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[GDC 2022]大人気ゲーム「Wordle」はどのように生まれ,バズり,売られることになったのか?
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印刷2022/03/25 18:40

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[GDC 2022]大人気ゲーム「Wordle」はどのように生まれ,バズり,売られることになったのか?

 開催中のGDC 2022で,英語圏で2021年末から大きな話題になっているゲーム「Wordle」についてのセッション「'Wordle': Doing the Opposite of What You're Meant To」(ワードル: やるべきことの正反対をやる)が行われた。登壇したのは開発者のジョシュ・ワードル(Josh Wardle)氏で,大ヒットを記録した本作の裏話を語った。

 有名人のツイートなどで大きくバズり,日本でもその存在が知られるようになった「Wordle」は,アルファベットが1つ書かれたパネルを開き,6回のチャレンジで5文字の英単語をあてるというゲームだ。広告も課金もない無料のブラウザゲームで,宣伝もしないばかりか1日に1回しかプレイできないにも関わらず,2022年に入ると100万単位の人々がプレイを始め,その成果をTwitterで毎日発表する人も出現しているという。


なぜこのゲームが作られたのか?


「Wordle」の開発者である,グラフィックアーティストのジョシュ・ワードル氏。「Wordleを作ったWardleさん」と,なんともややこしい
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 イギリスのウェールズ地方の出身で,ニューヨークで生活するワードル氏が,Javaのプログラミングを独学しつつ,「Wordle」の原型となるゲームを開発し始めたのは2014年のことだ。普段は新聞に載っているクロスワードパズルやスペリング・ビーなどで遊ぶのが好きだったパートナーが精神的に落ち込んでいた時期で,彼女のために何か没頭できるものを作ってあげるのが目的だったという。

 参考にしたのは,ワードル氏が子供の頃に遊んでいたボードゲームの「マスターマインド」だったが,隠されたピンの色ではなく,5つのアルファベットで構成される英単語をあてるというアイデアは,この時期に出来あがっていたという。
 5文字で構成される英単語は1万3000ほどあるのだが,中にはネイティブの彼らでさえ知らない単語も存在し,そんな文字が出題されると,マスターマインド同様,勘に頼るだけのゲームになってしまう。そこでワードル氏はプログラムを書き,存在する1万3000の英単語の1つ1つに「知っている」「知っていると思う」「知らない」と答えていくという,ゲームというよりは質問に近いアプリを完成させた。この時点でワードル氏とパートナーは満足し,本題のゲームについては忘れていたという。

ワードル氏が,2014年ごろに開発していたバージョン。自分の名前「Wardle」をもじった「Wordle」というタイトルもこの頃は付いていなかった
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5つのアルファベットで構成される簡単な英単語とはいえ,1万3000近くもあり,中にはネイティブスピーカーのワードル氏でさえ知らないものも少なくなかった。パートナーは,表示される英単語を知っているか知らないかを答えていくというゲームのようなものでも,気を紛らわすことができたという
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どのようにしてバズったのか?


 2021年に入り,ワードル氏が「究極のCo-opゲーム」と呼ぶクロスワードパズルを2人で遊んでいたとき,ふと作りかけのゲームのことを思い出す。そして,半年ほど2人で遊びながらあちこちに手を入れることで,完成度を現在のような状態まで高めたという。公式サイトも作ったが,長くて覚えにくいURLだったこともあって注目されることはなく,2021年11月1日の段階でわずか90人しかプレイしていなかった。

 家族にもゲームのことを教えており,義理の姉からは,家族のグループチャットが数日で「Wordle」チャットになってしまったと伝えられていたが,まだバズるような作品だとは考えていなかった。しかし,このようにして家族や友人の口コミで知名度が上がり,勢いがつくと,瞬く間に拡散して,現在のようになってしまったという。
 どうしてそうなったのか,ワードル氏自身も分からないようだが,さらに転機になったのが,12月2日にニュージーランド在住の女性が,絵文字を使って,「Wordle」の結果を毎日のようにツイートし始めたことだ。
 「Wordle」では,失敗はグレー,文字と位置が正しければ緑,文字は正しいが位置が間違っていると黄色で表示される。ツイートを見た人はそれが何のパターンなのか分からず,興味を持って検索する人も出てくる。やがて,そうした人がプレイを始め,プレイヤー数が大きく増え始めたという。

 2022年1月には,本作の開発までの経緯を取材したニューヨーク・タイムズ紙が「Wordleは愛の物語」というしゃれたタイトルの記事を掲載する。これでアクセス数が1日で数十万人を超えるようになり,ミュージシャンのポール・マッカートニーさんがツイートしたり,深夜番組の司会者でもあるコメディアンのジミー・フェロンさんが番組のネタにしたりした。

自分の成果を絵文字パネルで表現するTwitterユーザーが増殖中。「Wordle」に収録された2300ほどの英単語の中から1つが毎日1度,全世界のユーザーに出題される
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先生が小学3年生の子供達に遊ばせたというTiktokでバズったクリップ。Newsweekの記事で詳細を読むことができる
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なぜゲームの権利を売ったのか?


 2022年1月31日,ワードル氏が「Wordle」の権利をニューヨーク・タイムズ誌に売ったことが明らかになった(関連記事)。それまで広告を入れたり課金システムを導入するといったことを行っておらず,大ヒットしたゲームから金銭的な見返りを得ていなかったワードル氏だったが,報道によれば,版権の売却でワードル氏が得たのはドルで7桁台(つまり数百万ドル)だという。

「自分がゲイであるために疎遠になっていた母と,Wordleを通して少しずつ会話するようになった」というメッセージをもらい,自分が作ったものにも少しは意味があったことが認識できたというワードル氏
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 ゲーム業界関係者なら,「数億円で売却するくらいなら,マネタイズすればもっと利益が得られるのに」と考えるはずだ。そんな「金の成る木」をいとも簡単に手放してしまったことが,今回の講演のテーマである「やるべきことの正反対をやる」という決断なのだ。要するにワードル氏はビジネスマンになることはまったく興味がなく,お金の計算をしたり,人を雇ってビジネスを展開したりする自分を想像できなかったのだという。

 「Wordle」がバズったことで,当然ながら類似ゲームも作られた。最初のうちは,さまざまな言語に非公式に翻訳された「Wordle」が出たり,短い発音から単語を連想したり,輸出品の統計資料グラフから国をあてたりなど,他愛のないコピーがリリースされたが,やがてマネタイズを行うソフトも登場してきた。

 ワードル氏は,自分の苦手な煩わしいこと巻き込まれず,パートナーと楽しくしたいことをしながら生活していくことを選んだわけだ。もともとWebアーティストであるワードル氏が次にやりたいことは,必ずしもゲーム制作ではないようだが,彼の言葉は講演を聞いたゲーム開発者達にどう響いたのだろうか。

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「Wordle」公式サイト

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