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インディーズゲーム展示会「東京ゲームダンジョン2」レポート。会場の熱気はそのままに,規模を拡大して開催
このイベントは,個人や小規模チームが制作するデジタルゲームが展示され,参加者が気軽に試遊を楽しめるものだ。
主催は,プログラマやエンジニアたちの開発者コミュニティ「週末Unityもくもく会」を運営している岩崎匠史氏らで,昨年8月の第1回に続き,2度目の開催となる。
インディーズゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」レポート。好きに作ったゲームを持ち寄りみんなで遊ぶ。夢のような迷宮がそこに広がっていた
2022年8月7日に,東京の都立産業貿易センター浜松町館で開催されたインディーズゲームの展示会「東京ゲームダンジョン」をレポート。数多く出展された,個人や小規模チームが制作するデジタルゲームから,気になったタイトルをピックアップして紹介。
「東京ゲームダンジョン」の特徴として,出展のスペースが広いことが挙げられる。1コマの机のサイズが180×90cmなので,試遊環境や宣伝素材,販売商品などをゆったりと配置できる。また通路もかなり広く作られているので,参加者が移動に困ることが少ない。ゆっくりと各展示を見て回り,気になるものがあればすぐプレイできる。
チケットの予約販売等によって会場内の人数をコントロールしていることもあり,「混雑のあまり興味を持った作品を試せない」といった,イベントでありがちな状況とは無縁なのも嬉しいポイントだ。
作り手の工夫や情熱をダイレクトに感じられる「東京ゲームダンジョン」。今回も,筆者が会場で気になった作品の中からいくつかセレクトして紹介していこう。
「東京ゲームダンジョン」公式サイト
円環エンカウンター
出展者:エンカ・エンカ円環上を移動しながら周囲から迫る敵を迎撃せよ!
その見た目からは想像しづらいタワーディフェンスの本作。シンプルで後を引くゲーム性と,抽象的なデザインを組み合わせた作品はインディーゲームではよく見かけるものだが,「円環エンカウンター」はその完成度の高さが印象に残ったタイトルだ。
ゲーム内容は,円環の縁だけを移動できる自機で敵を倒し,画面中央のコアを守るというもの。円の中心方向に発射する「銃」と,外側に向けて攻撃できる「剣」の切り替えがポイントとなる。
文章で説明してしまうと単純に感じられるかもしれないが,実際にプレイしてみると,武器の切り替えによって攻撃の方向が逆になる「ほどよい混乱」が起こり,もう1回,あと1回と後を引くようなプレイ感を味わえた。高スコアを狙うやり込みも楽しそうだ。
ガチャ将棋
出展者:B10ランダムに引いたコマでいかに戦うか?
将棋と,基本無料のカードゲームのガチャを組み合わせたような作品。コマの動かし方や「取った敵のコマをさせる」「敵陣に入ると成る」といったルールは将棋そのままだが,手ゴマの種類はスタート時にランダムで決定。その配置もプレイヤーが決めることになる。
また,取られたら負けとなる「王将」役のコマは自分で決められるので,どのコマが王なのかを秘匿するのも勝負のポイント。将棋やガチャといった誰もが知ってるであろうルールが使用されていることもあり,非常に遊びやすいが,奥深さを兼ね備えているが特徴となっている。
将棋とは思えない異常な盤面が生まれていく |
QUESTER 〜失われた世界の真実を探究する物語〜
出展者:サウザンドゲームズ萩原一至氏が構築した世界を往年のPCゲーム風に描いた作品
“ハクスラRPG”を謳う本作は,漫画「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」などの作者である萩原一至氏が構築する,“荒廃した未来”を舞台としたゲーム。ゲームデザイナーはグループSNEに所属する加藤ヒロノリ氏で,プロデューサーは桑原敏道氏が担当している。
PC-88シリーズ時代のRPGや,それよりも昔のゲームを連想させる作風であり,「フィールドを見渡せる範囲がとても狭い」「戦っても勝てない敵が普通にうろついている」「リソース管理がシビア」など,今となってはなかなか味わえないプリミティブな手触りである。
BGMもFM音源全盛期を思わせるメロディアスなもので,メインターゲットは40代後半以上といったところだろう。インディーズゲームではなく,あえて「同人ゲーム」と呼びたくなるレトロな作品だった。
なお本作は,1月30日から2月28日までの間,クローズドβテストも行うとのこと(関連記事)。また,数時間程度遊べる体験版も配信されているので,気になる人はぜひプレイしてみてほしい。
里山のおと
出展者:里山のおと人の暮らしと自然が交差する里山の日々
里山の自然と人の営みを,キツネ,タヌキ,カエルの3匹の視点で描いたノベルゲーム。ビジュアルは墨絵風,BGMは篠笛と,ほのぼのとした和の世界観が趣き深い。会場でプレイできたのは短い体験版だったが,完成が楽しみになった作品だ。
キツネくんが吹いた笛の音がタヌキくんの場面でも聞こえるなど,それぞれのルートで選択した出来事が別のルートにも影響を与える。用語をクリックすると詳しい説明を読めるなど,デジタルゲームらしい要素をしっかり備えていた。2023年中にリリース予定とのこと。
シェオルの森 −黄昏の魔獣使い−
出展者:PepperBombシンプルで目新しいルールが楽しい「蠱毒のパズル」
魔獣同士を戦わせてレベルアップさせたり,合体させて巨大な魔獣を錬成したりする「蟲毒」のような遊びを楽しめる落ち物パズルだ。
隣接した同じ種類の魔獣(ブロック)はまとめて消すことができるため,なるべく大きな塊ができるように消していくのがコツとなっている。
サークルを主催するムギメシロウ氏は,「SphereKnight」(iOS / Android)などを手がけたベテランの開発者であり,かつてはゲーム開発会社に所属していたそうだ。それもあり,市販のゲームと比べても遜色のない仕上がりとなっている。
十字路の守護神
出展者:交通安全委員会十字路の交通は俺が守る!
交通整理を行い,十字路の安全を守る3D交通管理ゲームだ。手前からくる車に対し,直進と右折,一時停止の指示を出し,正しいルートへと導いていく。
車を滞りなく流すとコンボがつながり高得点を得られるが,事故を起こすと残り時間が大きく減ってしまう。そのリスクとリターンをコントロールしつつ,いかに高得点を狙うかがキモとなる。また,コンボをつなげていくと街の様子が変わっていくのも楽しい。
Slash Step(仮)
出展者:雨音工房群がる敵をなぎ倒し,1対1でズバッ!
廃部寸前の演劇部を存続させるために,女の子がひとりで頑張るというストーリーのアクションRPG。会場では,戦闘部分が出展されていた。
戦いは,敵の集団をボタン連打でなぎ倒していくタイプのアクションで,ドットで描かれたキャラの動きが小気味いい。また敵に大きなスキができたときに,1対1の「殺陣」を挑むことが可能だ。
殺陣では,狙いすました一撃をタイミングよく目押しする必要があり,うまくキメると全体攻撃技のゲージがたまるなど,アクションとRPGの楽しさをしっかり絡めている。
必殺技の演出はまだ未完成とのことでダミーの絵が入っていたが,完成版が楽しみになるアニメーションだった。
ツキササリーナ -Tsukisas Arena-
出展者:超OKシイカ教授と一緒に研究する,イカとイカの「おつきあい」
個性的な女の子(シイカ教授)のビジュアルが見る者に“ツキササッテ”くる作品。だが,メインキャラクターは,シイカ教授が持っている試験管の中のイカのほうだったりする。
本作は,イカの頭頂部で相手のイカの下辺(お尻)を「突き刺す」ことができれば勝ちという対戦型のアクションゲームだ。もともとは,武蔵野美術大学に在学していた作者の卒業制作として作られたものだという。
イカは左右の移動とジャンプができ,落下の際には,ジャンプの高さで生まれた位置エネルギーに応じて沈みこむ。下から刺せば勝ちとなるので深く潜れば有利だが,そのためには高く飛んでスキをさらすことになり,その駆け引きが面白い。
研究室の危機を「シイカ教授」と一緒に乗り越えていくストーリー要素も用意されている。グラフィックスやセリフなどから,作者のフェチシズムが感じられるのがちょっと興味深い。
HARMA
出展者:INDIRECT SHINEモノクロ8階調のビジュアルが渋いデッキ構築型バトル
ゲームボーイの時代のゲームを思い出させる,モノクロ8階調のビジュアルが際立っていたカードゲーム。12枚のカードでデッキを作って敵と戦っていく。途中で,新たなカードを入手したり,カードを強化したりすることも可能だ。
アナログのカードゲームであれば煩雑になりそうな処理や,トークンの管理がとても遊びやすくまとめられており,デジタルの強みを最大限に活かした作りになっている。やり直しの効かないシビアさや,ダークなファンタジー世界で繰り広げられる悲劇的な物語も大きなウリだそうだ。
■ちょっと変わった作品やブースをご紹介
前回と同様に,今回も「東京ゲームダンジョン」という自由な場の空気を感じられるような個性的な作品や,展示ブースも紹介していこう。筆者的には,「ちょっと思いが突っ走ったインディーズ作品」も好きなのだが,皆さんはいかがだろうか。
メイクフレンズ
出展者:銭取センサーの付いたマネキンの頭部を持って振り回し,流れてくる目や鼻,口をくっつけてフレンド(の顔)を作っていくというゲーム。
要は,マネキンを操作して画面内ののっぺらぼうの顔を動かし,目などを適切な位置に拾い上げて顔を作っていく。あまりの奇想ぶりに,コメントがちょっと見つからない(笑)。
「できたて×2」というフレーズもじわじわくる |
烏龍ノ茶は親の仇と憎しみの味 / エイプリル・ジェネレーション
出展者:旅人の詩Games書籍「Unity&宴ノベルゲーム開発入門」(工学社)の出版時に催されたコンテストで最優秀賞を受賞したという「烏龍ノ茶は親の仇と憎しみの味」と,過去作「エイプリル・ジェネレーション」を展示していた旅人の詩Gamesブース。
作者のなんとかの詩人氏にお話を聞いてみると,作品の根底には発話障害や性的マイノリティなど,社会のダイバーシティに関する問題意識があるようだった。
ただし,その主義主張を押し付けることはなく,ゲーム自体は作者一人で声を演じ分けてフルボイスを実現するなど,楽しい作りのノベルゲームになっている。
Project:96 -九龍計画-
出展者:よじすぎ九龍城砦が舞台ということと,ADV「夜明けのスイッチをいれて」の作者よじすぎ氏の新作ということで気になった作品。試遊できる範囲が非常に短く,「もしかしたら,このお話はマンガなどの形で発表するかも」と話していた。
Rabbitoad
出展者:うどんぱ自作のお面と,ドリームキャストのロゴが描かれたTシャツがインパクト大で足が止まったブース。出典していた作品は「カエルのように見えてじつはウサギ」というキャラクターが活躍する,ジャンプだけでゴールに向かうアクションゲームだ。本来はマウスで操作するゲームだが,タッチパッドでプレイすることとなったため,かなり難度が高く感じた。
多種多様な作品と出会うことができた「東京ダンジョン2」。出展数は前回の2倍を超える約170で,参加者数も前回の600人を大きく超えたそうだ。
会場では,出展・参加者ともに若い人や女性も多く,参加者には小さいお子さんを連れた家族連れの姿を見かけることも。主催の岩崎氏は,インディーズゲーム開発者が主役のテレビドラマの影響などもあり,“インディーズゲーム”の認知度が上がってきたのではないかと,笑みを浮かべていた。
年内には第3回が予定されているとのことなので,次回はもう少し多くのタイトルを紹介してみたいと思う。
会場の一角にあった「らくがきコーナー」にはイベントの企画者である岩崎氏への感謝の言葉が書かれていた |
「東京ゲームダンジョン」公式サイト
- 関連タイトル:
QUESTER
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(C)萩原一至氏・加藤ヒロノリ・ Thousand Games