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[E3 2021]「メトロイド ドレッド」のメディア向けイベントをレポート。2Dメトロイドの最終章であり,新たな始まりも感じさせる作品に
10月8日の発売が予定されている本作は,リメイクなどを除くと,2003年2月14日に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト「メトロイド フュージョン」以来およそ19年ぶりとなる“2Dメトロイド”の新作となる。タイトル名にドレッド(DREAD)とあるように,今回のテーマは主人公のサムス・アランを襲う“恐怖”だ。
そんな本作のメディア向けイベントが,「Nintendo Direct|E3 2021」及び「Nintendo Treehouse Live」の配信後に実施され,実機プレイを交えたゲーム紹介と,本作のプロデューサーを務める坂本賀勇氏のQ&Aセッションが行われた。2Dメトロイドのシリーズ最新作となる「メトロイド ドレッド」の現在分かっているゲームシステムやその特徴を,開発経緯や作品にかけた思いなどが語られたQ&Aセッションの模様と共にお届けしよう。
「メトロイド ドレッド」公式サイト
[E3 2021]シリーズ最新作「メトロイド ドレッド」が,2021年10月8日に発売。サムスに襲いかかる恐怖を描いた横スクロールアクション
任天堂は本日(2021年6月16日),シリーズ最新作「メトロイド ドレッド」を,Nintendo Switchに向けて10月8日に発売すると,「Nintendo Direct | E3 2021」にてアナウンスした。本作では,サムスを襲うさまざまな恐怖が,横スクロールアクションで描かれる。予約受付は,本日よりスタートだ。
[E3 2021]「メトロイド ドレッド」についてプロデューサー坂本賀勇氏が解説。よりダイナミックな探索と追われる恐怖に焦点を当てる
「Nintendo Direct|E3 2021」で発表された,19年ぶりとなる2Dメトロイドの最新作「メトロイド ドレッド」。Nintendo Direct後に行われた「Nintendo Treehouse Live」に,本作のプロデューサーである坂本賀勇氏が登場し,本作の詳細を語った。
スピーディなアクションに探索要素,“恐怖”が特徴の2Dメトロイド最新作
まずはサムスの能力(アクション)について。これまでの作品に比べ,よりスピーディで流れるようになったサムスのアクションは,メトロイドシリーズの特徴であるアクション探索型のゲームプレイに大きな効果を発揮する,重要な要素となっている。
敵との戦いでは,自由な角度で射撃できる「フリーエイム」や,敵の攻撃にタイミングを合わせて反撃する「メレーカウンター」といった「メトロイド サムスリターンズ」のアクションが引き続き登場。それぞれ,走りながらの射撃角度の調整がしやすくなったり,敵に走り込んでカウンターを行う「ダッシュメレー」が加わったりと,より強力に,より快適に操作できるものとして進化している。
新しいアクションとしてスライディングが追加。また,特定の壁や天井にくっついて移動や攻撃ができる「スパイダーマグネット」のように,さらなる新アクションや強化要素も用意されているという。
敵の種類はさまざまで,攻撃パターンなどのバリエーションも豊富にあるとのこと。バトルは爽快さだけではなく,敵の特性を見極めて戦うというやり応えもあるものとなっているようだ。
メトロイドシリーズのメインとなるのが,それらのサムスの能力を活用して進めるマップ探索。本作のマップは複数のエリアに分かれており,エリアとエリアをつなぐ輸送装置を使ってそれらを行き来し,ときに前進し,ときに戻りながら探索範囲を広げていく。各エリアにはさまざまなルートやアイテムが隠されており,仕掛けを解除したり自身の新たな能力を使ったりしながら新たな道を開き,アイテムを入手していくのだ。
そんな,さまざまなエリアを探索していると,ガラリと雰囲気が変わる場所にたどり着くことがある。それが本作のタイトル名にある“恐怖”を表す存在「E.M.M.I.」(エミー)が登場するゾーンだ。ピクセル化されたドアを抜けると,それはE.M.M.I.の領域。どういう理由かE.M.M.I.はサムスを探して動いており,視覚センサーでサムスの姿をとらえるや否や,捕獲しようと執拗に追いかけまわしてくる。
通常武器での攻撃は一切効かず,捕まった場合は“ほぼ即死”。逃れる術もあるようだが,その時間はほんの少ししかなく,カウンターに比べれば“かなりタイト”なものとなるようだ。
このE.M.M.I.の恐怖から逃れる術となるのが,「ファントムクローク」という光学迷彩アビリティ。これを使用している間はE.M.M.I.に検知されないようになり,追跡が途絶えたその隙にE.M.M.I.のゾーンから逃げ出すことができるのだ。長時間の使用はできず,画面に表示された黄色いゲージが尽きると体力が削られてしまうため,使いどころも重要となるだろう。
なお,ファントムクロークは,仕掛けの解除などにも使用する場面もあり,E.M.M.I.の追跡から逃れるだけではなく,探索を進めるうえでも欠かせない能力となっているようだ。
アクションや探索といったゲーム性はもちろん,背景や演出も注目のポイントとのこと。サムスの動きやビジュアルに目が行きがちだが,場所によって雰囲気が一変するエリアのディテールも素晴らしい出来となっており,E.M.M.I.のゾーンは,足を踏み入れた際の不気味な感覚が,視覚的にも聴覚的にも伝わってくる演出となっている。
新たな戦いに挑むサムスの物語や,なぜE.M.M.I.が襲い掛かってくるのかといった,作品のバックグラウンドにあるものも気になるところ。公式サイトでは,本作の特徴や魅力,そして“謎”に迫るレポートが順次公開されるとのことなので,こちらでの今後の情報公開も見逃さないようチェックしておこう。
METROID DREAD: REPORT Vol.01「初公開映像を徹底解説」
「メトロイド ドレッド」公式サイト内ページ
ゲーム開発の経緯や作品への思いが語られた,坂本賀勇氏のQ&Aセッション
――かなり前から噂されていたタイトルですが,なぜ今回の発表に至るまで時間がかかったのでしょうか。長期間,制作を続けていたのでしょうか。
坂本賀勇氏(以下,坂本氏):
いえ,そういうわけではありません。15年前からコンセプトがありましたが,当時の技術やハードウェアの関係上,コンセプトどおりのものがうまく作れないというのが分かって,開発を始めかけたところでやめてしまったんです。そののちも開発のチャンスがあったのですが,やはりイメージどおりのものができそうになく,これは無理だなと。
(開発に動き出すきっかけになったのが)前作「メトロイド サムスリターンズ」で一緒に仕事をしたMercurySteam Entertainmentとの出会いですね。前作の制作で,彼らの能力やセンスの高さ,我々と一緒に一つの大きな目標を目指してやっていける本当にいいチームだということが分かったと。つまり,(開発期間だけではなく)開発ができる条件が整うまでに15年近くかかったということなんです。
――なぜいま,新しい2Dメトロイドを復活させようと思ったのでしょうか。
坂本氏:
(シリーズ完全新作としては)「メトロイド フュージョン」の次回作となる作品は,やはり「メトロイド ドレッド」しかないと思っていたんですね。それがいま,さまざまな条件が整ったことで「これを作るべき時が訪れた」ということになります。
――技術面で実現できなかったという話ですが,なぜSwitchの登場まで開発に至らなかったのでしょう。
坂本氏:
まず,15年前のニンテンドーDSの時代ですが,あのスペックではドレッドで作りたかったことを正しく表現するのに無理がありました。その後,ハードはスペック的にあがっていったのですが,作る体制がなかなか整わず,それがどうしても障害となっていたんです。
先ほどと同じ回答にはなりますが,MercurySteam Entertainmentとの出会いで開発ができるとなり,そのタイミングの現役ハードがSwitchだったということになると思います。
――とくに影響を受けたという,過去のシリーズ作品があれば教えてください。
坂本氏:
「メトロイド フュージョン」のSA-Xは,とくに参考になりましたし,「あの遊びを広げていきたい」というのが自分の中で大きかったと思います。
――本作のサムスの性格はいかがでしょう。
坂本氏:
皆さんが非常によくご存じである,プロフェッショナルに徹した寡黙な戦士というイメージを持っていただければ間違いないと思います。
――これまでのシリーズ作品では,イベントシーンやカットシーンが多いものもあれば少ないものもありました。本作はどれにあたるのでしょう。
坂本氏:
「メトロイド サムスリターンズ」のときも,さまざまなシークエンスやカットシーンがところどころに入っていますが,3Dのシーンと2Dゲームビューをシームレスにつながったようにする演出によって,かなり表現が向上することが分かっていたんですね。
本作でも同様に同じような手法を使って,その場の状況や緊張感を描いています。また,本作はストーリーも重視しているので,そのあたりのカットシーンはかなり重要なポジションを占めています。
――メトロイドをホラーにしようというアイデアはどこから生まれたのでしょう。何からインスピレーションを得たのでしょうか。
坂本氏:
サムスが恐怖に見舞われるという部分がそう見えたのかもしれませんが,私たち自身は,「メトロイド ドレッド」をホラーゲームとは考えておりません。どちらかというと「サムスが恐怖に挑んでそれに打ち勝ち,どんどん前進する」という姿を描くための刺激として重要だと思ったんですね。
(インスピレーション元にあるのは)先ほど伝えたとおり,SA-Xの遊びにある緊張感です。あの緊張感をもっと大きくフィーチャーし,本来のメトロイドのゲームデザインにうまく取り込むことができれば,より多彩な刺激があるメトロイドができるだろうと考えました。
――メトロイドを知らない若い世代も少なくないと思います。開発チームはそのあたりをどう考えてゲームを制作したのでしょうか。
坂本氏:
それについてはおっしゃるとおりだと思っています。我々としては“常に最高のメトロイドを作っていこう”という考えがありますが,今回は幸運にもと言いますか,E.M.M.I.のパートは従来のメトロイドとは違う刺激を生むものとなっていて,「襲われる恐怖」によって,これまでのメトロイドを知らない人たちにもプレイしてみたいと思ってもらえるのではないかという期待があります。
――なぜ「メトロイドの新作を作りたい」という思いが湧くのでしょうか。本作でエキサイティングだったことも教えてください。
坂本氏:
常に「最高のゲーム体験を提供したい」と思ってゲームを制作していて,この気持ちは衰えることはないと考えています。
今回エキサイティングだったことは,長年描きたかったE.M.M.I.に関する部分のゲームプレイが,当時想像していた以上の形で皆さんに遊んでもらえるデザインになったところですね。自分達でも満足のいくものとなっていますし,早く皆さんのもとにお届けして,それを楽しんでほしいです。
――5部作の最終章となるのでしょうか。
坂本氏:
これまでシリーズで描いてきた,メトロイドとサムスという“敵対する両者の奇妙な運命や関係性”をつづってきた物語に関しては,これでいったん一区切りとなります。
と言っても,これでメトロイドが終わるわけではありませんし,皆さんがそれを望んでいないことは分かっていますし,私たち自身も同じ思いです。今後は新しいエピソードとして何が来るかを楽しみにしていただきたいですね。
――メトロイドがなぜ,ここまで長く人気が続いている作品となったと考えていますか。
坂本氏:
これはなかなか難しい質問です。そうですね,皆さんがサムスという戦士になりきり,ゲームをプレイすることで彼女の体験を追体験し,考え方や人間性を感じてくれたことが,その結果なのかなと思っています。
――サムスのアクションがよりスピーディになりましたが,恐怖を感じさせるゲームにとって,スピードが速いということは相反するものはないのでしょうか。
坂本氏:
それはないかと思います。ゲームの雰囲気とアクションはそこまで影響し合うものではないですし,どんな環境であれサムスが快適に動くということは,ゲーム体験にとってプラスになるものだと思います。
――執拗に追い回してくるE.M.M.I.の動きについて,最大のインスピレーションとなったのはなんですか。
坂本氏:
外部から受けたインスピレーションはとくになかったのですが,描きたかったのはSA-Xにも通じる,サムスを追いかけてくる強力な敵という部分ですね。それに加えて,“不気味さ”というものを表現したいと思いました。
E.M.M.I.はロボットなんですが,無慈悲で無機質な恐さと言いますか,感情を持たず,機械的にサムスをつけ狙うというところを強調したかったので,デザインを含めてこのような形になりました
――プロデューサーとして開発チームとはどのように関わったのでしょう。
坂本氏:
前作も同様でしたが,私を含めた任天堂のチームとMercurySteam Entertainmentのチームというのは,会社は違いますが本当に心を一つにしてゲームを制作できるチームなんです。
私も常にMercurySteam Entertainmentとコミュニケーションを取って,善し悪しを見極めつつ一緒に考えながらゲーム開発に取り組みました。プロデューサーとしてだけではなく,クリエイティブ面でも多くの役割を務めていたと思います。
――15年前の構想時点からこれまでで変わらず残っているアイデアはありますか。
坂本氏:
コンセプトはおそらくほとんど変わっていないですね。15年前から一貫していて,最強の戦士サムスを脅かし,追い詰める恐怖という部分は何ら変わっていないです。
――スピーディなアクションですが,ゲームの早期クリアを目指すスピードランナー向けに考えられた部分はありますか。
坂本氏:
いままでのメトロイドシリーズと基本的に変わりはないと思っていただいて差し支えないと思います。
――アクション探索はSwitchの携帯モードで遊ぶのに最適だと思うのですが,開発時点で携帯モードへの最適化に関する考えはありましたか。
坂本氏:
皆さんがどんなプレイスタイルで,どんな遊び方をしたとしても楽しめるものを目指しているので,携帯モードに特化した考え方などはありません。テレビの大画面で遊ぶのも楽しいですし,持ち歩いて携帯モードでプレイしても,どちらも変わらず快適に楽しめると思います。
――SA-XとE.M.M.I.のようなもの以外に,「メトロイド フュージョン」のときにできなかったが,今回できたという要素はありますか。
坂本氏:
タイトルごとに必要な要素というのは異なっていて,それを作っていくということがゲームをデザインするうえで大事なものだと考えています。
もちろん「あればよかった」というものもあるかもしれませんが,本作では「ドレッドで最も必要とするもの」を揃えて作れたと思います。
――最後にメッセージをお願いします。
坂本氏:
本作は我々にとって非常に自信作となっておりまして,多くの皆さんに遊んでいただきたいと思っています。
質問にもありましたが,メトロイドを知らない方や若い世代にも知ってほしいと考えています。話を知らなくてもオープニングを観ればそれらが理解できるようになっていますし,本作から始めたほうがいいかもしれないと思える部分もあるんですね。E.M.M.I.という新しい要素もあるので,楽しんでもらえると思います。「メトロイド ドレッド」をよろしくお願いします。
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