CES 2018の期間中,メカニカルスイッチのCherry MXシリーズで知られるCherryは,背の低さが特徴の新型メカニカルスイッチ「
Cherry MX Low Profile RGB」(以下,MX
Low
Profile
RGB)を発表した。既存のCherry MXシリーズが持つ特性を備えつつ,薄型キーボードやノートPCにも応用できるスイッチであるという。
ゲーマー向けキーボードやゲーマー向けノートPCにも採用されそうな新スイッチの概要を紹介してみたい。
MX Low Profile RGBのCGイメージ。これはRed(=赤軸)モデルの例だが,軸を円筒で囲むようなデザインになっているのと,明らかに薄いハウジングが見どころと言えるだろう。詳細は後段で
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Cherry MXシリーズといえば,基板から立ち上がった背の高い台座のようなハウジング部分に,十字型のキー軸(ステム)が載った形状がよく知られている。ハウジングの下側は,ベースプレートに埋め込まれているとはいえ,実際にはキー軸の上にキーキャップが載るのだから,キーボード全体の高さは相応に高いものとせざるを得ない。少なくともこの仕様が,一般的なサイズのノートPCへ組み込むのを困難にしているのは間違いないところだ。
そういう市場の声もあってか,たとえばSteelSeriesは,2015年に発売したキーボード「
Apex M800」で,低背(ていはい)タイプの独自メカニカルキースイッチ「QS1」を採用するに至った。また,キースイッチのメーカーであるKaihua Electronics(以下,Kaihua)やTrantek Electronics(以下,TTC)も,低背タイプのキースイッチを展開しており(
関連記事1,
関連記事2),これらを採用するゲーマー向けキーボードやゲーマー向けノートPCも実際に登場してきている。
Cherryとしても,低背タイプのメカニカルキースイッチを求める声に応える必要があり,その成果として登場したのが,今回のMX
Low
Profile
RGBというわけだ。
MX Low Profile RGBの分解イメージ
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さて,そのMX
Low
Profile
RGBだが,既存のCherry MXシリーズとは,だいぶ異なる見た目をしている。通常モデルで台形をしているハウジングの形状は四角くなり,十字型のキー軸は,円筒で囲まれたような形となった。背が低くなったことは一目瞭然だ。
MX Low Profile RGBを側面(左),および真上(右)から見た状態。今までのCherry MXとは似ても似つかぬ……とは言い過ぎだろうが,かなり異なる印象を受けるのは確かだ
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Cherryが公開した資料によると,既存のCherry MXが下端からキー軸上端まで18.5mmの高さがあったのに対して,MX
Low
Profile
RGBは11.9mmと,およそ64%程度の高さにまで小さくなった。画像を見る限りでは,ベースプレートより上に露出する部分は,全体の半分程度となる6mmくらいしかなさそうだ。
Cherryが公開した比較画像。左が定番のCherry MXで,右が新しいMX Low Profile RGBだ。背が大幅に低くなった
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背が低くなったことにより,MX
Low
Profile
RGBのアクチュエーションポイントは,Cherry MX Redの2mmから1.2mmに,ストローク(トータルトラベル)は4mmから3.2mmへと,それぞれ短くなっている。ただ,今回例に挙がっているRedスイッチモデルの場合,45gのキー荷重やリニアな打ち心地,そして約5000万回の打鍵に耐える強度は通常版Cherry
MX
Redスイッチとまったく変わっていないとのことである。
名称に「RGB」とあるとおり,MX
Low
Profile
RGBは約1677万色に光るカラーLEDを半透明のハウジング部分に内蔵している。この構造は,既存のCherry MX RGBシリーズと同じもので,実際にLEDを光らせると,ハウジング部分全体が光るように見えるようだ。
Cherryが公開したMX Low Profile RGB搭載キーボードのサンプル。フローティングタイプだが,キーキャップ自体も背の低いタイプを使っているので,全体が薄く見える。LEDの光がハウジング全体を光らせているので,光り方はけっこう派手だ
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KaihuaやTTCに加えて,メカニカルスイッチ大手のCherryも低背化スイッチをリリースしたことにより,2018年以降のゲーマー向けキーボードでは,低背化という新しいトレンドがやってくる可能性は高いだろう。
筆者も背が低くてストロークの浅いキーボードを好むほうなので,MX
Low
Profile
RGBを使ったゲーマー向けキーボードの登場が,今から楽しみだ。
ちなみに,Cherryは2008年にドイツの部品メーカーであるZF Electronicsの傘下となっていたが,2016年10月に部門ごと在独の投資家グループGENUIへ売却され,現在は「GENUI傘下のCherry」として活動している。本稿で社名をZF ElectronicsではなくCherryと呼んでいるのは,それが理由だ。