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中国ゲームの美少女にはエモさが足りない――だから自分たちでエモくした恋愛SLG「シンギュラリティ×ラブストーリー」[CJ2024]
といっても試遊台はまるでなし。せわしないCJ会場で憩いの休憩所になれればいいと,広々とした空間を椅子ばかりで埋めていた。
シンギュラリティ×ラブストーリーあらためシンラブは(英名はCrazy Ones),中国では1年ほどサービスされてきた作品だ。
そして,同社は日本でも「幻境エンターテインメント」という名の支社を2024年5月に設立していたらしく,すでにAndroid版のクローズドβテストも終えていて,今夏は追い込みの時期にあるそうな。ちなみに,8月12日から25日にGoogle Playで2回目のβテスト実施するそうで,詳しくは公式Xで確認してほしいとのことだったが,そうした事情をまったく知らないままに近づいてしまっていた。
情報を取りこぼしていたゲームメディアとしてはあまり顔向けできない衝突事故だが,こうした婉曲的な出会いもまた,恋愛SLGのシチュエーションに落とし込めばそう悪くないエピソードになるであろう。
シンラブのキャッチコピーは以下のとおりだ。
ついでに,ストーリーのほうも解説しておこう。
物語の舞台は,人工知能などの先端技術が盛り上がってきた現代寄りの近未来。「まもなく人類滅亡!」という予言が広まったところ,秘密結社「ピラゴラス・フラタニティ」が騒ぎだし,最新技術やエリート層を利用して,人類の99%以上の自由意志を剥奪し,支配した。
彼らはさらに,世界中の人々を監視下に置き,人類の発展予想を完璧に予測できるスーパーコンピュータ「ラプラスの魔」を生み出そうと,量子技術を手に入れるためのベテランスパイを送り出した。
そんなとき,ひょんなことから(この姿勢が大事),なにも知らぬ社畜の中二病青年たる主人公が陰謀に巻き込まれ,監視下の未来に対して,分散型インターネットの自由性で対抗しようと考える。
頼れる仲間は,天才美少女に,凛々しい女性CEOに,いつもそばで支えてくれる完璧秘書に,歌手を目指して都会にやってきた田舎娘。彼女たちとともに,世界を変えさせないために,世界を変える。
そして思う存分,難局の「圧」と恋愛のドキドキを味わおう!
――といったものらしい。
あまり正確な言葉では書かないが,そういう社会に対してこういう姿勢を描くところは,なんというかスピリッツを感じるところだ。
恋愛面では,Live2Dをふんだんに取り入れた美少女&美女キャラクターたちのビジュアルと,彼女らとの物語に力を注いでいるらしい。
また作中では主人公が社長となり,会社経営SLGも楽しめる。戦闘もあるようで,カードを用いたバトルでは「蛙化現象」「ネット弁慶」「エロゲー広告」「粘着者」など,“あるあると思わせる魔物”と戦っていくという。最新語から古典語までフォローしている模様だ。
結果,総じて「やりやすくておもしろい!」とのことである。
現地では,ブースでゆったり休んでいるスタッフに話を聞けた。
彼いわく,シンラブは高品質なギャルゲーを目指してきたそうだ。その発端は,中国でモバイル向け恋愛作品というと女性向けの乙女ゲームが強く,男性向けもあるにはあるが,ジャンルの住み家はPCがメイン。男性向け美少女恋愛スマホゲームというカテゴリは薄かったらしい。
そこで「私たちがそういうの大好きだから作った」。開発陣はみな,恋愛アドベンチャーないしシミュレーション(好きの)猛者ばかりで,熱意のままに制作したそうな。進むべき先はぶらさず一点。
「中国のゲームの美女には“エモさ”が足りない」である。
私はこのとき「はて,中国産の美少女的アプローチは,お隣さんのブースも含めてわりと大量にあるのでは?」と思った。けれど,彼らはさすが地元の肌感を知っているのか見解が違っていた。
彼は言った。中国のゲームにも大量の美少女&美女が存在するが,それらは(表面上の,と解釈したが)セクシーさに偏っていて,甘酸っぱい恋愛のエモーショナル感を見過ごしているのではないか。ゆえに,こうした恋愛偏重型のゲームが出てきてくれないのではないか。そうした自発的な危機感ないし奮起から,シンラブを作るに至ったそうだ。
それはある意味,ブルーオーシャン(もう死語)行きの古地図に見えるが,同時に,実の育ちづらい不毛な大地も想像させられた。けれども本作はこの1年で,カテゴリとしてはまだまだマイナーだという認識があるそうだが,累計300万人に遊ばれたという実績を積み上げた。
実際,誰もが最もウキウキするCJ2024初日のこと。シンラブのイタ服を着たファンが朝一でブースにやってきて,ほかのところにはいっさい行かずに,閉場まで1日中ブースにいたという強火っぷりを見せつけてくれたらしい。そうした者がいるくらい,深めに突けたのだろう。
ついでに「中国ではどんな性格のヒロインが人気か」と尋ねたところ,この1年の経過では,クールな感じの強い女性や,その逆であるパーフェクトな女神系美女が人気面で一歩リードしているらしい。
加えて「日本(のCBT)ではどうでしたか」と尋ねると,妹系キャラが圧倒的に突き抜けていたらしい。納得を前に異論は出さなかった。
よそのブースは魅力的なプレイアブルばかりで,遊んでいたらそのうち疲れてしまうだろうからと,完全に休憩所にすることを選んだ本ブース。試遊の1つも出さなかったのは,彼ら的にはもう1年サービスしていて,遊ぶ人は遊んでいるだろうから。実にいさぎよい発想だ。
人の体験というのは,意図せぬやり方で強く記憶に残せることもある。それを成せたかは私にも彼らにも分からないが,いわく。
「歩き疲れた人が出会う休憩所というのも,それはそれでエモいですし,そうした体験もまた,シンラブと通ずるものがあると思っています」
そういうエモさを,そろそろ日本でも味わえるみたいだ。
「シンギュラリティ×ラブストーリー」公式サイト
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(C)DREALITY ENTERTAINMENT CO., LIMITED
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