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次世代CPU「Meteor Lake」を量産中! IntelのCPU製造を担うマレーシアの拠点はこうなっていた
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印刷2023/08/31 17:00

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次世代CPU「Meteor Lake」を量産中! IntelのCPU製造を担うマレーシアの拠点はこうなっていた

「MALAY」の文字が書かれたIntel製CPUの例。これは2014年登場の「Core i7-4790K」だ
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 10年以上前からPC自作を手がけている人なら,Intel製のデスクトップPC用CPUに,マレーシアで製造されたことを示す「MALAY」という文字が刻印されていたことを覚えている人もいるだろう。

 Intelは,51年も前の1972年に,同社初の海外工場をマレーシア北部にある観光地としても名高いペナン島に設立。それ以来,ペナン島だけでなく,対岸のクリン(※クリムとも呼ぶ)地区にも製造施設を建設して,Intel製プロセッサの組み立てや動作検証,研究開発などを行っている。同社の海外拠点としては,最も重要な施設の1つと言って過言ではないだろう。
 そして,マレーシアの製造施設では,今まさに,2023年後半に登場する次世代CPU,開発コードネーム「Meteor Lake」の量産が,盛んに行われている。

Meteor Lakeの試作品
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 2023年8月21〜22日にIntelは,世界の報道関係者を招いてペナン島およびクリン地区の同社施設を披露する見学ツアーを開催した。本稿では,ツアーで紹介されたIntelのマレーシアにおける取り組みと,プロセッサ製造や動作検証の様子を紹介しよう。

ペナン島南部,バヤンレプス地区にあるIntelの製造施設「ペナン キャンパス」(左)。右はその1つである「PGP14」だ
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 なお,Intelに限らず半導体メーカーはどこもそうだが,プロセッサの製造や動作検証を行う製造施設の内部は秘匿度が高く,見学者による内部の撮影は認められていない(※そもそも)。そのため,今回の記事で掲載した施設内部の写真は,基本的にIntelが提供したものであることをお断りしておく。


プロセッサ製造の後工程から動作検証を担当するIntelマレーシア


マレーシアにおけるIntelの取り組みについて説明したAK Chong氏(Vice president in Manufacturing, Supply chain and operations, Managing director Intel Malaysia)
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 プロセッサの製造は,大雑把に分けて,プロセッサの本体である「半導体ダイ」(以下,ダイ)そのものを作る「前工程」と,ダイを使って製品となるプロセッサを作る「後工程」に分かれている。Intelは,前工程の多くを米国本土の工場で行っており,前工程で作ったダイを,マレーシアやベトナム,中国,コスタリカにある後工程の工場で製品に仕上げて出荷するというのが基本的な流れだ。

左写真で金色に輝いている円盤が,前工程で製造するベースウェハ(以下,ウェハ)。これを細かく裁断して作るのがダイで,右写真のCPUパッケージ上に載っている黒くて四角い板状のものがそれだ。なお,両写真はあくまでも例として掲載したもので,左のウェハから右写真のダイを作ったわけではない
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Intelの製造施設がある地域を示した世界地図。水色は前工程,オレンジ色は後工程の工場がある地域だ。緑色も後工程だが,「Advanced Packaging」と呼ばれる高度な製造工程を担当している。マレーシアは,後工程と高度な製造工程をどちらも担当している唯一の地域である
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 マレーシアにあるIntelの製造施設は,ペナン島側にある「ペナン キャンパス」と,島の対岸にあるマレーシア本土側の「クリン キャンパス」に分かれており,どちらのキャンパスも複数の工場で構成されている。施設の数は合計で16棟もあるそうだ。これらの施設に勤務する従業員数は,1万5000人以上にも及ぶ。

ペナン(Penang)とクリン(Kulim)キャンパスの地図と規模を示したスライド。どちらもさらに追加の施設を建設中だ
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 大雑把に言うと,クリン側では海外の前工程工場から送られてきたウェハを,1つ1つのダイにカットしたうえで,ダイの品質検査を行い,次の組み立て工程に回す。ペナン側では,クリンから送られてきたダイを実際のパッケージ上に実装してプロセッサを組み立て,それをさらに検査する。
 こうしてマレーシアの施設で製造されたプロセッサは,PCメーカーなどの顧客へ向けて出荷されるわけだ。私たちが手にするPCに組み込まれているCPUや,PCパーツショップで販売されているCPUも,マレーシアからやってきたものが多いはずだ。

マレーシアにある施設と担当する作業を示したスライド。前工程以外のすべてを担当している
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ウェハをカットしてダイを製造するクリンの施設


 それでは,マレーシアの製造施設を,プロセッサ製造の流れに沿って紹介していこう。
 先述したとおり,前工程で製造されたウェハは,クリン側の施設で1つ1つのダイにカットされたうえで,品質を試験してどの製品に利用するかを決定する。これらの作業を担当するのが,クリンにある「Intel Kulim Die Sort Die Prep」(KMDSDP)と呼ばれる施設だ。

 ウェハをカットしてダイを作る作業「Die Preparation」(ダイプレップ)は,黄色い照明で照らされたエリアで行われていた。照明が黄色いのは,EUV(極端紫外線)に悪影響を与えないためであるという。

ダイプレップのエリア。色が分かりにくいが,下写真で通路の中央にある水色の機械は,ウェハやダイの箱を運ぶ輸送用ロボットだ
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 ダイプレップのエリア内は,当然ながら塵や微生物がほとんど存在しないように管理されたクリーンルームであるが,ウェハやダイは,施設内よりもさらに清浄な箱の中に収められて,ロボットによって機械の間を運ばれる。施設内全体を最高レベルの清浄度に保つのは,大変な手間とコストがかかるが,小さな箱の中だけなら,そこまで困難ではない。そのため,半導体の製造施設では,同様の仕組みを採用するのが一般的だ。

ウェハを収めた箱の例。写真ではカバーを外しているが,実際は半透明のカバーでガッチリ覆われており,内部に塵が入らないようになっている
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 直径300mmのウェハは,レーザーで溝を入れたうえでカッターによりカットされ,1つ1つのダイに分けられて検査工程に回される。

カットされたウェハ(左)から,ダイを取り出している様子。ダイはトレイに載せられて,ロボットで次の検査機械に運ばれる
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 ダイプレップに続いては,ダイの品質と性能を計測する「Die Sort」(ダイソート)と呼ばれる検査を行う。ここは極めて重要なプロセスで,製造されたダイがどのCPU(以下,SKU)になるかが決まる。CPUを例にして簡単に説明すると,欠陥がなく高い動作クロックでも安定して動くと判定されたダイは,高い価格で販売されるCore i9に,高クロックでは安定動作しないと判定されたダイは,安価なCore i5といった具合で,どのCPU製品に使えるかを仕分けるわけだ。

ダイソートのエリア。こちらは通常の照明だ。検査機械は数え切れないほどあり,同時に大量のダイをテストしている
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検査に用いるボード
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 検査を通過して,どのSKUに使うかが決まったダイは,SKUごとに分類されたうえでテープ上にまとめられてリールに収められる。残念ながら,リールの写真は非公開だったが,映画のフィルムリールのようなリールにCPUのダイが並んでいるのは,ちょっと面白い光景だ。

 クリンにはほかにも,プロセッサの開発や試験に使う特殊なマザーボードや試験機材を製造する「System Integration and Manufacturing Services」(SIMS)と呼ばれる施設もある。
 ここで作るマザーボードや機材は,世界各地にあるIntelの事業所で使うもので,外部の顧客に販売するものではない。

SIMSの内部と基板テストの様子
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 Intelが製造するプロセッサのテストに使う基板やテスト機材も,SIMSで開発,製造されている。消費者が直接目にする機会はまったくないものだが,テストに使う機材を自前で,それも大規模に開発,製造しているのは,Intelのような巨大企業ならではと言ったところか。

テストに用いるボードの例。ソケットにテスト用のプロセッサを装着してテストを行う
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ダイをパッケージに組み込むペナン側の工程を見る


ペナン キャンパスの施設「PG16」
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 リールに収められたダイは,ペナン キャンパス側の製造施設に送られて,製品への組み立てが行われる。組み立てを担当するのは,「Penang Assembly and Test」(PGAT)と呼ばれる工場だ。
 ここでは,ダイをCPUの基板部分に載せてハンダ付けをしたうえで,ダイと基板の表面を薄いエポキシ樹脂の層で覆う。さらに,ダイの上に熱伝導材を塗布してから,表面に放熱用のヒートスプレッダを貼り付けるという工程で組み立てられる。

ダイを基板に載せてハンダ付けを行う工程の様子
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写真右側のトレイに並んでいる4個は,エポキシ樹脂を塗布する前で,左側に並んでいる2個は,塗布したあとの状態だ。ダイの周囲を樹脂が包んでいるのが見てとれよう
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完成したCPU。これはMeteor Lakeである
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 完成したCPUは,正常に動作するかを確認するさまざまなテストプロセスに送られる。テストは基本的に自動化されており,AIベースの画像処理なども利用しているが,人間が見て確認するプロセスもあるのが興味深いところだ。訓練された人間の目は,まだまだ検証の役に立つようである。

完成したMeteor Lakeを検査している様子
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 ペナンの製造施設ではほかにも,さまざまな試験や検証を行う「Design and Development Lab」という施設があり,PCを構成する各パーツの動作検証などが行われている。Intelは,「NUC」と呼ばれる超小型PCを除くと,自社でPC本体を製造しているわけではない。しかし,マザーボードやグラフィックスカード,ストレージや各種拡張機器と組み合わせて,PCとして正常に動作するかどうかの確認は,PCメーカーや拡張機器メーカーだけに任せておくわけにもいかないので,Intelも大規模な検証施設を設けて,さまざまなテストを行っているわけだ。

Design and Development Labの一画。さまざまなテストが同時に行われている
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Intel製GPU「Intel Arc A770」搭載カードを使ったテストも行われていた
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こちらは,PCI Express 5.0の動作検証テスト。信号波形を表示している
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投入間近のMeteor Lakeだけでなく,3世代先のプロセスまで立ち上げるIntel


 Intelでは現在,第13世代Coreプロセッサに使われている「Intel 7」プロセスのほかに,新プロセス「Intel 4」でMeteor Lakeの量産を行っている最中だ。実際,ペナンやクリンの施設内では,製造中のMeteor Lakeや完成した試作品を至るところで見かけており,生産が順調に進んでいることをアピールしていた。

マレーシアで組み立てられているプロセッサの例。上から開発コードネーム「Sapphire Rapids」ことXeon Scalable Processor,Meteor Lake,開発コードネーム「Ponte Vecchio」ことIntel Data Center GPU MAXである。いずれも3次元実装技術「Foveros」複数のダイを基板上に実装した製品だ
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 さらにIntelは,この先にも,Intel 4プロセスの改良版となる「Intel 3」の製造を2023年後半に開始するほか,さらに先の世代となる「Intel 20A」プロセスの製造を2024年前半に,Intel 20Aの改良版「Intel 18A」プロセスの製造を2024年後半に開始するといった具合に,5種類のプロセスを4年間で開発,製造するという意欲的な計画を立てている。

5種類のプロセスを4年間で投入するIntelの計画。14nm以降の停滞ぶりを払拭するような動きだ
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 これらは前工程の話であるが,それを実際の製品として完成させるのが,マレーシアの製造施設というわけだ。とくに,複数のチップを基板上で組み合わせて1つのプロセッサ製品を完成させる実装技術「Foveros」を用いたプロセッサを大量生産するには,高度な技術と製造設備を備えたマレーシアが欠かせない。
 ペナンやクリンでは,先進的な製造設備に対するニーズに応えるために,新たな施設も建設中であり,これまでよりも多くのプロセッサを生産していくことになるだろう。

 Intel製のCPUや,CPU搭載PCを購入するときは,「これもマレーシアの施設で作られたのかな」と思い出してもらいたいものだ。

Intelのペナン キャンパス公式Webページ

Intelのクリン キャンパス公式Webページ

  • 関連タイトル:

    Intel Core Ultra(Meteor Lake)

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