートファイター6」「オトレンジャー」![]() |
【CATO】
「バター猫のパラドクス」というミームがアイデアの発端だった素敵なパズルゲームです。
グラフィックもSEも難易度も丁度良いです。トーストの制限された挙動とぬるぬる動く猫、合体した時の浮遊感が気持ちよくどんどん先に進めたくなるゲームでした。猫かわいい。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
【舞台 チェリまほ】
川尻恵太さんの手腕がうなった2.5次元の舞台でした。スクリーンの使い方、転換、アドリブどれもが素晴らしく終始「うむむ、すごいぞこれは」となっていました。映像作品とは違う魅力にあふれた公演でした。川尻さん!「超ハジケステージ☆ ボボボーボ・ボーボボ」もめっちゃ楽しみ
【世界自炊紀行】
今年は出張が多かったので移動中に書籍を読むようにしていました。レシピ本が好きなのですが料理したくなっちゃうから(そもそも移動中に読むものではない)避けてました。世界自炊紀行は読み物として面白く好奇心も満たされました。分厚い所も物質的に好きだしタイトルがいいですね。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
【高橋ヒロム】選手
他の選手を巻き込んで、お客さんの気持ちの流れを作ってくところ尊敬です。
団体関係なく若手、業界を盛り上げていこうとしている姿はめちゃくちゃカッコいい。
アツい試合やマイクパフォーマンスからやる気をいただいています。
Vlogから伝わる隠せない人柄も良いです。表情無男シリーズ新作も待っています。
【銀幕一楼とTIMECAFE】さん
ライブが楽しすぎて何度も行きたくなってしまう最高のバンド。
銀幕一座は曲も大変素晴らしいし、一度見たら忘れられない演出はエンタメの最高峰だと思います。知らなかった時間が損してた気分になるくらい良いのでみんな体験しに行こうぜ!
【鈴木Mob.】さん
毎年恒例、色々なことにチャレンジしていて大変すばらしかったです。
前グループ武道館公演からの独立、起業、住所バレ、カメムシと怒涛の展開は日々の時間の流れが狂うほど濃密でした。追いかけていくと、もう年末なの?ってなります。
2026年はどんな事を巻き起こしていくか楽しみにしています。
【MonoNeon】さん
音楽性、アートどれも最高です。ファンクだけでなく様々な要素が含まれていて、どの曲を聞いてもどのライブを観ても新しい刺激を受けられます。あー自分も楽しみながもっと頑張ろう!とモチベが上がります。プリンスの遺伝子をしっかりと感じました。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
2026年前半にはSTREET FIGHTER 6にアレックス、イングリッドと濃いキャラクターが登場しす。その他にも大なり小なり色々仕込んでいますのでお待ちいただけると幸いです。
合わせて10月に映画版のSTREET FIGHTERも公開予定です。バトルシーンだけでなくシリアスな部分とコミカルな部分のバランスが非常にストリートファイターしていていい感じです。ガイル、ザンギエフは撮影現場で本人たち(コーディ、オリヴィエ)にあっても笑ってしまうくらい再現度が高いです。こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
ディレクター
二瓶 賢
代表作:『鬼武者 Way of the Sword』『戦国BASARA』シリーズ、『ドラゴンズドグマ オンライン』『エグゾプライマル』など![]() |
『Clair Obscur: Expedition 33』は衝撃的でしたね。 最初に目に留まったのはSNSのショート動画でした。RPGの画面なのに、敵の連続攻撃をパリィでさばき、カウンターを決める映像に「何、これ!?カッコいい!」と驚いたのを覚えています。そのまま詳しい情報も調べずに、勢いで購入。ゲームを始めると、冒頭30分で世界観に一気に引き込まれ、バトルの爽快感だけでなく、独自性あるシナリオにも圧倒されました。力を入れる部分と抜く部分のメリハリが絶妙で、後に少人数開発と知ったとき、クリエイター目線でも大きな衝撃を受けたタイトルです。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
今年観た映画では、『国宝』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』『爆弾』と邦画が熱かったです。その中でも特に印象的だったのは『爆弾』。長尺ワンカットを駆使した場面での佐藤二朗さんの演技は、息を呑むほど緊張感があって、目が離せませんでした。一歩間違えれば笑いに転びそうな場面を、見事にシリアスへと昇華させていて圧巻でした。監督目線で見ても、会話劇でコストを抑えながら、予算を戦略的に振り分けて映画を成立させる構成は、挑戦と工夫の結晶だと感じます。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
2025年に注目した人物は、サカナクションの山口一郎さんです。活動復帰し、約3年ぶりにリリースした新曲『怪獣』は本当に素晴らしく、構成の意外性もあって何度聴いても飽きずに浸っていました。さらに、12年ぶりに紅白歌合戦への出演を決断したことも大きな話題でした。山口さんのYouTubeもよく見ていますが、AIに『怪獣』を歌わせた動画を本人がレビューするという、普通なら否定しそうなことをあえて楽しむ姿勢が印象的で、音楽とテクノロジーの未来を探る試みとしても、とても面白かったです。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
今は『鬼武者 Way of the Sword』を、一人でも多くの方に楽しんでいただけるよう、全力で取り組んでいます。 発売年となる2026年は、この作品をより多くの方に知っていただき、「遊んでみたい」と思ってもらえるよう、プロモーションにも力を注ぎます。 発売前に皆さんが体験できる機会も検討していますので、ぜひ楽しみにお待ちください。応援していただけると嬉しいです! そして2026年は、作品の発売とともに、個人としても新しい挑戦に踏み出し、これまで歩めなかった道を切り拓く一年にしたいと思っています。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
カプコン
プロデューサー
松本脩平
代表作:ストリートファイター6![]() |
『Terminator 2D: NO FATE』
めちゃくちゃ楽しかった!というか当時めっちゃ映画を観てたから感慨深くて最高。各シーンも回想できたし、BGMも「これ!これ!」となってテンション上がりました。
「サイバーダイン社」編で、ダイソンさん最期の爆破シーンがあったら言う事無かった!
でも、この令和に思い出の映画を良い感じにゲーム化してくれて感謝です。次はこれ系で『コマンドー』と『アンタッチャブル」のゲームがしたいですねぇ。
<質問2>2025年に発売/公開されたエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
『Sean Combs: The Reckoning』 (Netflix)
'90-'00のヒップホップに触れていた人は無条件で観た方が良いドキュメンタリー。内容は衝撃的なもの。
今まで信じられてきた内容やシナリオが、新たに出てきた情報で上書きされたのが数十年ぶりの驚きでした。
当時の『Bad Boy Entertainment』がギャンギャンやった裏側も語られてます。フラットな目で観るのはもちろんですが、新たな答え合わせが出来ますよ!
『Let Got Sort Em Out』 Clipse
15年ぶりに、この兄弟のアルバムが聴けるのはほんまに良かったと思った1枚!
今年はMob Deepの『Infinite』や、NAS & DJ Premierの『Light-Years』とかのアルバムがリリースされましたが、Clipseの『LGSEOC』に軍配……かな。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
『松本 聖雪』 (スケートボード)
熊本出身の女性スケーター。
近い内に世界を獲りますよ。
『C6ix』 (ラッパー)
岡崎8番さゆください。
2026年どうなるか!!
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
まず『スト6』はYear3キャラのアレックスとイングリッドが控えてます。2人ともカッコいいし可愛いし良いキャラなので今後の発表をお楽しみに!
そして、『2027年はストリートファイター40周年』というお祝い年です。2026年はその仕込みをバリバリとやっていきます!
諸々と2026年もストリートファイターにお付き合いいただけると嬉しいです!
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ガンホー・オンライン・エンターテイメント
エキセントリック・プロデューサー
アンクル・デス
代表作:LET IT DIE、DEATHVERSE:LET IT DIE、LET IT DIE:INFERNO![]() |
PS9で発売された『アンクル名人の冒険島』ですね。アンクル名人が大鎌で攻撃するところはもちろん、スケボーに乗って爆走できるのが気持ちよかった!
なんつって。
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
サブリナカーペンターの『Espresso』。音楽ストリーミングサービスで流れてきたのをたまたま聞いて、「昔懐かしくて、かつ今風な要素も取り入れている、すごくいい曲だな」と思いました。
その後MVを見てみたら、70年代のようなレトロな雰囲気が満載で、お気に入りの曲になりました。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
LU:Z
ファーストシングルの『LET IT DIE INFERNO - RITUAL OF RUIN - 』は、頭の中でずっとリフレインするような耳に残るフレーズがすごく気に入っています。
セカンドシングルの『Are You Ready!』は、いままで聞いたことがある曲の中でいちばんいい曲だと思うくらい、完璧に仕上がっています。
ぜひ聞いてみて!
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
2026年は音楽プロデューサーとして本格的に始動します。目指すはコーチェラです!
ガンホー・オンライン・エンターテイメント
パートナー・パブリッシング本部 課長代理
中村聡伸
代表作:ラグナロクオンライン![]() |
●魔法少女ノ魔女裁判
極力ネタバレしないよう書きますが、本文から察してしまったらすみません。「裁判&デスゲーム」で進行するゲームシステムは魅力的な反面、どうしても避けられない致命的な弱点が存在していました。本作ではシナリオでその弱点を克服したばかりか、2倍・3倍もの「深み」を見せてくれました。少なくとも本文を書いている時点では唯一無二の妙手だと思っています。
感動のあまり、生まれて初めてゲーム配信サイトで高評価レビューを書いてしまったほどです。プレイした方と本気で語り合いたいです!
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
●魔改造の夜 THE MUSEUM
もともと「魔改造の夜」の熱心な結社員(視聴者)であったところ、まさかの実演つき展示会が行なわれると耳にし、全力でチケットを求めた結果、「Sズキ」様の実演観覧席をゲット。ワニちゃん水鉄砲と疾走する電動マッサージ器の雄姿を至近距離で拝見でき、まさに至福のひと時でした。
これは持論になりますが、「日本のエンジニアは条件が厳しくなるほど強くなり、同時に遊び心が芽生える」と思っていまして、その技術の結晶を見ているだけで体の中から何かが湧きだしてくる気がします。これからもSズキ様含め、日本のエンジニアの皆さんのご活躍をお祈りいたします。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
●高田純次(タレント)
「じゅん散歩」が2025年9月で10周年を迎えたそうです。なにかを「続ける」ことの難しさは私も痛感しているところですが、なんと10年間無欠席でロケを続けていると伺いました。適当でもやさしさにあふれたトークを耳にするたびに、私もこういうふうに歳を取りたいと常々思います。ご本人は「あと30年はいきたい」とおっしゃっていましたので、私もあと30年応援します!
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
「ラグナロクオンライン」は2025年12月1日に正式サービスから23周年を迎えましたが、24年目となってもまだまだ精力的にアップデートを続けています。2026年は世界樹を中心とした新たな物語が始まり、世界樹の力を得て活躍する新職業「ドルイド」が登場いたします。ほかにもイベントやアップデートを精力的に行っていきますので、初めての方もしばらくお休みされている方も、ぜひ遊びに来てください。
![]() |
ガンホー・オンライン・エンターテイメント
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 代表取締役社長CEO/エグゼクティブプロデューサー
森下一喜
代表作:パズル&ドラゴンズ、ニンジャラ、ラグナロクオンライン、LET IT DIE: INFERNO![]() |
・ドンキーコング バナンザ
Nintendo Switch 2
任天堂/2025年7月17日発売
もう「感服しました」のひと言。
とにかく親切。そして、ただただ気持ちがいい。
作り手の感想としては、"ボクセル技術"を使った破壊のインタラクションの作り込みが凄すぎる。
よくあれだけのものを作ったなと。「ただただ感服しました」という想いです。
・マリオカート ワールド
Nintendo Switch 2
任天堂/2025年6月5日発売
オープンワールドの要素が追加され、遊びの幅が広がるというか、ワクワク感が増した感じ。
『マリオカート』のレースのおもしろさは普遍的ですけど、広大なマップを自由に探索する楽しさが加わったことにより、いままでにない楽しさが生まれる可能性が感じられました。
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
2025年も韓国産のドラマを観ることが多かったですね。
『エクスワイヤ』、『テプン商事』、『財閥家の末息子』など、いろんなドラマを観ましたけど、以前のような盛り上がりは感じなくなりました。
それとは逆に、昨年の『SHOGUN 将軍』や『地面師たち』などに引き続き、日本産のエンターテイメント作品の勢いを感じました。
映画『国宝』は上映されてすぐに観に行きましたが、非常に良かったです。
日本での実写映画で久々に大ヒットが出たという点でも、注目だと思いました。
2026年は、ゲームを含めた日本産のエンターテイメント作品に、世界の注目がより集まる可能性が高いと感じていて、そういった意味でも楽しみな1年になりそうで、非常に期待しています。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
とくにいません。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
2年前のこの特集記事で「パワーを溜める時期です」とコメントしましたが、その結果をお見せできると思います。
2026年は我々が出す複数のタイトルで遊んでいただけると思いますので、発表を楽しみにしていてください。
![]() |
![]() |
グラスホッパー・マニファクチュア
ゲームデザイナー、ゲームディレクター、シナリオライター
須田剛一(SUDA51)
代表作:ROMEO IS A DEAD MAN![]() |
バナンザかSkate Story…。
うーん、Skate Storyです!
発表からずっと待ってました。
月を喰え!
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
ジークアクスかモブランド…。
うーん、モブランドです!
トム・ハーディとガイ・リッチーだけでヤバいのに、ピアース・ブロスナンが一番ヤバい。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
キング(間宮祥太朗)かターボー(森本慎太郎)…。
うーん、キングです!
『良いこと悪いこと』怖くて楽しかったです!
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
『ROMEO IS A DEAD MAN(ロミオ・イズ・ア・デッドマン)』、いよいよ2026年発売します!
セルフパブリッシュって大変ですが、ウチのスタッフのみんなが懸命に発売に向けて精一杯やってます。
是非、応援してください!
![]() |
グラスホッパー・マニファクチュア
ゲームデザイナー/ディレクター
山﨑 廉
代表作:ROMEO ID A DEAD MAN No More Heroes3![]() |
ドラゴンクエストI&II
ドラクエ、1も2もリアルタイム世代なのでプレイすると「全然ちがうやんけ!」と憤ってしまいますが、それはそれ
物語の補完や遊びやすさの改変さは、感心させられました
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
(回答なし)
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
古山菜の花さん
一部音楽界隈で「令和のたま」と話題の女性シンガー
確かに「たま」っぽいけど、それだけではない
雰囲気を持ったパフォーマンスが良いです
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
2026年は「ROMEO IS A DEAD MAN」を皆様にお届けいたします!
お楽しみに!
![]() |
クローバーズ
クローバーズ株式会社 スタジオヘッド/チーフ・ゲームデザイナー
神谷英樹
代表作:「バイオハザード2」「デビル メイ クライ」「ビューティフルジョー」「大神」「ベヨネッタ」「ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン」「ソルクレスタ」![]() |
『アーケードアーカイブス リッジレーサー』
『グラディウス オリジン コレクション』
まず最初に正直に申し上げておきますと、この2025年は僕のゲームライフ的にはあまり目立った活動はなく、インスタグラムの投稿も見直してみましたが、プラモデル製作に費やしていた時間の方が多かったというような一年でした。…ですので、残念ながら今回お話しできることはほとんどないかと思いますが、せっかくですので、暫しおつきあいください。
まず、簡単にゲーム関連のお話をしておきますと、一応、幸運にも抽選販売に当選して、スイッチ2を発売日の6月5日に手に入れることはできましたが、それを姪っ子のメイ(仮名)に自慢したらすぐさま取り上げられ、最近になってメイ用にもう一台のスイッチ2を手に入れるまで、僕の多言語対応モデルはずっとメイの家に監禁されっぱなしで、それがようやく手元に帰ってきた後も、どういうわけかこの多様性の時代に、スイッチ1の頃から「十字キーを搭載したジョイコン」という選択肢をメーカー自身が頑なに提供しようとしないこのハードは、寝転びプレイを常とするためにゲームを遊ぶ際はジョイコンを使用するよりほかない僕のゲームライフにはどうにも馴染まず、結局「十字キーを搭載した十字コン」などの周辺機器がリリースされているスイッチ1を継続使用することで、どうにか「一日一テトリス99」の日課を細々続けることができた、という有様で、そうは言ってもゲーム業界の末席のさらに外れの物陰で毎日陰湿なSNSの投稿を続けている身としては、ぼちぼちスイッチ2を常用ハードにしなければなるまい、と一念発起して、正にこの原稿を書いているさなか、スイッチ1で愛用しているサイバーガジェット社製の「十字ボタン付きミニグリップ」を新たに購入し、ボタンの配置位置が少し異なるスイッチ2に取り付けできるようにヤスリでガリガリ削る工作をして、どうにか“十字キージョイコン2”を自作することで、やっと「アーケードアーカイブス2」のタイトルが遊べるようにはなりましたが、このように、ゲームの話題すら、工作にまつわるエピソードになってしまうのも、どちらかと言えばゲームよりもプラモデル製作の方に熱を上げていた証左でしょう。
ちなみにそのプラモデル製作に関しましては、そもそも僕の場合は大人のマネーパワーに飽かして完成品トイを収集するのがメインで、長らくプラモデルとは縁遠かったのですが、新しく立ち上げたクローバーズ株式会社においては、おもちゃを大量に並べて飾るようなディスプレイ棚をオフィスにあつらえる余裕はまだなく、前職場でコレクションした完成品トイを中心としたおもちゃ群は、全て段ボール箱に詰め込んでトランクルームにギュウギュウに押し込めたままで、それらを開梱するとなると大仕事になりますし、かと言ってまた同じものを買って並べるのも芸がないので、だったら趣向を変えて久々にプラモデルを作って飾ってみようか?と思い立ったのが、最近になってプラモデル製作に久々に引き込まれたきっかけだったと記憶しています。
そんなわけで、2024年に「MODEROIDザブングル」に手を付けた辺りを皮切りに、「EGガンダム」、「HGザブングル」、「ガンダム(REVIVAL Ver.)」、「SMPボルテスV」、2025年に入ってからは「HGブラッカリィ」、「HGバイファム」、「EG RX-78F00/E ガンダム&グラスフェザー」、「HGダンバイン」、「HGエルガイム(スペシャルコーティング)」、「MODEROIDナイキック」、「MODEROIDオーガス」、「SMPゴライオン」、「SMPダルタニアス」、そして今は、あと少しで完全変形合体を実現できたのにガッチャ2のみパーツ差し替えという残念極まりない「MODEROIDガッチャスパルタン」を、差し替えナシでの合体を実現しようと切り刻んでいるところ…と、本格的に取り組んでいらっしゃるガチ勢の皆さんの足元には遠く及びませんが、自分なりにのんびりと久しぶりのプラモデル作りにのめり込みました。
…と言っても、僕は基本的には塗装など凝ったことはせず、単に組み立てるだけ(いわゆるパチ組み)のライトエンジョイ勢で、セレクトしたのはどれも簡単なキットで、一、二日もあれば完成するものばかりではありますが、合わせ目を消したり改造したり塗装をしたりというガチ勢には敵わずとも、せめてゲート処理くらいは丁寧に行ったり、成形色ではフォローし切れていない微細な箇所をワンポイント塗装するくらいのことはしようと、それなりに手を加えて組み上げてみると、完成品トイにはない満足感、充足感が得られて、改めてプラモデルの良さを再認識することになりました。
ただ、あの大阪万博の「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」で話題になった、“グラスフェザー装備型ガンダム”のプラモデルに関してはひと悶着あって、「EXPO2025 ENTRY GRADE 1/144 RX-78F00/E ガンダム」&「EXPO2025 ENTRY GRADE 1/144 RX-78F00/E ガンダム用オプションパーツセット(EX-001 グラスフェザー装備)」(いわゆる“バラ売り版”、価格 合計2,420円)と、もう一つ「EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム(EX-001 グラスフェザー装備)」(いわゆる“セット版”、価格 3,960円)の、似て非なる二つの商品が同日に発売されるという、その複雑怪奇な販売方法にユーザー諸氏は大混乱に陥り、斯く言うわたくし神谷英樹も、一時はセット版の方を事前予約しておきながらも、「ガンダム本体しか作らないかも知れないから、やっぱり箱が分かれているバラ売り版の方にしておこうか」と、わざわざセット版をキャンセルしてバラ売り版の方を注文し直した後になって、仕様をよく確認してみると、セット売りかバラ売りかの違いだけかと思いきや、実はどちらも設計から全く異なる別キットで、確かにバラ売り版の方は「エントリーグレード」と明記されていたり、一方セット版の方はグレード表記が無かったり(つまりノン・グレード)、また価格の方も、ちゃんと計算して比べてみればバラ売り版の合計金額よりもセット版の方が高額で、算数を苦手とする僕には巧妙なトラップと化していたりして、そんなこんなで発売日にはバラ売り版(エントリーグレード)の方だけが届いてしまうという波乱の幕開けになったわけですが、ともあれ、結局その後セット版の方も無事注文し、両バージョンを揃えるに至ったにもかかわらず、僕はバラ売り版、すなわちガンプラ初心者入門用のブランドを冠した「エントリーグレード」の方をセレクトし、製作に取り掛かることにしました。
先にも説明した通り、このバラ売り版(安価)ともう一方のセット版(高額)を比べると、その価格やパッケージングの形式だけではなく、根本の設計の部分から違っていて、バラ売り版の方が初心者でも簡単に組み立てられるように全体的に簡素なパーツ構成になっているのに対して、セット版の方はパーツ数も多く、劇中のイメージにより近付けた仕様になっているという違いがありました。特徴的な大型のソーラーパネルを比較してみても、バラ売り版の方は、薄っぺらい板パーツにホイルシールを貼るだけなのに対して、セット版の方は、ホイルシールの上に更にクリアパーツを重ねて、厚みのある重厚な姿を再現出来たり、バックパックの多関節アームも、バラ売り版の方は一体成型で非可動なのに対して、セット版の方は関節ごとにパーツ分けされていて可動させることができたりと、つまり仕上がりのクオリティにおいては疑う余地なくセット版に軍配が上がるというのが実態でした。
…にもかかわらず、なぜ僕が初心者向けキットのバラ売り版の方を選んだのかと言うと、シールを貼るだけの簡素なソーラーパネルをそのままでは終わらせず、シール表面に印刷されたパネルラインを爪楊枝などでなぞり、その下のキットに刻まれたモールドに沿わせるようにクリクリ彫り込んでいくというひと手間を加えると、クリアパーツが使われたセット版の重厚さには敵わないものの、決して見劣りのしないディテール感のある出来栄えに仕上げることができる…という作例を、YouTubeのレビュー動画で目の当たりにして、駄菓子の型抜きを彷彿とさせる、“爪楊枝クリクリ”という単純ながら子供心をくすぐる工作に胸がときめいたからでした。
…というか、もうガンダム本体を組み立てている時から早く“クリクリ”がやりたくて、「“クリクリ”をやるためにガンダムを組み立てている」と言っても過言ではない気持ちでした。…が、このキットには一つ“厄介な問題”が隠されていて、そこに少々手こずって時間を取られたのは誤算でした。
その“誤算”のお話をする前に、まず近代のプラモデルについて簡単に説明しておきますと、ありがたいことに今は技術の進歩によって、多色成形によるパーツ構成になっているのが当たり前で、手間のかかる塗装をしなくても、そのまま組み立てるだけで劇中同様のカラフルな姿で完成するようになっています。
ガンダムを例に挙げれば、僕の幼少期の頃の1/144スケールキット(1980年7月発売)などは、白一色の成形色だったために、本来は青、赤、黄の“ヒーロー三原色”が配置されているはずが、そのまま組み立てると“真っ白なガンダム”になってしまうので、それを劇中同様のルックにしようと思ったら、塗料、筆、溶剤など、値の張る用具を多数そろえなくてはならず、またそれらを使って塗装したとしても、はみ出したり、塗りむらが出来たりと中々思うようにはいかなくて、高度な技術と経験がなければ、完成見本写真のように綺麗に仕上げるのは非常に困難だったのに対して、現行のキット(HG 1/144 RX-78-2 ガンダム [BEYOND GLOBAL] 2020年6月6日発売)では、ボディのトリコロールカラーはもちろん、複雑な顔や腰のVの字モールドさえも、全ての設定色がパーツの成形色で再現されており、パチ組みする(パチパチとパーツを組む)だけで、綺麗に劇中通りの仕上がりになるのです。
これは余談になりますが、バンダイのこの多色成形技術への取り組みは素晴らしく、2024年の10月には、驚くべき商品が登場して、僕を含む全ガンダムジジイたちの間に激震が走りました。その名も「ベストメカコレクション 1/144 RX-78-2 ガンダム (REVIVAL Ver.)」。そう、“ベストメカコレクション”の名を冠したこのプラモデルは、遡ること45年、1980年7月に、今日まで連綿と続くガンダムのプラモデル、通称「ガンプラ」の記念すべき第一弾商品としてその歴史に刻まれている伝説的キット「ベストメカコレクションNo.4 機動戦士ガンダム」、すなわち先程“真っ白ガンダム”として例に挙げた旧世代のキットを、バンダイの最新の製造技術の粋を結集させて改良再設計した、リバイバルキットです。
まず「ベストメカコレクションNo.4 機動戦士ガンダム」(いわゆる「旧キットガンダム」)について、もうこの時点で既に読んでいる人は誰もいないというのに敢えて説明しますと、定価300円というリーズナブルな価格で発売されたこの商品は、完成時のサイズが約12.5cmと小ぶりながら、劇中作画用の設定画を愚直に図面に落とし込んだ武骨なフォルムに、肩や肘、足の付け根や膝など、全身に一通りの可動をしっかり備えて、その後の爆発的なガンプラブームを巻き起こす先駆けとなった良キットで、今なお生産され続けて長期に渡り人気を博しています。
ただ、これは当時のプラモデル全般に言えることですが、パーツ同士を組み合わせるだけでパチッと噛み合う現代の接合法“スナップフィット”とは異なり、組み立てには接着剤を使用しなければならず、また前述の通りキットの素材も白一色の単色成形だったため、劇中同様のカラフルな姿に仕上げるには、自分の手で塗装をしなくてはなりませんでした。
僕自身も、小学生当時に買ってもらった人生初のガンプラが正にこの旧キットガンダムだったのですが、当時はまだキットの成形精度も甘かったためにパーツ同士の接合性が悪く、そこにベタベタと塗りたくった接着剤が至るところではみ出し、またキャラクタープラモデル黎明期ゆえの複雑怪奇な構造の肩関節に接着剤が流れ込んで固着し、「前へならえ」したまま微動だにしない、見るに堪えない仕上がりになり果てた真っ白ガンダムを手にしながら、虚ろな目でキットの説明書に載っている完成見本写真を眺めては、嗚呼、こんなカッコいいガンダムをこの手に持って、ドゥフュウウウーンシュウィイイイーンと遊べたらどれだけ楽しいだろう…と妄想を膨らませる、そのような光景がガンプラを愛好する当時の小学生界隈では日常茶飯事だったのです。
そんな、いたいけな子供たちの心にほろ苦い思い出を刻み込んだ罪深き旧キットガンダムが、45年もの時を経て、当時の懐かしいフォルムはそのままに、接着剤不要のスナップフィット、塗装不要の多色成形、更には接合部を目立たなくするパーツ設計など、最新のプラモデル技術が余すことなく注ぎ込まれて、“あの頃誰もが憧れた完成見本写真そのままのガンダム”として我々の前に蘇った、それが前述した「ベストメカコレクション 1/144 RX-78-2 ガンダム (REVIVAL Ver.)」なのです。
「ここに辿り着くまで、人類は45年もの歳月を費やしたのか…」とこぼれる声が、このキットの発売日には全国のおもちゃ売り場で聞かれたとも聞かれなかったとも言われていませんが、ともあれ、このリバイバルキットの登場は、プラモデルという娯楽の前に泰然と立ちはだかる“塗装”という障壁を打ち砕く象徴的な出来事として、多くの日本人の脳裏に記憶されたのでした。
…ところがです。“ガンプラ新時代”を迎えたはずのこの令和の時代に、当然多色成形技術が用いられていて、パチ組みするだけでヒーロー三原色をまとったガンダムとして完成するはずだと信じて近代キット「EXPO2025 ENTRY GRADE 1/144 RX-78F00/E ガンダム」(バラ売り版)の製作に取り掛かり、早く“クリクリ”したいと心を弾ませる僕の前に、思いがけない“誤算”が立ちはだかったのです。
そもそもこの「RX-78F00/E ガンダム」なる名称は、2025年4月13日から10月13日までの184日間、大阪市此花区夢洲で開催された「2025年日本国際博覧会(大阪万博)」の会場にて、バンダイナムコホールディングスの「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」に展示された実物大ガンダム立像、通称「万博ガンダム」のことを指し、またそれは、更に遡って2020年12月19日から2024年3月31日までの約3年間に渡り、横浜市の山下埠頭に建設・展示された動く18mの実物大ガンダム立像、通称「横浜ガンダム(形式番号「RX-78F00」)」から、部材をそのまま引き継ぐ形で再建されたという経緯を持っています。
と言うわけで、初出の「横浜ガンダム」としてお話を続けますと、この「横浜ガンダム」は、アニメ「機動戦士ガンダム」に登場した架空のキャラクターを、「もしもこの全高18mの巨大なサイズのモビルスーツ(ロボット)が現実に存在したら」…というコンセプトに基づいて設計・建造されたもので、“実在する人型巨大ロボット”として説得力を持たせるために機械工学や重機的な解釈によるディテールアップやマーキングなどが細部に渡って施され…というか横浜での展示の際は、実際に全身の関節を駆動させて歩行アニメーションをする機構を備えていたので、おのずと「可動するもの」としてのデザインが成り立っていたわけですが、ともあれ、これまでのどんな大型スケールプラモデルや高級トイも到達できなかった「超高解像度ガンダム」として、この現実世界に生を受けました。
細部のどこを取っても「実在する全高18mの巨大人型ロボット」としての膨大な情報量に溢れていて、且つ一見してそれが紛れもなく「ガンダム」であると認識できる、巧妙にまとめ上げられたそのデザインは、僕個人としては2009年7月、『機動戦士ガンダム』放送30周年記念および「GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト」の一環として、東京都お台場、しおかぜ公園に建立された初代実物大ガンダム立像、通称「お台場ガンダム」が示してくれた、劇中のガンダムの姿を最大限尊重しながらも、そこにモダナイズという魔法の粉をまぶして、“どの世代のガンダムファンをも納得させる絶妙な塩梅”にピタリとアジャストさせた、卓越したデザインワークには数歩譲るもので、有り体に言えば少々気に入らない部類の“ニューエイジ迎合アレンジガンダム”の一種ではあったものの、さりとて“実物大”と銘打ったそのサイズが醸し出す圧倒的存在感は唯一無二のものであることに変わりはなく、とりわけ、ガンダムというキャラクターのトレードマークとも言えるトリコロールカラーのうち、胸部から腹部にかけての青い外装部分が、分割構成されたパネルごとに深みのあるダークブルーと明るいライトブルーの二色で塗り分けられて、“情報の高解像度化”が施されている点には、感嘆を禁じえませんでした。
実は、それと同様の手法は、既に「お台場ガンダム」でも用いられていて、頭部や腕部、下半身などの白い外装部分が、単なる白単色の塗装ではなく、分割された装甲パネルごとに淡いグレーや深めのグレーなどの配色で変化が付けられ、それによって異なる素材が複合している現実味ある構造や、全高18mの巨体というスケール感が見事に演出されていました。
ただこの「横浜ガンダム」の場合、細かいことを言えば、従来は黄色単色だった腰回りのヘリウムコアも、黄色と山吹色の二色で塗り分けられていたりするのですが、胸部のブルーのツートンカラー化には特に、単に情報量が増えたということ以上の演出効果があり、見慣れているはずの姿を鮮やかに彩るライトブルーという強めの差し色が、「横浜ガンダム」というキャラクターの個性を一層際立たせて、既に巷に溢れている幾多のガンダム(RX-78-2)バリエーションの中でも、しっかりとその独創性を示す、新たなトレードマークになっていたのです。
そんなわけで、その一点で「横浜ガンダム」をそれなりに気に入った僕は、当然ながらフィギュアが欲しくなり、バンダイの彩色済み可動フィギュアブランド「ロボット魂」にラインナップされた完成品トイが発売になると、それをすぐさま購入しました。
…ところがです。先にもご説明した通り、今や組み立て式プラモデルでさえ、多色成形によって塗装をしなくても劇中同様のカラフルな仕上がりになるというのに、“彩色済み可動フィギュアブランド”から発売されたはずのその横浜ガンダム・トイは、どうしたわけか、トレードマークであるはずのボディのライトブルーの差し色が、スッポリ抜け落ちているではないですか。
ブルーのツートンカラーが気に入ったからこそ横浜ガンダムのトイを購入しようと思い、且つ面倒なことを避けるために完成品トイを選択したはずなのに、これは解せない! …と、いつものようにSNSで穏やかにお気持ちを表明しつつ、しかしそのまま捨ておくのも気持ちが収まらないので、結局、仕方なくわざわざライトブルーの塗料を買ってきて、胸部パーツをマスキングして、塗装をして…と自らの手で差し色を施して、何とか「横浜ガンダム」としての最低限の体裁を整えはしましたが、この令和の時代になぜこのような不可解な仕様になっているのか?…とどうにも気になって調べてみたところ、更に不可解なことに、僕が購入したそのロボット魂版だけでなく、同時期に発売されたプラモデルの1/144キット、1/100キットまでもが同様に、そのツートンカラー再現がオミットされていて、ブルーの単色パーツのみで設計されているということが分かりました。
この「横浜ガンダム」は、その出自が他のガンダムたちとは違ってアニメーション作品ベースではありません。それ故なのか、そのプラモデルキットの2商品にはいずれも「HG」、「MG」といった、近年のキットには必ず付くはずの冠が与えられていないということもあって、すなわちその意味するところが「イベント記念商品」という位置づけで、商品開発においては高品質化よりも低コスト化に一番の優先が置かれたのだろうか…?というのは、まぁそれはあくまでも僕個人の勘ぐりに過ぎませんが、しかし、いずれのキットも、メーカーのホームページに掲載されている作例写真では、胸部がしっかりとツートンカラーに塗り分けられているので、小さく注釈で「※商品の写真・イラストは実際の商品と一部異なる場合がございますのでご了承ください」と書くだけで済ませているのもどうかと首をかしげざるを得ないのは横に置いといて、メーカー自身も“差し色のライトブルーの重要さ”を認めていることは間違いなく、であるならば「横浜ガンダム」のアイデンティティとも言えるこの特徴を、何としても商品に落とし込むべきではなかったのか?…と、メーカーサイドに強く訴えたい気持ちが沸々と湧き上がるのを禁じえませんでした。
…という前提を知って頂いたところで、“誤算”の方に話を戻しますと、つまり、そのような曰く付きの“横浜ガンダムツートンカラー問題”が、僕が製作した「EXPO2025 ENTRY GRADE 1/144 RX-78F00/E ガンダム」(バラ売り版)にも、残念ながら受け継がれてしまっていたのです。そのため、ロボット魂版で行ったのと同様に、このバラ売り版でも、マスキングをして、塗装をして、「横浜ガンダム」のアイデンティティを取り戻す…という一連の“儀式”を、クリクリにありつく前に片付けねばならなかったのでした。
さて、“誤算”の話が済んだところで、ここからようやくクリクリの話になりますが、待ちに待ったそのクリクリは、想像以上にクリエイティブ心を満たしてくれるものでした。
手順を説明しますと、まず最初に付属のホイルシールをキットのソーラーパネルパーツに貼り付けます。前述の通り、「EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム(EX-001 グラスフェザー装備)」(セット版)の方は、上位グレードなだけあってソーラーパネル部分にはクリアパーツが用意され、透明感のある美しい仕上がりになるのですが、一方このバラ売り版の方は、板パーツにシールを貼り付けるだけの簡素な設計のため、キットの箱に印刷された完成画像の、「シールを貼った板を背負っている貧相な姿」には、どこか哀愁すら漂っている始末です。
しかし、上級者の改造テクニックを持たない僕でも、簡単な工作でそれを上質に仕上げることができるというところに、クリクリのロマンがあるのです。
付属のホイルシールのうち、小さなソーラーパネル用のシールを貼り終えると、次に背中の大型ソーラーパネルのシール貼りです。パーツに対してズレないように貼り付けるのに少々神経を使いますが、それをクリアしたら、いよいよシール表面に描かれたラインに沿って彫り込んでいく“クリクリ”の始まりです。
彫り込むと言っても、何か特別な器具を使う必要はなく、まず綿棒を使って全体的にザックリ浅めに溝をなぞり、それが済んだら楊枝を使って深めに溝をなぞっていくだけです。シールの下のパーツのスジ彫りに沿って、楊枝の先は自然と走るので、シールを破らないようにだけ気を付けて、シールをパーツに馴染ませるように、優しくゆっくりパーツ全体の溝をなぞっていきます。
全体的に溝が深まったら、また最初から念入りにクリクリクリクリ。それを繰り返して、隅々までシールを密着させていくと、ソーラーパネルとしてのディテールが、シールの上に鮮やかに浮かび上がってきます。
こうしてクリクリの全工程をやり終えると、「ただシールを貼っただけの板」だったパーツが、見違えるように立体感のあるソーラーパネルへと変貌を遂げます。金属箔のホイルシールがキラキラと光を照り返して、セット版のクリアパーツに匹敵する…というのは少々言い過ぎですが、十分美しい輝きを放ち、またしっかりと刻まれたパネルラインは、ソーラーパネルのディテールを際立たせて、スケール感を演出します。ただシールを貼り付けただけの完成画像と見比べても、その差は歴然。簡単な作業なのに、なんだかとんでもない偉業を成し遂げたような満足感を覚えながら、僕は暫し完成したガンダムを眺めてしまいました。
そのクリクリ手法は僕が編み出したわけでもなんでもなく、偉大な先駆者様方がYoutubeにて公開してくれた技なんですが、その方々のお陰で、自らの手で完成度を高め、より深く愛着を抱けるという、完成品トイにはない、“プラモデルだけが持つ魅力”を、このキットを通じてより深く味わうことができたように思います。
実は、「横浜ガンダム≒万博ガンダム」の「ダークブルーとライトブルーのツートンカラーの配色」の件について、実はもう一つ不思議なことがあり、既にもう誰も読んでいないと思うので、このまま独り言を続けさせていただきますと、「横浜ガンダム(RX-78F00)」と「万博ガンダム(RX-78F00/E)」は元々同一の個体で、「万博ガンダム」の方が少々化粧直しされて、且つ何らかの大人の事情で珍妙な片膝立ちポーズで固定されたこと以外は、その外見自体は全く同じデザインであり、しかしその特徴的なツートンカラーの配色が、何故か完成品トイやプラモデルでは再現されていない…という話は、ここまで繰り返しお話した通りなのですが、例外的に極一部の高額商品においてのみ、このツートンカラーが再現されているものがありました。
…と言っても僕が購入したロボット魂版だってまあまあ高額な部類で、そもそも昨今は原材料費の高騰などでトイ全般的に価格上昇していて、大人になって十分なマネーパワーを得たと思ったら価格の方まで追いついてきやがった!…と、このところおもちゃジジイ界隈は阿鼻叫喚の地獄絵図だという、そのような愚痴は一旦置いておいて、そのツートンカラーの配色を実現していた稀有な商品というのが、バンダイのハイエイジ・トイのフラグシップブランド「超合金」でリリースされた、「超合金・横浜ガンダム(税込22,000円)」と、「超合金・万博ガンダム(税込33,000)」の二つです。
これらの商品は、いずれもそのブランド名にふさわしく合金をふんだんに使用した豪華な仕様で、胴体のダークブルー&ライトブルーの配色だけでなく、ヘリウムコアの黄色&山吹色の配色もしっかりと再現され、尚且つ実際の実物大ガンダム立像さながらにライトアップギミックさえも搭載し、加えて「超合金・万博ガンダム」の方は、実物同様お化粧直しによって追加された装甲も装備しているという、まさに非の打ちどころのない決定版横浜/万博ガンダム・トイと言っていい仕上がりでした。
…ところがです。
鬼門とも言える塗り分けがせっかく再現されているというのに、奇妙にも、その肝心のダークブルー&ライトブルーの配色パターンが、「超合金・横浜ガンダム」と「超合金・万博ガンダム」の両者で異なっているではないですか。正確に言えば、先発の「超合金・横浜ガンダム」の方は、実際に横浜で展示されていた実物の“動くガンダム立像”における配色が正確に再現されているのに対して、後発の「超合金・万博ガンダム」の方が、それとは異なる“独自の配色パターン”で塗装されているのです。
この事実は、僕が今回「EXPO2025 ENTRY GRADE 1/144 RX-78F00/E ガンダム」(バラ売り版)を塗装した後で、最終確認のつもりでネットで画像を確認していた時に気付いたものです。そして、最初は自分が勘違いして間違った塗り分けをしてしまったのか?…と慌てましたが、よくよく調べてみると、配色パターンが「従来パターン」と「新パターン」の二種類が存在し、「新パターン」が使われているのは「超合金・万博ガンダム」のみで、更に言えば、商品としては塗り分けが実現されていない「EXPO2025 1/144 RX-78F00/E ガンダム(EX-001 グラスフェザー装備)」(セット版)の商品ページに掲載されている“塗装済み完成画像”も、この「新パターン」による塗装が施されていて、つまり、“万博ガンダム関連のトイだけが、これまでの「横浜ガンダム」(従来パターン)とは異なる配色(新パターン)になっている”ということを突き止めました。
ここまでくると配色指定ミスということは考えられず、“メーカーサイドが意図的に「新パターン」を採用している”のは明らかで、そうなると、「もしかしたら、そもそも実物の万博ガンダム立像が新パターンで塗られているのでは?」「つまり横浜から万博へと移設する際、装甲を追加しただけではなく、配色パターンも新規にデザインして塗装し直していたのか!」という考えが頭に浮かび、早速実物の万博ガンダム立像の画像を片っ端から調べてみると…やはりと言うか、奇妙にもと言うか…万博に展示されているガンダム立像の配色パターンは、横浜ガンダム立像の時から変わっていません。
この“新パターンが存在する謎”に直面した僕は、「そうなると、もしかしたら万博のガンダムパビリオンにおけるアトラクション映像の中で、このガンダムが覚醒する展開があって、その時にボディカラーが変化する演出があるのかも知れない」という仮説を立てました。実際、2024年に現代アート展「Frieze Los Angeles」にてBMWが公開した、世界に一台の特別仕様車「i5 Flow NOSTOKANA」は、E Inkを活用したカラーチェンジ技術により、その車体の色を自由に変えることができるという、驚くべき機能を備えていました。それくらいの芸当が、ガンダムに出来ないはずはありません。
そして、その実態をこの目で確かめるべく…というわけでもないのですが、たまたま抽選に当たって、万博のガンダムパビリオンのアトラクション、「GUNDAM:Next Universal Century」を体験できる好機が巡ってきたので、姪姉妹の子守も兼ねて、9月の灼熱の炎天下の中、意気揚々と万博へ向かいました。
事前の予習により、ガンダムのアトラクションでは『新たな「宇宙世紀」という設定の中で、大阪・夢洲の「夢洲ターミナル」から軌道エレベーターで宇宙ステーション「スタージャブロー」まで移動する体験ができる』ということ、そして新装備「グラスフェザー」と「ビーム溶接ガン」が追加された「RX-78F00/Eガンダム」が登場するということは分かっており、それに加えて会場に展示されている実物大珍妙片膝立ちガンダムが、その新装備の装甲を“左半身のみに装着している”という事実から、「なるほど、つまり俺たち民間人はその軌道エレベーターとやらに乗り込むも、途中で何らかのトラブルに見舞われ、そこにグラスフェザーを纏ったガンダムが颯爽と現れて、その身にダメージを負って装甲の半分を失いながらも、究極モードを発動してそのボディを変色させて蘇り、軌道エレベーターの破損個所をビーム溶接ガンで何とか修復して、俺たちを無事宇宙ステーションまで送り届けてくれるんだ!」という妄想を膨らませ、それを怪訝そうな顔をしている姪姉妹に口角に泡を溢れさせながら早口で説明した上で、満を持してアトラクションへと乗り込みました。すると…。
その結果…僕の妄想が当たったのか否かは、巷に溢れているアトラクション動画を各自で調べてご確認いただくとして、肝心の「RX-78F00/Eガンダム」の配色がどうなっていたかと言うと、なんと、最初に登場するところから、映像の最後の場面まで、一貫して“新パターン”の姿だったことが確認されたのです…! つまり…此は…如何に…?(古語)
横浜ガンダム立像 → 従来パターン
横浜ガンダム・トイ → 従来パターン
万博ガンダム立像 → 従来パターン
万博ガンダム映像 → 新パターン
万博ガンダム・トイ → 新パターン
…まとめると以上のような結果です。
アトラクションを体験し終えた参加者は、みな一様に満足した表情を浮かべながら、目の前に鎮座する実物大珍妙片膝立ちガンダムを見上げて、「お前が俺たちを守ってくれたんだなァ…ありがとうガンダム!」と感慨に耽っていましたが、一方僕はと言うと、「お前、さっき軌道エレベーターに乗ってる時に俺たちの前に現れた時と色が違うじゃん…つまりさっきの奴と別個体では? お前は一体誰なの…?」と、アトラクションに満足して余韻に浸っている姪姉妹たちに水を差すまいと平静を装いつつも、血走った視線を向けてガンダムに真実を問い続けたのでした。
…というわけでプラモデルの話に戻りまして、「万博ガンダム・トイの自前塗装」を例に、“商品の欠落した部分を自分の手で補う面倒”については十分ご理解いただけたと思うので、面倒繋がりで、冒頭で挙げた「MODEROIDガッチャスパルタン」についても、少しだけ触れておきましょう。
このガッチャスパルタン、1979年に放映を開始した「科学忍者隊ガッチャマンF」という作品に登場する大型戦闘機で、シリーズ一作目「科学忍者隊ガッチャマン」の「ゴッドフェニックス」、二作目「科学忍者隊ガッチャマンII」の「ニューゴッドフェニックス」に続く後継機として活躍する、ガッチャマンたちの主力兵器です。
劇中でも披露される「5機変形合体ギミック」が魅力のマシンなのですが、残念ながらこの「MODEROIDガッチャスパルタン」のキットは、前述の通り機体を構成する5機のガッチャマシンの中の一つ「ガッチャ2」の変形機構が実現されておらず、合体するためには一部パーツを差し替えなくてはならないというガッカリ仕様で、一時は購入を見送ろうかとも思ったのですが、この商品を見送ると恐らく今後20年は…いやもしかしたら永遠にガッチャスパルタンの商品には出会えないかも知れない…と思い、自分の手で変形を可能にする改造をしてみようと決心して、商品の購入に踏み切りました。
調べてみると、同じように変形機構を実現しようと改造をされている方がSNS上に一人だけいらっしゃったので、その方が載せていた工作写真を参照しながら、見様見真似でパーツを切ったり削ったりして、あと少しで完全変形合体が可能な、“自分だけのガチャスパルタン”が完成しそうだというところまで来てはいるのですが、いいところでこの原稿書きに忙殺されて絶賛放置中どころか、睡眠もままならない有様なので、自分のスケジュール管理能力を呪いたい所存です。
…と、まるで有意義な創作活動をしているかのようで、実のところ「メーカーがちゃんとやってくれないから自分で何とかするしかない」という、憤懣やるかたない後ろ向きエネルギーが原動力になっているという事例を挙げてきただけなわけですが、そうなるともう一つ、先日発表されて僕のように少年の心しか持っていないおもちゃジジイ界隈に激震を呼んだ、「復刻版ジャンボマシンダー 勇者ライディーン」も、どうしても避けては通れない存在です。
「ジャンボマシンダー」と言えば、昭和40年代生まれの少年たちの誰もが憧れた、ブロー成型で作られたポリプロピレン製の大型人形で、「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」など、当時人気のあったスーパーロボットや変身ヒーローといったキャラクターたちを、約60センチというビッグサイズで立体化した、おもちゃキッズ垂涎の“ザ・キング・オブ・おもちゃ”でした。
今の審美眼で見れば、「テレビに登場するそのままの姿」…と言うにはほど遠い、腕を前に出す程度の可動しか持たない硬直姿勢のプロポーションに、原作には登場しない「ミサイル発射ギミック」や、「足の裏のコロ走行車輪」などの、時代を感じさせる子供向けアレンジ満載の、いわゆる昭和トイ然とした佇まいでしたが、その商品名が示す通り、サイズが醸し出す有無を言わせぬ圧倒的な迫力は、当時の男の子たちの羨望のまなざしを引き寄せるのに十分でした。
そのルックについて大事なことをもう一点付け加えるなら、先程挙げた「マジンガーZ」、「ゲッターロボ(ゲッター1)」を例にとって説明すると、商品の製造工程上の都合なのか、あるいはメインターゲットの子供たちの目を喜ばせるための施策なのかは不明ですが、本来は白い色であるはずのパーツ ― 具体的には上腕部や大腿部が、なぜか「青色」で成形されているという点も、この「ジャンボマシンダー」を語る上で欠かせない特徴のひとつです。
もちろん、それがテレビの中に登場する“本物”とは異なる配色であることは誰もが理解していたのですが、そうした“おもちゃならではの独自アレンジ”は、当時のおもちゃ界隈においては珍しいことではなく、時代の緩さもあって、先に説明した「ミサイル発射ギミック」や「コロ走行車輪」などと併せて、当時の子供たちは“おもちゃってそういうものだよね”と、寛容に受け入れていました。
ゲーム界隈においても、古い時代には似たような例は枚挙にいとまがなく、例えばかの有名な「ストリートファイターII」では、キャラクター選択画面で、チュンリーのコスチュームがオレンジ色だったり、ゲーム中は上半身裸のザンギエフがタンクトップを着ていたりするのは、記憶に留めるまでもないほど「まぁそんなこともあるか」とスルーされ続けた事例として代表的なものですし、ニチブツの「テラクレスタ」でも、基地から緊急発進する戦闘機が堂々と描かれた販促ポスターが、同じニチブツ開発でペンディングとなった悲運の作品「コンステラ」用に製作されたイメージアートの流用であることは誰も知る由は無かったとしても、ゲーム中に登場する自機「ウイングギャリバー」とは似ても似つかないその“謎の戦闘機”を、「別にどうでもいっか」と誰もがスルーを決め込んだことは紛れもない事実なわけです。
更に付け加えるなら、横スクロールシューティングの金字塔「グラディウス」でも、今では単発機として定着した自機「ビックバイパー」が、販促ポスターに精密に描かれた途端、エンジンを二基備えた双発機になっていることを、「ああ、パワーアップしてスピードを二速にしたからやね」と都合よく解釈しようとは誰も思いませんでしたし、同じくコナミの二人同時プレイシューティングの草分け「ツインビー」においても、ゲーム中のグラフィックと販促ポスターのビジュアル共にきちんと単発機として描かれていてホッとしたのも束の間、よく見ると本来並列ダブルキャノピーであるはずの2プレイヤー側の自機「ウインビー」がシングルキャノピーに描かれていたことで、ユーザーたちが混乱の渦に陥れられたという事実は確認されていませんし、その後のファミコン移植版のパッケージアートでは突如としてツインビー&ウインビーともに双発機として描かれたことで、コナミのカスタマーサポートの電話が鳴りやまなかったなどということも、当時ファミマガやファミ通で報じられた記録は一切ありません。
それはともかく、「ジャンボマシンダー」の独特な在りようは、憧れと共に当時の子供たちの心に深々と刷り込まれたことは間違いなく、2010年になってリリースされた、大人向けトイのシリーズ「スーパーロボット超合金」において、「マジンガーZ」と「グレートマジンガー」の二体が、「ジャンボマシンダーカラー」なるリペイント商品として企画されたことは、そのカラーリングが強烈なノスタルジーを呼び起こす「ジャンボマシンダー」の大切な個性の一つとして認められたことの証左と言えるでしょう。
そんな「ジャンボマシンダー」を、残念ながら裕福な家庭に生まれず、さりとてご褒美を賜れるような勉学的成果を上げる努力を力いっぱい惜しんで遊びに励んでいた神谷少年は、ついぞ買ってもらえることは当然なく、大人になって格段のマネーパワーの得た後であっても、現存する「ジャンボマシンダー」の当時品はそれをあざ笑うかのようにプレ値を高騰させて、依然として高嶺の花の座に君臨しており、永遠の憧れとして心の奥底に刻むことになったわけですが、それから約30年もの歳月を経て、その伝説的ザ・キング・オブ・おもちゃの「ジャンボマシンダー」のシリーズ第一号「マジンガーZ」が、1973年の発売当時の姿そのままに復刻されるという一報が世界を駆け巡ったのは、2024年7月のことでした。
いくら当時の人気商品だったとは言え、30年も昔の商品をそっくりそのまま現代に蘇らせるという、極小のピンホールを狙い撃ちするかの如きニッチな商品が現実のものになるなどということを、一体誰が予想できたでしょうか? いや、誰もできない(反語)。
意表を突くその奇跡の商品化のニュースに、おもちゃジジイ界隈はたちまち騒然となりましたが、実際に我々の前に姿を現したその「復刻版ジャンボマシンダー マジンガーZ」は確かに、何かとうるさい面倒なおもちゃジジイたちの期待を裏切りませんでした。1973年当時のプロポーションはそのままに、シールによる装飾だったテクスチャーが耐久性の高い塗装処理に置き換えられていたり、同じく復刻された「ポピニカ ホバーパイルダー号」との連動遊び用に、新たにマグネットを内蔵されて合体の安定化が図られていたりと、最新技術によるアップグレード&フルリニューアルが施されて、近代玩具として生まれ変わっていたのです。もちろん、前述した“独特な青い成形色”も、しっかりとその在りようが守られて。
リニューアルという機会に、“正しい姿に改める”という施策を打つ場合、それが色に限らず形状など全ての面で再検討が行われ、「設定通りの造形を目指す」というアプローチがとられることもあるでしょう。実際、2010年にはその名も「ジャンボマシンダー NEO」という商品が企画され、こちらは全体のプロポーションはもちろん、素材や関節機構など、あらゆる面で“劇中再現が徹底され、“最新フォーマットのマジンガーZ”と言っていいハイエイジ・トイとしてリリースされました。
ですが、「復刻版ジャンボマシンダー」は、メーカー企画担当者曰く“フォルムや素材などは極力1973年当時のままで復刻する”ということにこだわって製作されたもので、「設定的な正しさ」よりも、「当時のトイそのままの姿」を守るということにこそ意義があり、正にその看板に偽りなく、前述の「ミサイル発射」や「足の裏の車輪」はもちろん、そして原作設定とは異なるはずの、しかしそれこそが「ジャンボマシンダー」の魂だと言ってもいい“独特な青い成形色”も、しっかりとそのまま残された状態で、見事に奇跡の復刻を果たしたのです。
おもちゃにもトレンドがあって、わたくし神谷英樹を中心とした半径5mくらいの観測範囲のデータをもとに分析すると、近代の、特にこの令和の時代の市場では、“設定に忠実に再現する”ということが好まれる傾向が強く、“実物”がある意味存在する実写作品のキャラクターなどは、場合によっては3Dスキャンを駆使するなどして、可能な限り本物に近づけるための施策が打たれたり、またアニメ作品などの“実在しないキャラクター”であっても、作画が安定しなかった昭和時代の作品のキャラクター、例えばファーストガンダムに登場したモビルスーツなどは、視聴者のイメージを最大限汲み取って劇中の姿を忠実に…と言うわりには小顔で足が長いシュッとした欧米人体形を良しとする現代の嗜好に毒されて結局スタイリッシュ気味に寄ってるじゃねえか、という愚痴はここでは断腸の思いで我慢するとして、ともあれ一応メーカーサイドが標榜するコンセプトとしては、過度なアレンジを加えて原作から逸脱することは避ける、ということになっていたりします。
しかし僕の幼少期である昭和のおもちゃシーンを思い起こすと、前述したように、原作にはないミサイル発射ギミックや足裏の車輪に加え、ボディに「マジンガーZ」と番組名が記されていたり、本来ロケットパンチをしないロボットにもかかわらずパンチ射出ギミックが追加されていたり…と、当時の大人たちが型に囚われない自由な発想で少しでも子供を楽しませようとした、創意工夫の結晶が随所に見られました。
「ジャンボマシンダー」の“青い成形色”も、そうした創意工夫から生まれた、当時の文化を雄弁に物語る“昭和トイの宝物”の一つで、「復刻版ジャンボマシンダー マジンガーZ」は、当時をリアルタイムで経験した者なら誰でも知っている“むせかえるような昭和の空気感”を現代へと伝えてくれた、少なくとも僕にとっては最高の贈り物でした。
この「復刻版ジャンボマシンダー」は好評を博したようで、2024年7月20日発売の第一弾の「マジンガーZ」に続いて、2024年12月21日には第二弾「グレートマジンガー」が発売され、もちろんどちらも即購入した僕は、次は一体何が来るんだろう? もしかして、同級生の鈴木君の部屋に飾られていて、ただ羨むことしかできなかったあの「ガイキング」か? だとすると、ちょっとお金持ちの同級生の竹田君の家に無造作に置かれていたあの「大空魔竜」も、その圧倒的ビッグサイズのまま現代に蘇るのだろうか? …そうなると、その流れでポピニカシリーズの「バゾラー」、「ネッサー」、「スカイラー」も復刻されることは間違いなく、夢に見た大富豪の連動遊びをこの歳になってようやく実現できるのか! …と妄想を先走らせていたところに、特に思い入れのない「マッハバロン」が第三弾として発売されたのを黙ってスルーした、その矢先のことです。飛び込んできたのは、第四弾「勇者ライディーン」発表のニュースでした。
1975年当時、「勇者ライディーン」をリアルタイムで視聴し(長野放送では日曜朝9:30から放送)、日曜日に家族でスキーへ向かう道中、朝食を取ろうと立ち寄った食堂で「ライディーン見たい!」と騒ぎ立て、親切なお店のおじさんにテレビのチャンネルを変えてもらって、ご満悦で朝ご飯を頬張った、そのような子供だった僕が、そのニュースに飛びついて狂喜したのは言うまでもありません。
ただ、以前もお話ししたように、昨今のトイ事情は少々異常な様相を呈しており、オンラインショップで商品の予約が開始されると購入希望者がドっと押し寄せ、アクセスが集中してサーバーが渋滞し、サイトに接続できない状態が延々と続いた後、ようやく商品ページに繋がったと思ったら「在庫がなくなりました」の無情な文字が表示され、然る後にフリマサイトを覗きに行くと、高値転売を目的とした同商品の出品がズラリと並ぶ…という油断ならない状況です。
僕は、「復刻版ジャンボマシンダー ライディーン」の予約開始の日付をスケジュールアプリにすぐさま入力し、その日が来るのを首を長くして待ち構えました。そして予約開始の当日は、仕事そっちのけで早くからPCの前でスタンバイして、時計の秒針を凝視しながら予約開始の瞬間に狙いを定め…そして見事、並み居るライバルたちを抑えて予約を勝ち取ることに成功したのです!
前述の通り、僕はこの「復刻版ジャンボマシンダー」シリーズは「マジンガーZ」、「グレートマジンガー」と立て続けに購入済み且つ「マッハバロン」はスルー済みで、しっかりと商品コンセプトを守り抜いた昭和ノスタルジー溢れるその品質に、既にハートをガッチリと掴まれていましたから、もちろんこの「復刻版ジャンボマシンダー ライディーン」にも全幅の信頼を寄せており、無事予約できたことにほっと胸を撫で下ろしました。
ところが…。
その興奮が落ち着いてきたところで、僕はハテ…?と考え込みました。改めて目をやった商品写真から発せられる、正体不明の違和感。関節が固まったかのように直立不動の、昭和のぬくもりあるスタイルは、間違いなく「ジャンボマシンダー」そのもので、かつての懐かしい姿がそっくりそのまま再現されている…はずなのに、どうも胃の腑に落ちてこないものがあるのです。
暫く商品写真を見つめていた僕は、あっ!と気が付きました。先に発売された「復刻版ジャンボマシンダー マジンガーZ」 も「グレートマジンガー」も、そして何よりもオリジナルの「ジャンボマシンダー」たちがそうであったように、昭和の空気が生み出した、「ジャンボマシンダー」の魂とも言えるあの“青い成形色”が、ない…ないのです。オリジナル版「ジャンボマシンダー ライディーン」では確かに青い成形色で作られていたはずの上腕部が、復刻版では、まるで魂が抜け落ちたかのように、無味無臭の「白色」に変わり果てていたのです…!
それは、敢えて“設定”の観点に立って言うならば、確かに“正しい”色であり、劇中のライディーンの上腕の色は、誰が何と言おうと「白」が正解です。…が、「ジャンボマシンダー」の歴史の文脈から、そして企画担当者自ら“フォルムや素材などは極力1973年当時のままで復刻する”と謳い、事実、シリーズ第一弾、第二弾の商品でそれを見事にやってのけたこの商品のコンセプトに照らして言えば、それは議論の余地なく“異なるもの”であり、「ジャンボマシンダー」のアイデンティティの否定にほかならない“改悪”でした。
最初は我が目を疑い、「これはきっと開発中のテストショットで、製品版ではちゃんと青い成形色に戻るに違いない」と、祈るような気持ちで続報を待ちました。…が、残念ながら今日に至るまで、メーカーサイトの写真が差し替えられることはなく、また、ほどなく公開された、企画担当者自らによる恒例の商品解説動画を視聴すると、「元来シール処理だった部分を高品質な塗装に置き換えました」等、通り一遍の解説はあるものの、上腕部の“改悪”については不自然なほど全く触れられずに終り、僕は「嗚呼、これはもう変わりようのない現実なんだ」と、今はそう受け入れざるを得ない諦めの深淵に沈んでいます。
この信じられない変更がなぜ行われてしまったのか、それは知る由もありません。製造上のっぴきならない事情があったのかも知れませんし、権利元からの何らかの監修があったのかも知れませんし、企画担当者の心変わりがあったのかも知れませんし…ただ、いずれにしましても、この「復刻版ジャンボマシンダー ライディーン」の直後に発表された、「復刻版ジャンボマシンダー」第五弾の「グレンダイザー」は、腕部にも大腿部にも“正しく”青い成形色が使われていたので、やはり“改悪”は第四弾の「ライディーン」に限った施策だったということ、そして、僕が予約をしたお店の規定により、その予約をキャンセルすることが出来ないということも分かったため、その仕様で「復刻版ジャンボマシンダー ライディーン」が来年の3月には僕の家にやって来るという事実は、どう足掻いても変わることはありません。
…と言うわけで、それをいつまでも嘆いていても仕方がないので、今は気持ちを切り替えて、「果てしなく面倒くさいけど捨てるわけにもいかないので、自分で塗装をしてオリジナルの“正しい青”を取り戻そう」という決意とメーカーサイドへの静かな怒りに燃えているところです。
ただ、塗装と言ってもプラモデルとはワケが違い、メーカーサイトの表記によると素材がどうやらポリエチレンのようなので、塗装の前にヤスリ掛けして表面処理をしなくてはいけなかったり、塗装が乗りやすいようにプライマーも塗らなければいけなかったり、専用の塗料も用意しなくてはいけなかったり、更に、オリジナル版「ジャンボマシンダー ライディーン」の写真を調べてみると、上腕部が青色成形なだけでなく、そこに銀のホイルシールが巻かれるという、これまた絶妙に昭和テイスト漂う愛すべき装飾が施されていたことが分かったので、もちろんそれも再現しなくてはならなかったり、そもそもこれらの作業を行うには分解出来るということが前提条件になるので、もしも構造上それが出来ないとなるとマスキングをする手間まで増えたり…と、想像するだけで怒りのバロメーターがレッドゾーンにまで達するのを懸命に堪えながら、3月の「復刻版ジャンボマシンダー ライディーン」の到来に戦々恐々としているところです。
…というように、今年一年の主だった趣味活について簡単にご紹介したところで、今回のお話はもうほぼ終わりなのですが、筆を置く前に、冒頭に挙げた「アーケードアーカイブス リッジレーサー」と「グラディウス オリジン コレクション」について、少しだけ触れておきましょう。
まず「アーケードアーカイブス リッジレーサー」ですが、「アーケードアーカイブス」と言えば、わざわざ僕のような業界の鼻つまみ者がしたり顔でご紹介するまでもなく、ハムちゃん(株式会社ハムスター、業界ではこう書く)による歴史的アーケードゲームのアーカイブ(記録保存、未来への伝達)化プロジェクト、及びそのブランドのことであり、巷ではよく“レトロゲーム”などという呼び方も耳にしますが、そもそも“レトロ” というのは復古 “調” を意味する、例えば「ロックマン9」のような “前時代的味わいを復古したもの” を指す言葉であり、僕個人としては、真に “歴史的に古いゲーム” は紛れも無いオリジナルであって、復古したもの(=レトロ)などでは断じて無いというスタンスを取り、ゲーム文化を正しく伝えていくべき側にいる者として、歴史的作品たちへの尊崇の念も込めて「オールドゲーム」、その中でもとりわけ名作とされるものは「クラシックゲーム」と呼ぶなどして慈しんでいるということを前置きした上で、改めてハムちゃんのそうしたオールドゲーム/クラシックゲーム復刻への取り組みについて、惜しみない賞賛を送りたい所存です。
この2025年もハムちゃんは素晴らしいオールドゲームたちを続々と復刻し、「クラッシュローラー」、「コロスケローラー」、「ミサイルコマンド」、「マーブルマッドネス」、「ガルディア」、「ビーストバスターズ」、「ザ・グレイト・ラグタイムショー」、「シスコヒート」、「ピンボ」、「フィールドコンバット」、「ニューヨークニューヨーク」、「リバーパトロール」、「ガルディア」、「シェリフ」、「スペースフィーバー」、「スペースファイアバード」、「ポパイ」、「B-WINGS」、「マッドエイリアン」、「ファイティングファンタジー」、「ガルディア」、「ミスタージャン」、「スパルタンX」、「ロットロット」、「R-TYPE」、「バスター」、「RF-2」、「新入社員とおる君」、「急降下爆撃隊」、「ブラックパンサー」、「WECル・マン24」、「チェッカーフラッグ」、「ガルディア」、「銀河任侠伝」、「恋のホットロック」、「プランプポップ」、「スカイデストロイヤー」、「オペレーションウルフ」、「スラップファイト」、「ワイバーンF-0」、「ガルディア」、「ビューポイント」、「TX-1」、「ロックオン」、「ザインドスリーナ」、「バトルバード」、「平安京エイリアン」、「麻雀狂時代」、「リアル麻雀 牌牌」、「麻雀CLUB90's」、「華の舞」、「ガルディア」、そしていつになったら我々ユーザーの期待に応えて参入してくれるのか、セガの「モナコGP」、「ターボ」、「スタージャッカー」、「ZOOM909」、「ピットフォールII」、「忍者プリンセス」、「テディーボーイ・ブルース」、「フォートレス」、「ギガス」、「ピタゴラスの謎」、「ファンタジーゾーン」、「ハングオン」、「スペースハリアー」、「アフターバーナーII」、「パワードリフト」、「サンダーブレード」、「ギャラクシーフォースII」、「エンデューロレーサー」、「SDI」、「ブロックギャル」など、まだまだ多くの歴史的名作たちが後ろに控えてはいるものの、毎週一本という驚異的なペースで多くのタイトルを世に送り出して、我々のゲームライフを支えてくれました。
その2025年のラインナップの中から、今回僕が「リッジレーサー」を取り上げたのは、僕自身、オールドゲーム/クラシックゲームの愛好家として、「アーケードアーカイブス」のタイトルは全て購入し、ニンテンドースイッチのグループ機能を駆使して、各タイトルを年代やメーカー、ジャンルなど様々な項目ごとに分類して、それを眺めて悦に入ったり、あるいは、最近は少々落ち着きましたが、80年代作品を中心に、思い出の作品の中でも特に愛着のあるゲームの基板を収集したりしている中で、「ついに3Dポリゴンの作品が、このブランドにラインナップされるようになったのか」…と、深く感慨に浸るきっかけになったからです。
「オールドゲーム/クラシックゲーム」と聞くと、1970年生まれの僕の感覚では、80年代中期こそが最も熱気を帯びた黄金期で、1985年、中学2年の終わりごろに生まれて初めてゲームセンターといういかがわしい場所に足を踏み入れ、「ロードファイター」にゲーセンプレイ初体験を捧げたあの頃を中心に、受験勉強をしているフリをして部屋にこもっていた日々も、大雪が降った合格発表の日も、高校浪人して予備校に通った日々も、僕の傍らには必ずビデオゲームの存在があり、その思い出は“ドット”で描かれたキャラクターたちのグラフィックと共に脳裏に蘇ってきます。
一方で、外ではゲーセン、家ではファミコン、PCエンジン、メガドライブ、PC-8801MAと、ビデオゲームと共に人生を歩んで、その進化の道程を、偏った観測範囲ではあるものの、しっかりこの目に焼き付けてきた中で、「ポリゴン」の登場は、僕にとってあまりにも衝撃的で、それ故に「英語学をテーマにして日本語で書くか、あるいは自由なテーマを選んで全文英語で書くか」という条件が課された大学の卒業論文を、思わず「ビデオゲームの進化の歴史とポリゴン」というテーマで取り掛かってしまったのも無理はなく、ポリゴンという新技術を使ったゲームの台頭が、どれほどユーザーと市場に影響を与えつつあるかを、語彙力の極端に乏しい英語を駆使して、湧き上がる激情に任せて原稿用紙に書きなぐり、どうにか単位を認定されて無事卒業できることになると、卒業式の式場でゼミの教授を捕まえて、お別れのご挨拶もそこそこに「僕の論文どうでしたか?」と鼻息荒く尋ねたところ、アルカイックスマイルを浮かべた教授から「うん、まあね」というありがたいお言葉を賜った、そのような存在であるわけです。
ポリゴンゲームとの出会いがどうだったか、僕の頼りない記憶を辿ってみると、その異様な存在感に気付いたのは、松本駅前のナムコ直営ゲームセンター「キャロット」に置かれていた、「ハードドライビン」や「コインいっこいれる」辺りがぼんやりと思い出されるので、ギリギリ高校生の頃だったのだろうと思います。当時は既に「スペースハリアー」や「アフターバーナー」、「アウトラン」など、主にセガの“体感ゲーム”と称される一連の作品を中心に、3D表現のゲーム自体は存在しましたが、どれも従来通りのドット・グラフィックによる疑似3D作品に留まり、本格的に3D座標を取り入れたゲームは、恐らく辛うじて「パワードリフト」が挙げられる程度で、まだ日本国内ではポリゴンのゲーム開発に取り組むメーカーは僕の観測範囲には現れていなかったと記憶しています。
例えばレースゲーム市場を見ても、“コース分岐”や“起伏”という表現を取り入れた「アウトラン」にしても、「直角コーナーを曲がる」という表現を取り入れた「シスコヒート」にしても、それらは全て“ラスタースクロール”という旧来の技術によって“立体的に見える”効果を演出しているだけで、実際にゲームの中に3D空間が存在しているわけではなく、いずれの作品にも“どう頑張っても逆走することは出来ない”という冷たい現実が立ちはだかっていました。
それ故、実際に3Dデータを持ち、ポリゴンによってコースや車などが描画されている「ハードドライビン」の、コースアウトだろうと逆走だろうと宙返りであろうと思うがままという果てしない自由度は、それだけで「本格的な3D表現が持つ無限の可能性」を、当時の僕に強烈に印象付けました。
1990年になり、僕が大学に進学する頃になると、早くから3Dの技術研究に取り組んでいたナムコから、「ウイニングラン」や「ドライバーズアイ」など、国産ポリゴン作品が続々とリリースされ始め、当時長期休暇に入ると信州松本に帰省して、ナムコ直営のゲームセンター「プリッツ/プラボ」でアルバイトをしていた僕は、それらが次々と入荷するのを眺めながら、「これからのゲームシーンは、あっという間にポリゴンゲームで染め上げられていくに違いない」と、迫りくる濁流のような勢いを肌で感じつつ、「スターブレード」が入荷した日には、閉店時間の後に、アルバイト仲間みんなでサービススイッチで無限にクレジットを入れながら、広大な宇宙空間でのスペース・シューティングを思う存分楽しんだ…という思い出話を桜井政博さんにしたところ、HAL研究所時代に山梨県に住んでいた桜井さん自身から、「スターブレード入荷の噂を聞きつけて、信州松本の「プリッツ/プラボ」まで遠征に行きましたよ」という返事を頂き、ではあの頃僕と桜井さんの座標が期せずして急接近していたということですか!?と胸がときめいたり、同じく90年台初頭に、ロケテスト的に入荷した、イギリス生まれの戦闘機ドッグファイトゲーム、その名も「Virtuality」で、「VRヘッドセット」というものを初めて装着して筐体に座り、ヘッドモーショントラッキングセンサーにより、「3Dの仮想空間で、コックピットから360度周囲を見回して、飛来する敵戦闘機を探す」というプレイ体験をして、「アフターバーナー」とは全く種類の違う、異次元の表現力に圧倒されたりするなど、すなわち、僕にとって“ポリゴンゲーム”というものは、「オールドゲーム/クラシックゲーム」の範疇などでは全くなく、新時代、新概念の到来を高らかに告げ知らせてくれた、ゲームシーンのパラダイム・シフターだったわけです。
「リッジレーサー」も、僕にとってはそうした新時代の旗手とも言える作品で、その出会いはと言うと、時は1993年、僕が就職活動を経て、中学の文集の「将来の夢」の欄に「ナムコに入ってゲームを作る」と書くほど憧れた、正にそのナムコから待望の内定を勝ち取ったその年に、内定者に対してナムコが配布してくれた、「AOUアミューズメントエキスポ(通称AOUショー)」のチケットを握りしめ、その時点では既にナムコの内定をお断りしてカプコンの内定を受諾していたにもかかわらず、颯爽と幕張メッセへと向かって、入場してすぐ目の前にあったナムコブースに立ち寄った時のことでした。
当時、「ウイニングラン」や「ドライバーズアイ」など、既にナムコがポリゴンゲームの研究開発に力を入れていたのは前述の通りですが、そこで僕の目に飛び込んできたその全く新しいレースゲームは、それまでのフラットシェーディングによる“ただの板”のポリゴンゲームとは次元が違う、テクスチャーマッピングによってアスファルトや峠の岩肌などの質感を備えた写実的なビジュアルと、秒間60フレーム描画の息をのむスピード感で見る者を圧倒し、黒山の人だかりを作っていました。
これはもう、ビデオゲームが新しいステージに突入したのは間違いない、と確信し、しかしそれをただ茫然と眺めるしかなかった僕は、まだゲーム業界に何の貢献も出来ない自分の無力さに苛立ちを覚えつつも、重い足取りで次のブースへ向かって歩き始めると…そこに見えてきたのが、巨大なスクリーンに映し出された、3D対戦格闘ゲーム「バーチャファイター」でした。
当時ナムコと並び、セガも同じくポリゴンを使った3Dゲームの研究開発に取り組んでいて、既に「バーチャレーシング」を市場に投入して同社の技術力を高さをアピールしていましたが、ポリゴンで描かれたキャラクターが、まるで中に人が入っているかのように動いて戦っているさまは、本物の格闘技を見ているような生々しさがあり、技を喰らってキャラクターが吹っ飛ぶ様子も、見ている自分がその痛みを錯覚するほどのリアリティがありました。
ショー会場で立て続けに味わった新時代3Dゲームの波に、僕はただただ圧倒されると同時に、「あれ…?俺ナムコの内定辞退したの判断ミスった…?」という不安が心の中に広がり、「いや、我がカプコンだってあんなものに負けないゲームで来場者の度肝を抜いているはずだ!」と足早にブースへ向かってみると、そこにあったのは、旧来通りの対面筐体が数十台ほど漫然と並び、4人の新キャラクターを追加してタイトルに「スーパー」の文字を付け足しただけの、もう嫌というほど見たストリートファイターIIがすまし顔で稼働しているのを誰もプレイしていないという凍えるような光景で、僕は風邪を引きそうになるほどにひたすら打ちのめされ、暗澹たる気持ちでトボトボと会場を出ると、外では僕の心中を表すかのように記録的な台風が吹き荒れていて、既にほとんどの電車が運行停止している中、ズブ濡れになりながら数時間かけて自宅のある八王子への帰還を果たしたという話は、既に主旨から大幅に脱線しているわけです。
ともあれ、以上が僕の中でのポリゴン作品に対するイメージであり、それが「オールドゲーム/クラシックゲーム」という位置づけで「アーケードアーカイブス」にラインナップされる時代になったことには、隔世の感を禁じ得ず、いつの日か、僕が手掛けた「デビルメイクライ」や「ビューティフルジョー」や「大神」や「ベヨネッタ」や「ザ・ワンダフル101」も、そうした過去の歴史の一ページとして「アーケードアーカイブス」の仲間入りするのだろうか…?と、しみじみと思いを馳せたのでした。
さて、宴もたけなわではありますが、最後にもう一本の「グラディウス オリジン コレクション」の方に話を移しましょう。…と言っても、今更「グラディウス」という、ゲーム史に燦然と輝く名作シューティングゲームについて、僕みたいな業界のつま弾き者が語れることなど何一つありませんし、この作品に収録されて大きな話題を呼んだ「AMショー版グラディウスIII」も、グラディウスシリーズの歴史だけでなくゲーム史を語り継ぐ上でも大変に貴重なものではあるものの、こうしたものを復刻する類稀なる技術と情熱と執念を持ったM2と蜜月の関係にあるセガの復刻作品シリーズにおいて、幻として語り継がれる1985年AMショー出展版「スペースハリアー 戦闘機バージョン」が、今この瞬間においてもまだ発掘されていないというのは、逆説的に、そのようなデータはもう既にこの世には存在していない、という悲しい事実の証明に他ならないので、湿っぽい話題は一旦脇に置いておきまして、今回はこの作品をはじめ、近年のオールドゲーム復刻作品にも実装例が多くある「プレイヤーアシスト機能」について、少しだけ触れたいと思います。
「プレイヤーアシスト機能」と一口に言っても、皆さんが思い浮かべるものは色々あるかと思いますが、ここで取り上げたいのは、ユーザビリティ向上のために様々な施策が打たれている近代ゲームの例とは違って、まだ“一部のゲーマーの嗜好品”だった時代のオールドゲームに対して、「幅広いユーザーたちがもっとカジュアルに楽しめるように」と新たに付け加えられた機能、とりわけ「ステートセーブ(どこでもセーブ)機能」や「巻き戻し機能」についてです。
皆さんの中にも、これらの機能を使ってオールドゲームを楽しんだことがある人は多いのではないでしょうか。「Nintendo Switch Online」のサービスで、「ファミコン」や「スーパーファミコン」、「メガドライブ」などの旧世代ハードのタイトルを遊ぶことが出来ますが、それらにもそうしたアシスト機能が搭載されていて、子供の頃には手強かったあんなゲームやこんなゲームも、ボスの前でセーブしておいて何度でもやり直したり、たとえミスしてしまっても時間を巻き戻して失敗を無かったことにしたりと、気楽に楽しめるようになっています。
僕がビデオゲームというものに興じ始めた70年代の頃は、今のように家庭で遊べるゲーム機というものはまだほとんどなく、主にデパートや旅館などの「ゲームコーナー」に置かれたゲーム機で、1プレイ100円を投入して遊ぶというのが主流でした。
この「1プレイ100円」というのが肝で、当然プレイヤー側は敵をどんどん倒して先のステージへ進もうと頑張りますが、“ゲーム側”は商売ですから、プレイヤーたちを程よく楽しませつつも、100円分遊んでいただいたら、良きところでお帰りいただく、というおもてなしに徹し、そんな両者の思惑が交錯して、ゲームの難易度は策定されていったように思います。
そうしたことが影響したのか否かは分かりませんが、その後家庭で遊べるゲーム機が少しずつ現れ始めてからも、依然としてビデオゲームというものは“歯ごたえのあるもの”であり続け、僕を含めプレイヤーたちはそれを“挑戦”だと肯定的に捉えて、青春の全てを捧げてゲーム攻略に全身全霊を傾け、「ゲームをオールクリアする」「ハイスコアを叩き出してその名を刻む」ということが、ゲームキッズにとって眩い輝きを放つ金の勲章になっていったわけです。
反面、そんなゲームの難易度に心をへし折られて、クリアを断念することも日常茶飯事で、まぁこれは近代においてもゲームを最後まで遊ぶプレイヤーはごく少数だというデータがあるようですが、当時は「飽きたからやめる」というぬるい理由とはワケが違い、どれだけ頑張っても強大なボスに頑として行く手を阻まれ、その上ミスをしたら、その場からのリトライなど許されず遥か彼方のスタート地点まで戻され、挙句プレイヤーの残数がゼロになったら、「ゲームオーバー」の短い表示もそこそこにタイトル画面に戻されてハイ終了、という容赦ない仕打ちを受けて、暫し放心状態に陥るも者もいれば、コントローラーを激しく叩きつける者もいたりと、様々なドラマが世界各地で繰り広げられました。
…と言いつつ、僕自身も、近代になって作った「ビューティフルジョー」において、そのようなスパルタ仕様を意図的に実装して、多くのプレイヤーの心をバギ折ってきた張本人なので、深く反省するということを是非前向きに検討したいと思い続けながら、今日に至っている始末です。
余談ですが、そんな僕が高校時代に、なけなしの小遣いをはたいて買ったセガ・マークIII版「忍SHINOBI」を、全夏休みを費やしてひたすら攻略し続け、何としてもエンディングを拝もうと血のにじむ努力を重ねた末にようやく最終ボスを倒すと、真っ黒な画面に「GAME OVER」とだけ表示されてタイトル画面に戻されあの日、一体何が起こったのかを未だに咀嚼できていない、という話は、今回の主旨とはあまり関係ありません。
そうしたことから、思い出に残る好きなゲームであっても、「あのゲームのボスが倒せなかった」、「先のステージを遊べなかった」、「エンディングが見られなかった」という悔いが残っていて、その雪辱をいつの日か晴らしたいと思っている人もきっと多いことでしょう。
また、それなりに腕に覚えがある僕であっても、そうしたオールドゲームをさぁ遊ぼうという時に、高難度ゆえに心の中で“よっこいしょ”と重い腰を上げなくてはならないということは、隠しようのない事実です。そのため遊ぶのが億劫になったり、正直に言うと、「ああやって、こうやって、あそこでミスったら終わりか…」と、想像の中で早くもストレスを感じて、遊ぶのを見送ったりすることすらあるというのが実態です。
歯ごたえがあるからこそ、そこに挑戦するモチベーションが生まれ、乗り越えた時の喜びもまた格別だ、という思いを、今も否定する気持ちはありません。僕がゲームキッズだった当時は、確かにそうやってゲームを楽しんでいたのです。
しかし、そうした過去の価値観が、ゲームを後世に伝えていこうという“今”の重荷になってはいけない、とも思います。今さら「壁を乗り越えることこそがやり甲斐なんだ!」と幾ら声高に言ってみたところで、その過度のストレスによって、せっかくの名作が敬遠されてしまうのでは本末転倒です。
だからこそのアシスト機能だ、と僕は思います。「どこでもセーブ」があれば、難しい局面を何度もやり直せるのはもちろん、お気に入りのシーンを繰り返し楽しめるよう取っておくこともできます。「巻き戻し機能」があれば、ミスを瞬時に“なかったこと”にして、「いつでも巻き戻せるから」と、普段はやらないような大胆なプレイを試してみることもできます。そして、そんな風に気楽に遊べたら、自然と遊ぶ時間も増えるかも知れません。
実際、毎日ソファに寝転んで「テトリス99」を遊んでいた僕も、ここ最近はずっとこの「グラディウス オリジン コレクション」で初代「グラディウス」を遊んで、いつまでたっても回避パターンを記憶できないためにいつもアドリブで挑んで撃沈していた“2周目のザブ”を、「どこでもセーブ」で保存して何度も練習したり、ミスするたびに「巻き戻し機能」で“なかったこと”にしてノンストレスで楽しむばかりか、前人未到の36周目プレイに突入して、「36周目ともなると出現するザブの速度がこんなふうに極端に遅くなるのか」という新事実を発見したりと、これまで味わったこともなかった“未知のグラディウス”を体験して、更に愛を深めたりさえしています。
アシスト機能が、これからももっと普及して、「古いゲームって難しいよね」と敬遠しているユーザーたちにもオールドゲームが届くきっかけになり、昔を知らない若い世代のユーザーたちの間に、ゲームの歴史に触れる機会が広がっていく、そんな、時空を繋ぐ懸け橋になったらいいなあと、今は心から願っています。
ただ一つだけ、ゲームジジイからの願いがあるとすれば、古き良き時代の価値観、すなわち、「困難に挑戦するやり甲斐」や、その先に輝く「金の勲章」も、今の価値観と同じように大切にして欲しいということです。
これは苦言になってしまいますが、かつて、カプコンのアーケード版のベルトスクロールアクション作品を集めた、その名も「カプコン ベルトアクション コレクション」に収録されていた「ファイナルファイト」が、「FREE PLAY」、つまり、「お金を入れなくても何回でも遊べるよ」という設定で固定されてしまっていたことがありました。
アーケードで稼働していたこの「ファイナルファイト」には、全ての残機を失ってゲームオーバーになった際、追加で更に100円を投入する(=1クレジット入れる)ことで再び残機が与えられて、そこからゲームを継続(コンティニュー)出来るという仕様が実装されていました。これはすなわち、「お金さえ投入したら何度でもゲームを続けて遊べるよ」という仕様なのですが、言うまでもなくプレイヤーにとってお金は貴重ですし、何よりプライドもありますから、基本的には最初に投入した100円(=1クレジット)でゲーム攻略に挑戦するというのが、ゲームセンターでの当たり前の楽しみ方でした。
ところが、これが「FREE PLAY」設定になっているということは、たとえゲームオーバーになっても、スタートボタンさえ押せば幾らでもコンティニュー出来てしまうということを意味します。しかも「ファイナルファイト」のコンティニューは、ゲームオーバーになったその場所からの再開ですから、どれだけミスしようと、残機がどうだろうと関係なく、スタートボタンを押すだけで無限にゲームを継続出来てしまうのです。
1プレイごとにお金を払うゲームセンターと違い、最初にフルプライスを払ってゲームソフト自体を購入する家庭用ゲームの場合、「100円を投入する(=1クレジット)」という概念がないのは分かります。しかし、そのゲームが作られた時代の文脈を考えた場合、本来の「限られたお金(=クレジット)で頑張る」という遊び方は、尊重されて然るべきだと僕は思います。
例えば「ファイナルファイト」のスーパーファミコン移植版では、ゲームをスタートすると「3クレジット入った状態」で始まる仕様になっていました。すなわち「コンティニューは3回までOKですよ」というわけです。これは程よいプレッシャーになっていて、プレイヤーはできるだけミスをしないように頑張り、3回分のコンティニューを大切に使って、攻略を楽しむことができました。
そのプレッシャーがなくなってしまったら、どうなるでしょうか。少なくとも僕は、「カプコン ベルトアクション コレクション」の「ファイナルファイト」では、ゲーム攻略に対する“張り合い”を失い、プレイを心底楽しむことが出来ませんでした。せめて自分で「FREE PLAY」設定をOFFに出来ないか方法を探してみたのですが、残念ながらその機能もありませんでした。
ついでに苦言を申し上げると、「100円を投入する(=クレジットを入れる)」という行為は、単に「ゲームプレイに対して代金を支払う」ということだけでなく、当時のゲーセン入り浸り系ゲームキッズたちにとっては、身銭を切ると同時に、それによって“やる気スイッチ”をONにするという“神聖な儀式”でもありました。メーカー各社、その100円投入に対して、それぞれのゲームにユニークな「効果音」を実装していて、その音がまるで戦闘開始のファンファーレのようにも聞こえ、これから攻略に臨む我々を鼓舞してくれました。そうしたゲーム体験を知る者からすれば、「100円を投入する(=クレジットを入れる)」という機能を省くなんてことは、到底考えられないことなのです。
ゲームをカジュアルに楽しみたい人。ゲームに張り合いを感じたい人。どちらも楽しませることは、僕は可能だと思っています。例えば、僕が過去に手掛けた縦スクロールシューティング「ソルクレスタ」では、ショットのオート連射機能を実装していましたが、スコアランキング上で、「オート連射機能ONの人」と「OFFの人」が一目で判別できるようしていました。「見ろ、俺は頑張って手動で連射したんだぞ!」とアピールしたい人には、それが叶うようになっているのです。これはハムちゃんの「アーケードアーカイブス」の「キャラバンモード」でもそのようになっていますね。
ちなみに僕自身も、普段オート連射機能は使いません。それだけ聞くと「神谷はアシスト機能自体に否定的だ」と誤解されるかも知れませんが、あくまでもそれは、フラっとゲームセンターに立ち寄った時に、いつでも磨き抜かれた手動連射能力を発揮できるように、という心構えに基づくものであり、僕の極めて個人的な自己満足に過ぎず、他者の考えを否定するものではありません。…とドヤ顔をしつつ、「グラディウス オリジン コレクション」では、オート連射機能ONでカジュアルゴロゴロプレイに浸っていたりしますが…。
またその「グラディウス オリジン コレクション」では、「どこでもセーブ機能」や「巻き戻し機能」を使用すると、そのプレイのスコアはオンラインランキングに登録出来ないようになっています。カジュアルに遊びたい人は自由にアシスト機能の使用をどうぞ、ガチでスコアアタックしたい人は、アシスト機能を自分で封印してね、というわけで、いい塩梅で住み分けが出来ていると思います。
プレイステーションやXBOXシリーズには「トロフィー/実績」の機能がありますから、たとえば「アシスト機能を使わずにクリアした」というようなトロフィー/実績があってもいいかも知れませんね。…まぁ僕は、ゲームデザイナーとして、ハードの機能である「トロフィー/実績」に依存するモノ作りは好きではないので、自分がアシスト機能付きのゲームを作る際は、きちんとゲームの中で何らかのご褒美をユーザーに提供できるようなアイデアを考えると思いますが。「カプコン ベルトアクション コレクション」の「ファイナルファイト」だって、「自分で「FREE PLAY」設定をOFFにして、その状態でクリアしたらゲーム内で何かご褒美がもらえますよ」…という工夫があるだけで、少なくとも僕は、張り合いを感じられたんじゃないかなと思います。要するに、プレイヤーにそうした「選択」を与えることが肝要だと思うのです。
そう言えば、ファミコンの「ナッツ&ミルク」では、全部で50あるステージを攻略するのは中々歯ごたえがあって、僕も当時は全ステージクリアをすることは出来なかったのですが、「ゲーム中にセレクトボタンを押すと、今いるステージをスキップして次のステージに進める」という機能があり、そのお陰で全てのステージを遊んでみることが出来ました。このステージスキップ機能は、プレイヤーがミスした瞬間でも入力を受け付けてくれるので、あっミスった!という時にすかさずスキップして、残機を減らすことなく先に進むこともできました。
そして、「このスキップ機能を使わずに全50ステージをクリアすると“特別なご褒美画面”が表示される」という、ユーザーのチャレンジ心をくすぐる隠しフィーチャーもちゃんと用意されていたので、いつかは自力でその画面を見てやろうと、ゲームに対する“張り合い”も持ち続けることができました。(ちなみに大人になってから「Wii」や「ニンテンドー3DS」の「バーチャルコンソール」で配信された移植版で再挑戦し、無事その“特別なご褒美画面”を拝むことができました)。
これからも、ユーザーたちの想いを尊重する、メーカーサイド諸氏の創意工夫を、いちユーザーとして期待して、見守っていきたいと思います。
では最後に、いちユーザーとして「アーケードアーカイブス」同様に期待を寄せている「EGGコンソール」に関しましても、何かと巷を騒がせたニュースもあったようですが、オールドゲーム復刻への切望は変わりませんので、まだ歴史の遥か奥の方に眠ったままのオールドホビーパソコンのゲームたち、すなわち「サンダーフォース」、「ヴォルガード」、「野球狂」、「サラダの国のトマト姫」、「ジェルダ」、「ジェルダII」、「ヒロトンウォーズ」、「ザ・ブラックオニキス」、「ウィザードリィ」、「ナッツ&ミルク」、「デーモンクリスタル」、「ザ・コックピット」、「ドラゴンスレイヤー」、「Emmy2」、「ファンタジアン」、「プラズマライン」、「EGGY」、「ドアドアmk2」、「TOKYOナンパストリート」、「ザ・キャッスル」、「アメリカントラック」、「ホットドッグ」、「サイキックソルジャー」、「サイキックウォー」、「ルナーボール」、「超次元戦士エプシロン3」、「ボンジャック」、「チャンピオンプロレス スペシャル」、「ぺんぎんくんWARS」、「走れスカイライン」、「ロードランナー」、「SeeNa」、「フォーメーションZ」、「スーパーランボー」、「クルーズチェイサー ブラスティー」、「忍者くん 魔城の冒険」、「ロボレス2001」、「アルファ」、「グラディウス」、「グーニーズ」、「アルカノイド」、「影の伝説」、「フロントライン」、「スーパーマリオブラザーズスペシャル」、「エキサイトバイク」、「バルーンファイト」、「アイスクライマー」、「ゴルフ」、「スパイ VS スパイ」、「ウィバーン」、「カサブランカに愛を」、「ロマンシア」、「まじゃべんちゃー・ねぎ麻雀」、「うっでいぽこ」、「ロットロット」、「ディーヴァ」、「スーパーピットフォール」、「夢幻戦士ヴァリス」、「ハングオン」、「パチコン」、「1942」、「魔界村」、「戦場の狼」、「ヴァクソル」、「ジーザス」、「上海」、「ガンダーラ」、「ロウ・オブ・ザ・ウエスト」、「ガイアの紋章」、「雀ボール」、「キングスナイト スペシャル」、「くりぃむレモン スタートラップ」、「デジタル・デビル物語 女神転生」、「リバイバー」、「コムサイト」、「ルクソール」、「ヨコスカウォーズ」、「テスタメント」、「アイドロン」、「スーパー大戦略」、「リトル・コンピュータ・ピープル」、「ゼリアード」、「F-15 ストライクイーグル」、「DOME」、「スカイフォックス」、「レプリカート」、「スタークルーザーII」、「ARCUS」、「ラストハルマゲドン」、「アンジェラス」、「エグザイル」、「アクロジェット」、「マスターオブモンスターズ」、「サイオブレード」、「テトリス」、「コラムス」、「スナッチャー」、「ヴェイグス」、「サバッシュ」、「ウルティマ1」、「ディガンの魔石」、「デリンジャー」、「死霊戦線2」、「ファイヤーホーク」、「プラジェーター」、「エメラルドドラゴン」、「ミスティ・ブルー」、「ガンシップ」、「ティル・ナ・ノーグ 禁断の塔」、「クラックス」、「ファイナル・クライシス」、「神羅万象」、「デス・ブリンガー」、「R-TYPE」、「天使たちの午後」、「聖女伝説」、「聖女ぱにっく」、「エリカ」、「177」、「クリスチーヌ」、「口説き方教えます」、「その後の慶子ちゃん」、「フェアリーズレジデンス」、「美しき獲物たち」、「悪女伝説II セーラー服ラプソディ」、「今夜も朝までPOWERFULまぁじゃん」、「麻雀狂時代SPECIAL」、「カインドゥギャルズ 〜口説き方教えます2〜」、「セーラー服美少女図鑑」、「美少女写真館」、「スターシップランデブー」、「カオスエンジェルズ」、「Genji」、「不思議の壁」、「スカポン探険隊」、「リップスティックアドベンチャー」、「ポッキー」、「きゃんきゃんバニー」、更には「X1シリーズ」、「FMシリーズ」、「MZシリーズ」、「PC-6001シリーズ」、「PC-98シリーズ」、「X68000シリーズ」、「FMTOWNSシリーズ」へとプラットフォームを広げていって、ワイヤーフレーム表現の名作「スターウォーズ(X68000版/PC-98版)」はもちろん、某ファミ通誌のレビューで「魔界村に置き換えたのがしっくりきていない、意味がない」との高評価を受けた、某元無職クリエイターが業界に就職して初めて関わったプロジェクト「謎魔界村」のオリジナル作品に当たる「インクレディブルトゥーンズ」の更に前作となる「インクレディブル・マシーン(FM TOWNS版)」の移植実現を首を長くして待っていますし、きっと来年の今頃には、特にアーケードゲーム移植作、例えば「スペースハリアー」のPC-88版とX1版とFM77AV版とPC-6001版とX68000版を遊び比べたり、「ゼビウス」や「マッピー」や「パックマン」や「パックランド」や「ディグダグ」や「ドラゴンバスター」や「グロブダー」や「ギャラクシアン」や「ギャラガ」や「ギャプラス」や「ボスコニアン」といったナムコアーケードタイトルを、「アーケードアーカイブス」版と遊び比べたりして悦に入っているのだろうなぁ…と妄想を膨らませながら、この辺で勘弁したいと思います。
<質問2>2025年に発売/公開された映画や小説、コミック等のエンターテイメントコンテンツの中で最も印象深かった作品
『ミュージカル・ロマン『悪魔城ドラキュラ』〜月下の覚醒〜』
『東野美紀ピアノコンサート NEVER ENDING MELODIES』
曲がりなりにもゲームクリエイターとして糊口をしのいでいる者でありながら、毎年ここで自分の独りよがりな趣味の話ばかりしていることを少なからず心苦しく感じており、今回こそはもう少しゲームにちなんだエンターテイメント作品に触れなければ…と思っていたところに、この宝塚版「悪魔城ドラキュラ」は、正にうってつけの話題ではないでしょうか。
1987年に、ゴシックホラーを題材とした横スクロールアクションとして、ファミコン・ディスクシステムでリリースされたところからその歴史が始まり、今や「メトロイドヴァニア」などという独自のジャンルまで確立して、多くのユーザーに支えられながら誰もが知る巨大IPにまで成長した、コナミを代表する大人気シリーズ「悪魔城ドラキュラ」が、あの宝塚歌劇団とのコラボレーションでミュージカル化されるとなれば、ファミコン版「悪魔城ドラキュラ」とスーパーファミコン版「悪魔城ドラキュラ」でノーミスクリアを達成したシリーズ初期作原理主義者の僕としては、これはもう観劇しないという選択肢は考えられませんし、しかも脚本・演出があの宝塚歌劇版「逆転裁判」を手掛けた鈴木圭氏とくれば、その期待は俄然高まるというものです。
その内容について、ここで詳しく解説するような野暮なことはしませんが、シリーズの顔とも言える名曲「Vampire Killer」や「Bloody Tears」が宝塚の舞台で演奏されるのを聴ける日が来るとは夢にも思いませんでしたし、永久輝せあさん演じる妖艶なアルカードを中心に、聖乃あすかさん演じる凛としたリヒター・ベルモンド、そして円熟味を増した糸月雪羽さん扮する魔族らが脇を固め、そこに加えて、僕が最近大注目して、お礼状を頂いたりお茶飲み会に参加したりするにはどうすればいいんだろうかと毎日のように胸を焦がし、その悩みを迷子の子犬のようにSNSで打ち明けたら、ユーザーの方から「ファンレターを書け」というありがたい助言を賜り、ならば今年中には必ず一筆したためようと決意したにもかかわらず、気が付いたら毎日仕事をサボり続けてきたツケがこの年末に盛大に回ってきて身動きが取れなくなり、更にこの原稿の締め切りまで乗っかってきて、やむを得ず全ての仕事に優先して原稿書きに徹さざるを得ないという、そんな境遇にまで僕を追いやった、僕の最推しの笑顔が素敵な初音夢さん演じる少女リディ・ベルジェが物語に華を添えて、この「悪魔城ドラキュラ」は、「逆転裁判」や「戦国BASARA」に続いて、「ゲーム作品を題材とした宝塚作品に駄作なし」という、古来より伝えられる俗信の正しさを証明してくれ、いつの日か「デビルメイクライ」や「ビューティフルジョー」、「大神」、「ベヨネッタ」、「ザ・ワンダフル101」といった作品たちも舞台化されるかもしれないという可能性を、力強く世に示してくれました。
花組公演と言えば、24歳の若さでこの世を去った伝説的ハリウッドスター、ジェームズ・ディーンを題材とした、シアター・ドラマシティ公演 『DEAN』も忘れてはなりません。
主人公ジェームズ・ディーンを演じるのは、2025年8月11日付で星組から花組へ組替えしてきたばかりの極美慎さんで、花組ばかり観劇している僕にとっては初めてお目にかかる男役スターさんでしたが、演技や歌唱はもちろん、ジェームズ・ディーン本人よりも長身を誇るスラリとしたスタイルは、舞台の上でひと際目を引き、悲劇の豪華客船タイタニック号の造船技師たちのドラマを描いた、ミュージカル・ロマン『儚き星の照らす海の果てに』で主役を演じた希波らいとさんと並び立つ姿は、正に壮観といった趣がありました。
皆さんもご存じの通り、ジェームズ・ディーンは人気絶頂の中で、車の事故によって非業の死を遂げました。これは舞台と言えど筋書きを変えようがない事実で、当然この物語もその結末に向けて突き進んでいくのですが、終盤に差し掛かって「ここからどうやってこの作品に幕を下ろすのか?」と固唾をのんで見守っていると、「おお、こう来たか…!」と意表を突かれ、同時にその演出に胸を打たれて、思わずこみ上げる涙をグッと堪えることになろうとは、僕は思ってもいませんでした。
そうした体験もあって、この作品を観終えてから改めて自分の中で得心がいったのですが、僕が映画よりも宝塚歌劇というエンターテイメントに傾倒している理由について、「宝塚歌劇団」という、女性のみで構成される世界でも例を見ない劇団の独創性にまで話が及ぶと、恐らくこのサイトの容量をオーバーしてしまうので、今回は断腸の思いで割愛するとして、またこれは善し悪しの問題ではないということも最初に断った上で、簡潔に説明しますと、特殊効果や映像編集によって物語を演出できる映画と違い、観客と共有する同じ時間と空間の中で、劇中の時間変化や場面転換、更には、例えば大災害や大破壊といった大規模な局面の描写などを、限られた手法を駆使して行うという舞台ならではの様式が、僕にとっては正に人間の創意工夫や叡智の結晶のように尊くて、自分自身も創作活動に関わる一人として、この上ない学びとなるからです。
遥か昔、確か僕が中学生の頃だったと思いますが、学校行事の一環で、演劇「十二人の怒れる男」を観劇した時のことです。僕にとって、それは初めての舞台観劇でしたが、幕が上がって暫くは、松本市民会館のステージ上で描かれる物語なんてたかが知れているだろう、映画のように激しい炎が燃え上がったり大爆発が起きたりもしない、退屈なお話に違いない、と高をくくってぼんやりと眺めていました。でも、僕はこの公演で、あれから40年以上経った今でも鮮明に思い出せる、宝物のように大切な瞬間を体験したのです。
劇中、会議室で十二人の男たちがお互いに意見をぶつけ合い、議論が白熱してきた場面でのことです。演者さんたちの熱のこもった演技に、僕はいつの間にか引き込まれていて、まるで自分も会議室の中に閉じ込められているかのような息苦しさを感じながら、手に汗を握って成り行きを見守っていました。
そんな中、男たちの一人がフラっと席を立ちました。そして、その彼が舞台のはずれに置かれた小さな“窓の小道具”に向かって歩いて行き、そこで、おもむろに窓を開けたその瞬間です。窓の向こうから、人や車が行き交う都会の喧騒がワッと飛び込んできて、重苦しい閉塞感があっという間になくなったのです。心なしか、ステージ上にさわやかな風が吹き込んできた、そんな錯覚さえ覚えました。
僕はハッと我に返り、一人静かに唸りました。目撃したのは、ただステージ上の“窓の小道具”を役者さんが開けた、それだけです。でもその瞬間に、僕は確かに“外の空気”を感じました。依然として松本市民会館の薄暗い客席に座っているにもかかわらず、窓の外にある都会の存在を、体感していたのです。
これが舞台演出か!と、僕は雷に打たれたような衝撃を受けました。窓の向こうに本物の大都会などなくても、動作と音響でその存在を作り出すことが出来る、その巧みな技術と工夫が、僕の心に深々と刻まれた瞬間でした。
そこから長い時を経て、自分自身も創作活動を生業にするようになった2009年に、僕は「バウロマン 『逆転裁判2 -蘇る真実、再び…-』で、再び舞台観劇の機会を得て、それ以降、宝塚歌劇の世界にハマり込むことにるわけですが、そこから今日に至るまでずっと、舞台制作に関わる、タカラジェンヌの皆さんを含むプロフェッショナルな“職人”の方々による匠の技の数々には、毎公演のように驚かされていますし、いやしくもゲームデザイナーの端くれとして、計り知れない恩恵を享受させていただいております。
ゲーム開発においても、もちろん舞台装置よりは柔軟に演出表現を行うことはできますが、様々な理由から、なんでもかんでも実現出来る、というわけには中々いきません。しかし、“窓の外の喧騒”を感じたあの瞬間を思い出すと、人は創意工夫でどんな困難な局面でも打開できる、と勇気が湧いてきますし、宝塚の舞台から学んだ様々な演出手法が、ゲーム開発のあらゆる場面で、迷子になりかける僕の道しるべになってくれています。
これからも引き続き、宝塚歌劇を愛し、観劇し、ゲームデザイナーとしての引き出しを増やしていくとともに、『DEAN』でハリウッドの新聞女王ヘダ・ホッパーの付き人サマンサを演じた湖春ひめ花さんの今後益々のご活躍をお祈り申し上げたいと思います。
さて、何食わぬ顔で次の話題に移りますと、今回、最初の項目で「グラディウス オリジン コレクション」について触れましたが、「グラディウス」と言えば、それを横スクロールシューティングの金字塔たらしめているのは、その比類なきゲームデザイン、多彩なステージ展開、高精細なグラフィックだけでなく、金属的で奥行きのある響きで奏でられる、叙情的なBGMがあってこそであることは、言うまでもありません。
まだゲーム音楽が商品化されるということが一般的でなかった1985年当時、ゲームセンターの喧騒の中、変形学生服に身を包んだ金髪の兄さんがプレイに興じている筐体の対面席に勝手に座り、スピーカーに耳を押し当ててその音響に聴き入っていた僕が、レコード屋のポスターでその楽曲を収録したカセットテープが発売されることを知り、すぐさま予約して発売日を指折り数え、やっと巡ってきた発売日当日は学校が終わるや否やレコード屋へ自転車を猛然と走らせて、商品を奪い取るように受け取るとそのまま加速して家路をブッ飛ばし、自室に飛び込むと同時にカセットデッキにテープを放り込んで、機械を突き破る勢いで再生ボタンを叩き押すと、スピーカーから流れてきた待ちに待った音が、オプションをたった2個だけ引き連れて、申し訳程度の短小レーザーを見苦しく漏出させることで有名なファミコン版の、重厚なアーケード版とは似ても似つかないみすぼらしい音源だったことで、それ以降生涯にわたって人を信じるということを放棄するに至った僕の、「グラディウスサウンド」に纏わる逸話は、賢明な神谷ファンにとっては周知の事実だと思います。
そんなアーケード版「グラディウス」の楽曲を作曲したのが、当時コナミでアルバイトとして働いていた東野美紀さんという女性だということを知ったのは、1986年、アルファレコードが設立したレーベル「G.M.O.レコード」から発売された「コナミ・ゲーム・ミュージック VOL.1」で、ようやく本物のアーケード版「グラディウス」のサウンドトラックにありつくことが出来た頃のことだったと思います。
当時は、ゲームクリエイターがメディアに登場することがまだ珍しかった時代でしたから、限られた情報網を駆使して、その東野美紀さんという謎めいたアルバイトの方が、「グラディウス」だけでなく「イー・アル・カンフー」や「沙羅曼蛇」の楽曲も手掛けているという事実を探り当て、同時期にファミマガ1986年2月10日号で、あの宮本茂と遠藤雅伸の二大巨頭がスキヤキを食べながらゲームについて語り合うという豪華対談記事を読んで、ゲーム業界への憧れを募らせていた僕は、そのミステリアスな人物像に思いを馳せ、尊崇の念を深めていきました。
しかし残念ながら、1993年に大学三年生の春を迎えて就職活動に突入した僕が、コナミの会社説明資料を取り寄せると、無情にもプランナーの募集枠が無いという現実を突きつけられ、それでもなお自発的に企画書と履歴書を送り付けて、更に人事部に電話をかけて「私の企画書は見ていただけましたでしょうか?」と問い合わせると、「お返事がなかったということは、ご縁が無かったということで」という心温まるお返事をいただき、結論から言いますとコナミからは入社の切符をいただけなかったために、いちファンとしても同じ業界人としても、憧れの作曲家に一目でもお目にかかりたいという願いは、惜しくも叶えることができなかったわけです。
ところがその後、僕が自分の仕事よりもハムちゃんの「アーケードアーカイブス」を大切にして推し活に励んでいるのをゲームの神さまが見てくれていたのか、2025年5月24日に開催された「アーケードアーカイブス11周年記念イベント」にご招待いただいた際、あろうことかその会場でご本人と奇跡の邂逅を果たし、厚かましくも握手をさせていただいて、あまつさえご一緒に記念写真まで撮らせていただくという僥倖に恵まれて、こんなことなら「グラディウス DELUXE PACK」で追加された、東野美紀さん作曲のエンディング曲を東野美紀さん自らピアノアレンジをして演奏された「Hope & Joy Peace & Love」が収録されている「グラディウス アーケードサウンドトラック」を持参してサインをねだるんだった!…と地団駄を踏みつつ、むしろいつの日かそれを叶えるという新たな夢を糧にして、より一層ハム活に勤しもうという、決意と覚悟を心に誓ったのでした。
ちょっと話の行き先を見失ってしまいましたが、今回触れたかったのは、そんな僕が日頃から仕事よりもSNS活動に精を出していたことで、幸いにも東野美紀さんの生誕60周年記念コンサート「NEVER ENDING MELODIES」開催の情報をキャッチすることが出来、東野美紀さん自身のピアノ演奏で、「グラディウス」「沙羅曼蛇」「幻想水滸伝」といった、ゲームファンなら誰もが知る名作の楽曲を鑑賞できる機会に恵まれたことについてです。
普段、宝塚観劇に熱を上げている僕ですが、実はこれまで音楽のコンサートというものには行ったことがなく、初めての経験が、敬愛するゲームの音楽を作曲された、敬愛する作曲家の公演ということで、当日は少々緊張しながら臨んだのですが、演奏が始まると、そうした雑念の全てが吹き飛んで、あっという間に音楽の世界に引き込まれました。
東野美紀さんとピアニストの川村紀子さんのお二人による演奏で、2台のピアノから奏でられる楽曲は、どれも僕のゲーム人生に深く刻まれた思い出の曲で、中学生の頃から数えきれないほど何度も聴き込んできたメロディーであるが故に、それらを生で聴く感慨は言葉では言い表せないものでした。「グラディウス」は言わずもがな、「沙羅曼蛇」の勇ましい楽曲をお二人が力強く演奏しているさまは、まるで襲い来るサラマンダ軍を撃ち倒しながら突き進む超時空戦闘機ビックバイパーとロードブリティッシュを見ているかのような迫力があり、実際にゲームをプレイしている時以上の興奮と感動を覚えました。
また先程も触れた「Hope & Joy Peace & Love」は、“「グラディウス DELUXE PACK」エンディング曲のピアノアレンジ”というその出自ゆえに、もしかしたら一般的にはあまり知られてない曲かも知れませんが、僕は「グラディウス DELUXE PACK」リリース当時にそのエンディング曲にすぐさま魅了され、そのサントラを購入したらまさかの作曲者ご本人によるピアノアレンジが収録されていてご満悦、という出会いを果たして以来、この曲を何度も何度も聴き込んでいた(いる)ので、それがそのまま生演奏されるのを聴きながら、「ああ、この曲を今までずっと愛聴してきてよかった」と、深く感じ入りました。
憧れの作曲者による、心の名作ゲームを彩った楽曲のコンサートは、言い尽くせないほど貴重で、幸せで、あっという間の時間でしたが、これからもずっと忘れることのない大切な思い出になりました。帰りの新幹線で、その思い出を反芻しながら、iTunesに入っているオリジナルの曲にどっぷり浸ったのは言うまでもありません。
少し前から、僕の人生は激動の波に見舞われて、気が付けば思いもしなかった場所に流れ着き、今は全く新しい環境でゲーム作りに取り組んでいます。そんな僕は最近…これは以前から僕の信条として心に留めてきたことですが、「ゲームは人が作るもの」という言葉を、改めて噛みしめているところです。もちろんその言葉は、ゲームデザイナーとしての僕の視点から見出したものですが、ゲームも、アートも、音楽も、この世の創作物はどれも、二人として同じ存在のない誰かによって生み出される、かけがえのないものなんだなぁ…ということを、このコンサートを通じて、僕は心に固く刻み直したのでした。
<質問3>2025年に、個人的に注目した(している)人物
『YouTubeチャンネル「懲役7年から帰ってきた親友を社会復帰させたい」600番さん』
いきなり物騒な文言を見てびっくりした方もいらっしゃるかも知れませんが、まずは一度、お時間のある時で構いませんので、上に挙げたチャンネルの動画を一本だけでも、出来れば第一回目の動画から見ていただきたいと思います。
簡単に説明すると、読んで字の如く、とある犯罪で処罰された通称“600番”さん(服役中の呼称だそう)が、7年間の服役を終えて出所し、まっとうな人生を取り戻すために社会復帰を目指す、という趣旨のチャンネルです。
僕がこのチャンネルを見て感じたのは、もちろん刑務所に服役することの過酷さもありますが、自分の日々の生活の中にある、食事すること、お風呂に入ること、働くこと、寝ること、そして娯楽に興じることという、普段当たり前のようにやっていることが如何に素晴らしいかを、自分は忘れてしまっているんだなぁ、ということです。
特に珍しくないコンビニ弁当も、ゴロンとソファに寝転がって見ている動画も、友達との何気ないスマホのやり取りも、普段の生活の中ではありふれたもので、僕たちはそこに特段の意識を向けることはありません。こう言い切ってしまうのも乱暴かも知れませんが、たとえ月に一度の贅沢なディナーだったとしても、心が震えるほどの感動を覚えることはないと思います。
でも、そんな日々が如何に尊くて幸せなことであるかを、600番さんの振る舞いを目の当たりにして、痛切に思い知らされました。「マクドナルドってそんなに美味いのか」とか、「お風呂ってそんなに気持ちいいのか」とか、「ふかふかの布団で寝るのってそんなに幸せなのか」とか、自分ではもう想像も及ばない彼の喜びようを見て、羨ましさすら覚えました。
僕も過去に、流石に刑務所というわけではないですが、バイクの事故で入院して、自由の利かない生活を一ヵ月近く強いられたことがあります。その時に体験した、「娯楽に飢えている中で音楽に久しぶりに触れて、言葉にならないほど感動した」というエピソードを、以前にもお話したことがありますが、7年間も俗世から隔絶されていた600番さんがシャバに出た時に体験した感動は、そんなものは比べ物にならないほど強烈だったことでしょう。
確かに、久しぶりに帰省して食べるテンホウの餃子は格別ですし、冷え切った体を湯船に沈める瞬間は最高ですし、マスターアップを終えて泥のように眠る時間は至福です。でも、動画の中で600番さんが全身で爆発させるその感情は、それらの数百倍といっても過言ではない激しさです。一体どれほどの感動なんだろう…? 実に羨ましい!
でも、そう言えば、二年前に前職を辞して、完全に無職になってから、暫く家でゴロゴロして、Netflixを観たり、Amazon Prime Videoを観たり、YouTubeを観たり、惰眠をむさぼったり…と、怠惰な生活を送っていた時の事です。次第に心が何か“見えない飢え”のようなものに蝕まれはじめて、居ても立っても居られない感覚に襲われたことがありました。
その時は、当時既に「一緒に会社を立ち上げよう」という計画を話し合っていた小山君(クローバーズ株式会社代表取締役社長)に連絡して、「何でもいいから取りあえずミーティングがしたい!」と泣きつき、駅前の小さな貸会議室を借りて、そこで二人だけでゲーム企画の話をしたのですが、お互いにあれこれアイデアを出し合って、ホワイトボードにそれを書きなぐっている時に、「あれ? なんかこれ、めちゃくちゃ楽しい…!」という、得も言われぬ充足感が全身を駆け抜けたのを覚えています。
…と同時に、それ以前のゲームデザイナーとしてのキャリアを反芻して、「以前は毎日のようにこんなことをしていたな…あれはこんなに楽しいことだったのか」と、それまで意識したことのなかった幸せを、その時改めて思い知りました。過酷なゲーム開発の日々の中で、時には議論が白熱して疲弊することもありましたが、いつの間にかそれが自分にとって“なくてはならない体の一部”になっていたことを、失ってはじめて気付かされたのです。
あれからもう約二年が経ち、今は毎日、小山君をはじめ、たくさんの仲間たちとオフィスに集まって、ワイワイガヤガヤ賑やかにゲームを作っています。慣れ親しんだ、いつもの日常を取り戻したようにも思いますが、以前と違うのは、たまにふと周りを見回して、「こんな環境で仕事ができるなんて、なんとありがたいことだろう」と、感慨に浸る瞬間があることです。
まさにいま、休日出勤してこの原稿を書いている誰もいないオフィスで顔を上げてみると、スタッフが増えてきて手狭になったために、拡張工事をしている途中の様子が目に入ります。ミーティングルームも増え、照明もあつらえ、エントランスも新調して、一丁前な開発オフィスになってきたなぁと、思わずしみじみと感じ入ってしまいます。ついこの間までの、10人入ればギュウギュウになるようなレンタルオフィスで、まだ本格的に取り掛かるプロジェクトもなく、ただ雑談したり、ゲームを遊んだりしていた日々が、もう遠い昔のようです。
恥ずかしいことに、これまでのキャリアの中で、自分の身の回りの環境について、そんなふうに思いを馳せたことは一度もありませんでした。立派なオフィスがあって、PCが並んでいて、スタッフがたくさんいて、おもちゃがたくさん並んでいて…それが当たり前のことだと思っていましたが、決してそうではなかったんですよね。…おもちゃは特に。
ゲームを作れるって、なんて素晴らしいことなんだろう。仲間たちとアイデアを出し合えるって、なんて尊いことなんだろう。いま、自分がここにいることを助けてくれている、全ての巡り合わせに心から感謝したい…ということを考えるきっかけを作ってくれた600番さんにも感謝です。彼の今後の成功を、心からお祈り申し上げます。
<質問4>2026年に向けての抱負、また4Gamer読者に向けてのメッセージをお願いします。
がんばります。
![]() |
- この記事のURL:

















































































