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[プレイレポ]「蟻の帝国――Empire of the Ants」,アリの視点で挑む壮大な生存戦略[gamescom]
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印刷2024/08/23 16:36

プレイレポート

[プレイレポ]「蟻の帝国――Empire of the Ants」,アリの視点で挑む壮大な生存戦略[gamescom]

 フランスの作家,ベルナール・ヴェルベルの大ヒット小説を原作とする「蟻の帝国――Empire of the Ants」PC / PS5 / Xbox Series X|S)(以下,蟻の帝国)が,gamescom 2024のMicroidsブースに出展されている。MicroidsのVictor Chiorean氏にゲーム内容を説明してもらいながらプレイしたので,その内容をお伝えしよう。

画像集 No.005のサムネイル画像 / [プレイレポ]「蟻の帝国――Empire of the Ants」,アリの視点で挑む壮大な生存戦略[gamescom]

 本作をプレイして最初に驚いたのはその視点で,プレイヤーはアリの目線でゲームを進行する。従来のシミュレーションゲームで一般的だった俯瞰視点ではなく,地面すれすれからの視界でプレイするという新鮮な体験だ。まさに一匹のアリになりきれる。

 基本操作はシンプルだ。Yボタンでジャンプ,Bボタンでスプリントと,覚えることは少ない(今回はPC版をXbox用コントローラでプレイした)。しかし,この単純な操作で広大な森の中を自由に動き回れることが大きな魅力となっている。

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 本作のグラフィックスは特筆に値するだろう。開発チームはフランスの森をフォトスキャンし,それをゲーム内に再現したという。その結果生まれた映像美は,「美しい」の一言では形容しきれないほどだ。

 通常のゲームでは見過ごされがちな,地表レベルの微小な世界の描写に,並々ならぬこだわりを感じる。草の一本一本,土の質感,小さな石ころの陰影までもが細部まで表現されており,プレイヤーはアリの目線で見る森の世界に没入可能だ。

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 朝露に濡れた草葉の輝き,風に揺れる花びらの繊細な動き,腐葉土のしっとりとした質感。これらの描写は単なる美しさだけでなく,ゲームプレイにも直接影響を与える。例えば,雨上がりの地面は滑りやすくなり,アリの移動速度に影響するのだ。


3タイプのミッションでまったく異なるアリ体験


 本作は難度別に3つのミッションタイプが用意されている。

Easy:基本的な移動やジャンプの操作を学ぶ
Medium:軍隊の操作や敵との戦闘,護衛ミッションなどが含まれる
Hard:ゲームの全メカニクスを使用する完全な体験

 筆者が最初に体験したEasyミッションでは,3匹のホタルを捕まえるという目的が与えられた。一見単純そうなこの課題も,アリの視点で行うと予想外の難しさがある。ホタルに近づきすぎると逃げられてしまうため,地形を巧みに利用しながら,タイミングよくジャンプして捕まえる必要があるのだ。Chiorean氏にはイージーと紹介されたが,簡単にクリアできるという意味ではなく,覚えることが少なく簡単に始められるという意味合いだったのかもしれない。

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 なお,本作で表現されている世界は,決して静的ではない。天候や時間帯がアリの行動に大きな影響を与え,ゲームプレイに変化をもたらす。

 例えば,寒い環境ではアリの動きが遅くなり,暑い環境では速くなる。雨天時は地面が滑りやすくなり,移動が難しい。そして夜間は視界が制限され,敵の発見が難しくなる。単なる見た目の変化ではなく,実際のゲームプレイに直接影響を与えるわけだ。

 これらの環境変化がランダムではなく,ある程度予測可能な形で訪れる。つまり,プレイヤーは自然のサイクルを理解すれば,それに合わせて戦略を立てられるのだ。例えば,雨季の到来を予測して食料の備蓄を増やしたり,夏の暑さを見越して巣の防衛を強化したりと,長期的な視点での戦略が求められる。

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 Mediumミッションでは,アリの軍団を操作して敵と戦う,より戦略的な要素が加わる。LBとRBボタンで部隊を選択し,LTで照準を合わせ,RTで命令を出すという操作方法は,直感的でありながら深い戦略性を感じさせる。Easyミッションは純粋なアクションゲームだったが,Mediumでは一気にストラテジー感が増した。

 本作の戦闘システムの核心は,異なるタイプのアリの存在と以下のような相性関係にある。

  • 戦士アリ:強力な装甲を持つが,遠距離攻撃に弱い
  • 酸を吐くアリ:遠距離から攻撃可能だが,機動力に欠ける
  • 働きアリ:機動力が高く,資源収集に長けているが,直接戦闘は苦手

 これらのユニット間には,じゃんけんのような相性関係が存在する。この仕組みにより,単純な数の勝負ではなく,適切な戦術の選択が勝敗を分けるのだ。

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 さらに,フェロモンシステムという独特な要素も戦略の幅を広げている。プレイヤーはさまざまな効果を持つフェロモンを使用して部隊を強化可能だ。攻撃力を上げるフェロモンや,移動速度を上げるフェロモンなどがあり,これらを適切なタイミングで使用することで,戦況を一変させることもできる。ちなみに,各フェロモンにはクールタイムが設定されているので,連発は不可だ。

 Hardミッションでは,フォグ・オブ・ウォー(一部隠されたマップ)のある広大な戦略マップが展開される。プレイヤーは下部,敵は上部からスタートし,マップ上のリソースや拠点を奪い合う。

 勝利条件は敵の女王の巣を破壊することだ。自分の女王の巣が破壊されれば敗北となる。この設定により,攻撃と防御のバランスを取りながら戦略を練る必要が生まれ,ゲームに深みを与えている。

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 特筆すべきは,マップの「生きた」感覚だ。リソースは有限で,時間とともに枯渇していく。また,中立の生物(ダニやムカデ)が存在し,彼らとの関係性も戦略に影響が出る。これらの要素が,単なる「陣取りゲーム」ではない,生態系のバランスを考慮した戦略の構築を要求するわけだ。

 さらに,季節の変化というマクロな時間軸も戦略に大きく影響する。春には新たなリソースが生まれ,秋には備蓄の必要性が高まる。こうした長期的な視点での計画立案が,ゲームの奥深さをさらに増しているのだろう。

 Hardミッションの核となるのが,巣を拠点としたアップグレードシステムだ。巣には複数のスロットがあり,そこにさまざまなアップグレードを購入して装備できる。

 アップグレードは以下のような多岐にわたる分野で実施可能だ。

  • 経済:資源の収集効率を上げ,新しい採集方法がアンロックされる
  • 軍事:新たなタイプのアリを生産する,既存のアリの能力を強化するなど
  • 科学:新技術を研究し,コロニー全体の能力を向上させる
  • 外交:ほかの昆虫との関係を改善し,同盟を結んだり交易を行ったりする

 これらのアップグレードは単純な数値の向上だけでなく,プレイスタイルそのものを変える。例えば,「夜行性」というアップグレードを選択すれば,夜間の活動が活発になり,昼夜のサイクルを逆転させた戦略が可能になるのだ。

 また,アップグレードには相性や相互作用も存在する。あるアップグレードの効果が,別のアップグレードによって増幅されたり,逆に相殺されたりするのだ。この複雑な相互関係を理解し,最適な組み合わせを見出すことが,中盤から終盤にかけての大きな戦略要素となるだろう。

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 Hardミッションでは食料や木材などのリソース管理が戦略の要となる。これらのリソースは,アップグレードの購入や軍隊の維持,巣の拡張など,あらゆる面で必要とされるからだ。

 プレイヤーは,マップ上に点在する採餌ポイントを確保し,そこからリソースを巣に運ぶことで経済を発展させていく。しかし,これらの採餌ポイントは中立の敵に守られていることが多く,確保するためには戦闘は避けられない。

 リソース管理の面白さは,その「トレードオフ」にある。

  • 働きアリを増やせば資源収集は効率化されるが,軍事力が手薄になる
  • 軍事力に投資すれば領土は拡大できるが,経済発展が遅れる
  • 科学技術の研究は長期的には有利だが,短期的にはリソースを大量に消費する

 こうしたバランスの調整が,プレイヤーの腕の見せどころとなるわけだ。また,季節や天候の変化によってリソースの価値が変動する点も,戦略性を高めているだろう。

 本作の魅力は,単にアリの戦いを描いただけではない。森全体の生態系が緻密に再現されている点にもある。

 例えば,プレイヤーはさまざまな昆虫や小動物と遭遇する。ダンゴムシ,ムカデ,テントウムシなどは,それぞれが独自の行動パターンを持ち,生態系の中で役割を果たしている。これらの生物との関わり方も,ゲームの戦略に大きく影響するそうだ。

 さらに,植物の成長や腐敗のプロセス,菌類の繁殖なども細かく表現されている。これらの要素は単なる背景情報ではなく,ゲームプレイに直接影響を与えるのだ。腐った植物はキノコの胞子を生み出し,それがアリの新たな食料源となったり,時には危険な病原体となったりする。

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 本作はミクロな視点での臨場感あふれるアクションと,マクロな視点での戦略的な思考を見事に融合させている点が特徴だ。

 一匹のアリとして森を駆け回り,リソースを集め,敵と戦う。そして次の瞬間,コロニー全体の指揮官として,部隊の編成や経済の管理,領土の拡大を考える。この2つの視点を絶妙なバランスで行き来するというのは新鮮で刺激的な体験だった。

 個別のアリを操作して危険な地域を偵察し,そこで得た情報を基に全体の戦略を立てる。あるいは,マクロな視点で決定した戦略目標を,個々のアリの行動によって実現していく。こうした異なるスケールの意思決定が,ゲームに深い戦略性と没入感をもたらしていると感じた。

 また,視覚的な要素に劣らず,本作のサウンドデザインにもこだわりを感じる。アリの足音,葉の揺れる音,水滴の落ちる音など,ミクロな世界の音が繊細に表現されているのだ。これらは単なる背景音ではなく,ゲームプレイに直接関わる情報を提供する。例えば,接近する敵の足音や,近くにある食料源を示す虫の鳴き声など,音を頼りに状況を判断する場面も多い。

 また,音楽も環境やゲームの状況に応じてダイナミックに変化する。平和な探索時には穏やかな曲が流れ,戦闘時には緊迫感のある音楽に切り替わるのだ。さらに,季節や天候の変化も音楽に反映され,没入感を高めている。

MicroidsのVictor Chiorean氏
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 本作は,アリの世界をかつてない精緻さで描き出すという,かなりユニークなタイトルだ。フォトリアルなグラフィックス,緻密なゲームシステム,そして何より「アリの目線」という独特の視点が,本作を唯一無二の存在としている。

 アリになって遊ぶと聞くとイロモノ感が強くなるが,本作はシミュレーションゲームとしての戦略性の深さと,アクションゲームとしての臨場感を高次元で両立させている,本格派のゲームだ。グラフィックスがリアル過ぎるというのが,欠点になりうるが,虫に嫌悪感を感じないのであれば,ぜひ一度プレイしてみてほしい。

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