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[インタビュー]初代「信長の野望」で初めて統一したときに“こりゃ面白いゲームができた!”と感動。40周年の節目に,シブサワ・コウが語る
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印刷2023/03/30 17:04

インタビュー

[インタビュー]初代「信長の野望」で初めて統一したときに“こりゃ面白いゲームができた!”と感動。40周年の節目に,シブサワ・コウが語る

初代「信長の野望」のパッケージ
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 本日(2023年3月30日),コーエーテクモゲームスの「信長の野望」が40周年を迎えた。
 後に「歴史シミュレーション」というジャンルを生み出すことになった「信長の野望」は,1983年に光栄マイコンシステムからカセットテープ媒体で発売された。2022年7月の「信長の野望・新生」PC/PS4/Switch)でシリーズは16作目となり,今でもさまざまな展開を見せている。
 新たな展開として本日,シリーズ初となる位置情報ゲーム「信長の野望 出陣」iOS/Android)も発表されたばかりだ。

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 今回4Gamerでは,40周年の節目ということで,シブサワ・コウことコーエーテクモホールディングス 代表取締役社長 襟川陽一氏にインタビューを行った。襟川氏へのインタビューは2015年の「三國志13」のとき以来なので,実に8年ぶりだ。相応の年月が流れているので,襟川氏もお変わりになっているかも……と思っていたが,まったくそんなことはなく,ニコニコと笑いながら,本当に楽しそうにゲームの話をしてくださった。

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4Gamer:
 本日はお時間をいただき,ありがとうございます。この部屋に入ったのは2015年のインタビュー以来ですから,8年ぶりです。

襟川陽一氏(以下,襟川氏):
 もうそんなになりますか。

4Gamer:
 「三國志13」のときですね。あれは「三國志」の30周年でしたし,少し前はシブサワ・コウ40周年,そして今回は「信長の野望」40周年です。

襟川氏:
 毎年毎年,いろいろなことがありますね(笑)。

4Gamer:
 早いもので,僕も襟川さんが大病を患った50歳を越え,健康に気を遣う毎日です。

襟川氏:
 男の厄年は42歳とされますが,私は50歳だと思います。若い若いと思っていても,そのぐらいから体が持たなくなってきて,生活や仕事の仕方も変わってきますから。

4Gamer:
 でも,ゲームはずっとやってらっしゃいますよね。

襟川氏:
 ゲームは楽しいですから! もともとゲームが趣味で,それでゲームを作って通信販売も始めたぐらいなので,根っからゲームが大好きなんです。

4Gamer:
 最近は何を遊ばれていらっしゃるんですか?

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襟川氏:
 当社のゲームですが,今一番朝に集中して遊んでいるのが「信長の野望 覇道」です。それと,家に帰ってきて寝る前に2,3時間やっているのが「Wo Long:Fallen Dynasty(ウォーロン フォールン ダイナスティ)」です。開発中のバージョンを何回もプレイしていますが,いちユーザーとして初心に帰ったつもりで最初からまた始めました。

4Gamer:
 いつだったか,東京ゲームショウですれ違ったとき,恵子さん(コーエーテクモホールディングス 代表取締役会長の襟川恵子氏)に「この人,夜もずっとゲームをしているのよ,あなたも見習いなさい」と言われたのを覚えています(笑)。

襟川氏:
 そうですね,ずっとやっています(笑)。
 自宅では朝も夜もゲーム。会社に来たらマネジメントの仕事を何時間かやって,それ以外は開発途中のバージョン……α版だ,β版だ,ファイナル版だとたくさんありますから,そういうものを遊んでチェックしています。

4Gamer:
 襟川さんのチェックでは,どういった部分を見られているのでしょう。

襟川氏:
 「楽しいかどうか」です。ああしなさい,こうしなさいとあまり言わず,「面白かったよ」が自然に出てくるかどうかをチェックします。

4Gamer:
 それは意外です。襟川さんは理系なイメージなので,理詰めで説明されるのかと。

襟川氏:
 昔はそうでした。自分で企画書なども書いていたので,つい細かく言いたくなってしまって。
 しかし,楽しいものを形作るためにどうするかは現場の人たちがやるべきことですから,最近はそこまでは立ち入らないようにしています。

4Gamer:
 失礼かもしれませんが,歳を取ったことでコンソールゲームの面白い,面白くないを判断する自信が揺らいだりはしませんか?
 メディアをやっていると,面白い記事というものがどんどん変わっていきますし,この歳になると20代の子が面白いという記事が分からなくて,自信がなくなってくるんです。

襟川氏:
 ああ,芸能界ではある程度流行がありますよね。世代によって経験している世界が違いますから。
 でも,ゲームに関しては,私は素直に感じたことを伝えるだけですから。

4Gamer:
 すごいなぁ……。

襟川氏:
 ゲーム(ビデオゲーム)は1970年代から存在していて,歴史があります。10代の人も私みたいな70代も,面白いと思えるものは面白いです。囲碁や将棋だってクラシックなゲームですが,年齢を問わずみなさん楽しんでいるでしょう?

4Gamer:
 確かにそうですね。遊びの面白さの根っこにあるものは,いつまでも変わらないのかもしれません。

襟川氏:
 何より,当社の社員もみんな育ってきて,私がいちいち言う必要もなくなりました。1985年から新卒を採用してきましたから,新入社員で入ってきた人がもう60歳近くになるのです。プログラマーやプランナーを経験して,ディレクターやプロデューサーになって,役員になって。それでも,自分で作るプロジェクトを未だに持って,経営の仕事もしながらゲームを作っています。

4Gamer:
 襟川さんと同じことをしているわけですね。

襟川氏:
 そうなります。もう私が細かいことを言わなくても大丈夫なので,ただ面白いか,面白くないかを伝えるようにしているのです。
 あ,でも,「Wo Long」はちょっと言いました。とにかく「化勁」(かけい)……いわゆるパリィが大事なゲームで,これで敵の攻撃を返していくのがすごく面白いのですが,開発途中のバージョンがとにかく難しかったのです。パリィの受け付け時間は,1フレーム伸びるだけで快適さが全然違うので,少しだけ伸ばしてもらいました。

4Gamer:
 今もなお現役で,そういうことをやってらっしゃるわけですね。
 しかし,1フレーム伸ばしてほしいと言える襟川さんは,相当特殊ですよ。私はもう年齢的にアクションゲームは厳しいと感じるのですが……襟川さんを見ていると,甘えかなと……。

襟川氏:
 いやいや,さすがにパリィ型のゲームは,私もきつくなってきました。動体視力が必要なので,押し遅れるのです。製品版でも最初のボスを倒すまで3,4時間かかって,開発責任者を羽交い締めにしてやろうかと思いました(笑)。

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初めて統一したときの手応えは「こりゃ面白いゲームができた!」


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4Gamer:
 以前もお話ししましたが,僕が初めて買ったゲームソフトは「川中島の合戦」でした。現金書留で,子供の僕にはやり方が分からなかったので,お婆ちゃんに手続きをやってもらって。その後「信長の野望」が出たわけですが,あの頃からずっと続いて,いつの間にか40周年とは。

襟川氏:
 早いですね。今年は40周年記念で,いろいろな「信長の野望」が出てきます。昨年12月からはスマホで「信長の野望 覇道」をサービス開始していますが,さらにGPSを使ったウォークゲームの「信長の野望 出陣」も配信します。

4Gamer:
 おお,ついにですか。「信長の野望」は,ずっと位置ゲームに向いていると思っていました。日本全国を舞台にするのに,こんなに相応しいIPもないですから。

襟川氏:
 日本100名城とか,有名なお寺とか神社とかね。私は京都の街を歩きたいなと。

4Gamer:
 いいですね。いろいろな場所を巡りたいです。
 率直なお気持ちとして聞いてみたいのですが,これだけ長く続くと思っていましたか?

襟川氏:
 夢にも思っていませんでした。もともと「信長の野望」は,そのときそのときでお客様のご要望に応えてきただけなのです。17か国でプレイできる初代を作ったとき,今度は九州の方から島津でやりたい,仙台の方から伊達を使いたいという声をいただいて。それならばと「信長の野望・全国版」を作ったら,次は配下の家臣も入れてほしいと。それで「信長の野望・戦国群雄伝」では,信長の配下の勝家や秀吉など,武将がたくさん出てきてにぎやかになりました。
 そしたら,今度は2Dから3Dの時代になって,合戦シーンをもっとリアルにして,もっとAIを効かせてとさんざんいただきまして(笑)。

4Gamer:
 要望もどんどんエスカレートしていく(笑)。

襟川氏:
 そうこうするうちに,どんどん時間が経って40年です。こんなに長く支持していただけるのは本当に嬉しいです。

4Gamer:
 最初の「信長の野望」ってBASICで作られていましたよね。

襟川氏:
 そうです。分かっている方なら好きなように書き換えられますから,当時は大学別でユーザーが改変したバージョンなんてものもありました。「信長の野望 何々大学版」みたいなやつです。あとマニュアルばかりをコピーする人がたくさんいて,まぁまともに買う人が少なかった時代でしたね(笑)。

4Gamer:
 あの頃はまだ子供で分かりませんでしたけど,いま考えると牧歌的な時代でしたね。

襟川氏:
 ゲームの媒体がカセットテープの時代なので,ダビングすれば遊べてしまったのです。
 そこから始まったものが,ゲーム機やPCの性能が良くなるにつれてソフトも面白くなっていき,ここまで来られました。

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襟川氏:
 そうそう,当社に入社してくるのはほとんどゲームファンですが,とりわけコーエーテクモのゲームをずっとプレイされてきた方が多いのです。なので,あらかじめ作りたいゲームが頭の中にあるのです。自分なりの「信長の野望」が。

4Gamer:
 どういうところを変えようとしてくるんですか?

襟川氏:
 町づくりや合戦をもっと深掘りしたいとか,いろいろ言ってきます。入社1,2年目だと,プロジェクトチームの下の方なのでなかなか言い出せないのですが,3,4年経つと長年思い描いてきた「信長の野望」を実現できるように,いろいろと発言するようになります。

4Gamer:
 でも,信長の野望は「歴史シミュレーション」ですから,要素を増やせないじゃないですか。架空のキャラは出せないし,歴史は変わらないし。よくアイデアを思いついて,何作も作れるものだと新作が出るたびに思います。

襟川氏:
 そんななか,みんな入社前から,「こういう信長の野望を作りたい」と熱き志を持ってくるのです(笑)。

4Gamer:
 「信長の野望」の半分でしかないですけど,4Gamerも立ち上げてから20年以上が経ちました。20周年で過去を振り返ったとき,当時初めてサーバーをセットアップして,htmlをftpで送り込んで,ブラウザで表示されたときに「出た出た!」ってみんなで喜んだのを思い出したんです。
 襟川さんは初代「信長の野望」を作って,ご自分でテストプレイされたと思いますが,最初のプレイで統一したとき,どんなお気持ちでしたか?

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襟川氏:
 「こりゃ面白いゲームができた!」って心底思いましたよ。ゲームの完成形って,企画書を書いていくと頭の中にすでにあるので,プレイのイメージはできるのです。17か国を統一できたら面白いだろうな,という予想はしていました。でも,実際に自分で遊んでみたらものすごく面白くて,熱中して,徹夜で遊んでいたのです。

4Gamer:
 やっぱりそうなんですね。

襟川氏:
 初代「信長の野望」までに,自分で10本ぐらいゲームを作ってきていました。「川中島の合戦」に始まり,「コンバット」とか「ノルマンディ上陸作戦」とか「ダス・ブート」とか,ウォーシミュレーションばっかり。

4Gamer:
 月刊マイコンのモノクロ広告でよく見てました。

襟川氏:
 それはそれで面白かったのですが,信長の野望にはそれ以上のものがありました。1つ1つ,国を取ったり取られたりして,明け方に17か国統一したときは,思わず立ち上がって「やったー!」と喜びました。ゲーム作り自体も楽しかったけど,プレイしても楽しかったのです。

4Gamer:
 その体験を大切にする感覚は,今でも続いているわけですね。

襟川氏:
 そうです。開発中のバージョンでも,自分で遊んで面白いと心底思えるようなゲームじゃないと。これは理屈じゃないのです。

1983年6月の広告。私物をスキャンしたものだ
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4Gamer:
 当時,マイコン誌で光栄(※当時は「光栄マイコンシステム」)の広告を見ていて,いろいろなウォーシミュレーションや投資ゲームがある中で,「信長の野望」だけカラーが違うと感じていました。そもそも,どういった発想から作ることになったんですか?

襟川氏:
 司馬遼太郎さんの「国盗り物語」という小説を読んだことが,信長が主人公のゲームを作ろうと思った大きなきっかけです。それから,「川中島の合戦」で信玄と謙信の戦いを作って,ファンの方から面白いとお手紙やお電話をいただいたのですが,ほかの戦国大名でプレイしたいというご要望もあったので,次は信長にしようと決めたという流れもあります。

4Gamer:
 「信長の野望」って,ただの戦争ゲームではないですよね。戦争はそれまでに準備したことの結果でしかなくて,それが斬新で面白かったです。

襟川氏:
 戦いだけでなく,いろんな側面を入れたかったのです。「川中島の合戦」は戦いだけでしたが,実際には当時の大名は,外交や国造り,人材集めなど,戦いの前の準備もやっていたのだろうと考えました。
 こうしたトータルマネジメント要素は,自分が経営者兼クリエイターの立場だったから入れたくなったのではないかと思っています。まぁこれは最近振り返って思っただけで,当時はそんなこと考えていませんでしたけれども。

4Gamer:
 これまでの40年で,記憶に強く残っている「信長の野望」はどれでしょう?

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襟川氏:
 やはり初代「信長の野望」ですね。強烈に面白かったので。
 あと「信長の野望」シリーズではなくて申し訳ないのですが,最近で強く記憶に残っているという意味では,「仁王」になります。12年かけて作り直して,3回目でやっと日の目を見たので。あれはもう,私の開発期間で最長記録です。

4Gamer:
 あれは……あそこまで延期して,ちゃんと発売されたことに驚きました。

襟川氏:
 最初はRPGで作っていたのですが,どうも求めていた面白さと違っていたんです。それでテクモと経営統合したので,Team NINJAに頼んだら「NINJA GAIDEN」そのものが出てきて(笑)。
 そこからいろいろなアイデアが出て,最終的には難度が非常に高いアクションになりました。それで人材も育って,「仁王2」や「Wo Long」にもつながっていきました。

4Gamer:
 これからの「信長の野望」の展開としては,どんなことを考えていらっしゃるのでしょうか。

襟川氏:
 これは「信長の野望」というより当社の経営方針ですが,「グローバルIPの創造と展開」を掲げています。もちろん,ゲームとしては,いろいろなジャンルにチャレンジして,楽しんでくださるファン層を増やしていきたいという目標はあります。
 しかし,IPをゲームだけで完結させるのではなく,展開していくことが大切だと考えているのです。ジャンル展開,プラットフォーム展開,コラボレーション展開,タイアップ展開,ライセンス展開……とにかく多方面に展開していこうと考えています。

4Gamer:
 実際,コーエーテクモのタイトルは,ゲーム外でもいろいろなところで見かけます。ちょっと前ですけど,身近なところでは,地下鉄のマナー啓蒙のポスターですとか。以前「信長の野望 201X」では空気清浄機とのコラボもあって,これが許されるIPもすごいなと驚いた覚えもあります。

襟川氏:
 そうですね,いろいろな会社とコラボレーションしています。ああいった取り組みは,「信長の野望 出陣」でも日本各地でどんどんやっていきたいです。私はお酒が好きなので,日本酒のメーカーさんとかぜひ(笑)。

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朝の5時から夜の10時までゲーム漬け


4Gamer:
 襟川さんは,今は直接ゲーム開発に携わっていないとはいえ,それでも重要なところの判断はなさっていらっしゃいますよね。

襟川氏:
 「大きな予算をかけて,こういうゲームを作る」という最終決定をするのは取締役会ですが,その中で私の意見が重要視されているのは事実です。

4Gamer:
 つまり,現状でも経営だけをやっているわけではない,二足のわらじのポジションということになります。これは他意のない質問なんですが,それをいつまでやっていこうとお考えなんですか?

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襟川氏:
 それ,分からないのです(笑)。
 なにせ,70歳を越えてまでゲームに関わっている生き方なんて,想像もしていませんでしたから。そもそも50歳のときに会長になって,そこから2年経って最高顧問になって,そこで私の会社経営の役割は終わったと思っていました。後は自由気ままにゲームを作って,遊んで,残りの人生面白おかしく生きようって思っていたのです。本当ですよ?

4Gamer:
 あのときは,業界の皆さんも同じように思っていたはずです。ついに襟川さんも悠々自適の生活に入ったのか,と。

襟川氏:
 それがガラッと変わったのが,2009年にテクモと経営統合してからです。その前後に,営業利益が相当下がっちゃって。それで「さすがにまずいぞ,遊んでばっかりいられないな」と社長に復帰して,そこからはずっと連続して営業利益が上がって,今に至ります。

4Gamer:
 復帰してから,まず最初に何に手を付けたんでしょうか。

襟川氏:
 何をターゲットにして,どう作っていくのか,ひとつひとつ方向性を決めていきました。あとは,先ほどお話したグローバルIPの創造と展開です。IPを作って終わりではなく,そこからたくさんの展開を進めていったのが,功を奏しました。

4Gamer:
 功を奏したばっかりに,まだ社長を続けていらっしゃるわけですね。

襟川氏:
 そうなります(笑)。
 引退がいつになるかは,たぶん肉体的な理由とかで,もうゲームをプレイしたくないと思ったときだと思いますよ。

4Gamer:
 それがしばらくないであろうことは,お話していても伝わってきます(笑)。

襟川氏:
 今のところ,絶好調で楽しいですからね。はっきり申し上げて,ゲーム漬けです。朝の5時から夜の10時までずっとゲームですから。朝起きたらすぐスマホのゲーム。まず「Fate/Grand Order」を立ち上げて,「三國志 覇道」をやって,「信長の野望 覇道」をやって,人気の「ウマ娘」や「原神」もどういうゲームか知りたいのでちゃんと遊んで。

4Gamer:
 話題作も一通り遊ばれるんですね……。

襟川氏:
 敵情視察みたいで面白いですよ(笑)。でも,続けるのは気に入ったタイトルだけです。500万本,1000万本と売れたゲームも,自分で体感してみたいので一応やりますが,本当に気に入らないと最後までプレイしません。

4Gamer:
 最後までプレイされたタイトルは,最近だと何になるんですか?

襟川氏:
 「ELDEN RING」や「サイバーパンク 2077」です。100時間とか200時間とかかかりますが,遊んでいてやっぱり楽しいので。

4Gamer:
 本当にがっつり遊んでいるプレイ時間ですよ,それは。

襟川氏:
 プレイ時間で言ったら「仁王」は,3周して250時間遊んだところで,自分の人生が破壊されちゃうってやめました。開発途中で相当プレイしたのに,発売後に一般ユーザーと同じ気持ちでプレイしたいと思って遊んでみたら,けっこう面白くてですね。

4Gamer:
 12年間も作り続けてきた自社タイトルを,さらに3周もやりますか?(笑)

襟川氏:
 開発中は,できあがる前のバージョンを何回も触るのですが,最終の調整が入った後,通しで最初から最後までやる機会はあんまりないんです。現場ではもちろんやっていますが,私の場合はセーブデータで途中からのチェックになるので。だから通しで遊んだら楽しくなっちゃって(笑)。

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4Gamer:
 襟川さんのやり込みエピソードはいろいろなところでお聞きしますが,そういうお話を知るたびに,根はやっぱりプレイヤーなんだなと思います。
 襟川さんと最後にキチンとお話してから8年も経っているので,さすがにお変わりになっているのかなと思っていたのですが,全然変わっていませんね。

襟川氏:
 変わらないですねぇ。
 近年は海外の方とお話しして,一緒にゲームを作る機会も増えましたが,彼らも同じようにゲームを愛しているのだと感じます。そういう気持ちがお互いにあるので,スムーズに話も進むのです。これがビジネスライクに話していたら,冷たいものが流れるのじゃないかなって。

4Gamer:
 ピンとこないですよね。

襟川氏:
 もちろんビジネスですから,結果として利益を出していくことは非常に大切です。しかし,面白いゲームを作ってファンの方に楽しんでいただく気持ちを最初から持っているか,とにかくお金が欲しいのかで,取り組む姿勢はまったく違ってくるでしょう。

4Gamer:
 というお話を聞くと,襟川さんはブロックチェーンやNFTにあまり興味がなさそうな気がします。

襟川氏:
 前々からお話はいただいていますが,いまはまだ先にお金の話が出てきちゃうので。それは結果であって,ゲームが面白くなくちゃNFTも何もないでしょう。ファンの方々は,まず面白いと思ってくださって,その後でお金を払ってくださるわけですから。

4Gamer:
 おっしゃるとおりです。

襟川氏:
 ブロックチェーンもNFTも,あくまでひとつのシステムです。システム自体は利益を生みませんから,大切なのはそのシステムを使って,どういう新しい面白さを作っていくかです。それなのに,出てくるのはブロックチェーンと,その一番の商材であるNFTの話ばかりで……。

4Gamer:
 大切なところが,まだすっぽり抜けていますよね。

襟川氏:
 将来的には,課金のいくつかのバリエーションの1つにはなるかもしれないですが。

4Gamer:
 コーエーテクモさんは新しいものを取り入れるのが早いので,もしかしてNFTも……と思ったのですが。インターネット対応も早かったですし。

襟川氏:
 出しましたねえ,「信長の野望Internet」。あれは,通信ケーブルで対戦できる「信長の野望 ゲームボーイ版」の延長線上にあるタイトルです。国を取り合うなら,大人数でやったら楽しいだろうと思っていたのですが,その時点では通信技術が追いついていなくて。

4Gamer:
 ネット環境が整備されてからのタイトルですと,「信長の野望 Online」も思い出深いです。

襟川氏:
 あれもね,「信長の野望Internet」からの流れで開発したのですが,サーバーまわりで苦労しているうちに,「ファイナルファンタジーXI」が先に出てしまって,悔しかったですね(笑)。

4Gamer:
 信Onのほうが先に出来てたのに! というのは改めて書いておきます(笑)。まぁでも当時は,あちらはあちらでとても大変そうでしたけど。
 最近では,AIの急激な進歩もトレンドになっていますが,そちらはいかがでしょう?

襟川氏:
 戦略,戦術を競うシミュレーションとAIは相性がいいです。もっともっと深掘りしたいと考えています。
 近年,一番AIに力を入れたのは「信長の野望・大志」です。ここでゴール達成型のAIを導入して,各戦国武将が目標に向けて行動していくようになりました。信長なら全国統一,謙信なら義,姉小路なら家名の存続などです。

4Gamer:
 それぞれが歴史に近い動きをするわけですね。

襟川氏:
 さらに,「信長の野望・新生」では,初めて配下の武将にもAIを効かせました。戦国武将だけでなく,配下が配下らしく動くことで,戦国時代で大名になっている感覚がより強くなったと思っています。しかし,まだまだ完璧ではありませんから,AIにはこれからも力を入れていきます。

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10代から70代まで,ゲームの話ができる時代が目の前に


4Gamer:
 それにしても,襟川さんは本当に楽しそうにゲームの話をされます。

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襟川氏:
 私にとって,ゲームは空気みたいなものですから。ゲームがなくなったら,私はこの世にいません。

4Gamer:
 一般的に考えて,デジタルゲームを面白いとは思う72歳の方は珍しいのでは?

襟川氏:
 でも,もったいないですよね。なんでゲームをやらないのだろうと,本当に思います。

4Gamer:
 ぜひ,同年代の皆さんに言ってあげてください。

襟川氏:
 でも,あと5年,10年もすれば,ゲームで遊ぶ70代は当たり前になると思います。すでに,ファミコン世代が定年の歳になっているのですから。そうなれば,10代から70代まで,ごくごく普通にゲームの話ができるのではないでしょうか。

4Gamer:
 それは素敵です。「信長の野望」のような歴史シミュレーションであれば,どんな年代でも楽しく話せそうですし。10年後の50周年が楽しみですね。

襟川氏:
 我々としてはこれからも,今までにない新しい面白さを世界のファンにお届けしたいと考えています。私も全社員も,同じ気持ちで取り組んでいきますので,よろしくお願いします。

ーーー2023年3月17日収録

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