プレイレポート
[TGS2023]百合Wizこと「ウィッチ・アンド・リリィズ」2024年初頭に配信。女の子パーティを見守る,善にして邪な百合ーダーになろう
本作は昨年,女の子同士の絆をコンセプトにした“百合のWiz”として騒がれた作品だ。CAMPFIREでのクラウドファンディングは目標額をいともたやすく突破し,静かに激しい強火の支持をあらわにした。
[TGS2022]百合のWizがないから作る。「ウィッチ・アンド・リリィズ」のブースを訪ねてみたら嗜好の争い中だった
TGS 2022の開催前日となる2022年9月14日,ストロマトソフトという会社が,PC(Steam)向けダンジョンRPG「ウィッチ・アンド・リリィズ」を発表すると同時に,CAMPFIREでクラウドファンディングを開始して話題になった。それはなぜかって,これが“百合のWiz”だからだ。
さらにモンスターデザインに,「スプリガン」「ARMS」などで知られる漫画家・皆川亮二氏がゲスト参加するなどタレント面も強い。そんな本作の開発進捗,現状はいかがだろう。
百合×ダンジョンRPG「ウィッチ・アンド・リリィズ」に漫画家・皆川亮二氏がモンスターデザインで参加。描き下ろしイラストを公開
ストロマトソフトは本日,2024年初頭にリリース予定の「ウィッチ・アンド・リリィズ」に漫画家・皆川亮二氏がモンスターデザインでゲスト参加したと発表した。皆川氏は「スプリガン」や「ARMS」などで知られる漫画家。今回は,皆川氏の描き下ろしイラストも公開されている。
まずは昨年の上記記事の要約をしつつ,本作をとりまく空気感を紹介しておこう。より過熱した思いは以下のプロジェクトページで見られる。
【百合×ダンジョンRPG】「ウィッチアンドリリィズ」Steam版開発プロジェクト
・ストロマトソフトは“百合趣味サークル”のような会社
・ゲームは同社スタッフの少人数制作。外注先は増えた
・「俺的にはこうなんだよっ!」と解釈で戦争(していた)
・「百合にはさまる間男は断じて許さない」
原作:ストロマトソフト
企画・製作:ストロマトソフト/バンダイナムコミュージックライブ
キャラクターデザイン:magodesu
シナリオ:祁答院慎
企画協力/プロデュース協力:山岸功典(アナザーエンタテインメント)
音楽:AstroNoteS
音楽制作:ランティス
制作支援:クラウドファンディングにご支援頂いた皆様
開発:タストα
制作:ストロマトソフト
会場には試遊台が用意されているが,ダンジョン部分のみの体験で,百合イベントやキャラクターメイクは遊べない。そのため,今年は同社の代表取締役である藤田俊輔氏に,以下の話を聞かせてもらった。
まずはあらためてのゲーム概要だが,プレイヤーは冒険者パーティの(人格・性別なき)リーダーとして,“5人の女子冒険者パーティ”を率いて,広大な迷宮「魔女の大穴」を探索していく。
主人公は非戦闘員で,会話での存在感もドラクエくらいだとか。
なお,キャラクターデザインのかわいらしさは見てのとおりだが,作中のシナリオやクリーチャーにはシリアスでグロテスクな要素をふんだんに取り込んでいるという。つまるところ「こんなにカワイイのに,お話ヤバすぎ……」なギャップが持ち味となりそうである。そのあたりは,シナリオ担当の祁答院 慎氏の名を見て察する人もいるだろう。
基礎はターン制バトルのダンジョン探索RPGで,育成はスキルツリー方式だ。冒険者は好きにキャラクターメイクでき,8種の「ジョブ」,ジョブごとに4パターンある「見た目」,ボイスがひも付いたツンデレ・頑固・お調子者などの「性格」,人物相性に関わる項目を選べる。
★8ジョブのビジュアル
ウォリアー |
ナイト |
ウィザード |
ヒーラー |
ネクロマンサー |
バード |
スカウト |
ディガー |
★「森人(仮)」&「獣人(仮)」も追加
※クラウドファンディングのストレッチゴールで
★計10ジョブの(現時点での)見た目一覧
女の子たちには“自分以外の仲間への好感度”が存在し,絆を深めるとカップルになったり,三角関係になったりする。
そうした動向のために「あの子と! あの子と出かけてきなよ!」と促すのが,善にして邪な百合ーダーであるプレイヤーというわけだ。
そうして間柄を深めると,ダンジョン攻略中にバフがかかるなどのゲーム的な効用もある。それらの恩恵がなくてもいっこうに構わない,といった人も多そうだが……。また好感度は“普通にプレイしていて,ラストまでに全員最大値にするなどは難しい”そうだ。
逆に言えば,普通に攻略しているだけでみんな自然と仲良くなってしまい,「結局みんなこうなんじゃん」といったことにもならないらしい。攻めの姿勢とマネジメントが求められるのだろう。
ときには告白失敗や嫉妬イベントなども絡み,好感度に悪影響が出ることもあるようなので,百合ーダーのお仕事は大変だ。
なお,この世界には女の子しかいないわけではなく,サブキャラクターも含め男性が普通にいる。その点,男の存在感を徹底的に消すことで,百合のノイズを取り除く世界観づくりもオーソドックスであるが,いわく「女の子だけの世界じゃないところでの百合だからいい」とのこと。肯定するも反論するも火中の栗っぽいので,今は理解を示すのみで。
こうした百合のコンセプト設計が,ゲームとしてどのようにまとめられるのかについては発売日までの期待としておこう。現状でも十分,ネットリした熱い応援をかけられているだろうから。
なので,続いてはRPGの作りに関してだ。
本作はクラシックなダンジョンRPGを目指したとされる。それはイコール「ウィザードリィ(Wizardry)」と思っても相違ないだろうが,このジャンルを選んだ理由は,藤田氏が好きだったからだという。
つまり,発起人の好きと好きの合わせ技が本作なのである。
なお,藤田氏はゲーム業界でのキャリアで,ダンジョンRPG自体の制作には携わったことがなかったらしい。そのため強力なパートナーの力を借りて,RPG面の設計を追求してもらっていると語った。
ゲームボリュームは,通しプレイで約30時間ほどの想定。迷宮攻略と,理想の花園づくりのための迂遠的な手入れ次第だろう。
ダンジョンギミックなどもいろいろ用意するようだが,キャラクターロストの概念はない。そうしたときに生まれる滅美(ほろび)の美学も考えたようだが,「百合関係を壊すときはシステムではなく,自分(たち)の手で壊すほうがイイですよね」がポリシーのようである。
目標とするレベルデザインは,「特定のジョブを使わないと攻略できない」「特定のジョブが突出して強い」などの状況をなるべく避けることだという。
一方で「レベルと装備さえ調えれば,ボスでもゴリ押しできるようにしたい」らしい。キャラクターのツリー育成も関わりそうだが,難局を力技でどうにかしやすいなら詰みも避けやすそう。
それでもバランス的には,「ストイックなダンジョンRPGの未経験者には,ちょっと難しいかもしれません」と苦笑いされた。
ついでに,ショップで売却したアイテムがそのまま店頭に並ぶようにするかどうかは,目下の検討事項だとしている。
特定のテーマを尖りに尖らせ,盤石なゲームシステムと合わせて作品にする。同ジャンルでは,本作に類するような“そういう遊び方”も古来より語られてきたが,そうした試みをゲーム側にフォローされているといないとでは,プレイヤーの気持ちの乗り方も違う。
百合でダンジョンRPG。この分かりやすい構図は,好きを追い求めることが大事なインディゲーム界において非常にらしいと思えた。そして世界観のあり方も,ヒドい世界ほどキレイな百合の花が咲くとばかりにチューニングされていそうで,種まきのしがいもありそうだ。
4Gamer「東京ゲームショウ2023」記事一覧
「ウィッチ・アンド・リリィズ」公式サイト
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- 関連タイトル:
ウィッチ・アンド・リリィズ
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