プレイレポート
「信長の野望・新生」プレイレポート。自ら考え動く配下武将たちを育て,一緒に天下統一を目指す“君臣一体”のシステムが面白い
さまざまな人材を組み合わせて機能させるマネジメントの面白さ
「信長の野望・新生」は歴史シミュレーションゲームのハシリである「信長の野望」シリーズの最新作だ。プレイヤーは織田信長が生きた戦国時代で大名の1人となり,天下統一を目指していく。
本作では,人材を集め,内政で自国を富ませ,戦で版図を広げていくシリーズの基本はそのままに,「君臣一体」をコンセプトにしたシステムが盛り込まれている。配下の武将達は,自らの判断で行動をする“家臣”となってプレイヤーを支え,プレイヤーも彼らを出世させたり,武将達が互いの弱点を補えるような人材を編成したりと,互いに協力しあって自分の勢力を強化していくことになるのだ。
そのために用意されたのが,領地と「知行」,そして身分にまつわるシステムである。本作の日本は,無数の「郡」と,これを束ねる「城」で構成されている。そして,内政は城単位で管理され,戦争ともなれば城を代表する部隊が出陣する。
郡と城をひっくるめて領地といい,これを家臣に与えるのが知行である。関係性的に,城は県,郡は市や町と考えればイメージしやすいだろうか。県には県知事,市に市長がいるのと同様に,本作の城や郡にもリーダーが必要だ。城のリーダー(県知事)は城主。城に所属するそれぞれの郡(市)のリーダーは領主となる。城主は自分の城を,それぞれの領主は自分の郡を発展させていくのだ。
つまり,本作では無数の郡とたくさんの城,それぞれに武将を置く必要がある。さらに領主なら「足軽大将」,城主には「侍大将」以上の身分が必要になるので,そうした役目が務まる武将は限られてくる。また,武将は「忠誠」「統率」「武勇」「知略」「政務」といった能力値を持ち,戦争や内政に役立つ「特性」(自動発動するスキル)を備えた者もいるので,優秀な人材はいくらでも欲しい。
鳴海城には,8つの郡が所属している。城には城主,それぞれの郡には領主を配しないと発展しない。鳴海城だけで9人の武将が必要だ |
大野城には5つの郡が所属。落としたばかりなので城主や領主に空きがあり,このままでは危険だ |
滅ぼした敵勢力の武将をどん欲に取り込み,城を任せられる侍大将以上の地位にある者は44人。多いようだが,城1つに1人が必要であると考えるといくらいても足りない |
信秀のシナリオがスタートしてしばらく経った頃。領国は狭いが人材不足は深刻で,侍大将以上の者はわずか9人しかいない |
ここまで読むと,家臣に対して身分,能力値,特性といろいろな要求をしていることが分かるだろう。要求するのは勝手だが,現実は過酷だ。能力値が高くて身分も高いなんて武将はなかなかいないし,いても既にどこかの城や郡で仕事をしている。かくして,本作の武家には慢性的な人手不足と妥協が発生する。言い換えれば,人手不足の中,頭を捻ってうまく武将をアサインするのが,本作の面白さの1つとなる。
他勢力の国境近くは最前線なので,「忠誠」「武勇」といった能力が高い者を赴任させる。後方の領地でも,多くの「市」や「農村」を有する郡はたくさんの金や米を産出して経済を下支えしてくれるので,「政務」が高い者を選ぶ……といった具合で,システムを理解して武将をはめ込んでいけると楽しい。
城主と領主の能力値を統合した「城能力」も面白いシステムだ。城主と領主たちが持つ「統率」「武勇」「知略」「政務」は,それぞれ加味されて「城統率」「城武勇」「城知略」「城政務」という数値となり,戦争や内政に反映される。城主と領主たちは1つの集団として扱われ,城能力を持つというわけだ。戦争時も,城主と領主たちがそれぞれ部隊を率いるのではなく,同じ城に所属する武将たちが力を合わせて1つの部隊が形成される。
さて,カンのいい人なら「能力値が統合されて1つの部隊になるなら,全員があらゆる能力に秀でている必要ってないんじゃない?」と気付くと思う。例えば武勇の高い者が1人いれば,その城の部隊は高い城武勇を持つことになる。そのため,ここにほかの武勇の高い者を集めるよりは,ほかの能力値が高いものをアサインしたほうが効果的だ。
つまり,スポーツチームのように,城主というキャプテンと,チームメンバーの領主が補い合うようにすると,強い部隊を作れるのである。例えば「城乗」は敵の城に大きなダメージを与える特性で,これを持つ武将が所属する城の部隊は,攻城戦で役立ってくれる。「武勇」の高い者に城乗持ちをつけて,強力な部隊を作ることもできるわけだ。
こうした仕組みになっているので,一芸に秀でた者はもちろん,そうでない者も力を合わせることでそこそこの「城能力」になる。そのため,凡庸な武将の価値がこれまで以上に高い。うまくやれば“無能だが身分だけは高い城主を,能力値の高い領主たちが輔佐する”という組み合わせも可能で,組織作りの妙味を楽しめる。
内政でも城能力は重要になる。城には,金の収入を増やす「商人町」,兵数を増やせる「練兵場」など,さまざまな「城下施設」を建てられる。どの施設を建ててもらうかは城主に任せ,「城下方針」で方向性を指示できるが,それには対応した城能力が必要だ。「攻撃」なら戦争系の施設を建ててくれるが,城武勇が70以上必要。「内政」は経済系施設が優先され,城政務が70以上必要になる,といった具合である。
また,武将がさまざまな政策や調略を申し出る「具申」も,城能力や武将の特性が関わってくる。例えば,城政務の高い城からは,人材を捜すよう具申される。ここで城のメンバーに,人材捜しの成功率を上げる「人脈」の特性を持つ者がいれば手助けしてくれる。城主本人が特性を持っていなくても,配下武将が持っていればOKで,同じ特性を持つ者が同じ城に複数人所属しているとパワーアップするのも面白い。何でもできる完璧超人や一芸特化のスーパーマンでなくても,凡庸な者どうしが力を合わせることで,チームとして活躍できる。
家臣を出世させ,強い組織を作る
さて,武将が領主と城主になるには,それなりの身分が必要だ。武家に入った者は基本的に低い身分からキャリアをスタートするため,“能力は高いが,領主や城主になれない”者も当たり前のように出てくる。こうした者を飼い殺していたのでは旧態依然のままで,信長のゲームっぽくない。そう,身分が低いなら,高くしてやればいいのだ。
身分を高くするには「勲功」が必要で,戦争や内政で活躍することで得られるため,前線地域に配備して参戦チャンスを多くしたり,内政仕事を与えたりして働かせてやればいい。もちろん,大名自身がこうした仕事をすることもできるが,大名だけが経験を積んで強くなっても,組織全体としての平均値は上がらない。重要度がそう高くなかったり,急ぎでなかったりする仕事は,自分がやるのではなく家臣に任せてやるのが人を育てるコツで,どれを任せるかの見極めが求められるのが面白い。身分に関係なく能力主義で人を評価すれば強い組織が作れるあたり,信長の名を冠するゲームらしいシステムだ。
能力が高い者はいろいろと具申でき,困難な仕事もこなしてたくさんの勲功を手に入れ,出世していく。秀吉などはいい例で,さっき足軽大将をしていたと思ったら,気がつくと最高位の宿老になっているという感じで,味方とはいえ空恐ろしくなってくる。猜疑心というのはこういう瞬間に生まれ,組織の崩壊につながっていくのか……となかなかにリアルだ。
こうして組織が強くなっていくと,周囲の城を次々取ることも夢ではない。1つの城には複数の郡がついてくるため,版図を広げることで人材不足は加速していく。城を落とせば属していた敵将を取り立てられるが,拒否する者もいるので一筋縄ではいかない。人材を求めて城を攻め,城が手に入ってさらにたくさんの人材が必要になる。
同時に,手ごわい他勢力と外交して攻め込まれないようにしたり,家臣を出世させて領主や城主にしたり,大きな港や市を築いたり,具申を採用するかどうか決めたり……と,やるべきことは多い。
一方で,家臣に任せた城や郡はプレイヤーが何もしなくても発展していく。一定以上の地位になった者には,複数の城を束ねて「軍団」として統括してもらうことも可能だ。細かい部分は家臣がオートでやってくれるのに,プレイヤーは忙しい。ちょっと不思議な感覚である。
通常の戦と,威信を賭けた「合戦」を使い分ける
戦国ものゲームとしての見どころのひとつが,他勢力との戦だ。
通常の戦では,攻める敵城を決めると,その戦力に応じて家臣が適切な規模の部隊を用立ててくれ,出陣する。部隊は敵の郡を占領しつつ,城を攻めてくれる。さらに,終戦後に余力があれば,ほかの城の制圧も具申し,採用すれば自動で目標を決めてくれる……という具合で,操作量での負担は少ない。
一方,「合戦」では部隊を指揮する手腕を問われる。戦に大名の部隊が参戦している場合,お互いの兵力を専用マップに集めた合戦が可能だ。専用マップには重要ポイント「要所」が点在しており,部隊に指示を下してこれを取り合う,ミクロな視点での戦いが展開するのだ。
合戦で勝つには,“要所を制圧して敵の「士気」を下げ,最終的にゼロにする”“敵軍の退却ポイント「退き口」をすべて破壊する”“敵部隊をすべて壊滅させる”のいずれかを達成すればいい。勝利条件が複数あるため,いろいろな戦術を試せるのがポイントだ。士気が多少負けていても,敵の退き口が無防備になったところを見計らって突撃したり,高台の要所を取って崖下の敵へ一方的に弓を射たり,自分の部隊をうまく回り込ませて「挟撃」で大ダメージを与えたりと,不利な状況を自分の采配で覆せるのでやりがいがある。
もちろん,敵もこうした勝利条件を満たすために行動する。すべての部隊を景気よく進撃させていたら,がら空きの退き口に敵が突進して真っ青になるようなことも起こるわけだ。
各部隊は自分で判断して行動するので,必要な時だけ自分で指示を与えればいい。たまに「血気」の特性を持つ部隊が敵武将を追いかけ回したりするようなハプニングは発生するが,改めて指示を与えてやればOKだ。逆らったり,無視したりということはない。
合戦に勝てば,大名の名がとどろき渡る。大名家の「威信」が上昇して戦で有利になるのに加え,周囲の敵郡がこちらに寝返ったり,他勢力との関係が好転したり,武将の「忠誠」が一時的に上昇するなどいいこと尽くめだ。こうなると積極的に合戦を仕掛けたくなるが,普通に城を攻めていれば確実に勝てたものを,合戦に負けて退却を余儀なくされるということも起こる。面子をかけたリスク含みの選択というわけで,プレイに緊張感を与えてくれるだろう。
武将が自己主張し,大名家という一体感を味わえる
いくら優れた者でも,身分が低いと何もできない。プレイヤーが抜擢して勲功を積ませて身分を上げてやれば,出世した者はやがて重鎮となって存分に恩を返してくれる。本作は,家臣に身分というフィーチャーを取り入れ,大名家という組織を強くしていくことが面白いゲームとなっている。
また,武将がいろいろな局面で存在感を示してくれるのも印象的だ。能力がある武将は敵勢力への調略を始めとした具申をしてくれるのは前述の通りだが,そこにほかの武将が別プランを出してくることがある。時には「時間と金はかかるが成功率が高いプラン」と「手っ取り早くて安いが効果がいまいちなプラン」の2つからどちらかを選ばなければならないこともあり,心が乱れるのも面白い。
本作の武将は,勲功を得て身分が上がると喜び,大名が家宝を持っていると「余っているならくれ」とおねだりし,無茶な戦に出すと「命令ならやるけど,まず勝てませんよ」と釘を刺し,忠誠が低い者に土地を与えると「もらえるならもらうけど,だからって忠義を誓うものじゃないよ」と毒づき……と,自己主張してくることが多い。そのぶん,自分が目をかけて出世させた武将は,感情移入もひとしおだ。
こうした楽しさの最たるものが,攻略目標を決めるコマンドである。大名であるプレイヤーが「今度は敵のこの城を攻めるから,みんな準備するように!」と大号令を発するというもので,隣接した郡に知略の高い武将がいると,自動で調略を仕掛けてくれる。ある者は敵の兵糧を焼き,またある者は一揆を扇動し,さらに別の者が城壁をブッ壊し……と,武将たちが賑やかに活躍する。武家という大家族が1つになり,天下布武という家業に向けて頑張る一体感で気持ちが盛り上がる。
そして,城や郡の内政,通常の戦での行動など,細かい部分はオートに任せてしまうことができ,プレイヤーとしては攻略目標を決めたり,親善を結ぶ相手を選んだりといった大きなテーマに集中できるため,プレイもしやすい。
最初のうちは「組頭と足軽大将はどっちが上なんだっけ?」「領主にできるのはどの身分からだっけ?」と戸惑うこともあるかもしれないが,慣れてくればその面白さが理解できるはずだ。戦国時代好きはもちろん,サラリーマンを始めとした組織人も楽しめるゲームに仕上がっているのではないだろうか。
「信長の野望・新生」公式サイト
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