プレイレポート
[プレイレポ]影から影へ跳ぶアクションゲーム「SCHiM - スキム -」。シンプルでおしゃれなアートスタイルの裏側には,意外にもしっとりした物語性があった
本作はオランダで活動するクリエイターEwoud van der Werf氏と,パブリッシャのExtra Niceに所属するゲームデザイナーNils Slijkerman氏によるタイトルで,Werf氏の学生時代のアイデアを元にExtra Niceが開発を支援し生まれたものだ。なお日本語版を含むアジア圏のローカライズとパブリッシングをPLAYISMが担当している。
本作でまず印象的に映るのが,色数を抑えつつ,シンプルかつおしゃれにまとめられたアートワークだ。その北欧モダンなデザインは,日本のイラストレーターであれば寄藤文平氏や長場 雄氏らの作風を連想させるテイストでもあり,以前から興味を持たれていた人も多いのではないだろうか。
これらはすべてリアルタイムで描かれる3Dグラフィックスであり,さまざまな位置・角度から眺められる。モノや光源の位置が変われば,モノから伸びる影の「形」や「向き」もダイナミックに変わっていくことも強調しておきたいポイントだ。
そんな本作のプレイ感はどのようなものなのか。リリース前にプレイしてみたので,そのプレイフィールをお伝えしよう。
作品のタイトルであり主人公の名称でもある「スキム」とは,オランダ語で「霊」という意味の言葉だ。影から影へ,ぴょんぴょん跳ねて移動するスキムたちは,子どもたちにしか見えず,大人になると見えなくなってしまうという。しかし,彼らはこの世のあらゆる影の中にいて,ヒトに限らず,世界中のモノが必ずひとつ持っているらしい。
この「影のカエル」のような主人公はどんな存在なのだろうか。過去のインタビューでSlijkerman氏は「そもそも精霊とは何なのでしょうか? それは皆さんのご想像にお任せして……」と語っており,解釈はプレイヤー次第ということのようだ。
[インタビュー]注目のパズルアドベンチャー「SCHiM」の開発者に話を聞いた。ミニマリストなゲーム作りはどのように行われているのか
BitSummit Let’s Go!!で,パズルアドベンチャー「SCHiM」を開発するExtra Niceのゲームデザイナー,ニルス・スリカーマン氏に話を聞いた。本作は,影の精霊スキムが街中の影をつたいながら移動していくというゲームだが,そのミニマリストな雰囲気はどのようにして作り出されていったのだろうか。
スキムの操作方法は,移動とジャンプ,入っている影へのインタラクション(働きかける)の3つでシンプルにまとまっている。コントローラでもキーボードでもすぐに思い通りに操作できるだろう。
スキムは影の中でしか動けないが,ジャンプをすれば影から影へと飛び移れる──子どものころ,そんなルールを決めて,友達と鬼ごっこなどをした覚えがある人もいるのではないだろうか。
では影から影へと移れなかったときはどうなるのか。その場合はスキムは消えてしまい,少し前にいた影から再スタートとなる。ただ,ジャンプに失敗し明るい場所に出てしまっても,消えるまでの短い時間の間に1度だけ小さなジャンプが可能で,それでリカバリーできることも多い。簡単すぎるわけではなく,またシビアすぎでもないバランスとなっている。
再スタートもきわめてスムーズなので,むしろ失敗を気にせずどんどんジャンプしていったほうがいいかもしれない。
そんなスキムを操作しつつ,各ステージのゴールを目指していくというのが本作の遊びとなる。難しいジャンプを成功させてショートカットを狙ってもいいし,回り道をしてゆっくり進んでもいい。ルートは複数あるので,自分好みのルートでゴールを目指そう。
ステージ中にはコレクションアイテムも置かれているので,それらを集めるために隅々まで探索するのもいい。移動手段が影から影へ飛び移ることだけに,舞台を自由に探索するというよりは,「あちらに行くにはどの影を使えばいいか」を,つねに考えるというパズルを解いている感覚だ。
ステージで行き詰ったら,カメラを動かしてステージをさまざまな角度から確認してみよう。ある角度からは行き止まりに見える場所でも,別の角度から見れば移動に使えそうな影が見つかるなど,カメラ操作はゲームを進めるうえで重要なカギになる。
操作だけでなく,やるべきこともシンプルで遊びやすい本作だが,実は単なるステージクリア型のアクションゲームというわけでもない。登場人物の行動や身振りなど,言語に頼らないストーリーテリングもまた本作の大きな魅力である。サイレント映画と同じく,プレイヤーがある程度自分で想像しながら楽しむタイプの物語というわけだ。
ゲームをスタートしてからしばらくは,とある子どもの成長を影の中から見守ることになる。家族たちとバーベキュー,母親と一緒にお出かけ,友人(弟?)と連れ立ってのナンパ,恋人との幸せな時間,そして別れ……。
その後とある理由で青年とスキムは離れ離れになってしまうのだが,その理由は実際にプレイして確かめてほしい。
以降,スキムとプレイヤーは人生に迷う青年の背中を追っていくことになるが,そのあたりからゲーム的にも手ごわい箇所が徐々に増えてくる。
たとえばハイウェイを行き交う車の影を渡っていく場面や,点滅する光に照らされた影が大きく伸びた瞬間を狙って移動する場面などは,モノの動きと光源の動き,そして光の明滅によって変わる「影」を意識しないと先に進めない。
あまり例を挙げすぎると謎解きのネタバレになってしまうので,このくらいに留めておくが,本作はアクションだけを楽しむだけのゲームでもなく,雰囲気やストーリーを楽しむだけのタイトルでもない。青年とスキムの物語を追いながら,ルート探しや解法探しに頭を悩ませるといったゲーム的な部分も楽しめる。なお,難度が極端に高いわけではないが,アクションゲームが苦手な人だと難しいと感じるかもしれない。
プレイしていて特に秀逸だと感じたポイントは,オープニングの演出だ。ゲームプレイと平行して子どもが青年に成長するまでが描かれていくのだが,大胆な時間経過の省略があり,それが独特のテンポ感を生んでいて,爽快さすら感じさせるものだった。
ここで描かれた人とスキムとの「ゆるくつながっている」関係性は,ゲームを進めていく原動力になってくれた。
青年とスキムが分離したあとの展開は,静かでリラックスしたムードが続いていき,ときには少ししんみりとするような展開もある。
「思わず引き込まれて一気に終わらせる」類のお話ではないが,毎晩寝る前などにコツコツと数ステージずつ遊んでリラックスしつつ,気がついたら最後まで遊びきっていた……というような遊び方がピッタリなタイトルだ。
人生において,誰もが孤独を感じる時期はある。ただ,自分が気がついていなくても誰かが眼差しを向けてくれていたりするもので,「それ」はあなたから伸びる影法師の中に潜んでいるのかもしれない。
「SCHiM」公式サイト
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