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「PlayStation 5 Pro」分解レポート。最新APUを搭載する高性能モデルの内部構造を明らかにしよう
4年前に登場した初代「PlayStation 5」は,ソニーらしい非常に凝った作りのハードウェアとなっていたが,その上位モデルであるPS5 Proの内部はどうなっているのだろうか。4年分の進化を確認してみよう。
※注意
ゲーム機の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は4Gamerが入手した個体についてのものであって,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」ことを保証するものではありません。
ユーザーが触れられるところは比較的簡単にアクセスできる
標準タイプのPS5は,筐体内にあるPCI Express(以下,PCIe)接続型M.2 SSD用スロットに,側面パネルを開けるだけでユーザーが触れられるようになっていた。実際,内蔵ストレージが足りなくなったので,自分でSSDを増設したという人も少なくないだろう。
その点は,PS5 Proも継承しており,横置き時の底面側パネルのサイズが小さい側を外すだけで,SSD用スロットを覆うカバーが見える仕組みだ。また,PS5 ProはBlu-rayディスク(以下,BD)ドライブを内蔵していないが,別売りのBDドライブユニット「CFI-ZDD1J」を底面に取り付けられるようにもなっている。
BDドライブユニットは,底面側の大きな側のパネルを外して,そこにはめ込む。つまり,PS5 Proの底面側パネル2枚は,ユーザーが外しても製品の保証が無効になったりはしないわけだ。
次の写真は,底面側パネルを2枚とも外した状態だ。縦置き時には上になる写真左側には,大きな空冷ファンとSSD用スロットのカバーが,右側にはBDドライブユニット接続用の端子と,小さな金属製カバーで覆われた部分がある。
ただ,今どきのM.2 SSDは,動作時にかなり高熱を発するので,SSDの冷却が間に合うのか,ちょっと不安を感じる。
プラスネジで固定された小さな金属製カバーを開けると,中にはボタン電池がはめ込まれていた。初代PS5では,ボタン電池がマザーボード上にあったので,電池を交換する必要が生じても,ユーザー自身で交換することは基本的にできなかった(※製品保証が無効になる)。それに対してPS5 Proでは,側面パネルとカバーを外すだけでボタン電池に手が届くので,修理に出さなくても交換できるのはありがたい。
大型のファンが,ボディの天面から底面まで,貫通するように取り付けられている構造は,PS5と変わらない。
マザーボードを金属板でサンドイッチ
PS5 Proのマザーボードに触れるには,まずは外側のパネルと内側の黒いカバーを外す必要がある。底面側の黒いカバーを外すと,マザーボードを覆う金属製のパネルと,その上に取り付けられたヒートシンクとヒートパイプが現れた。
天面側のカバーも外すと,こちらも金属板とヒートシンク,ヒートパイプが貼り付けられていた。天面側はヒートパイプが7本もあり,これらがまとまる部分にPS5 ProのメインプロセッサであるAPUがあるようだ。
マザーボードを上下2枚の金属板でサンドイッチしたうえで,上下にそれぞれヒートシンクを取り付けた構造は,初代PS5とはだいぶ異なる。とくに,上下2分割したヒートシンクは,PCやほかのゲーム機では見たことのないものだ。
初代PS5は,熱伝導に優れる銅素材を使った大きな金属パネルに,銅製ヒートパイプとアルミニウム合金と思われる巨大なヒートシンクを貼り付けた構造を採用していた。部材だけでもかなりのコストがかかっているのは明らかで,「贅沢な冷却機構を採用したもんだな」と感心したものだ。それに比べるとPS5 Proは,銅素材の使用をヒートパイプだけに留めており,冷却効率とコストのバランスを突き詰めた構造になっているようだ。
マザーボードを挟んだ金属板は,20個近いトルクスネジで固定してあった。そのうえ,ネジだけでなく,粘土のような熱伝導材を多数使ってマザーボードに貼り付けてあるので,かなり力をかけて剥がさないと外せない。「マザーボードを割ってしまわないか……」と不安になりながらも力を入れて外すと,ようやくマザーボードの登場だ。
底面側の金属板を外してから,APUを圧着しているプレートを取り外すと,ようやく天面側の金属板を外せて,マザーボードの全体像が現れた。「VSM-010」というマザーボードの型番らしいものも書かれている。
初代PS5のマザーボードは,かなり複雑な形状をしていたが,PS5 Proはシンプルな長方形になっていた。サイズは実測で約241×182mmと,デスクトップPC用のMicro-ATXマザーボード(244×244mm)よりもやや小さい。
天面側にはAPUのほかに,電源回路やコンデンサ,HDMIや有線LAN,USB Type-Aのコネクタ類,そしていくつかの目立つチップがある。
一方,底面側には,APUを囲むような配置で8つのチップが貼り付けられている。初代PS5では,APUの裏面側に8つのメモリチップが貼り付けられていたので,PS5 ProのこれもメモリチップのGDDR6メモリであろう。
ちなみに,本体前面のUSB Type-Cポートやボタン電池のソケットは,小さな別基板になっていた。
APUの姿が露わに。ダイサイズは約279.1mm2
APU自体を確認するには,これらを全部除去しなくてはならない。
スポンジとカバー,黒いフィルムのすべてを外して,表面に残った液体金属を除去すると,ようやくAPUの全体が現れた。これがPS5 Proの心臓部であるメインプロセッサだ。外枠部分には「SONY INTERACTIVE ENTERTAINMENT」と,APUの型番らしい「CXD90072GG」が刻印されている。製造は台湾のようだ。
長方形のダイ部分のサイズを計ったところ,実測で25.42×10.98mmだった。つまりダイサイズは約279.1mm2となる。初代PS5のダイサイズは,実測で約308.2mm2だったので,少しだが小さくなったわけだ。標準タイプのPS5より高性能になったにも関わらず,少しとはいえダイサイズが小さくなったのは,半導体プロセスの微細化による恩恵だろう。
標準タイプのPS5には,この2GBのメモリはない。おそらくはOSやゲーム以外のアプリに使うメモリではないだろうか。OSなどをGDDR6メモリ側から,やや低速なDDR5メモリに移せれば,それだけゲームに使えるGDDR6メモリが増えるので,PS5 Proなら増えたメモリを生かした表現が期待できるかもしれない。
フラッシュメモリチップ表面の刻印はSamsung製チップのものだが,型番らしい「K9OUGD8-J1ETCB0」は,公開情報が見あたらない。メモリやフラッシュメモリの型番から仕様を調べられるサイトで確認してみたところ,容量4096Gbit(=
このメモリの用途は不明だが,SSDコントローラに隣接しているという点を考慮すると,やはりSSD用キャッシュメモリではないだろうか。
そのほかの目を引いたチップについては,簡単に紹介しておこう。ワイヤレスLAN用のコントローラは,ソニー製の「M23TFU1」であった。Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)とBluetooth 5.1に対応しており,1枚の金属製アンテナに配線がつながっていた。
Nuvoton Technology製のHDMI 2.1対応トランスミッタ「MN864739」。初期型PS5と同じものだ |
有線LANポートの近くにあったチップは,1000BASE-T対応のEthernetコントローラと思われるが,正確な情報が見つからなかった |
最後に,本体に内蔵されていた電源ユニットも見ていこう。PS5 Proの電源ユニットは,APUの上側に設置されている。かなりの薄型電源ユニットであるが,最大出力は420Wというなかなかの高出力電源だ。
高性能化しつつも,可能な限りコストダウンに配慮したPS5 Pro
PS5 Proを分解してみたわけだが,分解して感じたのは,初代PS5に比べると,随所にコストダウンの工夫が盛り込まれているな,ということだ。初代PS5を分解したときは,直前に初代Xbox Series Xを分解していたこともあり,ゲーム機では見たことのない大型シロッコファンや,銅をふんだんに使った冷却機構,複雑な形状のマザーボードにオンボードのフラッシュメモリなど,コストのかかる凝った構造を採用しているのに驚かされたものだ。
それに比べると,PS5 ProはPS5の構成を踏襲しつつも,冷却機構やマザーボードの形状にコストダウンの取り組みがうかがえて,興味深く感じた。ボタン電池を交換しやすくした構造も評価できるポイントだ。
PS5分解記事の最後で筆者は,「将来のPS5でどんな改良を加えてくるのか」を確認したいと述べたが,PS5 Proは,PS5の構造を継承しながら,新しい工夫を盛り込んできたのがよく分かった。今後も小改良を加えつつ,PS5とPS5 Proは続いていくのだろう。
SIEのPS5 Pro公式Webページ
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PS5本体
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