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4K解像度や横長ワイドにも高リフレッシュレートの波がやってくる。台湾で見たユニークなハイエンド液晶ディスプレイをレポート
そんな流れを受けて,2016年6月初旬に開催されたCOMPUTE TAIPEI 2016(以下,COMPUTEX)では,4Kやそれ以上の解像度に対応する液晶ディスプレイが,豊作と言いたくなるほどたくさん出展されていた。そこで本稿では,会場で見つけた高解像度液晶ディスプレイの中から,とくにユニークなものを紹介しよう。
4Kディスプレイにも高リフレッシュレート対応モデルが登場
COMPUTEXでは,4K解像度で垂直リフレッシュレート120Hz以上を実現するディスプレイの試作機が,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)やAcerのブースで披露されていた。
そんな中でも興味深い製品が,ASUSブースにあった最大垂直リフレッシュレート144Hzに対応する4K液晶ディスプレイ試作機だ。IPS方式液晶パネルを採用して,サイズは27インチ。試作機なので,製品名はまだ付いていない。ゲーマー向け液晶ディスプレイとしての発売を前提に,開発が続けられているそうだ。
ところで,映像伝送規格に詳しい人なら,4K解像度で144Hzと聞いて,「あれ?」と感じたかもしれない。4K/120Hzまでなら,DisplayPort 1.3規格の32.4Gbpsモード(High Bit Rate,HBR)に対応したGPUとディスプレイを使えば利用可能だ。本稿執筆時点でDisplayPort 1.3のHBRモードに対応するGPUとしては,GeForce 10シリーズとRadeon RX400シリーズがあげられる。この試作機が市場に出回る頃には,対応GPUもそれほど珍しいものではなくなるはずだ。
しかし,4K/144Hzになると,DisplayPort 1.3でも足らないはず……。
この点について聞いてみたところ,説明員は「VESAのDSC技術を駆使する」と答えていた。彼は明言しなかったのだが(※こちらもうっかり聞き忘れた),この製品はどうやら,4K/144Hzの伝送に「DisplayPort 1.4」を利用するのだと思われる。
DSCとは,「Display Stream Compression」の略語で,映像技術の標準化団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)によって規格化された,不可逆の映像信号圧縮技術のこと。DisplayPort 1.4はこれを利用することで,DisplayPort 1.3と同じ32.4Gbpsのデータ転送レートで,4K/120HzのHDR表示や8K/60Hz表示を実現するモードを持つ規格だ。GeForce 10シリーズは,DisplayPort 1.4への対応を謳っているので,GPU側の対応も進み始めている。
不可逆圧縮である以上,元の映像データから若干劣化するのは避けられない。「視覚上の画質劣化はわずかだ」と説明員は述べていたが,リフレッシュレート向上のためにDisplayPort 1.4を利用するというのはアリなのかと,疑問に思わなくもないところだ。
DisplayPort 1本で接続可能な5Kディスプレイ登場
4Kより高解像度の液晶ディスプレイとして,「5K」を謳う製品が登場しつつある。
COMPUTEXでASUSは,デザイナーや写真家などを想定したプロフェッショナル向け液晶ディスプレイ「ProArt 5K UHD professional monitor」(以下,ProArt 5K)を発表した。32インチサイズのIPS液晶パネルを採用し,解像度は5120×2880ドットとなっている。発売時期や価格は未定だ。
プロフェッショナル向けの製品ということで,画質には相当なこだわりを見せている。対応する色空間規格は,sRGBカバー率が100%で,AdobeRGBカバー率は99.5%,デジタルシネマ規格である「DCI-P3」のカバー率は95%とのことで,色再現性には絶対的な自信があるようだ。
ビデオ入力インタフェースとしては,HBRモードに対応したDisplayPort 1.3入力を装備。HBRモードで接続した場合は,DisplayPortケーブル1本で5K/60Hzの表示が可能である。なお,HDMI 2.0入力も備えているが,この場合は4096×2160ドットの60Hzまでになる。
FreeSync対応でゲームもOKの37.5インチ超横長湾曲ディスプレイ
Acerブースでは,37.5インチサイズでアスペクト比24:10という,超横長液晶ディスプレイ「XR382CQK」が注目を集めていた。解像度は3840×1600ドットなので,4K解像度と横は同じだが,縦が短いという変則的なものだ。発売は2016年内を予定しているという。価格は未定だ。
ディスプレイの正面に立って見渡すと,横幅が75cm以上もあることもあり,サラウンドな映像には迫力がある。カーブの曲率は2300R(=半径2300mmの円を描くカーブ)とのことで,曲がり具合はやや緩やか。液晶パネルが湾曲しているおかげで,左右端の表示が意外と見やすいのが好印象であった。
なお,採用する液晶パネルはIPS方式である。色域カバー率などは公表していなかったが,発色は良好だった。
ビデオ入力インタフェースとしては,DisplayPort 1.2,mini DisplayPort 1.2,HDMI 2.0×2を装備。AMDの同期技術「FreeSync」にも対応するとのことで,ゲーム用途にも適するとアピールしていた。
アスペクト比21:9の液晶ディスプレイでは,3440×1440ドット/200Hz対応モデルも登場
ゲーマー向け製品も増えてきたアスペクト比21:9の横長液晶ディスプレイは,解像度2560×1080ドットの製品が定番だったが,最近ではより高解像度な3440×1440ドットの製品も増えてきた。そしてゲーマー向けを謳う横長液晶ディスプレイにも,高リフレッシュレート対応の流れが波及してきた。
Acerが出展していたのは,35インチサイズの解像度3440×1440ドットで,最大リフレッシュレート200Hzに対応する「XZ350CK」だ。2016年内の発売予定で価格は未定とのこと。
曲率1800Rという液晶パネルの方式は非公開なのだが,200Hzの高リフレッシュレートに対応するとなれば,TN方式かVA方式だと思われる。
3440×1440ドット/200Hzになると,ほぼ4K/120Hz相当のピクセルフィルレートが必要なので,HDMI 2.0はもちろんこと,DisplayPort 1.2でもデータ転送レートが足りない。つまりXZ350CKのスペックをフルに発揮するには,DisplayPort 1.3のHBRモードに対応するGPUも必要というわけだ。
ASUSのCOMPUTEX TAIPEI 2016特設ページ(英語)
Acer 日本語公式Webサイト
COMPUTEX TAIPEI 2016取材記事一覧
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