インタビュー
HORIのステアリングコントローラ「Racing Wheel Apex」はリアルさではなく,プレイしやすさを追求。開発者に特徴を聞く
それに合わせて4Gamerでは,HORI商品開発部の小西良典氏と木島一寿氏にRacing Wheel Apexの詳しい話を聞くことができたので,本製品のキャッチコピー「レースに勝つための操作と機能性を追求した」とはどういうことなのかを中心に,新製品の概要をまとめてみたい。
これまでのHORI製ステアリングコントローラとは一味違うRacing Wheel Apex
従来,HORIのステアリングコントローラは,本格志向を謳う他社のステアリングコントローラと比べると「廉価版」というイメージが強く,最小限の機能を持たせて,今までステアリングコントローラを使ったことがない人が手を出しやすいよう価格を最小限まで抑えたような製品ばかりだった。誤解を恐れずに言えば,どこからどう見ても玩具だったわけである。
ステアリングホイールユニットのホイール径は280mm。市販車と比べると小さいものの,一般的な競技車両と同サイズで,意味のあるコンパクトさだ。また,ホイール自体も,コブが付いたり,パンチング加工済みのラバーグリップになったりと,握りやすさへの配慮が見られる。
実際,開発にあたっては,競技車両用のステアリングを供給しているメーカーにヒアリングを行っているそうで,たとえば視認性を向上させるセンターマーカーの採用などは,その結果だそうだ。
「フォースフィードバックに対応した,リアル志向の製品」では,他社と同じになってしまいます。そうではなく,「こっちのほうが速く走れる」「レースで勝てる」とユーザーに感じていただける,独自路線のステアリングコントローラを出したいというのが,基礎コンセプトとしてありました。
これまでHORIのステアリングコントローラでは,予算の都合から,パーツ流用を多用していましがが,今回(ステアリングホイールユニットでは)金型を起こし,完全に1から新規で開発しています。
バネを用いる仕様上,物理的に(=ハードウェア的に)回転角を縮めることはできないので,電子的に認識範囲を狭めるイメージである。
本物をあえて追求しないというコンセプトは面白い。
小西良典氏:
ユーザーのフィードバックで最も多かったのは,「ステアリングコントローラを買っても速く走れない」とか,「ゲームパッドのほうが速く走れる」といったものだったのです。
そこで,実車的な要素を入れつつも,基本設定を逐一ハード的に切り替えて操作性を高められる,速く走れるステアリングコントローラを目指しました。
また,バネベースのテンションシステムで問題となりがちな,入力系の微調整も,Racing Wheel Apexでは行えるようになっている。ステアリングのリニアリティ(linearity,ステアリングを回していったときの入力追随性),そして中心付近のデッドゾーン(dead zone,ステアリングを切っても反応しない範囲)は,いずれも電子的に7段階で調整できる。調整は本体側にあるボタンの組み合わせによって行えるので,極論,ゲーム中に設定変更することさえ可能なのだ。
デッドゾーンはゲーム側で設定できるものもありますが,それに頼ると,ゲームごとにバラツキが生じる恐れがあります。
その点,ステアリングコントローラ側であらかじめ調整しておくと,(複数のゲームを“渡り歩く”ときでも)挙動のバラツキが出にくくなり,微調整もしやすくなります。
なお,いま調整機能の話が出たが,リニアリティとデッドゾーンの調整は,ステアリングトリム上にある[ASSIGN]ボタンといくつかのボタンの組み合わせで行える。
そのほかにもステアリングトリムには,[PS][SHARE][OPTIONS]ボタンにD-Pad(十字キー),[△/○/×/□]ボタンがあり,さらにはホイール上に[L2/R2]アナログボタンがあるので,DUALSHOCK 4の操作系はすべて揃っているということになる。
ちなみに[ASSIGN]ボタンを使えば,各ボタンの割り当てを変更することも可能だ。
前者は,「PS4-N」でDUALSHOCK 4互換コントローラとして機能するモード,「PS4-S」で対応ゲームタイトルにおいてステアリングコントローラとして機能するモード,「PS3」でPS3用モードを切り換えられる。後者はD-Padをハットスイッチとして使うか左右どちらかのアナログスイッチとして使うかを選択するためのものとなっている。
木島一寿氏:
グリップ部にある[L2/R2]ボタンはアナログ入力に対応していますが,デジタルボタンを割り当てることも,(“誤爆”することが多い場合は)ハードウェア的に無効化することもできます。
グリップ部分にある[L2/R2]ボタンは,アナログ入力に対応しており,ホイール外側に押し倒す操作イメージだ。ストロークはほとんどないのだが,ゲームでの使い勝手が気になるところである |
パドルレバーはABS樹脂製なので,見た目はちょっぴり玩具的。剛性を出すための凹みに指が引っかかるため,操作性はよい印象だ |
Racing Wheel Apexでは,ステアリングホイールユニットの固定方法にも変更がある。
HORIの従来製品だと,ユニット底面に吸盤を取り付けて,テーブルなどの天板に貼り付けるという吸盤固定式だったが,Racing Wheel Apexでは,それとは別に,一般的なクランプによる固定方法にも対応したのだ。クランプを用いた固定時におけるテーブル側の要件について細かな数字は聞けなかったが,「他社製品と同レベルにはなっている」(小西氏)という。
こちらは1から金型を起こしたというわけではなく,従来製品からの流用もあるそうだが,2ペダル構成の本機は,底面部に格納された足置きを開いて引き出せるなど,使い勝手への相応な配慮が見てとれよう。
ちなみにこちらでも,ステアリングホイールユニットと同じく,踏み込みに対するリニアリティを調整できるようになっているそうだ。
小西良典氏:
これまでの製品だと,ペダルの角度が水平に近く,またストロークも短かったために,少し踏むだけですぐ「ベタ踏み」状態になってしまって,細かいアクセルワークやブレーキワークができませんでした。その点をRacing Wheel Apexでは改良していまして,いずれのペダルも角度を起こし,ストロークも長くすることで,細かな操作を行えるようにしています。
実車に近い操作性やフィーリングを求めるとどうしてもコストがかかってしまう。なので,そこは目指さずにコストを低く抑え,その中で「速く走れる」「レースで勝てる」という部分を追求してきたのは,一部のマニア層に向けた周辺機器ではなく,老若男女幅広い層に向けた周辺機器を開発してきたHORIならではのコンセプトと言えるのではなかろうか。
個人的には,レース中にポーズしてステアリングコントローラの調整を行えないマルチプレイやオンラインプレイの最中でもホイールの切り角やリニアリティを調整できるというのは,面白く,かつ意味のあるアイデアではないかと考えている。
小西氏は「痒いところに手が届くところにチャレンジするという部分では,良いものができた」という表現をしていた。HORIとしても,開発コンセプトからブレることなく仕上げることができたという認識なのだろう。
これまでの常識から外れて,使いやすさに振ったステアリングコントローラは,果たして市場からどういう評価を受けることになるのか。残念ながらまだ製品は入手できていないが,入手し次第,使い勝手を検証してみたいと思う。
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