プレイレポート
[プレイレポ]化学知識が増えれば考察の幅も広がる! 「結合男子」は,志献官たちの絆が尊い友情結合シミュレーションADV
スクウェア・エニックスの友情結合シミュレーションアドベンチャー「結合男子」のNintendo Switch版(ダウンロード専売)が,2023年6月29日にリリースされる(iOS / Android版は2023年夏の配信予定だ)。発売に先駆け本作をプレイする機会を得たので,本稿にてお伝えしよう。本作では,万物をのみ込み同化する暗黒の絶対虚無“デッドマター”の脅威によって,50日後に滅びの危機が迫った「結倭ノ国(ゆわのくに)」を舞台に,元素の力を宿す「志献官(しけんかん)」たちとともに世界消失の運命に抗う物語が描かれる。
なお,本稿で紹介する内容は,序盤であるメインストーリー弐論(2章)までだ。序盤とは言ってもダウンロードコンテンツとして追加される志献官も含めて主要人物が全員登場し,基本的な育成からバトルまで体験できた。元素の特徴が個性に組み込まれた魅力的な「志献官」たちや,ゲームサイクルなどを紹介していこう。ストーリーや「志献官」の本質には触れていないが,ネタバレが気になる人はご注意を。
滅びゆく世界で,主人公と「志献官」を待つ運命は――
物語は,主人公がどこかの港で目を覚ますところから始まる。その手には世界が終焉を迎えるまでの日数と同じ「50」という文字が浮かんだガラス管が握られており,何か訳ありの身であることがうかがえる。
主人公は記憶を失っており,世界に関する知識はプレイヤーと同じくほぼゼロの状態だ。そのため主人公と同じ目線で,「志献官」たちにいろいろと説明を受けながら役目や世界について知ることができるため,物語に入り込みやすい。「用語集」も用意されており,会話中に初めて登場する単語(色付きなので分かりやすい)を選択すれば,解説が表示されるのも親切だ(「用語集」は目録から見返せる)。
目を覚ました主人公は,いきなり“デッドマター”に遭遇して「侵食領域」に巻き込まれてしまう。状況がつかめないものの,目の前で壊れる建物,モノトーンに変わった世界と,良くない何かが起こっていることはひと目で理解できる。そんな主人公の前に現れたのが,「志献官」の源 朔(CV:伊東健人)と安酸 栄都(CV:榎木淳弥)だ。
彼らは「元素術」を使ってアルビレオと呼ばれる“デッドマター”と交戦するが,相手の戦力が想定よりも高く,苦戦を強いられる。優れた能力を持ち,懸命に戦ってくれる「志献官」ですら,手も足も出ない敵が出現する緊迫した情勢だということが伝わってきて背筋が伸びた。
どんな強敵にも諦めない姿勢を見せる栄都と,最善の策として自身が囮となり2人を逃がそうとする朔。出会ってそれほど経っていないが,「志献官」として真摯に活動する彼らを,とてもではないが置いて「逃げる」なんてできない。
主人公が彼らとともに戦う道を選択すると,彼らの想いをつなぐ糸が見えるようになる。主人公の力によって強化された朔と栄都は,見事にアルビレオを撃破! 「志献官」たちの格好良い活躍が見られ,敵も倒せて喜んでいたのだが,「結合術」の副作用なのか,朔の思い出したくない記憶を引きずり出して彼を傷つけてしまったようだ。
意図せずとは言え,トラウマをえぐってしまった主人公に対し,否定的な発言をする朔。筆者はちょっと切なくなりつつも,そのぶん打ち解けたときの喜びも大きいはずと思い直してプレイを続けることにした。
戦闘後に朔たちは,「志献官」が所属する舎密防衛本部・司令代理の鐵 仁武(CV:濱野大輝)と合流する。そこで仁武から,主人公が使ったのが「志献官」2人の意識を結合させる「結合術」であること,そして全滅したと思われた「触媒の志献官」と呼ばれる存在であることを教えられる。舎密防衛本部に保護されることになった主人公は,世界の危機をあらためて教えられ,指揮官として一緒に戦うか否かを問われることに……。
アドベンチャーパートでは,随所に選択肢が発生する。なかには運命を分ける重要なものもあるので,少しでも不安を感じたらデータをセーブしておくのがオススメだ。
主人公が持っていたガラス管は何なのか,なぜ「触媒の志献官」は全滅したのか,そもそも主人公は何者でなぜ記憶をなくしているのか……など多くの謎が散りばめられている。また,「志献官」たちもそれぞれさまざまな事情や過去を抱えているようで,指揮官として彼らを導いていくのも一筋縄ではいかなさそうだ。組み合わせごとにどんなドラマが待ち受けているのか,期待に胸が膨らむ。すべての真相は,皆さんの目で確かめてもらいたい。
化学好きはより楽しい!? 「志献官」の関係性が尊い
本作には,10人の「志献官」が登場し,結合ペアの関係性が発展するペアルートは45通りに分岐,90種類以上のエンディングが用意されている。筆者は登場人物の関係性にときめくタイプなので,本作のように気になる「志献官」同士を自由に組み合わせ,絆を深められるのはかなりうれしい。
通常版で指揮できるのは,最初に出会う朔と栄都のほか,鍛炭 六花(CV:田丸篤志),宇緑 四季(CV:古川 慎)の4人だ。この時点で6通りの関係性を築けるのだが,クールな朔と明るい栄都の絶妙なバランスだったり,つかみどころのない四季が自己評価の低い六花を見守っていたり,より関係が深まったらどうなるのか興味を引かれる組み合わせばかりだ。
関係性だけでなく,「志献官」一人ひとりが魅力的なのも,大きなポイントだろう。「志献官」たちは元素の力を使う元素術で戦うのだが,能力だけでなく,名前や性格,趣味にもそれぞれの元素要素が散りばめられている。
根っからの文系である筆者だが,炭素の「志献官」である六花が絵を描くのが好きなのは,画材としてよく炭が用いられているからだと分かる。また,炭素はダイヤモンドの源でもあるだけに,すごい力を秘めていそうだなという印象を持った。ほかにも酸素はさまざまな元素と結合しやすいイメージがあるので,酸素の「志献官」の栄都も気さくな性格をしているのかも……などなど,化学の知識が増えるほど考察の幅が広がりそうで,久しぶりに化学の教科書や図鑑を読みたくなった。
元素の要素を離れても,クールな朔がサポート役のモルたちを可愛がる一面があったり,四季がとんでもなく器用だったり,格好良いところも,可愛いところも,そして弱いところも抱えたステキな「志献官」たちがそろっている。序盤から彼らの日常が垣間見えるほんわかしたエピソードも用意されているので,楽しみにしていてほしい。
凍硝 七瀬(CV:堀江 瞬),浮石 三宙(CV:西山宏太朗),舎利弗 玖苑(CV:逢坂良太),鐵 仁武,塩水流 一那(CV:岡本信彦),清硫 十六夜(CV:安元洋貴)の6人は,ダウンロードコンテンツ(各/税込1100円)としてリリース日以降に配信される「志献官」だ。彼らに会えるのは少し先かなと思っていたのだが,本編の弐論までで全員と遭遇できたのはうれしい誤算だった。
筆者の個人的な意見だが,追加される6人は通常版で出会える4人に比べて,いろいろな意味で癖が強いメンバーがそろっている印象だ。なかでも一那の殺伐とした雰囲気は,「「志献官」でいいの? 本当に味方になるの?」と疑問に思ったほど尖っていて(塩素は殺菌力が高いので納得しかないのだけれど),ほかのメンバーとどう交流していくのか,俄然興味がわいた。
また,「志献官」のなかには,もともと関わりが深い組み合わせもあるようだ。七瀬が栄都を兄と慕っていたり,昔馴染みの朔と三宙の相性が悪かったり……。それぞれ仲の良い相手に見せる顔,苦手意識がある相手への対応があるため,組み合わせによって「志献官」たちのさまざまな一面が見られるだろう。全組み合わせで絆を高めたくなること必至だ。
なお,彼らの個人Twitterのフォロー状況やつぶやきからも関係性がうかがえるので,事前にチェックしておくのもオススメだ。
「志献官」たちと試練を乗り越えていく,育成&バトル要素
主人公の役目は,決められた日数の間に「志献官」を鍛えて,定期的に現れる“デッドマター”を倒す結合作戦を成功させることだ。
最初の任務は「鎌倉防衛作戦」で,朔・栄都・六花の3人の部隊で挑むことになる。作戦決行まで4日という短い期間でちゃんと役目を果たせるのか不安に思っていたのだが,主人公のサポート役であるモル公(CV:宮田幸季)がチュートリアルとしてやるべきことを丁寧に教えてくれるので,混乱せずにサクサク進められた。
1日の行動は,午前・巡回・午後に分かれており,すべて終わると1日が終了する。午前と午後はそれぞれ2回行動でき,結合訓練,部隊訓練,休憩の3つの行動が可能だ。
「結合訓練」は,「志献官」2人で行う訓練で,結合率と分子術のレベルを上昇させられる。結合率は2人の絆の強さを示しており,特別なイベントが発生することも。さらに,数値が高いほど作戦の要となる「結合術」の発動が早くなる重要な要素だ。結合率は訓練だけでなく,選択肢などでも変化するようなので,絆を強くしたい「志献官」たちとは積極的に関わっていこう。
「部隊訓練」は,部隊に所属するメンバー全員で行う訓練で,作戦練度と分子術のレベルを上げることが可能だ。訓練施設は朱(しゅ),蒼(そう),翠(すい)の3種類があり,それぞれに分類されている分子術が強化される。“デッドマター”ごとに有利,不利になる分子術の分類が決まっているので,作戦詳細で情報を確認し,適切な分子術を強化していくのが勝利への近道だ。
「志献官」たちの「体調」にも気を配ろう。調子の良い状態を保っていれば,成功率や作戦での体力上限上昇などさまざまなメリットを得られる。ただし,任務に一生懸命取り組む彼らでも,訓練ばかりでは疲れがたまって,効率が悪くなる。そんなときは「休憩」で回復させよう。休憩で行ける施設は複数あり,お気に入りの休憩場所だった場合は調子が大きく上昇する。できるだけ好きな場所で羽を伸ばさせてあげたいところ。
「巡回」では,施設にいる「志献官」たちと交流できる。彼らの話を聞いたり,世界観の謎に触れたりと,ここでしか聞けない情報も用意されているようなので,いろいろな人物に会いたくなる。
作戦には,目標となる「推奨作戦練度」と「推奨結合率」が決まっている。まずはそれを目指して育成していくのが基本になるだろう。1日の終わりに活動結果で,育成状況などを確認できるため,そこで翌日の作戦を練るのも良しだ。活動結果には作戦までの日数だけでなく,世界崩壊までのカウントダウンも刻まれており,シビアな世界観を感じられた。
無事に訓練を乗り越え,来る結合作戦決行日。この作戦では,“デッドマター”を消滅させ,侵食から鎌倉を防衛することが目的となる。結合作戦準備では,部隊編成で一番結合率の高い「志献官」を結合配置におき,ほかのメンバーは補佐として配置するのが基本だ。また戦闘中に使う分子術も設定し,準備を整えておこう。
戦闘中は,基本的に「志献官」たちはオートで戦う。彼らが行動するごとに元素の力が蓄積されていき,主人公はその力を使って分子術発動の指示を出すことが可能だ。敵に有効な属性の元素術を発動すると,相手を必ず弱体化できるメリットがあるのもうれしい。
また,「志献官」同士の絆が深まっていると,バトル中に相手をかばったり,追撃したりと2人の絆の強さが分かる演出も発生しやすくなるようだ。
「分子術」を発動すると,炭酸ならH₂CO₃,二酸化炭素ならCO2と化学式に沿った元素の力が消費されるのが面白い。効果も水が回復など,生成される物質のイメージに合って凝っているので,仲間が増えたら次はどんな分子術が登場するのかワクワクである。筆者の個人的なイメージだが,硫酸(H₂SO₄)などはかなり強そうだ。
戦闘中は,「志献官」たちから助言を求められる「訓導」が発生することもあるので,指揮官らしく,適切なアドバイスをしよう。まだ戦闘に慣れていなくてあわててしまいそうだと思う人は,Yボタンで使用できる簡易戦闘にすれば,分子術の発動や訓導が自動で進むのでうまく活用しよう。
結合作戦で戦う“デッドマター”は,「結合術」の発動でしか消滅させることができない。結合配置の志献官がダメージを与える,または分子術を発動することで想いの糸が強くなっていくが,逆にダメージを受けるとつながりが弱くなってしまう。
いかに相手を弱体化し,「志献官」が受けるダメージを減らすか,戦略を考えるのも楽しい。「結合術」が成功するまでドキドキするが,無事に発動できたときは,華やかな演出も相まってうまくいった喜びで晴れやかな気持ちになった。
なお,結合作戦以外でも“デッドマター”を倒す「侵食防衛任務」が発生することもある。この任務は敵を撃退すると成功,部隊全員が戦闘不能になると失敗だ。失敗しても物語は進行するので気負わなくてもいいが,できるだけ成功を目指したい。
結合作戦に成功して“デッドマター”を倒すと,出現していた地域が侵食から解放され,土地が再生されていく。作戦の舞台が鎌倉だったこともあり,日本と「結倭ノ国」がリンクし,彼らをより身近に感じられたのもうれしいポイントだった。
最初の結合作戦を無事に乗り切り,少し気にかかったのは“デッドマター”の名前だ。「志献官」たちが苦戦するレベルの“デッドマター”は,アルビレオやプロキオンと連続で星の名前がつけられていた。これにも何か意味がありそう……,なんていろいろなことに想像と妄想が働いたところで,弐論は終了となった。その謎は,配信後にたっぷりやりこんで解き明かそうと思う。
「志献官」同士の友情,絆に注目するも良し,作品に散りばめられた化学の要素にニヤリとするも良し,筆者のように世界の謎に魅了されるのも良しと,プレイヤーによってさまざまな楽しみや発見がある「結合男子」。発売後はぜひ皆さんも,「志献官」たちの活躍と世界の運命を見届けてほしい。
「結合男子」公式サイト
(C) SQUARE ENIX
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