レビュー
自宅をゲーセンに変える“アーケード筐体風”ゲームデスク
XAC-1
とはいえアーケード筐体は,一般的な家屋へ設置するには巨大で,しかも非常に重い。さらに高額(参考記事)とあっては,一般人がおいそれと手を出せるものではなかった。だからこその“夢”なのだ。
しかしそんな「理想のプレイ環境」を,実際にアーケード筐体を購入するよりも安価に叶えると謳うゲーマー向けデスク「XAC-1」が,2013年4月8日,マイコンソフトから発売された。直販価格にして6万7800円(税込)のXAC-1は,アーケード筐体をモチーフとしたゲーム用デスクで,32インチワイドサイズまでのディスプレイデバイスを別途用意して取り付けると,アーケードさながらのプレイ環境を構築できるのだ。しかも,ディスプレイの高さ調節が簡単に行えるエアシリンダー機構やディスプレイ回転機構を備え,さらに別売のオプションパネルを利用すれば本物のアーケード用コンパネを取り付けられるなど,まさにアーケードゲーマーの夢が結実したようなアイテムとなっている。
今回4Gamerでは,マイコンソフトよりXAC-1を入手できたので,その使用感をお伝えすべく,組み立てからプレイフィールまでをチェックしてみることにした。その舞台として白羽の矢を立てたのは,格闘ゲーマーにはお馴染み,
マイコンソフト「XAC-1」製品情報ページ
組み立てから配線まで
まずは組み立てから見ていこう。多くの家具がそうであるように,XAC-1もまた,自分自身で組み立てなければならないタイプの製品だ。しかも,段ボール6箱で届く。下の写真を見てもらえば分かるように,相当に大型というか,場所を食う製品である。
開封後は,添付のマニュアルに従って組み立てを行っていく。下にマニュアルを掲載したので参考にしてもらえればと思うが,マニュアルは相当に細かく説明してくれているので,指示に従っていけば,組み立てはそう難しくない。ネジやダボなど,細かいパーツをなくさないようにだけ注意しておこう。
今回の組み立ては,筆者を含む4人で分担して行ったが,作業にかかった時間はおおよそ3時間弱といったところだった。これは途中でプラスドライバーがないことに気づいたり,途中でネジが見つからなくなったり,そもそも寝不足で作業に臨んだので集中力が続かなかったりと,さまざまなトラブルに見舞われたうえでのタイムなので,こうした組み立て作業に慣れている人ならば,もう少し早く終わるかもしれない。
重量があるため,人手があるほうが楽ではあるものの,一人で組み立てようと思ってできないことはないだろう。どちらかといえば,広い作業スペースを確保することのほうが重要といえる。
なお今回の組み立ては,ニコニコ生放送のGODSGARDENコミュニティで配信をしつつ,行った。見逃した人のために,以下にダイジェスト版を掲載したので,実際の作業が気になるという人は,ぜひチェックしてみてほしい。
さて,紆余曲折を経て完成したXAC-1が下の写真だ。
背面側 |
足下の棚部分 |
ただし,一般的な家屋のドアは通り抜けられないと思われるので,部屋を移動させるときには,ある程度分解する必要があるだろう。
さて今回のレビューでは,東芝から32インチ液晶テレビ「REGZA 32ZP2」(以下,32ZP2)を借りることができたので,これをXAC-1に取り付けてみた。XAC-1は,VEWLIX筐体と同じ32インチワイドまでのディスプレイが取り付け可能なので,この組み合わせならば,かなりゲームセンターに近い環境となると思われる。
東芝の32ZP2は,IPSパネルを採用したフルHD解像度の32インチ液晶テレビだ。とくに表示遅延の少なさに定評があり,ゲームモード選択時は約3ms(0.2フレーム)という低遅延を誇る |
ごらんのとおり,32ZP2ならXAC-1とサイズ的にもピッタリ。VEWLIXに非常に近いプレイ環境となる |
なおディスプレイの取り付けは,PC用ディスプレイと薄型テレビとでは工程が異なるので注意が必要だ。PC用ディスプレイの場合は,「モニタースタンド」とされるスタンドに直接ネジ留めするだけで取り付け可能だが,薄型テレビの場合は,付属の「テレビ用アジャスター」と「テレビ用マウンター」を介して設置する必要がある。
なお,いずれの場合でも,ディスプレイを固定するためのネジは,XAC-1の段ボールに同梱されていないため,別途用意する必要がある。必要なネジの規格はディスプレイごとに異なるので,ディスプレイの説明書などをよく読んで,適合するものを用意しよう。
今回32ZP2の取り付けに使用したM6ネジ。ホームセンターなどに行けば数個のセットが数百円で入手できる |
液晶ディスプレイの場合は,モニタースタンドに直接ネジ留めをする。ディスプレイに合ったネジを忘れず用意しておこう |
ひとまず手持ちのディスプレイ機器を取り付けておいて,後日,別のものに付け替えたいと思っている人は,記憶に留めておいてほしい。
以上,“筐体風の机”としてのXAC-1はこれで完成だ。ただし,先ほども述べたように,XAC-1は別売(※XAC-1初回生産分には付属)のオプションパネルを用いることで,天板に本物のアーケード用コンパネを取り付けられる。ここまで来たらやるっきゃないということで,セガのバーサスシティ用コンパネを用意してみた。
取り付け作業自体は,オプションパネルにコンパネをはめ込み,ネジ留めするだけなのだが,問題は配線だ。XAC-1でどんなゲームをプレイするかにもよるが,家庭用ゲーム機を遊ぶのであれば,コンパネにレバーやボタンを取り付けたうえでゲーム機に接続し,コントローラとして認識させなければならない。これにはいろいろな方法が考えられるが,最も簡単なのは,保証外となることを覚悟してアーケードスティックを分解し,内部の配線を延ばして接続することだ。
というわけで今回は,超本格志向のアーケードスティックとして知られる,HORIの「リアルアーケードPro.EX PREMIUM VLX」(以下,お三万コン)の配線を利用して,Xbox 360用のコントローラとしてセッティングしてみた。ちなみに数あるアーケードスティックからお三万コンを選んだのは,内部へアクセスしやすく,かつ配線が長く取られているためだ。これならXAC-1の一番上の棚から配線を延ばせば,コンパネの接続端子にギリギリ距離が届くのである。
……高価なコントローラをこんな風に使うのはもったいないという意見はもっともだが,今回は突貫工事だったということでご容赦を。
下部の収納スペースにお三万コンを置いて,内部の配線を引っ張り出す |
コンパネの設置スペースに配線を延ばすと,こんな感じ。ギリギリ届きそう |
コンパネはファストン端子接続なので,あとはそのまま刺すだけだ |
蓋を閉めれば完成。もっとスマートな方法がないわけではないが,そこは各自研究してみてほしい |
肝心のプレイフィールは?
というわけで,あの手この手でXAC-1をアーケード筐体風に仕立ててみたのだが,実際のプレイフィールはどうだろうか。
……グッド! とてもグッドです!
再三述べているように,VEWLIX筐体とほぼ同じのサイズなので,普段からゲームセンターでプレイしている人ならば,かなりしっくりくること請け合いのプレイフィールである。ゲームセンターとまったく同じコンパネで,かつ机と完全に一体化しているわけだから,プレイ中にレバーやボタンの位置が動いてしまうこともない。あとは椅子さえゲームセンターと同じものが用意できれば,これ以上ない幸せが得られるだろう。
ディスプレイの高さ調整&ディスプレイの回転機能は,スケジュールの都合で,残念ながら32ZP2の返却後にテストすることになってしまったのだが,W2363Vの場合,なんと30秒程度で切り替えが完了してしまった。スタンドにエアシリンダーが搭載されているため,ロックピンを緩めればディスプレイが自動的に持ち上がり,片手で簡単に回転できてしまう。とくに縦シュー好きのシューターにとってはありがたい機能だ。
スタンドの左右にあるロックピンを緩めて外側に引けば,エアシリンダーによりディスプレイが自動的に持ち上がる。あとは好みの高さに合わせてロックピンを締めればいい |
縦画面のチェックとして,神園氏に「怒首領蜂大復活」をプレイしてもらった。ご覧のとおりイイ感じである。ちなみに縦画面時は,写真のようにスピーカーを別途用意したほうがいいだろう。ディスプレイデバイス内蔵スピーカーを使うと,回転により,音が上と下から鳴るようになってしまうからだ |
なお,業務用コンパネを取り付けたときの操作音は,ゲーム機との接続が想定される一般的なアーケードスティックのそれと比べると,若干ながらうるさく感じられた。おそらく,コンパネ自体が薄い鉄板であることと,コンパネ下部の空洞が広く,音が反響しやすいことなどが原因と思われるが,そもそもアーケード用のコンパネに,騒音対策などされているわけがないので,当然といえば当然だろう。ゲームセンターに置いてあるから気付きにくいだけで,アーケード筐体の操作音は,普段からこんなものなのかもしれない。
静音化のアイデアとしては,内部の空洞をタオルなどで埋めたり,静音レバー&ボタンを組み込んだりすることが考えられるが,今回は用意できなかったので効果のほどは分からない。いずれにせよ騒音が気になる場合,一般的なアーケードスティックよりも一歩進んだ対策が必要になりそうだ。
夢を叶えるためには,相応の努力とお金が必要
ディスプレイ上部に取り付けられるインストパネルスタンドや,コンパネ上部のインストカードスペースなど,アーケード筐体の雰囲気を演出するための趣向がふんだんに凝らされているのも気に入った。アーケード基板を購入してしまうようなコアなファンも,十分納得できる製品であるように思う。
また,カスタマイズ性が高く,足下の棚も意外と使い出があるため,家具として使いやすいのもポイントだ。本稿ではアーケード筐体風のプレイ環境を目指してカスタマイズしてきたが,XAC-1はPCデスクとしても十分に実用的といえる。ブラウン管タイプの古いアーケード筐体だと,中古市場を探せば,XAC-1とほぼ同額で購入できるものはあるが,その場合,アーケード筐体を家具としてほかの用途に使うのは,ほとんど不可能。その意味でXAC-1は,本物のアーケード筐体よりもつぶしが利くのである。
とはいえ,納得の環境を整えるために必要な手間と,そしてかかる費用は決して少なくはない。まずXAC-1自体だが,アーケード筐体と比べたらはるかに安価であるものの,絶対的な金額としては,決して安くない。しかも,ディスプレイデバイスはもちろん別売りだ。また,アーケード用コンパネを搭載して各種家庭用のコントローラとして設えるためには,最低でも実勢価格にして1万円ほどするアーケードのコンパネと,配線用のアーケードスティックが必要となる。PlayStation 3とXbox 360など,複数の家庭用ゲーム機に対応しようとするなら,さらに大変だろう。
いずれにせよ,夢のプレイ環境を整えるためには,ただXAC-1を手に入れるだけでは不十分である。ユーザー側での,相応の努力が不可欠だ。しかし,そういった手間も含めて楽しさを感じられ,さらに設置スペースを確保できる人なら,買って損はしないはずだ。まさしく,「ゲームをとことん楽しみたい人の為のコンピューター・デスク」(※原文ママ)というキャッチコピーに恥じない,粋な製品なのである。
なおこの記事を掲載した2013年7月3日現在,XAC-1はちょうど2次出荷がスタートしたところ。また東京・秋葉原の「三月兎魔窟店」および「東洋計測機CUSTOM」では実機の展示も行われているそうなので,実物を見てみたいという人は,秋葉原まで足を伸ばしてみてもいいだろう。本稿でXAC-1に興味を持った人は,下のリンクから公式サイトをチェックして,夢のプレイ環境構築に向けた一歩を踏み出してみてはどうだろうか。
マイコンソフト「XAC-1」製品情報ページ
マイコンソフトダイレクトショップ「XAC-1」販売ページ
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ファイティングエッジ,リアルアーケードPro.
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