インタビュー
[インタビュー]Quest対応「サンバDEアミーゴ」中村 俊プロデューサーに聞く,VR版ならではの魅力。体験レポートも掲載
Nintendo Switchでは「サンバDEアミーゴ:パーティセントラル」の発売が8月30日に予定されている。両タイトルの基本的な部分は共通しているものの,VRゲームには独特のプレイフィールが存在する。音楽に合わせてマラカスを振るリズムアクションは,どんなVRゲームになるのか。
両タイトルのプロデューサーを務めるセガの中村 俊氏に聞いてきたので,開発のコンセプトやVR版の特徴などを,体験レポートと共にお伝えしよう。
「サンバDEアミーゴ」公式サイト
前述のとおり,Quest版とSwitch版のゲームモードはほぼ共通だが,前者には「ふたりでパーティ」などのオフライン用2人プレイモードは収録されていない。収録楽曲については同じものになるようだ。
[プレイレポ]令和に帰ってきた「サンバDEアミーゴ:パーティーセントラル」はマラカスを振るアクションを,Joy-Conの操作で見事に再現
セガから2023年8月30日の発売が予定されている「サンバDEアミーゴ:パーティーセントラル」を一足早くプレイすることができた。マラカスを振って遊べる名作リズムアクションの最新作は,SwitchのJoy-Conをマラカスに見立てた操作が特徴だ。
もちろん,基本ルールも同様だ。左右に3か所ずつ,計6か所のリングに向かってくる「リズムダマ」が重なったときに,手に持ったコントローラを振るというもの。Meta Questのコントローラはマラカスの形にちょっと似ていて,しかも画面内には手にしているマラカスが表示されるため,それだけで気分はけっこうアガる。
Quest版では,リズムダマが画面奥から飛んでくる。VRゲームの演出としてはさほど珍しくはないものの,オリジナル版の画面中央から放射状にリズムダマが放たれる演出に慣れているとちょっと驚かされるはずだ。
リズムダマの演出が異なるとはいえ,プレイフィールはほとんど変わらない。リングが目の前にあるので,同じ場所に現れるスライドやポーズの表示にちょっと面食らったが,すぐに慣れるだろう。なお,リングの前後の位置は調整できるそうだ。
また,Quest版はヘッドセットのカメラがコントローラの高さを検知するため,アーケード版のマラカスコントローラに近い感覚でプレイできる。さらにコントローラは無線なので,当時のマラカスコントローラより取り回しの自由度が高い。振動演出もあり,完成度はかなり高いと感じた。
「サンバDEアミーゴ」最新作を手がけているのは,アーケード版やドリームキャスト版のディレクターを務めたセガの中村 俊氏である。今回はプロデューサーとして開発に携わっているとのことで,インタビューは懐かしい話から始まった。
アバウトなコンセプトはそのままに
「イマドキのバカ楽しい」をすべてのユーザーに
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。中村さんは1999年のアーケード版のディレクターを務めています。あれから約24年ぶりにプロデューサーとして,「サンバDEアミーゴ」最新作を手がけているんですね。
中村 俊氏(以下,中村氏)氏:
懐かしいですね(笑)。あのときは入社2年目だったかな。ソニックチームでやらせてもらった実験的なプロジェクトというか,「若手のやりたいことをやらせてみよう」みたいな感じで始まって,しかもチームとしては最初で最後のアーケードゲームの企画でした。チーム全体が前向きで,うまくハマったんですよ。
4Gamer:
チーム初のアーケードタイトルということですが,稼働後はけっこう話題になりましたよね。のちにドリームキャスト版もリリースされています。
中村氏:
当時は音楽ゲームが流行っていましたが,「beatmania」や「DanceDanceRevolution」のようにスペシャリストがカッコよく見せるゲームが多かったですね。我々はカラオケや飲み会のあとに,ゲームセンターでワイワイとカジュアルに遊ぶ内容を追求しようとして,「バカ楽しい」というキーワードの元に作っていたんです。
今回の「サンバDEアミーゴ」もその根っこの部分は継承していますが,シリーズ始動から20年以上も経過しています。サンバというジャンルや飲み会みたいなノリもちょっと違うということで,TikTokなどのユーザーが音楽に合わせて踊っている様子を参考にしたんです。
本格的に踊っている人もいれば,気軽に踊っている人もいる。みんながそれぞれのスタイルでやったり,見たりして,楽しくなってワイワイ騒げる。そんなノリを持ってくることで現代的にできるのではないかと,チーム内で考えながら「イマドキのバカ楽しい」を追求しました。
4Gamer:
リズムに合わせて正確にボタンを叩くというより,多少アバウトでもいいから身体を動かして楽しもう! といったところですね。
中村氏:
新しく「ダンス」というフィーチャーが入っていますが,これもカッコいいダンスを求めているものではありません。譜面として判定しているのは腕の動きだけなのに,画面に「真似しろ!」とお題を出されると,思わず体や足も動いてしまう。そういう楽しみ方を強調しています。
これはテストプレイをしているうちに分かったことですが,海外の方は音が流れていれば自然に踊ったりされますね。一方,日本の方はやっぱりちょっとシャイで,自分から踊ったりすることはあまりないんです。そういうプレイヤーも画面に表示されたら思わずダンスするような,誰からも楽しさを引き出す内容にこだわりました。
4Gamer:
「ポーズ」も同じコンセプトなんですか。
中村氏:
そうですね。ポーズは以前からあるものですが,“止め”の動作が入ることから「音楽ゲームとしてどうなの?」という意見はありました。ただ,突然はっちゃけたポーズをするところが笑いどころになるという変化球だったので,今回は新しいポーズも追加しています。
4Gamer:
新フィーチャーでは「ハプニングルーレット」もインパクトがありました。ランダムでアクションが決定するのは斬新ですね。
中村氏:
音楽ゲームとしては,ランダム要素の存在はある種の反則なんですよ。しかし,譜面を正確に刻む音楽ゲームではないので,パフォーマンスやアドリブ力を求められ,それを見ている人が笑って,互いに「楽しかったね」というところを体験してもらう。本作ならではの意図ですね。
実は難度に関しても,スーパーハードの上に「クレイジー」を用意していますが,これは譜面の難しさではなく,とにかく体を動かして楽しむものになっています。スーパーハードは純粋に譜面として難しいのですが,クレイジーは精神的な意味においてハードを超える難度みたいな(笑)。
4Gamer:
そんなことになっているとは(笑)。音楽ゲームとしてはかなり異色でしょうね。
中村氏:
社内では「これって面白いの?」という声もあったんですが,音ゲーとして成立させつつ,アバウトにも楽しめるバランスにはかなり気を使いました。もちろん,純粋に譜面を刻みたいという人にも楽しんでもらえるよう,ハプニングルーレットはオフにすることもできます。
4Gamer:
ゲーム実況配信に向いている内容だと思います。
中村氏:
著作権の都合で配信できない楽曲もありますが,パフォーマンスをギャラリーに見てもらう楽しみはあると思います。アーケード版のときも,普通に遊んでいるのを見るだけで笑えたりしましたが,その感覚を現代の表現に合わせることを目指していました。
4Gamer:
収録楽曲はどのような基準で選んだのでしょうか。
中村氏:
前作までは国内向けのリリースだったので,日本人の誰もが聞いたことがあってノれる,なおかつ世界でも有名な曲という基準で選んでいました。ただ,前作から時間が経っていて,DLCで曲の追加ができるようになったので,デフォルトの収録楽曲はラテンにこだわることもないと考えたんです。
また,海外の発売予定がありますので,ワールドワイドな方向性を目指しました。
4Gamer:
DLCで楽曲を配信できるようになったのは,音楽ゲームとしては大きな変化です。
中村氏:
今の時代,特定の曲がメジャーにヒットするというより,皆さんそれぞれに趣味のベクトルが違っていて,他人に流されず好きなものを追求される方が多いですよね。それでも楽曲は決めなければならないので,なるべく幅広い好みに答えられるように選曲をしています。
4Gamer:
アニソンやゲームミュージックなども,大きく好みが分かれるでしょうね。
中村氏:
そのアニメやゲームを知っているかどうかで,印象が全然変わります。
選曲の基準としては「多人数で遊ぶときに,みんながサビでノれるか」というところも重視しました。そのあたりは国内だけでなく,海外のチームともやりとりをしてきて,日本人でもちょっとは耳にしたことがあり,「サビならノれる」という楽曲を用意しています。
4Gamer:
アニソンや邦楽が少ないのは,そういう理由からなんですね。
中村氏:
追加曲はDLCとして配信する予定ですので,それをきっかけにゲーム本編と一緒に買っていただけることがあれば嬉しいです。
VRならではの演出でプレイヤーを盛り上げる!
4Gamer:
Meta Quest版ならではの特徴を教えてください。
中村氏:
本作は徹底的にノリを追求しているところがあって,盛り上がってくると譜面が見にくくなるくらいに派手な演出になります。ただ,VR空間ではプレイヤーの周囲全体を描けるため,その演出がさらに伝わりやすくなっています。
4Gamer:
Switch版と同時期に開発してきたのでしょうか。
中村氏:
はい。「マルチプラットフォーム」の一言で片付けられますが,それぞれ見せ方がまったく違いますから,一度に2つの手法を考えなければなりませんでした。
VR版のリズムダマが奥から飛んでくる仕様も,6か所の輪を置くかどうかも含めて,さまざまな試行錯誤の末に今の形になりました。アイデアとしては単純かもしれませんが,ここまでにいろいろな議論があったんです。
4Gamer:
Switch版とMeta Quest版では体験がだいぶ違うんですね。
中村氏:
そうなんです。Switch版は多人数で盛り上がることを強く意識し,Meta Quest版は没入感や体感的に楽しむことを強調しています。プレイスタイルや好みで選んでいただきたいですね。
Meta Quest版では,手元にマラカスが見えますので,自分がVR空間に入り込んでいるリアルさも味わっていただけるのではないでしょうか。事前予約を受け付けているところですが,主人公アミーゴがヘッドセットとコントローラを持ったカスタマイズ衣装がもらえるので,ぜひ彼と一緒に楽しんでください(笑)。
4Gamer:
新しい機種(Quest 3)にも対応しますし,秋の発売が楽しみです。
中村氏:
我々の部署は「ソニック」シリーズなども手がけていて,ただ速く走るだけでなく,それをどう楽しんでもらうか。ステージのバリエーションやストーリー,演出などを試行錯誤しています。
本作でも考え方は変わらず,ただ音楽ゲームを楽しめるだけでなく,より笑いが生まれることを常にこだわってきました。友達と集まってワイワイ楽しみたいときも,気分をアゲてスッキリしたいときにも,ぜひ遊んでいただきたいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
【商品概要】
商品名:サンバDEアミーゴ(仮称)
対応機種:Meta Quest 3 / Meta Quest 2 / Meta Quest Pro
発売日:2023年秋発売予定 ※Meta Quest 3への対応は2023年後半予定
価格:3628円(税込3990円)
ジャンル:リズムアクション
プレイ人数:1人(オンライン時2〜8人)
発売・販売:株式会社セガ
著作権表記:©SEGA
「サンバDEアミーゴ」公式サイト
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