プレイレポート
無料で遊べる伝説の神ゲー「ドミニオン」を元世界チャンプが解説。ドイツ年間ゲーム大賞をはじめ,さまざまな賞を獲得した名作ボードゲーム
唐突だが,本稿では筆者の中で神ゲーの1つに分類されるボードゲーム「ドミニオン(Dominion)」を紹介していく。ちょうど年末年始の大型連休で,暇を持て余しているゲーマーは少なくないだろうということで,そういった人たちに向けた記事をお届けしようと思う。
なお,もうすでにプレイしている人には今さらその神ゲーっぷりを語る必要もなかろうということで,本稿は今までドミニオンをプレイしたことがない人を対象とした記事となる。
ちなみに,筆者はドミニオンにハマりすぎて,ドイツ・エッセンで行われた世界選手権で優勝してしまうぐらいやり込んだ過去を持つので,このゲームに関してはおまかせあれ,と自信を持って断言できる。ぜひご一読いただければ幸いだ。
なんとSteam版は無料で遊べる
まず,このゲームの神ゲーポイントとして挙げられるのが,なんとSteam版は無料でプレイできるということだ。
正確には,基本セット以外の拡張セットを買う際にはお金が必要だが,基本セット+期間限定でお試しで遊べる拡張セットは無料でプレイできる。正直,最初は基本セットだけでも十分遊べるし,慣れてきたらお試しで開放されている拡張セット(※)を加えるだけでも暇な時間は溶けていくはずなので,問題ないだろう。
※記事執筆時点では,「異郷」と「ギルド」の2セットが開放されている
毎回ゲームが違うので,無限に楽しめる
そして,もう1つの神ゲーポイントなのだが,王国カードの組み合わせによって毎回違うゲーム体験が得られるという点だ。
ドミニオンというゲームは,毎回ランダムに選ばれる王国カード10種を場に出してゲームを始めるのだが,この時にどの王国カードが場に出るか,そしてどの王国カードの組み合わせがあるか次第で,まったくゲームが変わってくるのだ。無料なのに,毎回異なるゲーム体験があることで無限に飽きることなく遊べる。こんな素晴らしいことがあろうか(いや,ない)。
ゲームのルールについて
では,実際どんなゲームなのかについて説明していこう。本作は,場にある王国カードや財宝カードを購入することで自分のデッキを強化し,終盤には強化したデッキで「属州」などの勝利点カードを購入し,最終的にもっとも勝利点が高いプレイヤーが勝利する……というゲームだ。デッキを道中で強くしていくゲームというと,「Slay the Spire」などがあるが,それらデッキ構築ゲーの元祖とも言える。
最初は1金を生み出す財宝カード「銅貨」7枚と1勝利点となる「屋敷」3枚による計10枚の初期デッキからはじめ,1ターンごとに初期手札5枚を山札から引くことができる。購入したカードや使用したカードは基本的にすべて捨て札置き場にいくのだが,山札がない状態でカードを引く際に,捨て札置き場のカードをリシャッフルして新たな山札とするので,購入したカードをリシャッフル後から使えるようになるという仕組みだ。
ちなみに,1ターンの流れでカードの購入前にアクションフェイズがあり,「カードを3枚引く」などのさまざまな効果をもったアクションカードを使用することができる。通常,1ターンに1アクションしかプレイできないのだが,アクションカードの中には「+2アクション」などの使用アクション回数を増やせるものがあり,それらを用いることで1ターンにデッキをすべて引き切るようなプレイも可能だ。
また,購入可能なカードが置かれている場は「サプライ」と呼ばれる。ゲームの終了条件は,サプライから属州がなくなるか,サプライに置かれたカードの山が3種類なくなるかのいずれかだ。
とまあ,小難しそうなことをつらつらと書いてしまったが,実際はそんなに難しくないので,プレイしてみれば簡単に流れはつかめるかと思う。このあたりのゲームの流れは,Steam版のドミニオンからもリンクが貼られている「ドミニオン Wiki」の「ゲームの概要」で図付きで分かりやすく解説されているので,そちらをあわせて確認しておくとイメージがつかみやすいはずだ。
「ドミニオン Wiki」ゲームの概要
実際にプレイしてみよう
さて,簡単にルールも確認したことだし,触ったほうが分かりやすいので,実際にプレイしてみよう。まず,初期設定では英語になっていると思うので,タイトル画面右下の(≡)のマークから「Settings」に飛び,Languageの項目を「日本語」にしておくことをおすすめする。
次に,「オフライン」の項目から「王国カード」のExpansionsの項目を押そう。最初は簡単なカードが揃っている「基本セット」だけでプレイすることをおすすめしたいので,ここは「基本」のところだけをアクティブにしておく。
そして,プレイヤーのところから1人「Very Easy AI」を選択しよう。自信があるゲーマーの人はもう少し上のレベルのAIでもいいかもしれないが,そうでなければ初プレイ時はもっとも易しいAIにしておくことを推奨しておく。この「Very Easy AI」はぜんぜん勝利点を買おうとしないので,ゲームに慣れるにはもってこいだし,実際にプレイしてみればなんとなくルールをつかむことができるはずだ。
カードをたくさん引いて気持ちよくなれる「村鍛冶コンボ」の紹介
さて,ここからは実際にプレイしてなんとなくルールが分かった人向けの話をしていく。先ほど「カードの組み合わせによってゲームが変わる」という話をしたが,ここをさらに掘り下げていくうえでプレイをおすすめしたい“最初のゲーム(First Game)”という公式サプライがある。その内容は以下の通りだ。
・地下貯蔵庫
・堀
・商人
・村
・工房
・民兵
・改築
・鍛冶屋
・市場
・鉱山
先ほどの「王国カード」のExpansionsの横にある歯車のボタンを押すと,あらかじめサプライに使用されるカードを設定できるのだが,こちらから複数のカードの裏側が映ったボタンを押すと推奨サプライを選べる。今回は,この中から“First Game”と書かれたものを選ぼう。
そうして,実際にこのサプライでプレイしてほしいが,ぶっちゃけこのサプライは,カードを3枚引く効果を持つ「鍛冶屋」と財宝カードだけを買っていてもまあまあ強い。ただ,それに対抗し得る戦術としてここでは“村鍛冶コンボ”の説明をしていく。
村鍛冶コンボとは,「カードを1枚引く +2アクション」という使用可能なアクション数を増やせる効果を持つ「村」と,先ほどお話した「カードを3枚引く」効果を持つ「鍛冶屋」の組み合わせで毎ターンデッキを引き切ってしまうという強烈なコンボだ。このコンボは,なんといっても毎ターンカードをたくさん引けて気持ちいいので,カードを引くだけで幸福感を感じてしまうカードゲーマータイプの人には特におすすめだ。
さて,話がそれたがこのコンボは「村」と「鍛冶屋」を大量に集めなければ成立しない。かつ,アクションを増やす系かカードを引ける系のアクションカードと,購入に必要な金を出す財宝カード以外は,極力デッキから減らすのが理想となる。そこで,役に立ってくれるのが,「手札1枚を廃棄し,それよりコストが最大2高いカード1枚を獲得する」効果を持つ「改築」だ。
このカードを用いることで,ゲームが終わるまでは何もしないコスト2の「屋敷」を捨ててコスト4の「鍛冶屋」やコスト3の「村」を獲得し,実質的に不要カードを有用なカードに変換できる。コスト0の銅貨を廃棄するパターンでも,手札を入れ替えられる効果を持つコスト2の「地下貯蔵庫」に変えられるので,最低限の動きはできる。
また,「コスト4以下のカードを1枚獲得する」効果を持つ「工房」を用いることで,より「村」や「鍛冶屋」を効率的に集められるはずだ。というわけで,このサプライで試しに1ターン目と2ターン目の購入を「工房」と「改築」とし,ターンを進めていこう。(1ターン目と2ターン目の銅貨が2枚と5枚に分かれてしまった場合はやり直そう)
そうして,あとは「工房」や「改築」を使用することで「村」や「鍛冶屋」を集めてみてほしい。このときのコツだが,「村」を「鍛冶屋」より気持ち多めに集めておくと手札事故が起こりにくいので,やや「村」優先のバランスで獲得していくことをおすすめする。
その道中でもし5金出た場合に,買っておきたいのが「市場」だ。このゲームは通常購入フェイズに1回しか購入できないのだが,「市場」を使うことで購入回数を+1することができる。例えば,7金出た場合にも「村」+「鍛冶屋」で2購入みたいなことができるので,最低1枚は購入し,デッキに仕込んでおきたい。
あと,6金出たときには「金貨」を買ってデッキから出るお金の総量を増やしておくといいだろう。「銅貨」→「銀貨」や「銀貨」→「金貨」のような財宝のグレードアップができる「鉱山」を用いるのもあり。
さて,そうして十分な「村」と「鍛冶屋」が集まれば,デッキをすべて引き切れるようになっているはずだ。そのような状態になったら,「相手の手札を3枚にする」アタックカードの「民兵」をデッキに仕込んで,毎ターン打っていくのもいいだろう。
ちなみに,デッキの中の財宝カードの量を調整しつつうまくやれば,下に掲載した画像のように16金+複数の購入回数みたいな感じになって,購入に8金必要な「属州」を1ターンに2枚購入できるようになる。気持ちいーーーーー!!!!
とまあ,“村鍛冶コンボ”はこんな感じなのだが,こういった派手なコンボを組めるのもドミニオンの魅力の1つで,サプライに出てくる王国カードによって組むべきコンボも変わってくる。この“最初のゲーム”にしても,プレイ人数や番手,他がどういう動きをするのか次第で正解となる動きが変わってくるので,非常に奥深い。やればやるほど,スルメのように味わい深く,面白くなってくるはずだ。
慣れてきたら,Hard AIやブラウザ版でのレート戦に挑戦してみよう
ある程度プレイして慣れてきたら,AIのレベルを上げてみよう。特に,このゲームのHard AIはなかなか手強く,筆者でも時々負けるほどなので,ぜひ一度チャレンジしてほしい。逆に,Hard AI相手に一定以上の勝率を出せるようになれば,かなりこのゲームに習熟してきた証拠といえる。
また,基本セットのみなら無料で遊べるブラウザ版の「ドミニオン オンライン」もあるので,慣れてきた人向けにそちらもあわせて紹介したい。
ブラウザ版「ドミニオン オンライン」
一応,Steam版でもフレンドと対戦したり野良の相手を募集して対戦できるのだが,こちらではレーティングがあるレート戦を行えるので,腕試しをしたい場合はこちらのほうがいいだろう。
友人とフレンド対戦をする場合も,インストールなどの必要がないブラウザ版のほうがお手軽だ。もしブラウザ版で拡張セットを使いたい場合は課金が必要だが,卓を立てる人が課金して拡張セットを開放すると,卓にいる全員が使用できるので,誰か1人が課金するだけで事足りる。
ちなみに,使い方がいまいち分からんぞという場合は「ドミニオンオンライン 使い方」といったキーワードでGoogle検索をすれば,有志の解説サイトが複数出てくるので,それらを参考にすると良いかと思う。
そうして,友人とDiscordなどで話しながら対戦したり,見知らぬ相手とレート戦をするなりしていれば,年末の休みも気づけば溶けてしまうだろう。そのぐらいの中毒性を持つゲームで,特に「ポケモンカード」や「マジック・ザ・ギャザリング」などのTCGや「ハースストーン」,「シャドウバース」などのDCGをプレイしたことのあるプレイヤーならより沼にハマりやすいと思われる。
年末年始の暇な時間のおともに,ぜひ神ゲーである本作をプレイしていただきたい。
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