プレイレポート
「スペースベース スタートピア」プレイレポート。さまざまなトラブルを乗り越え最高の宇宙ステーションを作ろう
本作は宇宙ステーション「スタートピア」の司令官として,さまざまな施設を活用して観光や貿易を振興しつつ,より住みやすく快適なステーションを完成させることを目指す経営シムだ。
プレイヤーは空腹や娯楽といったエイリアン(宇宙人)のニーズを掴むだけでなく,ゴミや害虫問題,施設の故障や職員の怠慢,そして時にはステーションに登場する宇宙海賊や巨大な怪獣にすら対処していくという,宇宙時代らしいハードな運営を迫られていくことになる。
今回は正式リリースに先駆けて,Steamの日本語版をプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けしよう。日本語版はテキストや説明だけでなく,日本語ボイスが吹き込まれ,しっかりと音声部分のローカライズもおこなわれている。
人命を微塵も考慮しない,ディストピア感満載のAI「VAL」に「炭素系生命体にしては……」とか罵られながらステーション運営を楽しめるので,英語版をすでに触ったことがある人も,新鮮な気持ちで楽しめるはずだ。
汎用ドロイド「ファジィ」に命令を出し,宇宙ステーションに施設を建てていこう
本作は,長期間放置されていた宇宙ステーション「スタートピア」に,プレイヤーの分身である司令官が着任したところから始まる。司令官の目的は文字通り(散らかるゴミを除けば)“空っぽ”の宇宙ステーションに,宿泊,娯楽,医療といったサービスを提供する設備を整え,客として訪れるエイリアンたちに満足してもらえるステーションを作り上げることだ。ジャンルとしてはいわゆる「リアルタイムの経営シミュレーション」であり,次々と起こるトラブルやイベントを乗り越えつつ,宇宙ステーションの価値を高めていく。
プレイモードは大きく分けて3種類。ステージごとに決まった条件をクリアし,徐々に司令官としての経験を積んでいく「キャンペーン」と,ゲーム設定やAIプレイヤーの参加人数などを自由に決めてプレイをおこなう「フリー」,さらにごく基本的な操作とルールを学ぶ「チュートリアル」が用意されている。
どのモードもやり直しは簡単にできるが,最初は右も左もわからないと思うので,まずはチュートリアルで基本を身につけ,次にキャンペーンの序盤でそれを応用する……といった流れがベターだろう。
キャンペーンは,クリア条件が「溢れるゴミに対処する」「大量の病人を治療する」など特定の要素にフォーカスしているものが多く,クリア時間も短めで不要な要素はロックされている場合も多いので,前半はチュートリアルの延長のような存在だ。本作はリアルタイムで時間が進んでいくため,トラブルの原因と解決法がわからないと事態が深刻化する可能性が高い。時間の流れを遅くすることはできるが,完全に時間を停止はできない。なので,フリーモードは後回しにした方がゲームに慣れやすいだろう。
前述のとおり,スタートピアは長期間放置されていたステーションなので,内部に何もない状態で始まることが多い。そのままでは観光どころか生命維持すらままならないので,ゼロから,おもてなしの殿堂を作っていくことになる。
宇宙ステーションは目的ごとに,デッキが3層に分かれている。食事や医療といった基本的なサービスを提供する「一般デッキ」,多くの人に刺激や興奮を与える「娯楽デッキ」,そして豊かな自然で癒やしと資源を生み出す「バイオデッキ」だ。
どれもステーションの運営には欠かせないが,強いていえば生命活動に直結する一般デッキが一番重要で,ここがうまく回らないと訪問者に死亡者が出ることもある。まずは一般デッキを充実させつつ,娯楽デッキやバイオデッキを整備していくことになるだろう。
設備の建築自体は簡単で,「建設メニュー」から建てたい施設を選択し,デッキの好きなところに“設計図”を作ってやればいい。例えば,訪問客に睡眠や食事といった生命維持に不可欠なサービスを提供する「キャビン」を設計する場合,まずは建築範囲を指定し,次に好きな壁にドアを配置,あとは内部に食料の自動販売機や睡眠ポッドのような物を好きなだけ配置する……といった感じで,ホログラムを見ながらレイアウトを自由に決めていく。
また外部と交信をおこなう通信センターや,ゴミ処理を担うリサイクルステーションといったインフラ施設は元からサイズが決められているため,設置する場所を決めるだけになるが,どこかに設置しないとステーションが回らないのは,キャビンと同じだ。
あとは建設を指示すれば,汎用の労働ドロイドである「ファジィ」が自動で建設モードで動き出し,あっという間に設備を作ってくれる。プレイヤーはそれを単に眺めていてもいいし,その間に医療ステーションやファジィのメンテをおこなう充電ステーションといった別の設備を準備してもいい。
なお,ファジィは作業によって自動に動作モードが変わり,建設以外にもゴミの清掃や資源の運搬など,宇宙ステーションの維持に必要な作業のほとんどをこなしてくれる,ファジィは購入や製造によって動作数を増やすことができるので,可能ならば優先的にどんどん入手しておきたい。
注意点としては,リサイクルステーションなどの一部の施設は,大気汚染や汚染廃棄物を排出するので,可能ならば一般的な施設からは離して建設するのが望ましい。とはいえ最初に使えるデッキは狭く,どうしても離して建設するのが難しいこともあるので,そういうときは大気フィルターを設置したり,植物をバイオデッキから持ち込んだりすることで迅速に対処したい。舞台が宇宙ステーションなので,酸素の供給や空気の状態は死活問題となりかねないからだ。
さらに,キャビンのような自動で動くものは完成と同時に利用可能になるが,通信センターといった一部の施設は特定の種族のエイリアンを労働者として割り当てないと機能してくれない。訪問者のリストの中から適当な誰かを雇用する必要がある。労働者はそれぞれ適時休憩を挟むので,序盤はとくに稼働率を上げにくいだろう。エイリアンは長期間雇い続けることによって昇進なども可能になるので,ある程度長い目で見て,多少人員に余裕ができるよう雇用しておくのがオススメだ。
2層目となる娯楽デッキは,観光客に遊びを提供することに特化している。客となるエイリアンには「大気」や「睡眠」といった基本的な欲求に加え,ディスコや猫カフェでしか解決できない「娯楽」や「リラクゼーション」のような欲求も存在する。これらのニーズを満たさない限り,宇宙ステーションの評価を上げることはできないのだ。
やること自体は一般デッキと大差なく,自由に設計できるディスコを設置したり,宇宙的な猫と戯れられるスターキャットカフェを建設したりして,デッキを華やかにしていこう。
ただし,一般デッキと違ってエネルギーの消費が大きいせいか,エネルギー供給器を設置しないと設備に電気を送れないので,多少レイアウトに制限が出る点は要注意だ。さらにデッキごとにおける施設は決まっているので,「一般デッキに通信センター作れないので,娯楽デッキに置く」といったことはできないのも,頭の隅に入れておきたい。
最後のバイオデッキは,文字通り植物などの生命を育てることに特化したエリアだ。草原や火山といった惑星の自然を模した地面に,適した植物が生えてくるので,それを育成,収穫することによって食料や酸素といった資源を入手できる。また一種の植物園のような機能も有しており,エイリアンの「植物」の欲求を満たす役割も果たしている。
バイオデッキは基本的に構造物を建てる必要はなく,テラフォーミングによって地形を変化させたり,シミュレートする地表を変えたりすることによって,育成する植物を変えられる。植物は一定の時間で自動的に育つので,後は自分で収穫するか,エイリアンのドライアドを雇って資源を入手しよう。
資源はクレートに入るのでそのまま保管し,交易船で売却できるが,一般デッキの工場でファジィや建物,あるいは別の素材などに加工もできる。とくに酸素,食料,医療品は消耗品として必要になるので,ある程度は確保しておこう。一応貿易で入手もできるが,わざわざ購入するより,作った方が安定供給できるからだ。
以上の3種類のデッキにバランス良く設備を配置すれば,客のニーズはかなり満たせるはずだ。エイリアンはこれらのサービスを利用するたびに,代金としてエネルギーをステーションに支払い,プレイヤーはそのエネルギーを元にして,さらに設備を充実させていく。また,施設や環境に満足したエイリアンは疑似通貨の「プレステージ」をステーションに提供してくれ,新しい施設や技術のアンロックができる。
つまり,エイリアンをもてなせばもてなすほどステーションも潤い,設備やデッキも充実し,技術も進歩して,さらに多くの客を引き受けられるようになる。この好循環こそが,司令官が目指すべきステーションの姿なのだ。
最初は数えるほどしかいない客のエイリアンが,その内に数えることも難しいほどに増えていき,満足して帰って行くのを見るのは楽しい。
エイリアンはそれぞれ独立した名前やステータスを持っており,カーソルを合わせれば詳細が見られる。さらにステーションの評価は,SNSに評判が投稿される……といった時代を反映させた仕掛けもあるので,ミクロ的なやりがいも感じられるのも面白いところだ。
設備の機能不全,従業員の退職,襲いかかる巨大生物……司令官の悩みは尽きないが,それでも上を目指そう
高評価をもらえると嬉しいが,それはあくまでステーションの運営がうまくいっていればのこと。例えばエネルギーが足りず,ニーズを満たすだけの設備を作れなかったり,従業員の働きが悪く設備がまともに動かなかったりすると,あっという間に客の不満がたまっていく。
さらには,従業員として雇ったエイリアンも同じステーションの施設を利用するため,ニーズが満たせなければ彼らも同じように不満を抱いていく。事前に警告は来るのだが,一定期間ニーズが満たせない状態が続くと,例え熟練の職員でも嫌気が差して辞めてしまうことがある。
つまり,ある施設の機能不全が離職を招き,別の施設の効率低下を引き起こすことがあり,そうなれば連鎖的にステーションの状態悪化が避けられなくなる可能性もある。客のみならず,従業員の生活環境にも配慮した“ホワイトな職場”が求められるわけだ。
また観光客が増えることは,必ずしもメリットだけではない。各施設や移動用のエレベーターには一定のキャパシティが存在するため,需要が増えすぎると処理しきれず,あっという間に大行列と長大な待ち時間が発生してしまう。
そうなると施設や移動経路を増やすしかないが,デッキのスペースや予算に余裕があるとは限らないし,リアルタイムに進行していくゆえ,ほかの問題を優先したいこともある。
そうやってまごまごしていると,今度は手のひらを返したようにマイナスの評価が積み重なっていく。好評と不評は紙一重で,ちょっとしたことがきっかけで簡単にひっくり返ってしまうのだ。なるべく細かいニーズの把握を心がけ,“ヤバそう”と感じる部分があれば,施設を追加するなり,アップグレードの研究を急ぐなり,早めに手を打っておきたい。
定期的に発生するイベントもまた,悩みの種になることが多い。イベントには「大量のゴミを受け入れる代わりに,エネルギーをもらえる」とか「賄賂を渡すから,海賊行為を見逃してほしい」といったメリットとデメリットが両方あり,さらに受けるも断るも自由なものもある。こういったものは,状況に応じて選択すればいいだけだ。
しかし,どう転んでもデメリットが大きすぎるものを選択せざるを得ないイベントもある。しかもこのデメリットは,キャンペーンならシナリオ終了まで永続的に続くので,頭を悩ませる問題になっていくだろう。少しでも,デメリットが問題になりにくい方をチョイスしたい。
さらにイベントの中でとくに大きな問題を引き起こすのが,敵対生物の襲撃だ,これは上でも少し触れた,宇宙海賊がデッキ内に進入してくる……といったパターンもあるが,それより怖いのがステーション内で危険生物が発生し,見境なく周囲を攻撃し始めること。無防備な観光客が襲われればひとたまりもなく,あっさり死者が出るのも珍しくない。
おまけに状況によっては,デッキに収まっているのが不思議なほど巨大な生物が暴れ回ることもある。通常,ステーションの警備任務はドローンがおこなっているが,もちろんそんなものでバケモノが倒せるわけがない。そういう場合に必要になるのが巨大メカである。
ロマンあるメカの製造は,一般デッキに建設可能な警備ステーションでおこなう。材料として比較的レアな素材が必要だが,見た目と性能が違う3種類の中から好きなものを選び,ゼロから作り出すことが可能だ。動作は比較的鈍重で,普段はあまり役に立たないが,いざ強大な敵が現れたときは活躍してくれる。
戦闘の操作は自分でおこなう形で,キャラを選択して攻撃や移動などの指示を出すと,ある程度勝手に戦ってくれる。実際のバトルでは細かいテクニックがどうのというより,味方の数やアップグレードによる性能の違いで結果が決まることが多い印象なので,こちらも事前の下準備が重要になるだろう。
なお,巨大メカは物理的に一般のエレベーターは使えず,専用の移動装置がないと違う種類のデッキには移動できないので,こちらもちゃんと整備しておこう。敵が現れてから慌てて作っているようでは,初動が遅れてしまうのは必至だ。
上記のようなプレイの基本を押さえたうえで,さらに毛色の違ったプレイを楽しみたい人にはフリーモードによる対戦プレイも楽しめる。これは同じ宇宙ステーションのデッキを最大4人のプレイヤーで分け,「一定量のエネルギーを集める」など特定の条件を先に満たしたプレイヤーが勝利となるモードだ。細かい条件などは,ゲーム開始時に自由に設定できる。
じっくりと腰を落ち着けて,施設の整備やトラブルの解決に挑める1人用モードに比べ,対戦モードでは相手の妨害を受けたり,開発のベースとなるデッキの買収合戦が起こったりと,より速度と計画性が重視されるプレイが求められる。結果としてプレイフィールは変わるし,慣れないうちはあっさり負けてしまうと思うが,“トラブル多発の忙しいゲーム”を楽しめるので,ある程度コツを掴んだら試してみるのもいいだろう。
本作はサポートAIが,人権(エイリアン権?)を無視したブラックな働かせ方をしてきたり,エイリアンが好む食料が不思議とチョコレートやスナックや寿司だったり,ちょっと時代錯誤的なディスコでフィーバーしていたり,なぜかスケール的にあり得ないようなモンスターが急に出てきたりと,全体的に軽めのバカバカしいテイストで統一されている。
しかし,実際にゲームを進めてみるとあっさりと死亡者が出たり,お客様の評価もなかなかに辛口だったりと,ゲームとしての手応えも相応に感じられる作りだ。
とくにステーションの運営が上手く回っているときはいいが,逆に負のサイクルに入ってしまうとすぐにリカバリーができなかったりして,あの施設を手直しして,このオブジェクトを追加し,忘れないうちに新たな技術を開発する……なんてことを続けていると,あっという間に時間が過ぎていることもある。
またエイリアンたちの姿や動きもなかなかに愛らしく,エフェクトで好評なのか不満があるのかもざっくりとわかるようになっているので,見ているだけでも結構楽しい。とくに大量のエイリアンの客たちが,自動化された施設で次々と流れ作業的に欲求を満たしていくのは,何かの工場を見ているようで面白い。
ゲーム全体としてはそこまで複雑という印象はないし,前述のようにチュートリアルもかなりしっかりしているのだが,資源の種類や技術のアップグレード方法などが少々独特で,迷ってしまうところもいくつかあった。チュートリアルとは別に,好きなタイミングで読める用語や仕組みの簡単なヘルプがあれば,より取っつきが良くなるのではないかと感じた。
とはいえ全体としてはローカライズの質も上々で,こういった経営・開発系のシムが好きなら,ついついプレイ時間が延びてしまう……なんてこともあるだろう。興味があるなら,日本語版がリリースされた今,手にとって損はない一作だ。
「スペースベース スタートピア」公式サイト
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スペースベース スタートピア
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スペースベース スタートピア
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Spacebase Startopia
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