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手に汗握る格闘ゲーム体験をボードゲームで。「GUILTY GEAR -STRIVE- The Board Game」のプレイレポートを掲載
本稿ではアメリカに拠点を置くボードゲームメーカー,Level 99 Gamesが開催していた新作カードゲーム「GUILTY GEAR -STRIVE- The Board Game」の体験会に参加してきたので,そのプレイレポートをお届けしたい。
その名のとおり,アークシステムワークスの対戦格闘ゲーム「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」を原作としたカードゲームで,同作のファンにとっても納得の完成度だったので,その魅力をお伝えしていこう。
※本稿に登場する作中用語はすべて英語版のものです。今後発売される予定の日本語版とは異なる可能性があります。
ボードゲーム版「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」,日本語版制作に向けたクラウドファンディング実施決定。デベロッパはLevel 99 Games
Asobitionは2023年8月24日,アークシステムワークスの対戦格闘ゲーム「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐」を原作とするボードゲーム「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐ The Board Game」の日本語版を制作し,クラウドファンディングを実施すると発表した。
「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐ The Board Game」公式サイト
格闘ゲームとカードゲーム,意外な組み合わせだが美しいルールの調和
本作はキャラクターごとの構築済みのデッキを用いて,相手のライフポイントを削りきることを目指す,1対1の対戦型カードゲームだ。今回の試遊では,ギルティギアシリーズの代表的なキャラクターであるソル=バッドガイとカイ=キスクが使用可能だった。
手番中にできることはいくつかあるが,基本となるのは手札から1枚のカードを選択し,伏せた状態で出す「Strike(攻撃)」と呼ばれる行動だ。カードには,キャラクターが持つさまざまな攻撃や必殺技,あるいは“投げ”やガードといった,格闘ゲームでおなじみの行動が描かれており,「Strike」ではこれを繰り出すことになる。
そして一方のプレイヤーが「Strike」を宣言した場合,相手側もこれに応じ,手札から1枚選んで出さなくてはならない。このときの双方のカードを比較して,攻撃の成否が決定される。本作の基本メカニクスは,この“じゃんけん”の繰り返しなのだ。
とはいえこの“じゃんけん”は,単なるカードの強さ比べには止まらない。カードには,それぞれ「Range(射程)」「Power(攻撃力)」「Speed(速さ)」「Armor(防御力)」「Guard(耐久力)」のパラメータが設定されており,「Strike」の解決はこれらを使って行われる。
まず重要なのは「Speed」だ。どちらが「Strike」を宣言したかに関わらず,先攻は「Speed」の値が大きいほうに与えられる。そして「Power」が相手の「Armor」を上回った分が,ダメージとなって相手のライフから差し引かれる(カードの効果がダメージではない場合もあるが)。
面白いのは,与えたダメージが「Guard」を超えていた場合,後攻のカードがほとんど効果を発揮できなくなってしまうことだ。これはつまり,格闘ゲームにおける「発生が早い攻撃で相手の攻撃を潰した」状況を表現しているのだろう。
なおカードによる攻撃がヒットした場合,そのカードは「Gauge(ゲージ)」としてプレイヤーの手元に止まり,一部行動のコストとして再利用されることになる。こちらはいわゆる必殺技ゲージ――ギルティギアシリーズ風に言うなら「テンションゲージ」の再現に違いない。
また「Strike」時に手札から出したいカードがない場合は,自分の山札の一番上のカードを確認せずに出す「Wild Swing」も選択できる。この場合,自分にも何が起こるかは分からないリスクがあるが,手札を温存できるメリットがある。
ほかのアクションについても軽く触れておきたい。「Strike」以外にとれるアクションとしては,カードを引いて手札を増やす「Prepare(準備)」や,相手に近づいたり離れたりして間合いを調整する「Move(移動)」,そしてカードを消費して有利な状況を作る「Boost」などがある。
「Prepare」と「Move」は分かりやすいが,注目すべきは「Boost」だ。
各カードは「Strike」で利用する以外に「Boost」にも用いることができ,これを宣言して表向きにカードを出すことで,カード下段の効果を発動できる。「Boost」の効果には,「カードを1枚引く」「3つ前進する」といった即効果を発揮するものもがあれば,「次のStrike時の攻撃力を上げる」「自ターンの終わりまで防御力を上げる」といった,効果が持続するものもあり,プレイヤーはこうしたアクションを駆使しながら,互いに「Strike」の機会を伺っていくのである。
有利フレームやキャンセルを駆使して,ずっと俺のターン!
このように,本作は2D格闘ゲームにおけるさまざまなシチュエーションをカードで表現したゲームなわけだが,“らしい”要素はまだまだ用意されている。その一つが,“態勢を崩されたのち,続けざまに技を繰り出し攻めを継続する”という「Advantage(有利)」だ。
「Advantage」は,一部の「Strike」や「Boost」の効果として得られるステータス(状態)なのだが,これが付与された状態では,相手に手番が回らなくなる。通常の「Strike」では,先攻と後攻の差こそあれ,手番はかならず双方に回ってくるもの。しかし「Advantage」が付いた場合は,次も自分の手番になる。結果,相手は続けざまに「Strike」に対応せざるを得ず,一気にライフポイントを削られてしまいかねないことになる。
これは格闘ゲームにおける“ダウン時の起き攻め”といった,フレーム有利状況を表現したものと思われ,ひりつくような展開を産み出す良いスパイスとなっている。
また「Cancel(キャンセル)」による奇襲で,相手の隙を突くようなことも可能だ。「Boost」が,来たる「Strike」に向けた準備行動であることは先に述べたが,これを実行すると普通は相手ターンになる。しかし多くの「Boost」は,「Gauge」を消費することで「Cancel」し,自分の行動を続けて行うことができる。再度「Boost」してさらにバフを盛るもよし,即座に「Strike」を仕掛けて相手の意表を突くもよし。いずれにせよ,これによってスピード感のあるゲーム展開が可能になる。
格闘ゲームに当てはめて考えるなら,これはギルティギアシリーズでおなじみの「ロマンキャンセル」を彷彿とさせるシステムと言える。「Cancel」は手札と「Gauge」が許す限り実行可能なので,対戦時には相手の「Gauge」にも注目して戦う必要があるわけだ。
……というように,本作は原作であるギルティギアシリーズを,うまくカードゲームの形に落とし込んだタイトルと言える。1プレイあたりにかかる時間も15分ほどで短く,気軽にプレイできるのもありがたい。
同じく格闘ゲームをモチーフとしたカードゲームには,Sirlin Gamesの「Yomi」というタイトルがあって,基本的なメカニクスは共通する部分があるのだが,本作の場合はそこに間合いやゲージ管理といった要素が加わっているのが新しい。これにより,一般的な格闘ゲームよりも展開がダイナミックな,ギルティギアらしいデザインになっていると感じられた。
なお試遊では,ソルとカイの双方のキャラクターを複数回プレイできたが,それぞれに得意戦略や間合いがあるようだった。ほかにも,例えばソルなら「Cancel」と「Advantage」を駆使した怒涛の攻めが得意など,キャラクターごとに個性が付けられている。製品版には全部で20キャラ分のデッキが用意されるそうなので,原作ファンとしては今から楽しみである。とくに持ちキャラであるメイのイルカさんや,闇慈の花鳥風月,チップの紙のような体力がどのように再現されているか,大変気になっている。
格闘ゲームや原作シリーズへの想い入れあふれる開発陣
あとに確認したところ,本作の開発元であるLevel 99 Gamesは過去にも格闘ゲームをモチーフにしたボードゲーム「Exceed」をリリースしており,格闘ゲームのボードゲーム化には定評のあるデベロッパであるようだ。
残念ながら筆者は「Exceed」を遊んだことがなかったため比較はできないが,少なくとも試遊した限りにおいて,本作の格闘ゲームへの理解や,原作であるギルティギアシリーズへの愛は本物だと感じられた。
なお今回紹介したのは英語版だが,クラウドファンディングサイトのMakuakeでは,日本語版発売のための支援プロジェクトが立ち上げられ,先日,目標額の100万円を大きく上回る1158万円を集めることに成功している。
すでに完了済のプロジェクトなので今から支援はできないが,いつの日か一般販売されることがあるかもしれない。気になる人は販売元であるAsobitionの公式サイト,および公式X(Twitter)をチェックしておくといいだろう。
「GUILTY GEAR ‐STRIVE‐ The Board Game」公式サイト
Makuakeプロジェクトページ
著者紹介:Im Karton
海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」をはじめ,アメリカ「Gen Con」,フランス「Festival International des Juex」などを訪問。昨年はSPIEL Essenに行きたい旅行者向けのガイド「Essen Spiel Guidebook 2023」を同人誌として刊行。
- 関連タイトル:
GUILTY GEAR ‐STRIVE‐ The Board Game
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