インタビュー
[台北2024]リアルでファンと触れ合える機会を大事にしたい。コーエーテクモの鯉沼社長とマーケティングを仕切る襟川芽衣氏に,今年の台北の印象を聞く
[台北2024]2年連続出展のコーエーテクモゲームスブースレポート。シブサワ・コウブランド長の伊藤氏からのコメントも
コーエーテクモゲームスは,2024年1月25日から28日まで台湾で開催されている「台北ゲームショウ2024」に,2年連続で出展した。「レスレリアーナのアトリエ 〜忘れられた錬金術と極夜の解放者〜」グローバル版をメインにしたブースレポートと,シブサワ・コウブランド長の伊藤幸紀氏のコメントをお届けする。
この配信に合わせたイベントでは,コーエーテクモゲームス 代表取締役社長の鯉沼久史氏がステージに登壇していたのだが,今回,会場で鯉沼氏にインタビューする機会を得た。
コーエーテクモゲームス ルビーパーティーブランド長であり,マーケティング本部副本部長を兼任する襟川芽衣氏にもご同席いただき,お2人に台北ゲームショウや台湾市場への印象について聞いた。
4Gamer:
昨年に続いて2回目の台北ゲームショウ出展となりますが,今年の出展はどういった経緯で決まったのでしょうか。昨年で手ごたえを感じられて,ですか?
鯉沼久史氏(以下,鯉沼氏):
昨年出展させていただいて,良くも悪くもいろいろな反響をいただけたのがありがたかったというのはあります。それと,今回はちょうどグローバルに向けて「レスレリアーナのアトリエ」を配信したいタイミングでもあったので,時期が良かったというのも理由ですね。
4Gamer:
台湾で出展を続けるにあたり,思っていたより難しかった部分や苦労したことなどはありましたか?
襟川芽衣氏(以下,襟川氏):
東京ゲームショウに比べると,現地でのノウハウがまだ溜まっておらず,イベントの手配が思い通りに進まないなど,細かいところでトラブルはありました。また出展する機会があれば,次はうまくやりたいですね。
鯉沼氏:
今年はブースの広さを2.5倍ぐらいにして,昨年はなかったイベントステージを作ったんです。ただ,実は東京ゲームショウ2023でもステージをやっていなくて,久しぶりだったので,ちょっと大変でした。
4Gamer:
今年の会場の様子は,昨年とだいぶ違っている印象を受けたのですが,鯉沼さんはいかがでしょう?
鯉沼氏:
相当変わりましたよね。台北ゲームショウって,もっと配布をメインにしたラフな感じの出展が多いイメージだったんですけど,今年は試遊台を並べているブースが非常に増えて,東京ゲームショウのような雰囲気を強く感じました。
市場的にはモバイルゲームが大きいのですが,コンシューマゲームに対する熱量の高さを改めて感じられて,嬉しくもあり,ちょっとびっくりしたところもあり,といったところです。
4Gamer:
とくに日本のメーカーの出展が本当に増えましたよね。昨年は,試遊をメインとした日本メーカーの大きなブースは,コーエーテクモさんぐらいだった気がするのですが。
襟川氏:
私は台北ゲームショウは初めて来たのですが,昨年の出展で聞いていたイメージと全然違っていて,驚いています。ブースはすごく豪華でクオリティが高いですし,試遊も多くて。そこに来場者の皆さんが根気強く並んで,遊ばれて,特典をもらって喜んで帰っていく様子が印象的でした。あと,ステージイベントも多いですし,東京ゲームショウとあまり変わらない印象を受けますね。
4Gamer:
ホール自体は広くないんですけど,そこに東京ゲームショウをぎゅっと詰め込んで,もっとごった煮にした雰囲気があります。
襟川氏:
アナログゲームのコーナーが盛り上がっているなど,東京ゲームショウでは見られない光景もあって面白いです。
鯉沼氏:
物販など,ビデオゲーム以外のゲーム関係の出展もたくさんありますね。
襟川氏:
ぎゅっとまとめたうえで,夏コミや冬コミが一緒になっているような……例えとして正しいか分からないですけど,ニコニコ超会議みたいな感覚です。
4Gamer:
ああ,すごく分かります。日本の方に説明しようと思ったら,その例えは分かりやすいですね。
襟川氏:
会場のごった煮感がすごいですよね,ゲームのブースがあって,すぐ隣で物販をやっていて,その隣でボードゲームを遊んでいる方たちがいて,その後ろではスプライトやラーメンを配っている。カオスな感じがすごく面白いイベントだと思います。
襟川氏:
ゲームショウって,ビジネス的な側面もあるものじゃないですか。それが完全にファンのためのイベントにもなっていて,来場者の皆さんが嬉々としている姿を見ると,私も楽しくなります。
4Gamer:
やはり,直接ファンの方の反応が見られる機会は,重要なものですか?
襟川氏:
はい。ファンの方と直接交流して,直接情報をお届けして,直接プレイしていただく。そして,そこで情報を見たりプレイしたりしてくださった方が,拡散してくださる。その発信力は,リアルのイベントならではだと思います。
コロナ禍でプロモーションがデジタル化して,リアルは縮小していましたが,それがようやく戻ってきましたので,リアルの取り組みは日本やアジアだけでなく,グローバルでやっていきたいと改めて感じました。
鯉沼氏:
金銭面を含めた効率だけを考えたらデジタルプロモーションのほうが良いのですが,ある程度非効率であっても出展して存在感を出すということは大事にしたいですね。定期的にリアルイベントには出ないと,ユーザーさんの顔も見られませんから。
襟川氏:
もちろん,費用対効果の問題はありますけど,チャンスがあれば積極的に出展したいです。
とくに台北ゲームショウは,台湾がクリエイターとのコミュニケーションを大事にする地域性なのか,開発者が来ると喜ばれますし,ステージの反応もいいので,直接の触れあいっていいなと,強く思いますね。
4Gamer:
襟川さんはルビーパーティのブランド長を兼任されていますが,台湾を含めたアジアの女性向けゲームの市場を,どう見ていらっしゃいますか?
襟川氏:
8年前,PlayStationさんのイベントで台湾に来たことがあって,そこで「金色のコルダ」の発売記念イベントをファン向けにやらせていただいたんです。そのとき,ものすごい熱気で迎えていただいて,プロデューサーに対する思い入れみたいなのが,日本よりも強いように感じたのをよく覚えています。日本語で「襟川プロデューサー!」と話しかけていただき,応援していただけたのが,すごく嬉しかったですね。
市場で言うと,まだまだ小さいとは思いますが,一定の需要はあると思います。最近も,シンガポールのINFOLDさんが,3Dの「恋と深空」を出されていましたね。
4Gamer:
男性キャラクターの好み,描き方みたいなものは,日本と変わらないのでしょうか。
襟川氏:
変わらないと思います。ですので,日本の女性向けゲームのグローバル展開を視野に入れるなら,一歩目はまずアジアが出しやすいのかなと。ただ,キャラクターの好みは絵柄も含めて日本と変わらないんですけど,ゲーム性に対する感覚は全然違います。日本はストーリー重視のシンプルなものが好まれやすいですが,アジアで見ると,いろいろなゲーム性を持っているゲームが好まれたりするんです。
4Gamer:
キャラクターがメインのゲームでも,システムが重視されるんですか?
襟川氏:
そうです。例えば先ほどの「恋と深空」は分かりやすくて,3Dキャラクターがバリバリ動くゲームだったりしますから。
4Gamer:
あ,戦闘が本格的なアクションということで日本でも話題になっていましたね。ドラゴンと戦ったりとかで。
襟川氏:
そうなんです。そうした好みの違いは,アジア展開をするにあたっての課題になっていくかと思います。
4Gamer:
今回は年明けタイミングということで,コーエーテクモさんの今年の展開についても聞いてみたいです。昨年は3月に新作がたくさんあった印象でしたが。
鯉沼氏:
今年はまず,3月にTeam NINJAの「Rise of the Ronin」,そして定番の「Winning Post 10 2024」でスタートします。その後,2024年度はまた気持ちを新たにさまざまな展開を予定しています。
襟川氏:
3月は,サービス中のタイトルの周年施策も多いですね。国内の「レスレリアーナのアトリエ」と「信長の野望 出陣」の半周年,「三國志 覇道」も3.5周年を迎えます。
4Gamer:
継続してサービスされているタイトルも,ずいぶん増えましたね。
鯉沼氏:
数が増えただけでなく,運営自体も大型化していますから,そのぶん注力しなければなりませんし,一方でパッケージゲームが求められていることも理解しています。運営型のゲームのためにパッケージゲームのラインを減らす,みたいなことはまったくないのですが。ゲームに求められるクオリティが年々高くなるにつれ,どうしても最後の仕上げに時間がかかるようになっているのが現状です。
襟川氏:
10年前,20年前と比べると,ゲーム1本の開発期間は長くなりましたね。皆さんの期待をどれだけ越えられるものを作れるか,技術開発している部門のスタッフたちも,クリエイターたちも必死です。
鯉沼氏:
皆さんの期待にお応えできているかということは,常に考えていますね。しっかりと作り込んだものを提供していければと思いますので,2024年のタイトルにもご期待ください。
4Gamer:
ありがとうございました。
4Gamer「台北ゲームショウ2024」掲載記事一覧
「台北ゲームショウ2024」公式サイト
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