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[インタビュー]「ピクミン4」の“みんなが楽しめて奥が深い”ゲーム性と物語はどのように生まれたのか。開発のキーマン2名に話を聞いた
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印刷2023/10/07 12:00

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[インタビュー]「ピクミン4」の“みんなが楽しめて奥が深い”ゲーム性と物語はどのように生まれたのか。開発のキーマン2名に話を聞いた

画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]「ピクミン4」の“みんなが楽しめて奥が深い”ゲーム性と物語はどのように生まれたのか。開発のキーマン2名に話を聞いた
 任天堂から2023年7月21日に発売されたNintendo Switch用ソフトピクミン4は,「ピクミン」シリーズのおよそ10年振りとなる完全新作だ。

 キャラメイクに新たなピクミン,頼れる相棒オッチン,今までタブー(?)だった夜の探索といった新要素が盛りだくさん。そして,初めての人も楽しめる自由度の高い探索から,自身のダンドリ(段取り)力を試せるチャレンジ要素まで,ピクミンの遊びが“これでもか”と詰まったゲームシステムが好評を呼び,発売から2か月が経過した今もロングヒットを続けている。

※過去作のSwitch版(関連記事1 / 2),「Hey! ピクミン」や「Pikmin Bloom」(iOS / Android)といった派生作を展開しているが,ナンバリングとしては2013年7月に発売されたWii U用ソフト「ピクミン3」以来

 発売から2か月が経ち,もうすでにクリアしたという人もいれば,好評を聞き「遊んでみようかな」と考えている人もたくさんいるであろう。そんなピクミン4のゲームの魅力を深掘りするため,任天堂にお邪魔して,チーフディレクター兼プログラミングディレクターを務めた神門有史氏,プランニングディレクターの平向雄高氏にインタビューを行った。
 遊びやすいけどコアなゲーム性も持ち合わせた,ピクミン4は一体どんな考えで制作されたのか――クリアしたことを踏まえつつ,ネタバレ抜きでいろいろ話を聞いてきたので,その模様をお届けしよう。

 なお,本インタビューは,任天堂公式サイトにてピクミン4発売前に公開されたインタビュー企画「開発者に訊きました : ピクミン4」リンク)の内容を踏まえた質問もあるので,合わせてこちらもチェックしておくといいだろう。

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「ピクミン4」公式サイト



ゲームの仕組みや物語をまとめる起点となった“オッチン”


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まず最初に,どのような考えでシリーズ最新作を制作したのかをお聞きしたいです。
 世界観や物語,ゲームシステムが,今までのシリーズの“いいとこどり”な楽しさがありました。本作を制作するうえで,ピクミンシリーズを見直し,総括しようといった考えはあったのでしょうか?

神門有史氏(以下,神門氏):
左が平向雄高(ひらむきゆたか)氏,右が神門有史(かんどゆうじ)氏。平向氏はレベルデザイン全般と原生生物の仕様,カットシーンやストーリー周りのスクリプトを,神門氏はディレクターとして,ゲームシステムの設計とピクミン/原生生物などのキャラクターのベースプログラムをそれぞれ担当している
画像集 No.039のサムネイル画像 / [インタビュー]「ピクミン4」の“みんなが楽しめて奥が深い”ゲーム性と物語はどのように生まれたのか。開発のキーマン2名に話を聞いた
 いえ。そういった考えはありませんでしたね。
 まず,ピクミン4が目指していたものの1つに,「このタイトルで,たくさんの人にピクミンを始めてほしい」「初めての人にも楽しんでほしい」というのがありました。過去作を知らない人に,これまで作り上げたピクミンというゲームの遊びと面白さを届けたいという考えで,過去作の遊びの要素をたくさん取り入れたんですね。いいとこどりという見え方がしたという理由は,そこにあるかもしれません。

平向雄高氏(以下,平向氏):
 物語も,過去作を細かくがっつり見直して……というほどではありませんでした。
 もちろん,基本となる設定や「最低限これは守ろう」というルールみたいなものはありますが,あまりガチガチに固めるのではなく,あくまでピクミン4というゲームを単体で楽しめるようにすることが大事だと考えていました。

4Gamer:
 なるほど。ピクミン4をプレイしていて,物語は1作目から続く話かつピクミン3にもつながるような雰囲気がありながらも,まったく別ものな感じもあって。「ifストーリーなのか? それとも並行世界?」みたいな想像をしながら楽しめたのですが,それはガチガチに設定を見直したのではない“ほどよいゆるさ”から得られたものと言えそうです。
 惑星で遭難して,ピクミンと出会って星を探索して……というおなじみの展開は変わらず,物語はピクミン4単体の新しい物語を作ったわけですね。

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平向氏:
 そうですね。地球のような惑星があり,小さな宇宙人がやってくる。そこで不思議な生きもののピクミンと出会い,ピクミンたちと力を合わせて何かしらの目的を達成し,自分たちの星に帰る。この,シリーズをとおして共通している話の流れを守りながら,新しいゲームの遊びやそれに合った物語を作り上げていきました。

4Gamer:
 新しい遊びの話となると,まずはオッチンのことを聞きたいです。ゲームのシステム面でも物語の面でもとても重要な役割を担っていますが,どういった経緯で生まれたのでしょう。

神門氏:
 ピクミン4の売りとなるものをいろいろ模索するなかで,まずオッチンの原型を考案しました。時期でいうとゲームの仕組みづくりとほぼ同じくらいなんですが,少しオッチンのほうが早いですね。そして,オッチンが生まれたことで,ゲームの仕組みや物語がまとまっていきました。

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4Gamer:
 オッチンがゲームの方向を決めるうえで起点になったわけですか。

神門氏:
 そうですね。当初は,遭難したオリマーをプレイヤーが単独で救助に向かう話だったんです。オタカラやシザイといったいろいろなものを集めて探索を進めるという,ピクミンシリーズでおなじみのゲームサイクルは決まっていました。
 そこに,新しいゲームの遊びの部分で売りになるようなものを加えたいと考えたときに,原生生物のチャッピーを操作するというアイデアがあったんです。

4Gamer:
 公式インタビューの「開発者に訊きました」の第2回(リンク)でも,機能的な部分としても,目を引く要素としても面白いんじゃないかという話をされていましたね。

神門氏:
 はい。ただそれは,ゲームの仕様としてまとめるのが難しかったんです。
 プレイヤーがある方法で原生生物に乗り移る……イメージでいうと,スーパーマリオ オデッセイ」の相棒・キャッピーのような要素などもいろいろ考えて試したりもしたんですが,ピクミンの世界に合ったものをとなると,それがなかなかまとまらなかったんですね。

4Gamer:
 ゲームシステムとして面白くても,ピクミンの物語として原生生物を動かせるようになる理由付けが難しかったと。

神門氏:
 はい。そうしていろいろ試行錯誤しているとき,「プレイヤーが1人で助けに行くのではなく,救助をサポートする相棒がいてもいいのではないか?」と思ったんですね。救助と言えば“救助犬”だし,では原生生物のチャッピーではなく,犬のような生きものがいたらどうだろうという話になりました。

 そこからですね,ゲームの遊びの部分と物語の両方がギュっとまとまっていったのは。「当初考えていた『原生生物を動かす面白さ』を,チャッピーのような大きさの宇宙犬でやってみよう」「救助犬がいるなら,救助は1人ではなくチームのほうが自然だから,レスキュー隊をテーマにした話にしよう」といったように,ピクミン4の骨組みができあがっていきました。

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4Gamer:
 ネタバレを避けつつお聞きしたいのですが……プレイヤーの相棒でありプレイヤーキャラクターとしてその役割を担うオッチンですが,物語においても重要なポジションにいますよね? そのあたりも最初から決まっていたのでしょうか。

平向氏:
 いえ。ゲームの遊びの部分を決め,話を作っていくうちに……という感じですね。
 本作にはモスというもう1匹の宇宙犬が出てきますが,その影響もありました。モスが登場した理由の1つはダンドリバトルの対戦相手というゲーム的な部分での役割がありましたが,「なぜオッチンとそっくりな生きものが出てくるんだろう。どういう関係にあるんだろう」と,整合性をとりながら物語の展開を考えた結果,オッチンの存在が大きくなっていきました。

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4Gamer:
 序盤から「優秀! そしてかわいい!」と信頼し,愛着がわいていた仲間だけに,中盤から終わりに向けての展開は本当に引き込まれました。

神門氏:
 ネタバレになるので詳しくは語れませんが,終盤の展開はけっこう頑張って考えました。ゲーム的にも物語的にも,よい形にまとまったのではないかと考えています。ぜひ,お話も楽しみながらプレイしていただけるとうれしいです。

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遭難者たちの人となりが,世界観の深みを増し,自然なゲームの流れを作った


4Gamer:
 オッチンに続いて気になった部分が,レスキュー隊の仲間や救助した人たちなどが集まるベースキャンプです。
 これまでの作品は1人や2,3人での探索で,基本的に静かで孤独なイメージがあったのですが,今回はとても賑やかで,また「まだ僕には帰れる所があるんだ……」という安心感があります。

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神門氏:
 孤独にサバイバルをするみたいなものとは違った切り口でいこうというのは,わりと最初のほうから決めていました。助け出した人たちが集まるキャンプというのも同様にイメージとしてありましたね。
 今まで描かれていたのはホコタテ星とコッパイ星だけでしたが,周りにももっとたくさんの惑星があって,そこにもいろいろな宇宙人がいるんじゃないか? と。たくさんの人が多重遭難してしまっているお話なので,いろいろな星から集まってくるというのは面白そうですし,それぞれに星に来た理由みたいなのがあると,世界の深みも増しますから。

4Gamer:
 こんなにも周りにいろいろな星があったのかという驚きがあり,また「救難信号が出ている星にそんな理由でくるの!?」というユーモアある動機でいろいろな立場の人たちが集まっているのは面白かったです。

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平向氏:
 観光旅行でやって来た人,学校の先生と生徒,惑星の調査で来ている人など,現実の世界でも身近な職業や立場を意識しました。性格も「こんな人っているよね」って共感してもらえたらいいなと考えていきました。
 うまくハマったなと思ったのが,そんな彼らの立場や性格を,ミッションの発生と絡めることができたところです。救助者のなかには,一緒に星に来た仲間を探している人がいれば,楽器のオタカラを集めたいという音楽家がいるといったように,悩みやお願いごとを持つ人がいる。それをサイドミッションという形にして,収集要素や,さらなる探索に挑む理由を自然な形で作れたと思います。

4Gamer:
 遭難者たちはだいたい地下洞窟に迷い込んでおり,それが攻略の目標にもなっていますよね。遭難者と洞窟その両方ともかなりの数がありますが,どちらが先だったんですか?
 
平向氏:
 ゲーム全体のボリュームとして地下洞窟はこれくらいあって,洞窟には必ず1人は遭難者を置くと考えるとこれくらいだなという感じで遭難者の数も決まりましたね。ただ,遭難者を見つけては次という繰り返しだと,プレイヤーの皆さんも飽きてしまうので,遭難者たちの個性やこの星に来た理由は重要だと考えました。

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4Gamer:
 作業になってしまうと遊んでくれなくなる。そういう意味でも,遭難者たちの「仲間を探して!」というお願いや,「この人たちのことを知りたい!」って思わせてくれる個性があることは大きいですね。

神門氏:
 はい。いろいろな収集要素やミッションといった遊びをボリュームいっぱい用意しても,それを遊ぶ気持ちになってもらえないのはもったいないですから。遭難者たちの人間性を感じられる設定は,世界の広がりだけではなく,ゲームを作業的に感じないよう演出するという面でも重要でした。

4Gamer:
 プレイしていてそのあたりの自然さは感じました。別メニューで「ミッション一覧」みたいなのから選ぶのと違って,何気ない会話でミッションが発生する。物語への没入感が失われなくていいなと。

神門氏:
 ゲームの機能面の開放とも相性がよかったんです。
 動物愛好家を救助したら生物図鑑を見られるようになって,スタイリストを助けると“イメチェン”としてプレイヤーキャラクターの外見を変更できるようになるといったように,助けた人によって自然に機能が開放されます。ゲーム性と物語をうまくつなげられたなと思っている部分です。

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4Gamer:
 それだけ機能面と深いつながりがあるぶん,人物設定は大変だったのではないでしょうか。なにせ,あの人数ですし。

平向氏:
 大変だったという話でいうと,一番悩んだのはレスキュー隊のコリーでしたね。最初に救助する人であり,その後もオペレーターとしてプレイヤーとよく接する立場として,性格付けや話し方などはかなり時間をかけて調整しました。

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4Gamer:
 ゲーム進行と物語その両方で関わることになる,もっとも身近な存在ですね。

平向氏:
 はい。コリーに比べると,ほかの隊員はわりとすんなり決まりました。隊長のシェパードはちょっと頼りないけど芯が通った人で,ディンゴは先輩風を吹かせてちょっと鼻につくけど,悪い人ではなくていざ仕事となったら頼りになるところを見せてくれる。そのあたりは,思い浮かべていた人物像を描けたなと思います。

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4Gamer:
 遭難者たちはどうでしょう。あまり深く物語に関わらない人でも,口調などが,ちょっとした会話でも「ああ,この人ってこんな性格なのかな」と感じさせるものになっていました。

平向氏:
 どんな人物にも個性的なバックグラウンドがあって,職業や性格,ゲーム上の役割などから「こういう話し方をしそうだな」「こういうことを言ってほしいな」という感じで,キャラクターを作り上げていきました。

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ゲームの遊びに,生物多様性の表現に欠かせない原生生物たち


4Gamer:
 人物描写はもちろんですが,ピクミンや原生生物といった生きもの,ゲームのメインとなる探索の舞台といった自然の描かれ方が素晴らしかったです。
 ハードが変わってできる表現の幅も広がったと思いますが,新しく挑戦したことはあったのかが知りたいです。

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平向氏:
 新しく何かにチャレンジしたというより,もともとあるゲーム作りの考えを大事にしながら,これまでのシリーズ作以上に楽しんでいただけるよう作り上げたというのが近いですね。
 これはピクミン4に限らず,私たちが大切にしている考えですが,キャラクターはデザインありきではなく,「なぜそこにいて,どう機能するのか」という,ゲームとしての役割,“ゲームとしての遊び”があってのものなのです。
 まずはそこありきで,次に「なぜそこに生息していて,どうやって生きているのか」という生きものらしさを表現していきました。

4Gamer:
 ゲームのキャラクターとしての役割は持たせながら,PNF-404という自然あふれる星で生活する生きものとしてもしっかり描くと。

平向氏:
 はい。ピクミンの原生生物は,倒して終わりのモンスターではありません。そもそも原生生物は敵ではなく,ピクミンと同じこの星に住む生きもので,ピクミンを攻撃してくる理由もそれぞれあります。この,生物多様性を表現するものとしても,個々の特性をしっかり考えるということは重要です。
 ゲームのキャラクターとして機能させつつ,生きものとしての行動原理をしっかり描く。このあたりはシリーズをとおして変えてはいけないことと考えています。

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4Gamer:
 では,ゲームの探索の舞台であり,ピクミンや原生生物たちが生活する場所であるステージはいかがでしょう。

神門氏:
 ピクミンシリーズが描いてきたものの1つに,家の周りや庭先のちょっとしたところで始まる壮大な冒険というテーマがあります。ピクミンや原生生物が暮らす世界に,異星人が介入してくることで何かが変化し,その物語を追うわけですね。

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4Gamer:
 実際は地球とは断言されていないけど,すごく地球っぽい星が舞台で,なじみのあるものがあちこちに残されている。「自分の足元でこんな冒険が行われている」と想像しながら楽しめるのがピクミンの魅力だと思います。

神門氏:
 ありがとうございます。そういった遊びをより楽しんでいただけるよう,冒険の舞台はこれまで以上に身近な表現にしたいという考えがありました。
 ステージについては,1作目から3作目まで作ってきて,地形がゲーム都合の作りになっていた部分もあったんですね。それをもう一度見直して,ピクミンが本当に,まるで自分の足元で生きているように見せたいと思いました。

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4Gamer:
 それで,庭や部屋のなかといった具体的な場所がステージになったと。

神門氏:
 そうです。これまでになかった立体感のある新たな遊びが作れましたし,より具体的にピクミンの大きさを感じられるものも表現できました。
 例えば家のなかであれば,私たちがくつろぐソファーが,ピクミンたちには大きな山のようにそびえ立っている。オタカラもそうなんですが,こういった家具や道具といった身近なものが比較になって,よりピクミンを現実の生きもののようにイメージしやすくなったかなと思います。

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平向氏:
 身近な世界で冒険している感覚は,視点でもうまく表現できたと思います。今までは基本的に見下ろしていたのですが,カメラをぐるぐる回したり,ピクミンたちに近い視点で見上げたりできるようになりました。

神門氏:
 このあたりは「開発者に訊きました」の第3回(リンク)でも詳しく話していますが,試作したすのこのモデルの下をくぐったとき,「求めていた表現ができたぞ」という実感がありましたね。

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初めてでも遊びやすく,コアなファンも満足できるゲーム作りを


4Gamer:
 日数制限がないためメインの探索となる地上はじっくり遊べる一方,地下洞窟やダンドリバトル,夜のヒカリヅカ防衛,オリマー遭難記などは手応えある難度で,間口が広く,コアな遊びは段階的に用意されている印象を受けました。このあたりは,初めて遊ぶ人向けに意識されていたのでしょうか。

神門氏:
 そうですね。なるべく入りは分かりやすく,プレイしながら覚えていただき,いろいろな遊びに挑戦できる仕組みは意識しました。ピクミンは,“キャラクターはかわいいけどゲームが難しい”という印象を持っている方も多いと思うので,そのイメージは少しでもなくそうと。

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平向氏:
 難度選択ではなく,装備やスキルで主人公やオッチンを強化する仕組みにしたのも,遊んでいるうちに少しずつダンドリよく遊ぶことに慣れていけるようにと思ったからですね。

4Gamer:
 自分で探索をしてプレイ方法を覚えながら,その探索で得たものでなにを強くするかを選ぶと。

神門氏:
 はい。昔からプレイしていただいているファンの方にとって遊びごたえがなくなってしまわないように,単純に簡単にするのではなく,プレイヤーが選択できるような仕組みを考えました。

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4Gamer:
 なるほど。たとえばオッチンはものすごく優秀ですが,これまでシリーズをプレイしてきた人にとっては,頼りすぎるとゲームが簡単になってしまうところがあります。でも,作業を分担して別行動にするとか,強化させないといった方法でそれは回避できるようになっていますね。
 そのあたりは,たしかにプレイヤー自身がチューニングできる余裕があると感じました。

神門氏:
 そうですね。まずは地上のステージ探索を楽しんでもらいながら,地下洞窟やダンドリチャレンジがきたときは短時間で集中する形で緊張感ある遊びに挑戦してもらうと。これを繰り返すことで,地上の探索でも「こうやって工夫すれば時間を短縮できるぞ」と,ダンドリの楽しさに気がついてほしいという思いがあります。
 ゲームの遊びやすさとやりごたえのバランスは,最初にお話しした「最低限これは守ろう」というルールに則った形で調整しました。

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4Gamer:
 これはいち保護者として個人的にも気になっていることなんですが,子ども向けに意識して制作されたところはあるのでしょうか。
 私はよく子どもとピクミンシリーズを遊ぶのですが,今お話しいただいた間口の広さもあって,これまでのシリーズ作より遊びやすさと親しみやすさを感じました。また,これはゲーム外の例となりますが,発売前のテレビCMや情報発信,公式サイトの「ピクミンガーデン 〜ピクミンのいる庭〜」のコンテンツなどから,子どもやファミリー向けの展開に力を入れている印象も受けています。

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ピクミンシリーズポータルサイト「ピクミンガーデン 〜ピクミンのいる庭〜」


神門氏:
 いろいろ考えているところはありますが,子どもや家族向けに特別になにかをしているというよりは,もっと多くの方にピクミンを知ってほしいと思っているので,そのためのアクションの一環という感じですね。

平向氏:
 ゲーム内の要素でいうと,「エンゴ射撃」がありますね。
 「ピクミン3 デラックス」には2人で別のキャラを操作する協力プレイがありましたが,あの仕組みだと操作のうまい人とそうでない人の差が出てしまうので,大人と子どもが一緒に遊ぶのは難しいところがありました。
 でも本作のエンゴ射撃は,たとえば子どもが遊んでいるところを大人がサポートするといった形で,一緒にゲームを楽しみやすくなっているかと思います。

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4Gamer:
 うちの子どもはまだ移動と視点の操作がおぼつかない年ごろなので,子どもがエンゴ射撃でゲームに参加しています。単純な操作ではありますが,ただ見ているだけではなく,自分もゲームに介入している感じがあって満足してくれていて。こういった形で一緒に子どもともゲームが楽しめる仕組みになっているなと感じます。

平向氏:
 小さなお子さんにも楽しんでいただけて良かったです。

神門氏:
 繰り返しにはなってしまいますが,ピクミンシリーズはちょっと不気味だったり,食べられちゃうっていう恐い面があったりしますが,キャラクターはかわいくて,見た目的にとっつきやすいと思うんです。ただ,実際遊んでみると意外と難しいと。
 そのあたりは,先ほど話の出た主人公やオッチンの強化もありますし,失敗しても巻き戻しできるとか,迷ったらオッチンがニオイでいろいろ探してくれるとか,そういったところで小さなお子さまでも楽しめるようになっているとは思います。

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4Gamer:
 子どもと盛り上がれる部分だと,「生物図鑑」と「オタカラ図鑑」があります。生物図鑑は動きも見られるのが面白くて,新しい原生生物を見つけては「図鑑で見よう」と,本当の生きものの観察のように楽しんでいます。

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平向氏:
 よかったです。原生生物に餌をあげたり,ピクミンの動きも観察できたりしますし,解説文を眺めてもらえたらうれしいです。

神門氏:
 スケジュールが厳しいなか,担当者が頑張って作ってくれたんですが,図鑑のなかで実戦形式で原生生物とのイメトレをすることもできますし,本当に生きもの観察とか実験みたいな感覚で楽しんでもらえているようで,よかったなと思っています。

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4Gamer:
 オタカラ図鑑も,解説が面白くて,ついつい読み込んでしまいます。オタカラによっては,オリマーの子を持つ親としての解説があったりして,これまた保護者に刺さるんですよね……。

神門氏:
 たしかに,オタカラ図鑑は,ご家族で楽しんでほしいと思って作った部分がけっこう大きいですね。
 「分からなかったらお父さんに聞いてね」みたいな,会話が盛り上がるようなものにしたくて。なので,オタカラはあえてお子さんや若い方は知らないんじゃないかなというようなもの,保護者の方たちにとって懐かしいであろうものを入れてたりもします。

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4Gamer:
 いいお時間となりました。最後にあらためてピクミンという作品の魅力とゲームファンへのメッセージをお願いします。

平向氏:
 ピクミン4は,ゲーム性はもちろん,世界や物語もプレイヤーの皆さんに考えていただける余地があります。「これはこうだ」という決めつけがなく,皆さんそれぞれの視点がある。それぞれの見方をとおして,初めてこの世界が魅力的に映るゲームだと思っています。これから遊ぶという方は,ぜひそうした個性や多様性あるピクミンの世界をお楽しみいただければと思います。

 Nintendo Switchでこれまでのシリーズ作が遊べるので、ピクミン4をプレイして気に入ったという方に過去作を遊んでいただけるとうれしいです。スマホ向けアプリ「Pikmin Bloom」iOS/Android)もありますので,気軽にピクミンに触れていただければと思います。随時更新される「ピクミンガーデン 〜ピクミンのいる庭〜」のポータルサイトもぜひチェックしていただき,ピクミンの世界を満喫してほしいです。

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神門氏:
 私自身が考えるピクミンらしさに,本当に生きている生きものとしての表現の追求があるんですね。
 シミュレーションゲームではないので,完全な生態系を描いているわけではないですし,ゲームとしてこう動かさなければならないということもありますが,少しでも現実的に“生きている”と感じていただけるようにしたいと思って制作しました。実際,そのあたりはうまく表現できているという実感もあります。
 おかげさまでゲーム発売からご好評をいただいており,本当に感謝しています。まだ先の話にはなるかと思いますが,これからもピクミンシリーズをもっともっと多くの方に楽しんでいただきたいと思っていますので,今後の展開にも期待していただけるとうれしいです。

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